日本シリーズ消滅の危機だ。労働組合・日本プロ野球選手会は6日、神戸市内のホテルで臨時運営委員会を開催し、全会一致でストライキ権の行使を決めた。10日午後5時までに、オリックスと近鉄の合併の1年間凍結などが認められない場合は1、2軍を含め9月の毎週土日曜の試合でストライキを行う。10月以降についても、27日の臨時運営委員会で判断する予定で、パ・リーグのプレーオフや最大のイベント日本シリーズのスト決行の可能性もあり、泥沼の「半無期限スト」の様相を呈してきた。
古田会長が毅然とした態度で口を開いた。「9月8日に、もし球団削減の決定をされれば、ストを行います」。できれば避けたかったが、この状況では致し方なかった。9月11日を手始めに毎週土日曜日のスト決行を通告した。この日決まったのは9月中のことだけだが、10月についても27日に臨時運営委員会を開いて決める。「日本シリーズやプレーオフがストの対象外というのは甘いでしょう」と松原事務局長。徹底した態度でシリーズ消滅も辞さない構えを示した。
会議は冒頭から過激な意見が続いた。まずパ・リーグの3球団が続けて無期限ストの実施を訴えた。4番目に発言した中日が初めて、長期的なストは避けたい意見を述べた。しかし、スト決行に反対する球団はなかった。「ファンの気持ちに配慮して(無期限ではなく)こういう形になった。我々にできることは、最後はこれしかなかった。ファンに野球を見られない時期をつくってしまうのは心苦しいけど…」と古田会長は苦渋の決断を振り返った。
日本プロ野球が初めて経験するスト。3時間の会議のうち、2時間をその不安点を取り除くことに費やした。損害賠償される恐れのないことや、寮から追い出されることは不当労働行為にあたるため心配ないことなどを説明した。次第に出席した25人の気持ちは一致していった。断固たる姿勢を取ることに不安はなくなった。合併が1年凍結され、新規参入条件の緩和やドラフト改革、収益分配策についての具体的検討がなされない場合、ストを行うことになった。
ただ、選手会としてギリギリまで話し合いで解決する意思は崩さない。オーナー会議で合併が承認された場合でも、10日の午後5時まで、協議交渉委員会に対して団体交渉を求めていくことを決めた。「8日からのストを避けたのも、ギリギリまで話し合いたかったから」と松原事務局長は話した。
しかし、9日と10日に開催は決まったが、協議交渉委員会では、団交の相手として厳しいのも事実だ。通常は団体交渉に臨む相手には決定権があるが、協議交渉委員会にはオーナーの委任状などは持参されない。オーナーやコミッショナーが出てこない限り、事態は打開できない。選手会の求めるルールにのっとった団体交渉ではストは回避できそうにない。
この日の実行委員会でオリックスと近鉄の合併は承認された。もはやスト決行は避けられない状況だ。「合併が承認された?今日、みんなで決めたことをしっかりやっていきたい。みんなで決めたんでね」と古田会長。選手会は一致団結した。あとはオーナー達の結論を待つだけだ。
近鉄の礒部選手会長は、今回決議されたストの形式を“無期限スト”ととらえ、他球団の理解に感謝した。無期限ストを提起していた礒部は、臨時運営委員会でも近鉄選手会の総意として「チームが存続できるよう最後まで戦いたい」と提案。結論はスト継続とはならなかったが「スト期限をいつまでと切らなかったことで、最後まで交渉していくという僕らの気持ちは受け入れられたと思います」と語った。また「僕らの球団から起きたことで全球団が動いてくれたことに対するありがたいという気持ちがある反面、個人的には首位争いしている球団に対する申し訳なさもあります」と話していた。
オリックスと近鉄の球団合併をめぐり、労働組合・日本プロ野球選手会の古田敦也会長と両球団の選手会長が、オーナーと選手会による特別委員会での議決なしに合併を承認しないよう日本プロフェッショナル野球組織(NPB)に求めた仮処分申請の即時抗告審で東京高裁(原田和徳裁判長)は6日、選手会側の抗告を棄却する決定をした。
原田裁判長は決定理由で「球団の統合承認は、選手契約に関する条項の改正を要しないため、プロ野球協約上、特別委の議決事項に当たらない」との判断を示した。プロ野球選手会が団体交渉権の確認を求めた抗告については、審理を分離し決定を先送りした。
近鉄とオリックスは8月27日に正式契約を締結。選手会側は、経営者と選手間で契約に関する事項を決める特別委の議決なしに球団合併は進められない、として仮処分を申請した。これに対し東京地裁は3日、今回とほぼ同じ理由で申し立てを棄却したため、選手会側が即時抗告していた。
東京高裁が、選手会が団体交渉権の確認を求めたことに対しての判断を先送りしたことに対し、山ア弁護士は「全て棄却せずに継続審議となったことで、継続審議の部分で1審と違って、我々に有利な判決が下る可能性が高くなった」と理解した。選手会では東京地裁の決定を即時抗告した際に、4項目あった要求を2項目に絞っていた。そのうちの1項目の仮処分申請が認められる可能性が出てきたことになる。労働組合であることをあらためて認識させることで、機構側に損害賠償請求をさせない狙いがあるようだ。
日本プロフェッショナル野球組織
コミッショナー 根来泰周殿
オーナー会議議長 滝鼻卓雄殿
実行委員会議長 豊蔵一殿
平成16年9月6日
日本プロ野球選手会会長 古田敦也
球団統合・再編問題に関する当会の要求と今後の行動方針
当会は、本日臨時運営委員会を開催し、同会決議に基づいて、貴組織に対し、以下のとおり要求いたします。
以上
ダイエー選手会長の松中信彦内野手は、強い姿勢でストライキに臨む意見を口にしたことを明かした。臨時運営委員会に出席した松中は、優勝争いを繰り広げる当該球団ながら「あくまで将来のため」とチームの総意として「週末スト」を提案した。
5日の近鉄戦(大阪ドーム)では終盤の逆転劇で、既にプレーオフ進出も決定した。12試合を残し、2位西武に4ゲーム差をつけるなど、リーグ2連覇に向けチームは首位を快走する。これからが大事な時期になる。それでも今後の野球界のことを考えると、急速に進む球界再編に「待った」をかけるため、この方法を選択した。「ストは最終手段ということで、本当はやりたくなかったんだけどね。12球団一致団結して闘っていかなければならない」。球界全体の発展を祈る気持ちから出た決意でもあった。
