ロッテが今季最多となる19安打13点をあげ連敗を10で止めた。ロッテは2回福浦の2ラン、渡辺正の適時二塁打など打者一巡の猛攻で4点を先制すると、その後も初芝、橋本の今季1号など先発全員安打を記録し計13得点で試合を決めた。先発・渡辺俊は9回6安打2失点の好投で今季2度目の完投勝利。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
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千葉ロッテ | 0 | 4 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 5 | 2 | 13 |
北海道日本ハム | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
やっと勝った。ロッテが連敗を10で止めた。ボビー・バレンタイン監督に、とびきりの笑顔が戻った。打線が先発全員安打で今季最多の19安打13点と爆発すれば、先発の渡辺俊介投手も2失点完投。危うく02年の開幕11連敗に並ぶ悪夢を吹き飛ばして快勝した。試合後、東京ドームには「I feel the power!(ウチのチームのパワーを感じるよ)」というボビーの雄たけびがこだました。さあ、開幕ダッシュの勢いを取り戻し、猛追だ。
待ちこがれた瞬間だった。渡辺俊が日本ハム最後の打者・古城を打ち取ると、バレンタイン監督は腹の底から一気に安堵の息を吐き出した。コーチ陣、選手と何度も握手した。そして続けて行われた試合後ミーティングでは、一転して叫んだ。「I feel the power!本当にお前たち、グレート・ジョブだったぜ!」。三塁側に響き渡る声で、ナインを労った。
バレンタイン監督が常々口にし、目指している「team effort(チーム全体の努力)」の勝利だった。先制した2回。左前打で出塁したベニーを一塁に置いて、サインはエンドラン。福浦は空振りしたが、必死の走塁でベニーが盗塁を決めた。直後に「進塁打でいいと思ってました」という福浦の2ランが生まれた。この日、先発に抜擢されたベテラン初芝や、里崎、清水将のケガで苦しい捕手陣を支える橋本にもアーチが飛び出した。何より、先発全員安打という結果が、ナインの勝利への執着を表していた。
試合前から雰囲気が違った。全体ミーティングで「投げる時、打つ時、守りの時、どんな時だって、お前達を信頼しているんだ」と、諭すように話し掛けるバレンタイン監督の姿があった。一通り話が終わると、開幕戦以来2度目となる「儀式」。全員が手をつなぎ、1、2の3で「ウォー」と叫んで士気を高めた。「今日は皆で勝とうという感じありました。あれで気持ちが高まってましたから」と連敗ストッパーになった渡辺俊は話した。「ボビー・マジック」というに相応しい人心掌握術で、勝利を引き寄せた。
同監督はゲーム後も、ナインへの感謝の気持ちを忘れなかった。「渡辺俊は素晴らしかった。あまりスタメンで出てなかった諸積や渡辺正が貢献してくれた。橋本、初芝ももちろんね」と、選手1人1人の名前を挙げながら健闘をたたえた。そして言った。「連敗を止めたんじゃない。今日から連勝が始まるんだ」。負けている間も特別な験担ぎはしなかった。その代わり、選手との信頼感が着実に育まれていた。
チームトップの3勝目を上げた渡辺俊は、お立ち台で「今度は連敗ストッパーじゃなくて、連勝を伸ばす投手になりたい。まだ優勝は狙えますから」と語気を強めた。熱いボビー・イズムは、厳しい連敗中にも、確実に選手に浸透していた。
ロッテが今季チーム最多の13得点、19安打を記録し、連敗を10で止めた。得点、安打はバレンタイン監督にとって最多の爆発。得点は同監督が前回ロッテを率いた95年の1試合最多13点(5月31日近鉄戦、7月9日ダイエー戦)に並び、安打は同年最多の18(9月25日近鉄戦)を上回った。10連敗中は総得点27、チーム打率1割9分4厘(320打数62安打)と低迷したが猛打がきっかけになるか。ロッテが2ケタ連敗を喫した過去3度は連敗脱出後10試合でいずれも勝ち越している。
