ロッテは日本ハムとの決戦モードに頭を切り替えた。この日はスト回避が決まる前から千葉マリンで約2時間半練習を行い、左肩を負傷している主砲ベニーも回復ぶりをアピール。この2連戦にかけるバレンタイン監督はロッカー室にナインを集め「ストは双方にマイナス。できれば避けて欲しい」と訴えていた。選手会長の小坂は「正直ストは覚悟していた。チーム一丸となって集中していきたい」と話した。
ひとまずストライキは回避された。労働組合・プロ野球選手会の古田敦也会長は10日、予定していたストのうち、11日と12日については行わないことを決めた。前日に続き、大阪市内の大阪国際会議場で労使による協議・交渉委員会が行われ、近鉄とオリックスの合併を凍結した場合のシミュレーションを行うことなど6項目で暫定合意。選手会側は、わずかだが近鉄が存続する可能性が出てきたと評価した。交渉期限は17日午後5時まで延びたが、古田会長に笑顔はなし。経営者側も合併凍結はないと発言するなど、18日以降のストも回避できるかは楽観視できない状況だ。
古田会長の表情が、全てを物語っていた。眉間にシワを寄せたまま、ニコリともしない。交渉は午前11時に始まり、午後4時19分に終了。11、12日のストは回避されたが、経営者側と合意に達した訳ではなかった。会見後、隣の席にいた選手関係委員会委員長のロッテ瀬戸山代表から握手を求められると、首を振り、辞退した。「まだまだ何が起こるか分からないんでね」。会見中も、瀬戸山代表から「私達の間には信頼関係がある」と同意を求められるように顔をのぞき込まれたが、頷くことはなかった。
スト回避が決まったのは、交渉期限の午後5時まで1時間を切った4時を回ったころ。古田会長は「近鉄というチームが大阪に残る可能性があるのならば、ストをすることはできないと思った」と話した。決め手は、合意した項目のうち、経営者側が近鉄とオリックスの合併を1年間凍結した場合の、収支を含むシミュレーションを行うことに同意したこと。松原選手会事務局長の「6・6だとどれくらいの損が出るか分析してください」との投げかけに「イエス」の答えがかえってきた。同事務局長は「6・5、6・6、6・6+交流試合ではどうだというもので、大きな作業になる」。ここに、近鉄存続の可能性が、わずかかもしれないが、あると受け取った。シミュレーションは交流試合導入を踏まえたもので、それならば合併を凍結しても近鉄がもちこたえられるとの結果が出ることに望みをつないだのだ。
もっとも、古田会長の期待は早くも崩れることになる。会見中は、瀬戸山代表も伊藤修・実行委員会選手会担当顧問も何も言わなかった。しかし、会見後になって瀬戸山代表が語った。「近鉄とオリックスの合併は覆らない。そのことは古田君も理解しているはず。どういうつもりで言ったのか分からない」。シミュレーションが形式だけのものであることを認めてしまった。この日の交渉が、その場凌ぎであるような印象を周囲に与えた。それならば、選手会はスト延期を決めない可能性すらあった。
帰京しながら、そのことを聞いた古田会長は「そうですか…。会見のあと、誰かにクギを刺されたのかな」と苦笑いするしかなかった。隣にいた選手会の石渡顧問弁護士は「そういうことなら来週の会議が大変になるだけ」と語った。会見では、伊藤顧問が記者の質問を遮るように会見の終了を宣言し、1人だけ先に退出してしまう一幕もあった。両者が合意に達したとは言い難いことは明白だった。
一方で、来季はセ6球団以上、パ5球団以上で行う確認を交わしたことや、新規参入を促進することで合意できたことなどには、選手会側も手応えを感じた。古田会長は「大きな進歩だと思う。参加基準はあるけど、今までみたいに、知らない人は入れないというのはないと思う」と話した。
いくつかの成果は得た。わずかな可能性にかけ、とりあえず目前のストを延期した。しかし、近鉄の存続はやはり無理とのシミュレーション結果が示されたときには「ストの可能性は高くなると思う」と、古田会長。再回答の期限は、1週間後の17日午後5時。「戦う姿勢をやめた訳ではない」と力を込めて言った。
近鉄・オリックス両球団の統合を1年間凍結して、その是非、労働条件、及び以下の1、2について協議・交渉を行うこと。
日本プロフェッショナルや旧組織(以下「NPB」という)と、日本プロ野球選手会(以下「選手会」というは、本日の時点で、暫定的に以下のとおり合意する。
2004年9月10日
NPB
選手会
パ・リーグ週末の注目カード、プレーオフ進出を占う「天王山」は中止危機を回避した。千葉マリンではロッテが日本ハムを迎えて今季最後の直接対決2連戦を行う。4位ロッテと3位日本ハムは、その差0.5ゲームの大激戦。ストが決行されていたら、自動的に日本ハムにプレーオフ進出マジックが点灯するところだった。
週末の主催試合は、今回が今季最後とあり、球場関係者も労使交渉の行方を心配していた。球場関係者は「ストの可能性が高かったので前売りも伸びなかった」と2試合で約1億円の損害を覚悟していたという。11日は当日券を求めるファンが殺到することが予想され、2試合で6万人近い動員は確実。12日には球団初の年間観客動員150万人突破となりそうだ。