仮にストに突入した場合、18日(土)19日(日)には、2位西武との最後の直接対決も控えている。「西武もゲーム差を縮めたいだろうしね…」。時折、複雑な表情を浮かべていた松中。選手会としての苦渋の選択だったことを象徴していた。
オリックスの三輪選手会長は日本ハム戦後、1軍選手にスト権行使について説明した。反論などは出なかったという。球団が近鉄との合併を推し進めたことに「全然何にも聞いてくれなかったんだなと思います」と、やりきれない表情を見せた。
日本ハム小笠原選手会長はこの日、オリックス戦終了後に宿泊先の神戸市内のホテルで、1軍帯同選手に選手会臨時運営委員会での決定事項を説明した。9月中の週末には、プレーオフ権を争うロッテとの対戦も2試合含まれており、チームの選手会会計の役職にもある立山は「(ロッテを)追う立場で、試合が少なくなるというのは気持ち悪い」と複雑な心境を口にしていた。
巨人高橋由は、スト突入が避けられない状況となり「したくてする訳じゃない。球界をよくするためにやむを得ない。12球団が同じ方向を向かないと」と口を真一文字に結んだ。7日からは中日との首位攻防3連戦だが「これ(スト)はこれで大事」と、自軍だけを考えていられないと強調した。ナインには、この日の経緯を7日、東京ドームで説明する。
野球協約では、ストなどで選手が野球活動を中止した場合、球団は1日につき年俸の300分の1を減額できるとしている。選手会が今年5月に発表した年俸調査によると、今季の年俸総額は巨人の40億2820万円を筆頭にセが160億8380万円、パが124億9239万円の計285億7619万円。その300分の1として、1日あたり約9525万3967円が減額されることになる。個人別では、たとえば球界最高年俸の近鉄中村は、1日あたり167万円減額となる。
スト決行の強い姿勢を示した選手会に対し、機構側も厳粛な態度で対処することになった。6日、臨時実行委員会が都内ホテルで行われ、近鉄とオリックスの合併が承認された。合併は球団経営上の問題とし、8日のオーナー会議でも承認される見込みだ。またストについても適正ではないと判断、各球団から選手会への損害賠償請求も視野に入れて対応することになった。一方で選手会と話し合いに応じる姿勢も見せ9、10日に協議交渉委員会を行うことを申し入れる。
実行委員会が慌ただしい動きを見せた。選手会の臨時運営委員会の報告がファクスで寄せられ、対応を協議。話し合いは午後1時から同5時20分まで続いた。途中、午後3時半には根来泰周コミッショナーも加わった。予定されていた合併承認の流れは変わらなかった。実行委員会の豊蔵一議長(セ・リーグ会長)は「予定通り両球団の統合は実行委員会として承認することとしました。この案件は9月8日のオーナー会議にかける」とき然とした態度で語った。
選手会のスト予告については「中止するようお願いする方針。そのため、必要に応じて誠意を持って交渉に当たりたいと思います」と話した。ただし「両球団の統合の凍結を求めて行うストについては、適正と思われない。場合によっては実施された場合、損害賠償も視野に置いてことにあたる予定です」と断固たる姿勢を示した。「統合についての延期、中止は本来的にストの正当な目的に当たらない」というのが理由だ。
損害賠償請求の判断は、各球団にゆだねる。「各球団で事情が違う。それぞれで検討することになる」と語った。形式としては各球団からそれぞれの選手会を相手に行うという見方を示した。ロッテ瀬戸山代表は「損害はウチは1試合5000万円と考えています」、中日伊藤代表は「シーズン席で1試合1億円」と計算。ヤクルト倉島常務は「スト期間の損害額をこれから計算し、損害賠償請求を行います」と明かした。
だが、それが最悪の展開であることは明白だ。合併の1年凍結はできないが、交渉に応じる姿勢を見せた。「こちらからなるべく早く行うように申し入れる」とした。形式としては8日のオーナー会議後、9日か10日に協議交渉委員会を開くことになりそうだ。「タイムリミット」まで攻防は続く。
合併承認にこぎつけた両球団首脳は対照的な表情だった。オリックス小泉球団社長は「オーナー会議で承認をいただき実務的に実際の統合まで詰めていきたい」と語ると足早に会場を後にした。一方、近鉄小林球団社長は「やっと承認していただけたかと。おかげさまでということです」と笑みをかみ殺した。新球団で臨む新人ドラフトには承認を得るべく「4巡目以降の参加」まで譲歩した。セ側の反発に遭った小泉球団社長は「妥協の産物です」と話し近鉄足高球団代表も「(4巡目以降の案は)用意してなかった。キツい方ですね。小泉さんの大英断でしょう」と話していた。
合併承認にあたり両リーグ会長と当該球団を除く、他球団が「承認」とした中で唯一「棄権」の形をとったのが広島だった。非難も覚悟の上での決断は12球団で唯一、独立採算制をとる市民球団の特性からだ。「広島の政官民の皆さんに支えられていただいている。親会社がない我々は地元の支持がなければ経営は成り立たない。地元の方々が疑問や危機感を抱く合併を承認することはできなかった」と鈴木清明球団副本部長は苦渋の決断までの経緯を話した。
「反対」としなかったことには「野球界、野球機構の一員でもあるし、合併自体を反対することはできない。これまで大筋で了承してきた経緯もある」とし、棄権の理由は席上で明確に述べた上で「理解してもらったと思う」と話した。
「もう1つの合併」を進めるパ・リーグは、8日の臨時オーナー会議で西武堤オーナーらが具体案を説明する予定だ。この日は球団名など具体案は説明されず「8日のオーナー会議で説明があるということでした」(豊蔵セ・リーグ会長)とオーナー会議に一任する意向を示した。現在、産業再生機構の活用で揺れているダイエーとロッテが有力で「8日のオーナー会議でもう1つの合併の話があると、西武とロッテから出てきた」(ヤクルト倉島球団常務)とパ3球団の動向がポイントになる。いずれにしても「もう1つの合併」が実現するか否かが、リーグ再編のカギを握るのは間違いない。
中日白井文吾オーナーは6日、スト回避に向けて8日に行われるオーナー会議ではオリックス、近鉄の合併承認を先送りするべきとの意向を示した。「ストは極めて重大な事態だ。選手会は交渉してくれと言っているのだから、応じるべき。ケンカをすれば双方に犠牲が多過ぎる。(8日のオーナー会議では合併は)直ちに承認はしないということだ」と話した。
