ロッテがサブローのサヨナラ犠飛で今季3度目のサヨナラ勝ちで、今月に入り負けなしの4連勝、2カード連続の勝ち越し。ロッテは延長11回、1死満塁からサブローの自身4本目のサヨナラ犠飛で試合を決めた。近鉄は1点リードされて迎えた8回、中村の2試合連続となるホームランで同点に追いつくが、今季6度目のサヨナラ負けで2連敗。なお先発・岩隈は8回を投げ3失点で勝ち負けつかず、開幕からの10連勝は次回に持ち越された。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | R | |
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大阪近鉄 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 |
千葉ロッテ | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1x | 4x |
奇襲だった。「アジアの大砲」がバットを横に持ち替える。その瞬間、スタンドはどよめく。延長11回無死一、二塁のサヨナラ機で、ロッテ李に下された指令は「送りバント」。「自分でもサインが出ると思っていた。楽な気持ちでやれました」。近鉄守備陣は無形回。李は初球を、投手と一塁手の間に転がし、来日初犠打を記録した。サヨナラ勝ちへのシナリオを仕上げて、最後はサブローがきっちり中犠飛を打ち上げた。
命じたバレンタイン監督も大きな決断だった。李の記憶によれば、韓国時代に犠打の経験は「送りバントは5回くらいで、3、4年前が最後」。失敗すれば李のプライドに、そしてチームの士気にも影響を与えかねない。「勝利のためならなんでもやる」という李の言葉を信じ「(バントを)やるなら1球と決めていた。ストライクを見送ったり、ファウルしたら、やめるつもりだった」と大胆に動いた。見事に成功し、ベンチのナインは総出で李を出迎えた。
バント1つが命取りになる。ロッテには忘れられない教訓がある。ちょうと1週間前の5月29日、犠打失敗から好機をつぶしたその裏、近鉄には犠打を足掛かりにサヨナラ負けした。くしくもスコア、両先発投手、延長11回サヨナラの展開も同じ。近鉄は対照的にこの日、11回無死一、二塁で盛田にがバント失敗。まったく逆のシナリオに、バレンタイン監督は「今日もバントが勝負の分かれ目だった」と雪辱を喜んだ。
月が変わればチームも変わる。連勝男・岩隈の勝ち星を2戦連続で阻んだ。「バットを振らなくても、いい場面でチームに貢献できて嬉しい」という李に限らず、4回には4番ベニーが自ら送りバントを試みるなど、粘りとチーム力で対抗する。6月は無傷の4連勝。3位日本ハムとの差も3.5ゲームに接近し、プレーオフ出場圏を再び視界にとらえた。
サヨナラ犠飛のサブローがお立ち台に上がった。1死満塁から、フォークをとらえて中堅へ深々と運んだ。直前に、カウント0−2から大きく空振り。「これじゃイカンと、ひと回り短く持ち直しました」と冷静な判断が生きた。2回2死満塁では、二塁走者として牽制死でチャンスを潰しており「しょうもないプレーがあったけど、これで勘弁してください」とファンに頭を下げた。
ファンも、近鉄の守備陣も驚いた。同点の延長11回無死一、二塁。打席には前日に1軍復帰したばかりの李承Yが立つ。その初球、アジア記録のシーズン56本塁打を誇る男が来日初の送りバント。福盛の141キロの外角直球を投前に転がした。「バントのサインが出るかと思っていたし、上手くできて嬉しい」。李はこともなげに振り返ったが、犠打は韓国時代の01年以来のこと。プロ生活で10個以上は記録しているものの、サムスンでは強打者として育てるために首脳陣からは「バント禁止令」が出ていたという。そんな李の“つなぎ”が生きる。橋本が敬遠されて満塁。ここでサブローが中犠飛を打ち上げサヨナラ勝ちだ。