ここ10試合で打撃2割1分6厘と低迷していた李が、5打数2安打2打点と活躍した。この日は14日以来、今季2度目となる3番での出場だったが、8、9回に適時打を放った。試合後は「いつも励ましてくれる監督に申し訳なかったですから。フォームは、もうすぐ良い状態に戻ると思います」と手応えをつかんでいた。
清水将、里崎がケガで離脱する中、本塁を死守する橋本が、自慢の打撃で結果を出した。右本塁打を含む4打数2安打2打点。「今の状態だと、内容よりも勝つことが大事。これで乗っていかなきゃいけないでしょう」と、ナインの気持ちを代弁した。
体重100キロの巨体が二塁へ滑り込む。微妙なタイミングながら判定はセーフ。2回無死一塁からベニーが今季2個目の盗塁を記録した。連敗脱出へ、バレンタイン監督が求めていた「きっかけ」がこのプレーだった。
「あれが大きかった」とボビー。打席にいた福浦は苦笑いで振り返る。「初球エンドランのサインで空振りして…。よく走ってくれました」。そして進塁打を意識して引っ張った2球目が67打席ぶりの右越え2号2ランになるのだから笑いが止まらない。火がついた打線は今季初の先発全員安打に、いずれも今季最多の19安打13点。試合後のベンチでは連敗を10で止めた指揮官が「グレート・ジョブ!」と絶叫し、会見では「ロッテパワーが戻った」とまた笑った。
日米で17年目に突入した監督経験でも初めてという2ケタ連敗。試合前のミーティングではゲキを飛ばした。「君達が投げる時も、打つ時も、守る時も、全ての瞬間で信頼している」。ナイン全員で手をつないで円陣をつくり、気合を入れる雄叫びを上げた。開幕戦でも行った儀式で高められた戦意が福浦の先制弾で爆発。2回2死三塁からしぶとく三塁線を破った渡辺正が「泥臭くてもいいから塁に出たかった」と話せば、3回2死二塁から投手のグラブをはじく中前適時打を放った橋本も「ラッキーな安打だけど上出来。今は結果です」と強調した。
開幕20試合でオーダーは19通り。この1週間で井上、サブロー、里崎が離脱するなど頭を悩ませる日が続くが「今日は全員がうまく機能した。確かに長かったけれど連敗を止めたのではなく、連勝が始まるんだ」とバレンタイン監督。信頼するナインと反攻に出る。
渡辺俊が完投で3勝目。粘り強い投球で失点を3、4回のソロ2発に抑えた。前日から腰周辺に張りを感じたといい「投げるのに精いっぱいで慎重になったのがよかったのかも」と苦笑い。昨年も2度、チーム最多の7連敗を止めており「連敗ストッパー」の声も上がったが「目立つのは好きですけど野手のおかげで勝たせてもらいました」と振り返った。
サブマリンが、そのしなやかな右腕でチームを連敗地獄からヒョイと持ちあげた。“連敗ストッパー”渡辺俊が本領発揮だ。「これだけ点を取ってくれましたから…。連敗ストッパー?連勝を伸ばせる投手の方がいいですよ、へへへッ」。左翼席からは大歓声。連敗を「10」で止めた右腕とファンが、待ちわびた1勝を喜んだ。
3回には実松、4回には木元に1発を浴びたが、打線の爆発にも助けられ、6安打2失点と今季2度目の完投で3勝目。昨年、6月23日の西武戦(西武ドーム)、8月23日のダイエー戦(福岡ドーム)と、いずれも連敗を「7」でストップさせた男が、再び精神的な強さを見せつけた。
実は、前日(17日)に背中から腰にかけての強い張りで登板回避も考えていた。この日の朝もトレーナーの治療を受け、ようやく間に合ったマウンドだ。腰に一層の負担がかかるサブマリンを完全なものにするため、今キャンプではウエートに重点を置いた。強固になった背筋が、この日の好投を支えてくれた。
「ロッテ・パワー・イズ・バック!」。1番喜んだのはバレンタイン監督だ。17日の日本ハム戦では一、三塁のコーチスボックスに交互に立ってゲキを飛ばした。オリックスの伊原監督を批判しながらも、我慢できなかった。笑われるのを覚悟で自分も動いた。