実行委員会では、野球協約第36条にある新参加球団に課せられる加盟料(60億円)、保有者変更などに伴う参加料(30億円)の改正も見直す方向で意見の一致をみた。豊蔵議長は「60億円と30億円は、それ以内で必要と認めた都度ちょうだいする」と話した。各球団で分配していた従来のシステムを廃止し、野球振興費をはじめ、57条の選手の救済措置に必要な資金として活用することが協議された。ロッテ瀬戸山球団代表は「60億円以下にして、分配を10年たったら(当該球団に)返却するようにしたらどうか」と意見。阪神野崎球団者社長も「保証料として預かっておいて、仮に解散となった時などに返却、選手救済に使うという案もあった」と話した。今後は8日のオーナー会議に諮られた上で改正が行われる。
根来コミッショナーは所用で実行委員会入りが遅れたが、選手会のスト決議に「権利を持っているんだからしょうがないだろう」と法曹界出身らしく答えた。その上で「労組として認めるにしろ、認めないにしろ、違法ストというのもある」と釘を刺すことも忘れなかった。会議後は報道陣を避けて足早に会場を後にした。
近鉄小林球団社長は、3年後を検討していた球団経営からの撤退時期が早まる可能性を否定しなかった。実行委員会で球団経営からの撤退について問われ「早期の場合もありますし、遅くなる場合もあります」と説明したという。具体的な時期については「(経営再建中の)大阪ドームとの関係などがあるので、それがクリアできたらということ」とし、「3年より早まることも?ゼロではない。いずれはそうなるでしょう」と話した。
オリックス、近鉄の合併球団のドラフトについては、4巡目から参加することが承認された。当初、フル参加を希望していた両球団だが、セ各球団から非難されたこともあり継続協議となっていた。豊蔵議長は「一応、ドラフトには参加することになった」と説明した。大学、社会人が逆指名できる自由獲得枠は回避となり、4巡目からの“条件付きでの参加”が認められた。
西武・ロッテ合併も。西武・堤義明オーナーは6日、東京・港区の東京プリンスホテルでロッテの重光昭夫オーナー代行、濱本英輔球団社長と極秘に会談。両球団の合併について具体的な提案が行われた模様で、8日の臨時オーナー会議までに合併成立の可能性が出てきた。5対5の10球団2リーグ制がにわかに現実味を帯びてきた。
午前10時前、東京・西新宿のロッテ本社を出た重光オーナー代行は、堤オーナーの待つ東京プリンスホテルに向かった。約1時間半の会談を終え、ホテルロビーで報道陣に囲まれると表情が強張った。「西武関係者と会ったのか」という質問に「いいえ」と口をつぐみ、8日のオーナー会議で新たな合併が成立する可能性を聞かれると「それはその時にまたお話しします」。濱本球団社長も動揺を隠せず「来られても話をする種はない。広報を通してください」と言い残し車に乗り込んだ。ロッテ首脳が立ち去ってから約1時間後、堤オーナーは「さあ、ちょっと話せないねえ」と言いつつも重光オーナー代行との会談を否定せず「8日のオーナー会議に出席しますから」と合併成立の可能性をにおわせた。
ついにパの巨頭が動いた。7月7日のオーナー会議で近鉄、オリックスに続く新たな合併の動きを明言した堤オーナーは、ダイエー、ロッテの合併交渉を注意深く見守ってきた。8月6日にはロッテとダイエー両本社の関係者が会談したもののダイエーが拒絶。その後、ダイエー本社の産業再生機構活用問題が持ち上がり、機構入りを前提とした合併成立に望みを託していた。しかし、ダイエー本社の高木社長は再生機構入りを拒否。球団の単独保有の方針を貫き、ロッテとの合併は事実上消滅した形となった。
堤オーナーに残された選択は当事者として他球団との合併に動くことしかない。日本ハムは単独保有を早くから明言しており、ロッテとの合併が唯一の道だった。この日の会談では合併比率、本拠地など具体的な条件が話し合われたものとみられる。ロッテは51%以上の球団株式保有を希望しているといわれる。堤オーナーが関係者に「西武ドームが本拠地じゃなくなるかもしれない」と語ったとの情報もあり、合併が成立した場合はロッテを主体とし本拠は千葉マリンとなる可能性は高い。この日の実行委員会後、ヤクルト・倉島球団常務は「パの複数球団から話があった。球団名?ロッテさんと西武さんからそういう話がありました」とロッテ、西武が8日のオーナー会議で合併について何らかの意思表示をするとの発言があったことを明らかにした。
西武、ロッテの合併が成立すれば、来季10球団2リーグ制となることは濃厚。巨人のパ移籍が現実となる可能性は高い。激動の9・8。球界再編は大詰めを迎えている。
労働組合・日本プロ野球選手会の臨時運営委員会が6日、神戸市内のホテルで行われ、全会一致でプロ野球初のストライキ権行使が決まった。10日午後5時までに近鉄、オリックスの球団統合が1年間凍結されない場合、11日から今月中の毎週土日の全公式戦30試合においてストを行うと日本プロ野球組織(NPB)側に文書で通告した。10月以降もスト継続の可能性を残しており、プレーオフ、日本シリーズ消滅の危機に直面することになった。
壇上に並んだ古田会長以下、選手会長の表情は一様に硬かった。日本球界初のスト権行使に踏み切った決断の重さを噛み締めるように、古田会長は言葉を絞り出した。
ストは1、2軍全選手一斉のもので、11日を決行日とし、毎週土日に行うというもの。10日午後5時までに近鉄、オリックス球団統合の1年間凍結が行われなければ、1、2軍合わせて最大41試合でスト権を行使する旨を臨時運営委後、NPB側に文書で提出した。
午前11時30分から行われた運営委は予定の2時間をオーバーする3時間30分の激論だった。近鉄・礒部会長から無期限ストが提案され、オリックスが同調。ペナントレースで首位を走るダイエー、中日が「無期限では今までやってきたことの意味がない。期限をつけて欲しい」(中日・井端選手会長)と要望、ヤクルトからはスト回避の意見も出た。そんな中、オリックス・三輪選手会長が「こんな思いはさせたくない」と涙ながらに訴えた。その姿に会場はしばらく静まり返り、古田会長以下、12球団選手会長がスト実施で一致した。
