ロッテは引き分けを挟み今季3度目の3連勝を飾り、バレンタイン監督は日米通算1200勝を挙げた。6回、福浦の二ゴロでロッテが1点を先制。続く7回には李のソロ、浜名の移籍後初打点となるタイムリーにより、2点を追加した。ロッテ先発の清水直は開幕で勝って以来の勝ち星で2勝目、自己最多タイの10奪三振。去年7月6日以来となる完封勝利、プロ入り初の無四球完封を飾った。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
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西武 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
千葉ロッテ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | x | 3 |
先発清水直が、バレンタイン監督の日米通算1200勝を最高の完封劇で飾った。最後の和田を投ゴロに打ち取ると、ウイニングボールを受け取って、真っ先に同監督の元に向った。「1200勝というのはすごいと思うしね。そんな勝利に貢献できて本当に嬉しい」。抱き合いながら、英語と日本語ごちゃまぜの「おめでとう!」。そして、大歓声の中、記念のボールを手渡した。
エースと呼ぶに相応しい大仕事だった。「初回から飛ばしても大丈夫だと分かってましたから」。先頭の赤田を三振に取ると、もっともマークすべき3番フェルナンデスは、142キロの高速スライダーで空振り三振に。この日、直球は最速151キロをマークし、スライダー、スプリットもさえ渡った。三塁を踏ませない力投で、許した安打はわずかに4。チームとしても今季初となる完封を達成した。
この試合まで5試合に登板し、防御率はリーグ4位の2.97。だが、清水直が投げている間にチームはわずか15得点。援護に恵まれず、勝利は1勝。それでも腐らなかった。「僅差の試合でも粘れて、安心して打者が攻撃に専念できる投手になりたいですから」。帽子のつばの「Be patient(粘り強く)」の文字通り、プロ入り初の無四球完封も成し遂げた。
清水直にとって、バレンタイン監督は父親も同然の存在だ。キャンプ中から開幕投手の指名を受け、登板日の設定も許された。紅白戦、オープン戦と、投げ終えると監督のもとへ呼ばれアドバイスを受けた。この夜の勝利は、「今日の1200勝は、私に関してではなく、チームと清水直が素晴らしい試合をしてくれた証だ」という同監督への、これ以上ない親孝行だった。
李が1点リードの7回、右中間へ4月19日以来の4号ソロを放ち、清水直へ貴重な追加点をプレゼントした。試合中に初芝から「変化球を捨てて速球1本」のアドバイスを受け、狙い通りに大沼の144キロの直球を豪快に運んだ。李は「カウント2−3から、うまく速球を打てた」と初芝に感謝していた。
「ボビー」コールの中でファン代表から花束を受け取った。ヒーローインタビューより先だった日米通算1200勝を祝う儀式。主役はバレンタイン監督だった。「どの勝利も好きだけど今夜は格別。連休前で観客が多く、相手は首位のライオンズ。エースが完封してこの上ないよ」。
節目を飾るに相応しい夜。清水直がエースの投球を見せた。「1200勝を意識すると選手が硬くなる。1試合で決めようと思った」。03年7月6日のダイエー戦以来(福岡ドーム)の完封はプロ初の無四球だ。主役の座は奪われても「(バレンタイン監督の)素晴らしい記録にかかわれて光栄です」と笑った。
その指揮官にとって、85年に35歳の若さでレンジャーズの監督に就任してから20年目の区切りの勝利。それはある監督の背中を追ってきた結果でもある。68年にドジャースへ入団した時の3Aの監督だったトミー・ラソーダ氏(現ド軍副社長)。「ずっと好きな監督で、前向きな態度は彼から学んだんだよ」。戦略や戦術よりも大事なものがある。選手の意欲を引き出す独特の掌握術。人と人とのつながりを重視するから、この日も試合後にベンチで行う恒例のミーティングで「選手がいなければ1勝もできない。みんなのおかげだよ」と言って頭を下げた。
ベンチ裏の選手食堂では重光オーナー代行をはじめ、選手や関係者が集まって乾杯した。「知らされていなかったけど素晴らしい贈り物。チームが1つになっているのを感じる」。借金完済まであと1勝。ロッテに上昇ムードが漂ってきた。
監督の日米通算1200勝とエースの今季初完封。右翼席の応援団が見守る前でガッチリと握手した。「おめでとうございます」。清水直からプレゼントされたウイニングボールに、バレンタイン監督はそっとキスをした。
「シミズは今季のロッテというチームの素晴らしさを体現してくれた。ボールは彼のものなのに私にくれた。素晴らしいピッチングより、私の記録で注目度が損なわれてしまい、申し訳ない」。
ムダ数を減らそうと、要所では強気の3球勝負。全27アウトのうち“3球料理”は8度。散発の4安打10奪三振で、首位・西武に今季初の完封を食らわせた。清水直の完封は昨年7月6日のダイエー戦(5−0)以来だが、無四球は初。メモリアル試合の“背景”が集中力を高めた。「記録を持っている監督がいるというだけで、ロッテはいい結果を残せます。秋には1番勝っているチームになっています!!」。エースが高らかに宣言した。ドロ沼の10連敗も過去のこと。4月が終わってみれば、借金はわずか『1』。名将と共にロッテが熱パを演出する。