「チャンスで回ってきてほしいと思っていた。今日はしょうもないプレーもしたし、取り返さないとアカンって」。ナインからペットボトルの水をかけられて笑ったが、サブローにとっては雪辱の舞台だった。5月29日の近鉄戦(松山)で岩隈の連勝を阻止しながら、延長11回無死一、二塁で送りバントを失敗。これが響いてサヨナラ負けを喫した。この日は全く逆パターン。李のお膳立てを受け、苦い思い出を払拭したのだ。
岩隈に黒星こそつけられなかったが、これで今季3度目の4連勝。勝敗を分けた11回の攻防をバレンタイン監督は「あそこがポイント。近鉄は(無死一、二塁で)走者を送れず、うちはバントを決めた」と振り返った。そして李についても「彼は1軍昇格時に“チームの勝利のため何でもやりたい”と言ってきた。その言葉通り素晴らしい仕事をしてくれた」。これで4位・近鉄に1.5ゲーム差。それぞれが役割を果たした意義ある1勝で、ロッテが上昇のきっかけをつかんだ。
指揮官の期待に救援陣も応えた。まずは3−3の6回1死二塁から救援した守護神・小林雅が、内野ゴロ2つでピンチ脱出。続く10回も2三振を奪う完璧な投球を見せた。そして11回無死一、二塁から登板した薮田も気迫の投球で、森谷に送りバントを失敗させるなど3人でピシャリ。薮田は「自分の投げる球に自信を持ってやっているのがいい結果につながっている」と2日連続の2勝目に表情を緩めた。
昨季(韓国・三星)56本塁打の“アジアの大砲”李承Yが来日初バント。延長11回無死一、二塁から、韓国の9年間で5度くらいしか経験がないという送りバントを、投前に決め、サブローのサヨナラ犠飛につなげた。「(バントのサインが)あるかなとは思いました。やりやすい球でよかった」。バレンタイン監督は「彼は勝利のために何でもやると言ってくれていた。すばらしい働きだった」と称えた。
意地もプライドも、勝利への執念にかき消されていた。延長11回無死一、二塁。李承Yは、当然のように初球をバントした。勢いを殺した投前への絶妙な犠打は、1死二、三塁の絶好機を演出。続く橋本が敬遠され、サブローが中犠飛。韓国・サムスン時代以来、3年ぶりとなる李の送りバントが、チームをサヨナラ勝ちへと導いた。
勝利の瞬間、李は顔を紅潮させ、ハイタッチを繰り返した。その表情に、不満の色など微塵もない。「あの場面だからサインが出ると思っていた。すんなり受け入れることができました」チームの勝利が全て。シーズン56本塁打をマークした韓国の国民的打者は、威厳を傷つけかねないサインを当然の策として受け止め、実行した。前日、1軍復帰を果たした李は、バレンタイン監督に決意を語った。「勝利のためには何でもやりたい」フォア・ザ・チームに徹した李のバントに、指揮官は「彼は言葉通り、素晴らしい仕事をしてくれた」と賛辞を惜しまなかった。
一丸となったロッテは、4月21日以来の4連勝。連勝さえなかった5月とは一転、6月はいまだ負けなしと完全に息を吹き返した。「とにかくチームに貢献できるようにやるだけ」と李。小技は見せた。次は、豪快なアーチで己の欲を満たす。
小技の差がこの試合の明暗を分けた。送りバントを確実に成功させたロッテがサヨナラ勝ちを決めた。延長11回、近鉄は無死一、二塁の好機をつかむと、森谷のバントが捕邪飛となり、後続も倒れた。その裏、同じく無死一、二塁の好機で、ロッテは5番の李承Y内野手が来日初の犠打を投前に決め、サブローのサヨナラ犠飛を呼び込んだ。
今季3度目の4連勝を果たしたバレンタイン監督は、11回の攻防を「あそこがこの試合のポイントだった。近鉄は走者を送れず、うちはバントを決めて勝った」と振り返り、李のバントには「彼は1軍に上がってきた時、チームの勝利のために何でもしたいと言っていた。その言葉通り、最高の仕事をしてくれた」と話した。韓国の本塁打王・李は昨年まで10個以上は犠打を記録しているそうで「あそこはサインが出ると思っていた。すんなりできた」。個々の選手が役割をきっちり果たしたロッテが延長戦を制した。