週末限定としたのは、合併凍結した上での労働条件や新規参入要件の緩和、ドラフト改革を建設的に話し合うため。しかし、選手会がスト回避条件とする「1年間の合併凍結」実現は難しい。この日都内で行われた実行委員会で近オの合併が承認され、8日のオーナー会議での承認も確実だ。また、選手会は3日の東京地裁決定で労組と認められたことから、労働条件で不利益をこうむる合併としてストの正当性を主張した。しかし機構側の認識は正反対で、9日にも行われる労使間の協議交渉委員会が紛糾するのは確実。27日に再び臨時運営委が開かれることが決まったが、松原事務局長は「日本シリーズ、プレーオフ(のスト継続)について話す」とし、それまでに進展がない場合、無期限ストという最悪の展開に発展する。古田は実行委の決定を聞いた上で「みんなで決めたことに沿ってやっていく」と不退転の決意を示した。球界再編紛争は出口の見えないドロ沼化の様相を呈してきた。
機構側が損害賠償を求めうるとしている点について、選手会・山崎顧問弁護士は3日の東京地裁決定で労組として認定されたとし「合併球団の選手分配方法を選手会の承諾なしに決定し、近い将来大量解雇に発展する可能性があるのは労働条件に関する事項に向けられている。損害賠償請求される理由はない」と話した。また、ロックアウトに関して古田会長は「ロッカーや球場が使えないのは仕方がない。ただ、寮を出されるのは生活の根幹の部分で当てはまらない」との見解を示した。
プロ野球12球団の代表者による臨時実行委員会が6日、東京・港区の新高輪プリンスホテルで行われ、近鉄とオリックスの合併を正式に承認した。8日の臨時オーナー会議でも承認されるのは確実で、選手会のスト突入は避けられなくなった。こうした状況の中、機構側は「違法スト」と糾弾し、ストが決行された場合は損害賠償を請求する意向を固めるなど強気の姿勢を示した。
実行委では棄権した広島を除く、11球団が近鉄、オリックスの合併を正式に承認。同時に選手会のスト突入が確実となったが“徹底抗戦”で臨むことを確認された。選手会が特別委員会での議決なしに合併を承認しないように求めた仮処分の申請が地裁、高裁ともで棄却された背景もあり、豊蔵議長は「両球団の合併凍結を求めてのストライキは目的において不適性と言わざるを得ない」と糾弾。賃金闘争など労働条件的な問題ではなく、経営的事項を理由にした今回のストを「違法スト」と位置付けた。
さらに近鉄・小林球団代表が「5億、4億もらっている人を労働者とは認められない。完全な事業者」と主張するなど、機構側はあらためて選手会を労働組合として認めないことを確認。このため、ストが決行された場合には損害賠償を請求することで全会一致した。ただ損害の格差が球団によって生じるため、損害賠償は各球団がそれぞれの球団の選手会に求めていく意見が出された。
機構側は、選手問題担当顧問の中日・伊藤修球団参与が「選手会に銭があるかどうかは火を見るよりも明らか」と話すように、選手会の賠償能力に疑念を抱いている。このため9日にも開催される選手会との協議・交渉委員会でスト回避を強く訴える方針。それでもスト突入は避けられそうにない情勢だけに、根来コミッショナーは「ストをやったからといって、合併をやめますという訳にはいかない。親会社の株主が“もうやめる”と言って球団が解散することにでもなれば(選手は)どうするのか。ストをやってどこで折り合いをつけて、収拾しようとしているのか分からん」と厳しい口調で話した。スト権行使を決めた選手会に対して1歩も引かない機構側。日本球界の“労使闘争”は泥沼化の様相を呈してきた。
オリックスと近鉄合併の議決で、広島だけが棄権した。背景には、市民球団として存続するチーム事情がある。鈴木球団副本部長は「我々はファン、地元の声を無視できない。親会社を持つ他球団のスタンスとは違う。ただ法的に機構もきちんとしてきている。反対とは言えないから、あえて棄権させてもらった」と理由を説明した。まだ、明らかにされていないもう1組の合併については「球団数を減らすためのものならば、当然反対する」と話した。
オリックス・近鉄が統合してできる新合併球団の新人ドラフト参加が認められた。ただし、自由獲得枠、ドラフト3巡目までの指名は見送り、4巡目からの参加。セ・リーグ各球団が猛反発していたこの問題については、この日もオリックス・小泉球団社長がドラフト全面参加を主張。しかしセ側の反対が強く、協議の結果、4巡目以降の参加で折り合いが付けられた。出席していた近鉄・足高球団代表は「紆余曲折があった。非常に厳しい結果です」と話した。
ストライキの展開次第では、最多でセ・パ30試合が開催されないことになる。再試合が行われない場合の、マジック点灯や優勝の行方のシミュレーションを行ってみた。
パはストなら各チームの試合数が4試合ずつ減少。現在、3位確定マジック3の西武も131試合で計算すると2位以内が確定しプレーオフ進出ということになる。これは残り試合が11から7に減ったことで全敗しても70勝60敗1分け、勝率.538となり、ダイエーを除く4球団に勝率で上回るため。一方、3位を争うロッテと日本ハムは残していた直接対決2試合(11、12日)が消滅。3位のロッテは全勝しても67勝61敗3分けで勝率.523。4位の日本ハムは残り10試合で9勝1敗なら68勝61敗2分けで勝率.527とロッテを上回るため、日本ハムにM9が点灯していることになる。
スト決行なら各チームの試合数が6試合減の134試合。2位の巨人は中日との直接対決が2試合減るため自力優勝が消滅してしまう。巨人が残り15試合に全勝しても78勝53敗3分けで勝率.595止まり。中日が巨人戦4試合を除く他カードで全勝した場合の80勝51敗3分け、勝率.611を上回ることができないため。3位のヤクルトは中日との直接対決が8試合と変わらないため、自力Vは消滅しない。中日のマジック最短点灯日は8日のまま。条件も中日が巨人に○○、ヤクルトが阪神に●●と変わらない。140試合ならM15だが、試合減に伴い9個減らせば優勝できる計算になる。