バレンタイン監督の年度別成績 | |||||||
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年度 | チーム | 試合 | 勝 | 敗 | 分 | 勝率 | 順位 |
昭60※ | レンジャーズ | 129 | 53 | 76 | 0 | .411 | 7 |
昭61 | 〃 | 162 | 87 | 75 | 0 | .537 | 2 |
昭62 | 〃 | 162 | 75 | 87 | 0 | .463 | 6 |
昭63 | 〃 | 161 | 70 | 91 | 0 | .435 | 6 |
平元 | 〃 | 162 | 83 | 79 | 0 | .512 | 4 |
平2 | 〃 | 162 | 83 | 79 | 0 | .512 | 3 |
平3 | 〃 | 162 | 85 | 77 | 0 | .525 | 3 |
平4※ | 〃 | 86 | 45 | 41 | 0 | .523 | 3 |
平7 | ロッテ | 130 | 69 | 58 | 3 | .543 | 2 |
平8※ | メッツ | 31 | 12 | 19 | 0 | .387 | 4 |
平9 | 〃 | 162 | 88 | 74 | 0 | .543 | 3 |
平10 | 〃 | 162 | 88 | 74 | 0 | .543 | 2 |
平11 | 〃 | 163 | 97 | 66 | 0 | .595 | 2 |
平12 | 〃 | 162 | 94 | 68 | 0 | .580 | 2 |
平13 | 〃 | 162 | 82 | 80 | 0 | .506 | 3 |
平14 | 〃 | 161 | 75 | 86 | 0 | .466 | 5 |
平16 | ロッテ | 30 | 14 | 15 | 1 | .483 | 3 |
日米通算17年 | 2349 | 1200 | 1145 | 4 | .511 | ||
メジャー通算 | 2189 | 1117 | 1072 | 0 | .510 | ||
日本通算 | 160 | 83 | 73 | 4 | .532 |
[注]※はシーズン途中の就任または解任。順はリーグ順位、平8年以降は地区順位。平12年ワールドシリーズ進出。今季成績は30日現在のもの。
李承Yが1点リードの7回に9試合ぶりの4号ソロを右中間へ。昨季、韓国・三星で56本塁打。「アジアの大砲」として来日しながら、思うような打撃にはあと1歩で、故障で先発落ちも味わっただけに「ラッキー7の攻撃だったから、チームに貢献できる本塁打を打ててよかった」と久々にスマイル。
格別な“勝利の美酒”だった。バレンタイン監督は最高の笑顔で、最高の言葉をナインに投げかけた。「選手がいなければ1勝もできない。みんながいたから1200勝を達成できたよ!」試合後の選手食堂で飲み干したビールの味も最高だ。理想的な勝利で飾った指揮官としての日米通算1200勝。95年のロッテ時代を合わせ、日本での83勝目で大台に乗った。
エースの完封が、メモリアルウインに花を添えた。「監督が言ったんです。『秋にウチが1番いい思いをする』と。その言葉を信じています」清水直が4安打10奪三振の完ぺきな投球で今季初完封。打線も5回までノーヒットに抑えられながら、小坂の初安打を起点にして6回に先制。7回にはアジアの大砲・李承Yが27打席ぶりの4号ソロ本塁打で後押しした。
ナインを盛り上げる指揮官の手腕は、自身がドジャース現役時代の恩師、トミー・ラソーダ氏譲りだという。「野球は前向きな姿勢が必要。彼から学んだことは大きい」。1985年、34歳にしてレンジャーズの監督に就任、常にナインへの信頼を忘れずに戦った。「本当はこのボールは清水直が持つべきもの。それだけは忘れないで欲しい」エースから手渡されたウイニングボールを手にして言ったこの言葉こそ、ボビーの監督像だ。
バレンタイン監督が、この日の今季14勝目で指揮官として日米通算1200勝を達成した。米大リーグで1117勝、95年のロッテ監督時代に69勝しており、偉大な“マイルストーン”に到達。試合後のベンチでは「選手なしには1勝もできない。みんながくれた記録だ」と喜びを爆発させた。
尊敬するラソーダ監督(ドジャースで通算1599勝)の名前を挙げた指揮官は「私の歳(53歳)の時には、まだ500勝ぐらいだったんじゃないかな」と話し、通過点にすぎないことを強調していた。
李が1点リードの7回、9試合ぶりの4号ソロ本塁打を放った。大沼の甘い速球を低い弾道で右中間席に運び「何とか塁に出てチャンスをつくりたいと思っていた。失投を上手く捉えられた」と、予想以上の結果ににんまり。「アジアの本塁打王」として日本球界入りしたが、思うような打撃にはあと1歩。さらに、けがなどの影響で先発メンバーから外れる寂しさも味わっているが「チームに貢献できる本塁打を打てて良かった」と、この日ばかりは笑顔が絶えなかった。