試合前のミーティング。バレンタイン監督は1つの策を与えた。作戦ではなかった。「何でもいいから叫べ」。渡辺俊は言った。「“ワオ〜!”とかいったら、余分な力が抜けた」。“連敗”という重圧を選手とともに吹き飛ばして臨んでいた。
「連敗を止めたんじゃない。これから連勝が始まるんだ」。勝利の直後、ベンチのナインに向かって再びツバを飛ばしたバレンタイン監督。叫んだ。勝った。さあ、ロッテの逆襲が始まる。
月日 | 相手 | 勝敗 | スコア | 責任投手 |
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04-06 | 日本ハム | ● | 1−4 | 戸部 |
04-07 | 日本ハム | ● | 1−6 | 薮田 |
04-09 | オリックス | ● | 4−7 | 小林雅 |
04-10 | オリックス | ● | 7−9 | 川井 |
04-11 | オリックス | ● | 3−11 | 渡辺俊 |
04-12 | 西武 | ● | 0−4 | 小林宏 |
04-13 | 西武 | ● | 5−9 | 小宮山 |
04-14 | 西武 | ● | 3−5 | 小野 |
04-16 | 日本ハム | ● | 1−2 | 清水直 |
04-17 | 日本ハム | ● | 2−6 | 黒木 |
04-18 | 日本ハム | ○ | 13−2 | 渡辺俊 |
これまでの鬱憤を晴らすように打線が大爆発。2回の福浦の先制2号2ランを号砲に、先発全員安打、全員得点で、いずれも今季最多となる19安打13得点。無死一塁からエンドランのサインに空振りした直後、汚名返上のアーチを放った福浦は「一走のベニーがよく走ってくれた(記録は盗塁)おかげです」とチーム一丸の勝利を強調した。
ロッテのベンチに、やっと活気が戻った。バレンタイン監督を中心に全員が笑顔でハイタッチを交わす。「今日はみんなにパワーを感じたよ!よくやった!」指揮官はありったけの大声を張り上げて、忘れかけていた勝利の味をかみしめた。鬱憤を晴らす猛打ショーで、泥沼の連敗を「10」で止めた。
今季初の先発全員安打で今季最多の19安打13点。チーム打率2割1分8厘まで沈んでいた打線が目を覚ました。きっかけは“エンドラン失敗”。2回無死一塁で福浦が空振りしたが、スタートを切っていたベニーの猛ダッシュで2盗に成功、直後に先制2ランが飛び出した。「ベニーがよく走ってくれた。とにかく進塁打でもいいと思った」と福浦。流れはロッテに傾いた。
チームはもがいていた。指揮官は連敗のさなか、試合前に都内でベニーらとトークショーを開催。「今日は、もうダイジョーブ」と日本語で笑顔を振りまいた。その裏で、初めて李承Yを3番に、フランコを外野に起用。不調の名手・小坂を先発から外した。先発要員の小野も、手薄な中継ぎに回すなど悩み続けた。
試合前のミーティングでは、全員が手を取り合って気合を入れた。スタートダッシュを決めた開幕前と同じ“儀式”で、日本ハムを攻略。結果的に打線組み替えは成功し、先発の渡辺俊は完投した。「1度でも選手を信頼しなかったことはない。今日は連敗ストップではなく、連勝の始まり」とボビーは言ってのけた。
10連敗中は打率1割9分3厘と低迷したロッテ打線が、今季チーム最多の19安打、13得点。猛打をみせて長く、暗かったトンネルを脱した。「ロッテ・パワー・イズ・バック」。バレンタイン監督にも笑顔が戻ってきた。
2回、先頭のベニーが安打の後、次打者の福浦は初球ヒットエンドランのサインで空振り。目を覆いたくなる場面だったが、ベニーがパワフルな走りで二盗を決めた。無死二塁となり「進塁打を狙った」という福浦が先制2ランを放った。指揮官が「ベニーの走塁が大きかった」と話した通り、この回に打者一巡で一挙4点を先行した。序盤のリードに渡辺俊は緩急をつけた投球で6安打2失点、今季2度目の完投で3勝目をマーク。「連敗のことより、投げるだけで精いっぱいだったのが良かったのかも」。おどけて見せる表情には安堵感が漂った。
投打の歯車が見事にかみ合っての大勝。「連敗の終わりとは思ってない。連勝のスタートだと思っている」。バレンタイン監督は巻き返しを誓った。