オリックスと近鉄の球団合併をめぐり労組・日本プロ野球選手会の古田会長と両球団の選手会長が、オーナーと選手会による特別委員会での議決なしに合併を承認しないよう日本プロフェッショナル野球組織(NPB)に求めた仮処分申請の即時抗告審で、東京高裁(原田和徳裁判長)は6日、選手会側の抗告を棄却する決定をした。原田裁判長は決定理由で「球団の統合承認は、選手契約に関する条項の改正を要しないため、プロ野球協約上、特別委の議決事項に当たらない」と判断。選手会が団体交渉権の確認を求めた抗告については審理を分離し、決定を先送りした。東京地裁が3日に今回とほぼ同じ理由で申し立てを却下したため、選手会側が即時抗告していた。
野球協約で定められている新規参入の加盟料60億円、株式譲渡に伴う参加料30億円の見直しが実行委員会で決まった。「当面は60億円、30億円の範囲内で、実行委員会が必要と認めた額を頂戴しようということになった」と豊蔵議長。現行の協約で日本野球機構や各球団に均等分配されると規定されている使途についても、野球振興や選手救済のために活用されることになった。実行委では1球団が破産した場合、選手年俸などを補填するために必要な20億円程度に減額し、資金をプールする改正案で大筋合意している。8日の臨時オーナー会議で承認されれば、11月開催予定のオーナー会議で協約を改正するという。
日本球界初のスト権行使という歴史的決議がなされた。労組・日本プロ野球選手会は6日、神戸市内のホテルで12球団の選手会長らを集めて臨時運営委員会を開催。オリックス、近鉄の合併の1年間凍結が10日午後5時までに認められない場合、今週末の11、12日のスト突入を決めた。ストはその後も9月中の土日に実施されるが、経営側と妥協点が見つからない場合、10月の日本シリーズなど今後へさらに影響が出るのは必至だ。
70年にわたるプロ野球史上初の決断。古田会長の淡々とした口ぶりが、逆に事の重大さを際立たせた。
苦渋の決断だった。この日、神戸市内のホテルに12球団の選手会長と副会長ら30人が集合。話し合いは3時間半にも及んだが、日本初の『スト権行使』で全員の意見が一致した。会議で口火を切った近鉄・礒部会長は「闘うのであれば、最後まで」と『無期限スト』を主張。他のパ・リーグ2球団の選手会長もほぼ同意見で続いたが、セ・リーグの首位を走る中日・井端会長は、日本シリーズを視野に入れ「無期限は困る」と反対した。広島・西山会長やヤクルト・真中会長も「なるべくストは避けたい。やるなら短めで」と要望。12球団の様々な思惑が絡み合った末「ファンの方に迷惑がかからず、1番分かりやすい方法」(古田)として、世間の関心が集まりやすい土日にストを行うことでまとまった。
『週末スト』は12球団一斉に実施。スト権が全選手の98%の賛成で確立していることもあり、2軍のイースタン、ウエスタン両リーグでも決行する。
選手会はこの日、オリックス・近鉄の合併の1年間凍結と合わせて、新規参入球団の加盟料の撤廃や、ドラフト改革などの球界再編案を改めてコミッショナーらに提案した。10日午後5時を回答の最終期限とし、回答がない場合に11日からのスト突入を予告。ただこの日の臨時実行委員会で、経営者側はオリックス、近鉄の合併を承認し、8日のオーナー会議でも最終承認されるのは確実。10日までの僅かな時間で経営者側が、翻意する可能性は極めて低く、スト突入は確定的だ。
選手会の松原事務局長は「こちらは話し合いの姿勢を持ち合わせている」とし、今後も団体交渉で経営者側に翻意を求める考え。しかし、毎週金曜日の午後5時までに妥協点が折り合わない場合は、週末にストを決行する流れになる。10月以降については27日に再度臨時運営委員会を開いて協議するが、当初は無期限ストに難色を示した中日・井端も会議が終わると方向転換。「せっかく頑張ってきたけど、日本シリーズもやむを得ないと思う。全て古田会長に任せる」と、選手会が一致団結して行動することを強調した。
運営委員会と会見を終え宿舎に戻った古田は、実行委側から9日に団体交渉にあたる協議交渉委員会を開くことを提案された。「みんなで決めたことなんで、しっかりやっていきたい」と古田。未曽有の混乱に陥った球界は、先のみえない深い霧の中、着地点を探していく。
日本球界初のストライキ断行を決議した労組・日本プロ野球選手会の古田敦也会長は、臨時運営委員会を終え、神戸市内のホテルで会見。「様々な意見があると思うが、自分達が戦わなければ、ファンにも失望感を与えてしまう」などと、苦渋の決断に踏み切った心境を語った。
選手会はスト期間中、経営者側による“ロックアウト”も想定している。「ロッカーとか球場が使えないのは理解している」と古田会長。合宿所からの退去もないとみている。練習場の提供などについては、各球団選手会がそれぞれ直接交渉するという。対する各球団は、ファン=世論に配慮する形で、ロックアウトを行わない方針で一致している。「ロックアウトをするつもりはまったくない」(巨人・清武球団代表)などと口を揃えた。
選手会がストに突入した場合の損害賠償について、横浜の峰岸進球団社長は、早くも顧問弁護士と検討に入る方針を明らかにした。「阪神、広島、中日の6試合がストにかかるのはウチだけ。欲目に見て損失は3億から5億円」。ただストの間の施設のロックアウトはせず、練習場の使用もOKとした。
オリックスと近鉄の合併をめぐり、労組選手会の古田敦也会長と両球団の選手会長が、オーナーと選手会による特別委員会での議決なしに合併を承認しないよう、日本プロ野球組織に求めた仮処分申請の即時抗告審で、東京高裁(原田和徳裁判長)は6日、選手会側の抗告を棄却する決定をした。同裁判長は「球団の統合承認は選手契約に関する条項の改正を要しないため、プロ野球協約上、特別委の議決事項に当たらない」との判断を示した。選手会が団体交渉権の確認を求めた抗告については審理を分離し、決定を先送りした。東京地裁決定も9月3日、今回とほぼ同じ理由で申し立てを却下していた。
オリックスと近鉄の合併をめぐり、労組選手会の古田敦也会長と両球団の選手会長が、オーナーと選手会による特別委員会での議決なしに合併を承認しないよう、日本プロ野球組織に求めた仮処分申請の即時抗告審で、東京高裁(原田和徳裁判長)は6日、選手会側の抗告を棄却する決定をした。同裁判長は「球団の統合承認は選手契約に関する条項の改正を要しないため、プロ野球協約上、特別委の議決事項に当たらない」との判断を示した。選手会が団体交渉権の確認を求めた抗告については審理を分離し、決定を先送りした。東京地裁決定も9月3日、今回とほぼ同じ理由で申し立てを却下していた。
NHKと日本テレビ、TBSは6日、日本プロ野球選手会が9月中の毎週土日にストライキを決行する方針を決めたことを受け、スト決行予定日に計画しているプロ野球の全国中継を他の番組に差し替える検討を始めた。
NHKは11日に巨人−ヤクルト戦の中継を予定。「関心を持って事態を見守っている」(番組広報部)とし、試合が行われれば予定通り放送するが、スト突入に備えて差し替え番組の検討を進めている。NHKは18日に中日−巨人戦も予定している。12日に巨人−ヤクルト戦を放送予定の日本テレビは「10日午後5時までのオーナー会議側の回答結果を見て決める。ストであれば番組を差し替え、そうでなければ予定通り中継を行う」(宣伝部)としている。同局は25、26の両日に放送予定の巨人−阪神戦も同様の対応を取る。TBSは19日に中日−巨人戦を予定。代わりの番組を選ぶ作業を進めている。フジテレビ、テレビ朝日ではスト決行の予定日に中継計画はない。
日本プロフェッショナル野球組織
コミッショナー 根来泰周殿
オーナー会議議長 滝鼻卓雄殿
実行委員会議長 豊蔵一殿
平成16年9月6日
日本プロ野球選手会会長 古田敦也
球団統合・再編問題に関する当会の要求と今後の行動方針
当会は、本日臨時運営委員会を開催し、同会決議に基づいて、貴組織に対し、以下のとおり要求いたします。
以上
パ・リーグのもう1つの球団合併について球界首脳の一部が既に「時間切れ」と判断していることが6日、分かった。合併後の選手救済などの事後処理に時間を要するためで、8日の臨時オーナー会議を期限としているパ側は、西武・堤義明オーナーらが合併に向けた最後の動きを水面下で展開しているが、事実上、来季はセ6・パ5の変則2リーグ制となる公算が高まってきた。
この日の実行委で、西武・星野、ロッテ・瀬戸山両球団代表が「オーナー会議で説明したい」と口をそろえた『もう1組の球団合併』−。パ側は8日の臨時オーナー会議を最終的な期限としていたが、実際には既にタイムリミットを越えていたようだ。
「どうやら時間切れのようだ。今シーズン(中の合併、球界再編)は無理かもしれない」。こう漏らしたのはある球界首脳。たとえ臨時オーナー会議で合併の具体像が示されたとしても、時間的に来季の開幕までには到底間に合わないという判断だった。事実、オリックスと近鉄の球団合併が明らかになったのは6月中旬。しかし、3ヶ月が経過しようという現在も球団合併の形態、さらに他球団にも影響する選手の雇用確保を前提とした振り分けの問題、さらに選手会の猛反発などもあり、ようやくこの日の実行委で承認されている状態。加えてもう1組の合併となれば、同様の問題が発生して、年内での承認すら怪しくなってくる。
既に来季の公式戦の日程調整なども棚上げにされている状態で、このままさらに先送りは許されない状況だ。現在も西武・堤オーナーらが中心となって、新たな合併を調整しているが、この動きについても球界幹部は「堤さんも一体どこまで本気なのか。(実体が)見えてこない部分がある」などと一向に具体化しない現状に、不信感を募らせている部分もある。
既に「時間切れ」となれば、最低来季1シーズンは現状のセ6・パ5球団のまま変則で2リーグ制維持、来季中も話し合いを継続させ、再び球界全体を整備することになる。しかし、パの一部球団では「5球団のパ・リーグでは経営が立ちゆかない」という声もあり、依然として予断を許さない状況が続きそうだ。
ようやく合併承認にこぎつけたオリックス・小泉隆司と近鉄・小林哲也両球団社長はともに「やっと承認いただけた」と話したが、表情に笑顔はなかった。選手会からのスト予告について、小林社長は「4億円、5億円もらっている人が労働者かと…」ともらし、小泉社長は「裁判所が下した判断。統合についてストは打てない」。小泉社長は選手会の挙げた『合併の1年間凍結』の条件に「それはない」と断言した。
違法ストだ!12球団の代表者による臨時実行委員会が6日、都内のホテルで開かれ、選手会がストライキを実施した場合、各球団が損害賠償請求を行うことで一致した。会議前には東京高裁が近鉄、オリックスの合併差し止めの即時抗告を却下。それを受け、経営者側は、要求がストの正当な目的に当たらないと選手会を非難した。
オリックス、近鉄の合併交渉の発覚以来、常に意見が分かれていた球団側が一枚岩になった。『違法ストだ!』。実行委の途中にファクスで送られてきた選手会のスト通達に対し、各球団が損害賠償の請求を武器で臨むことで一致団結した。
「ストライキは多くのファンが野球を楽しむ機会を失うものであり、また(球団合併問題は)ストの正当な目的に当たらない。各球団が損害額に応じて賠償請求していくことになるでしょう」。豊蔵一議長(セ・リーグ会長)が強い口調で説明した。午前中には選手会が東京高裁に行った合併差し止めを求める仮処分の即時抗告が却下。“法の支持”が経営者側をいっそう強気にさせた。
これまでは選手会を労組と認定するか、その解釈が問題とされていた。前日には横浜・峰岸進球団社長が「団体交渉は認められたが、労働者性が認められた訳ではない」と主張。だが、この日の会議では労組の解釈は議題に上がらず、球団合併は「あくまでも経営サイドの経営権の問題」で見解が一致した。各球団から出された顧問弁護士の意見を集約し、不適正なストライキに対し、損害賠償で対処することを決めた。「球場に入る分を含めると、ストによる損失額は1試合5000万くらい」(ロッテ・瀬戸山隆三代表)。一方、週末(18、19日)に本拠地での巨人戦が予定されていた中日は「シーズンシートだけで1億円弱」(伊藤一正代表)とスト実施の場合の損害を算定している。巨人戦となると放映権に入場料収入など3〜4億円の利益が見込めるといわれているだけに、各球団とも早急に損金の試算に入った。
9日に協議交渉委員会(団交)が開かれ、選手会との話し合いが行われるが、選手会の要求が合併の1年凍結だけに、決裂は必至。「何とか話し合って解決したいが、選手会も自制心をもって対応していただきたい」(豊蔵会長)。日本球界初のスト決行は、経営者側の賠償請求で泥沼化は免れなくなった。
球界再編の大詰めとなる8日の臨時オーナー会議を直前に控えた6日、西武・堤義明オーナーとロッテ・重光昭夫オーナー代行、濱本英輔球団社長が都内のホテルで極秘会談を行った。オリックス、近鉄に続く第2の合併としてロッテ、ダイエーの組み合わせが有力視されながら進展がない中、キーマンが直接動いた形。この日、ある球界首脳はスポーツ報知の取材に対して「8日、堤オーナーは“ロッテ、ダイエーの合併が進行中”と明言する」と話しており、自ら第2の合併の全容を明かすことになりそうだ。
堤オーナーとロッテ首脳の会談は午前10時半から約1時間に及んだ。先に出てきた重光オーナー代行は「西武と会った?いいえ。ビジネスの話?まあ、そういう感じかな」とはぐらかし、濱本社長も「聞かれても話をするタネはない」と言い、車に乗り込んだ。それから1時間後、姿を見せた堤オーナーは「ロッテ?さあ、それはちょっと。8日の(オーナー)会議には出ますから」と言い残し、ホテルを後にした。
7月7日、堤オーナーの「もう1つの合併が進行中」との発言から大きく動き出した再編問題。ロッテ、ダイエーの組み合わせが有力視されながら、動きが止まっている。「そのことを8日の会議で説明するはず。“両球団の合併は進んでいるが、できれば9月中にもう1度、オーナー会議を開催して欲しい”そう言うのではないか」とある球界首脳は説明、そのための意見調整を行ったと見られる。時間切れを叫ぶセ・リーグからの反発は必至となっており、第2の合併の先行きは不透明だが、いずれにしても堤オーナーの発言が注目される。
日本プロ野球史上初のスト決行−。労組・日本プロ野球選手会は6日、神戸市内のホテルで臨時運営委員会を開いた。10日午後5時までにオリックス・近鉄の球団合併を1年間凍結しない場合、11日から9月中の毎週土、日曜日の2軍戦を含む全ての公式戦でストライキを行うことを決めた。日本プロ野球組織(NPB)も同日、都内のホテルで臨時実行委員会を開催。10日に協議・交渉委員会を選手会に申し入れるが、それでもストが決行された場合、損害賠償請求を検討することで12球団が合意した。
選手が自ら血を流すことを決断した。首位争いやプレーオフなど、それぞれのチーム状況を度外視して12球団の選手会が団結した。予定より1時間半長い3時間半にわたる会議を終え、午後3時10分、古田会長はスト決行を発表した。記者会見には、ヤフーBBでの試合へ移動したオリックス、日本ハムを除く10球団の選手会長も列席し、一致団結を強調した。
「もし球団が削減されるようならストを行います。9月中の土、日を視野に入れています」。決然とした厳しい表情で古田会長は球界再編阻止への“最後の手段”決行を言い放った。日本プロ野球組織(NPB)に対して至急ファクスしたという文書を配布。それによると、近鉄・オリックスの球団統合を1年間凍結し、その是非、労働条件、新規参入要件の緩和、ドラフト改革、収益分配策について、協議・交渉を要求。その要求が10日の午後5時までに認められない場合に、11日からの土、日曜の時限スト決行となる。10日に期限を置いたのは、第2の合併など、何が飛び出すか分からない8日のオーナー会議を配慮してのものだ。
運営委員会では、各球団が選手会でまとめた意見を持ち寄り、ストやむなしの結論に達した。現在、首位に立っている中日、ダイエーも反対しなかった。近鉄の礒部選手会長から無期限ストを要求する意見が出たが、セ・パ全12球団の試合があり、最も集客のある土、日曜の決行を決めた。労使交渉によって妥結するまで毎週行われる。スト対象試合は9月だけでも30試合。10月に入れば、プレーオフや日本シリーズまで対象になるが、10月以降については、27日に開催する臨時運営委員会で決めるという。
既に販売済みのチケットの払い戻しは濃厚だが、試合を楽しみにしているファンを裏切る形になる。古田会長は「ここで戦わなければいけない。何もしないでファンに失望を与えたくない。ぜひ応援していただきたい」と訴えた。会見を行っている最中に、東京で行われた実行委員会でオリックス・近鉄の統合が承認された。不退転の会見から3時間後、大阪市内のホテルでその報を聞いた古田会長は「その結果にかかわらず、今日決めたことを実行していきたい」と表情を変えなかった。
無期限ストを主張していた近鉄・礒部公一選手会長は、選手会が時限ストを選択したことに対し「近鉄の選手会として意見を言ったが、話し合ってこの形がベストと納得した」と快く応じる姿勢を見せた。チームでは5日に1、2軍個別のミーティングを開催。合併の当該球団として、徹底抗戦の構えで意思統一した。この日の話し合いでは、近鉄案への賛成意見も出たが、最終的には、長期ストに反対する他球団との折衷案で落ち着いた。
ただ、9月中に事態が収拾しない場合は、ストが長期化する可能性も残っている。「個人的には(10月以降のストも)あるかもと思うが、また27日に話し合ってからですね。首位争いをしているチームには迷惑をかけますが、今後の野球界のためなんで」首位を走る中日、ダイエーへの気遣いを見せながらも、不退転の決意は変わらない。
臨時実行委員会では、オリックスと近鉄の合併が正式に承認された。この中で広島はファンの理解が十分に得られていないとして、採決を棄権し、残る11球団の賛成で可決する形となった。
会議に出席した広島の鈴木清明球団副本部長は「私達は市民球団であるため(ファンである)市民の支持がないと球団経営は成り立たない。ですから賛成をしかねるということ」と説明。地元のファンの生の声、インターネットの書き込み、メディアの反応などを元にこの日の朝、球団として態度を決断した。
プロ野球参入への障害となっていた加盟料、参加料も緩和されることになった。野球協約では、これまで新参加球団に対する加盟料は60億円で、既存球団の譲り受けまたは球団保有者変更にともなう参加料は30億円となっていたが、豊蔵議長(セ・リーグ会長)は「60億円、30億円以内で、必要と認めた金額を支払う」と話し、これまでの金額をリミットに設定。状況に応じて金額を決めていく。また、加盟料、参加料は各球団に均等に分配されるとしていたが、これも「配分しないで野球振興や、選手救済など必要な資金として活用したい」と、保証金のような形で機構にプールすることで意見が一致した。8日のオーナー会議で承認される見込みで、11月の同会議で野球協約を改正する。
オリックス 臨時実行委員会で近鉄との統合が承認されたことを受け、宮内義彦オーナーは東京・港区の自宅前で「小泉(球団)社長から、簡単に話は聞きました。ありがとうございました」正式承認へ残すは8日のオーナー会議だけになった安心感からか、報道陣に向かって一礼。ただ、選手会がスト権行使を決定した動きについては「ここ(自宅前)ではコメントしないことにしていますから」と口を閉ざした。
経営者サイドでは具体的なスト計画を明らかにした選手会側との歩み寄りの道を模索する一方で、決裂した場合には試合中止の損害賠償請求を検討していくことで意見をまとめた。この日の臨時実行委員会で12球団は、労使間の話し合いの場となる「協議・交渉委員会」を9日に開催するよう提案。選手会側が求める労働条件、球団新規参入要件の緩和などについて説明と協議を行うことを決めた。ただ、オリックスと近鉄の合併を正式承認したように、最大の争点となる「合併の1年間凍結」は議論の余地なしとの姿勢だ。
選手会による仮処分申請が東京地裁、同高裁でも受け入れられなかったことを理由に、豊蔵議長(セ・リーグ会長)は「球団統合の延期、中止はストの正当な理由には当たらない」と判断。ヤクルト・倉島球団常務も「(ストに)正当性がないのなら、それぞれの球団で選手会に損害賠償請求しようとなった」と12球団としての総意を明かした。スト決行なら中止になった試合分の入場料収入や放映権料など損害額を各球団が個別に計算し、最終的に12球団として請求訴訟に踏み切る方針を固めている。
強攻策も用意している経営者側だが、もしストが決行されても球団所有施設から選手を締め出す「ロックアウト」は行わない考え。9日の協議を前に、いたずらに選手会サイドを刺激するのは避けた方が得策との判断も働いたようだ。「統合反対のストは違法スト。だけど、ストは避けたいから最後まで話し合う」と巨人・清武球団代表。日本球界初のストを水際でくい止められるか、せめぎ合いはぎりぎりまで続く。
選手にとってストは文字通り「痛みの伴う」決断となる。野球協約の統一契約書様式の第七条には「球団は野球活動休止一日につき参稼報酬の三百分の一を減額することができる」と賃金カットがうたわれている。球界最高俸の近鉄・中村の場合、1日で166万円になる。古田会長は「ロッカーや球場が使えなくなることや年俸が1日につき300分の1(減額)もみんな理解している」と全選手に説明済みであるとした。
最もリスクを背負わされるのは1試合で1億5000万円ともいわれる各球団からの損害賠償請求だ。5日には横浜・峰岸進球団社長が、選手会がスト権を行使した場合、球団として損害賠償請求する可能性を示したばかり。これについて選手会の山崎卓也弁護士は「選手会は労働組合として認定されており、大丈夫です」と強調。この日の運営委員会でも各球団の選手会長にそれを説明したという。球団社長の主張とは違う解釈を求められた横浜の三浦大輔副会長は「損害賠償の話は出たが、そういう心配はないということだった」と自分を納得させるように話していた。
セ・リーグの理事会が6日、東京・銀座の連盟事務所で開かれた。巨人・渡辺恒雄前オーナーがパ・リーグ移籍の可能性を仄めかす発言をしたことについて、巨人・清武英利代表から「巨人の公式見解ではない」との説明があった。渡辺前オーナーはパ・リーグで「もう1組の合併」ができて4球団になった場合、5球団ずつの2リーグ制を維持するために、巨人がパに移籍する可能性がある発言をしていた。セの他球団からは疑問視する声があがっていたため、清武代表が前オーナーの発言について説明したもの。出席していたヤクルト・倉島常務は「巨人の公式見解ではない。選択肢の1つの案だということ。現実性があるかないかの話」と話した。清武代表は「前提条件がありすぎて、今すぐにどうこうとは言えない」と説明した。また、この日の実行委員会では巨人からの発言や質問は出なかった。
巨人桃井恒和球団社長は6日、東京・神田の球団事務所で、ストが最大6試合に及んだ場合、公平性を欠くことを理由に、公式戦の「無効」を提案する意向を明かした。実行委員会の報告を受けた同社長は「2試合ならカバーできるが6試合やられたら(公式戦は)なしになると思う。優勝は決められない」との見解を示した。
仮にストが2試合なら再試合は可能だが、6試合となると球場使用などの絡みもあり難しくなる。その場合、対戦相手にもばらつきが生じることに言及し「公平さが失われる。競技スポーツが成り立たなくなる」と指摘した。巨人としては首位中日と2試合あり、直接対決で縮めるチャンスを失ってしまう。逆転優勝の可能性が残されているため、この2試合は致命傷になるからだ。「再試合はやるべきだと考えている」と強調したが、不可能なら無効やむなしを球団として主張する意向だ。また「ストは(球団、選手、ファンに)傷が残るので避けて欲しい。歩み寄る余地はあるから」とした上で、近日中にも高橋由、上原、仁志らチームの選手会役員と話し合う予定で、スト回避を訴えていく。
プロ野球史上初となるストライキ決行となれば優勝争い、個人成績などをめぐり球界の大混乱は必至だ。豊蔵セ会長は全18試合が行われない場合「日程的に再試合は難しい。不可能だろう」と試合数減は避けられないとの見通しを語った。9月の毎週土日全ての公式戦が消滅するとシミュレーションしてみた。セ各球団は6試合減、パは4試合減になる。年間試合数にするとセ134試合、パ131試合になるが、ペナントレース終盤での試合減は優勝争いなどに影響しそうだ。
プロ野球の臨時実行委員会は6日、東京都内のホテルで12球団の代表者が出席して開かれ、オリックスと近鉄両球団の合併を承認した。市民球団の立場から棄権した広島を除く賛成で決まり、8日の臨時オーナー会議で正式承認される。
オリックスと近鉄に続くもう1組の合併やリーグ再編問題については議論されなかった。11月に行われるドラフト会議に合併による新球団の参加を認めることで合意。ただ、自由獲得選手(2人まで)との契約は認めず、4巡目からの指名となる。新参加球団の加盟料(現在60億円)と参加料(同30億円)については、必要と認められた場合には支払いを求めるが、それぞれ60億円以内、30億円以内と改正し、減額の可能性を残すことになった。加盟料、参加料は各球団へ分配せず、野球振興や選手の救済資金に活用するなど使途も明白にする。