オリックスとの合併凍結の可能性が出てきたとする古田会長はじめ選手会の声に、当事者の近鉄小林球団社長はすぐに反論した。凍結の可能性を問われると「残っていない」と真っ向から否定した。「望みを持つなとは言わないけど、再検討をするつもりはない。そういう話し合いではなかった?そうそう」と話した。
また近鉄本社は、合併凍結となれば、グループのリストラ断行という経営戦略の見直しにもつながりかねないだけに戸惑いを隠せなかった。この日、小林社長から報告を受けた山口本社社長は「ストを回避したんやからええんちゃう」とだけ言い残し、車に乗り込んだ。
ダイエー佐藤球団代表は席上、球団の存続を選手会に約束した。選手会側から「これ以上の球団の削減はないのか?」と質問を受け「(オーナー会議での)合意文書の中に『パは5球団以上、セは6球団以上』という言葉がある。うちの保有権が変わった場合にも6球団と5球団は守らなければならないと思っています」と明言した。8日のオーナー会議後に中内オーナーが今後の合併の可能性に含みを持たせる発言をしたが、佐藤代表は「オーナーと直接話はしていないが、一般論として言われたと思う」と説明した。
阪神久万オーナーはスト延期を歓迎し、さっそく新規球団の参入を呼びかけた。「スト延期は結構なこと。あの人ら新米やから、いきり立って(ストを)1回くらいやるかと思ったけど、結構でした」と胸をなで下ろした。新規参入の促進が合意事項に盛り込まれたことに「条件にしなくてもいいくらいのこと」と当然の流れと受け止め、「来年から6、6(球団)になってもええくらい。12球団かそれ以上でええ。地域を考えて増やしてもいいかと思う」と語った。野崎球団社長も「阪神としては納得のいく結論。本当は6、6が1番いいし、その余地は残している」と同調した。
横浜鈴木尚選手会長には試合前の午後4時50分に11、12日のスト回避を告げる古田会長と瀬戸山協議交渉委員長の連盟ファクスが届いた。テレビのニュースで回避を知った直後で「正直、僕は(ストを)やるかなと思った。やったらやったで問題が起きる。明日、明後日(野球が)できるのはよかったと思います」と話した。しかし決着がついた訳ではない。「今の段階では中途半端。もう1週間なのか…。会議の結果を待つしかない」。
経営者側は、2日間、スト回避へぎりぎりの交渉を行った。これまでの姿勢からは軟化したが、合意事項には苦しい項目もあった。「来季はセ6球団以上、パ5球団以上を確約」も、8日の臨時オーナー会議と微妙にニュアンスの異なるものとなった。苦渋の暫定合意であることは否めず、微妙な表現も含まれており、今後の協議の行方は依然ヤブの中と言えそうだ。
記者会見中、選手関係委員長のロッテ瀬戸山代表が、選手会の古田会長から念を押された。合意事項「3」で、来季はセ・リーグ6球団、パ・リーグ5球団以上とすることを確約したことについて、右隣の古田会長から尋ねられた。「以上」になる前に、球団「消滅」の可能性に話が及んだ時だった。
合意事項の「3」は、それほど危ういものでもあった。8日のオーナー会議で「セ6、パ5の2リーグ制」を維持する方向となったが、議長の巨人滝鼻オーナーが会見で「ただし、万が一、球団消滅とかそのほかの動きが出た場合は機動的に審議する」などと付け加え、他のオーナーも同様の趣旨の発言をするなど「ダイエー待ち」を示唆する発言が相次いだ。
滝鼻オーナーは前日になって「どういう事態があっても来季は6・5しかない」と強調してみせたが、古田は「オーナー会議で『現時点では』という言葉が飛び交った。その含みとして今後また球団を減らすことを画策されているんじゃないかということで、それはないと瀬戸山さんからおっしゃっていただいた」とした。
この言質が今後、どんな影響を与えるか。また、この日の合意書には「確約」という言葉が盛り込まれたが、その意味も漠然としている。何をもって「確約」とするのか。瀬戸山代表は「球団の消滅は今のご時世ですから、何が起こるかわからない部分があるが、基本的に球団の消滅は想定していない」という苦しい説明をした。2日間合わせて11時間半に及んだ交渉で、とりあえず11、12日のスト回避にはこぎつけた。だが、今後の展開で根底から崩れる危険性を秘めてはいる。
労使協議では、これまでになかった「プロ野球構造改革協議会」(仮称)を設置することでも合意した。機構側と選手会側で構成するもので、選手会側がストライキ回避の条件として要求を出していた「ドラフト改革、収益分配策」については、ここで1年間かけて徹底協議され、また「選手の年俸のあり方」など球界発展のための改革案を検討する。これまで野球協約の改正など、選手側は事後報告を受ける立場だった。だがその前に、機構側と議論の場ができて主張できるのは大きなプラス材料だ。松原選手会事務局長はこの点については「何か事が起きる前に、(機構側と)選手会が話し合いに加わることができる。ドラフトの改革案などについても積極的に意見が言えるし、それだけ責任もある」と労使交渉での成果と受け止めていた。
NPBは、新規参入球団誕生へのハードルを低くする意思を示した。既に現在の野球協約の加盟料(60億円)、参加料(30億円)を見直すことは8日のオーナー会議で承認。選手会側はスト回避へ向けて、NPBが本気で新規参入を求める姿勢を条件としていた。この日、代わるものとして預かり保証金制度を導入することで合意した。古田は「(新球団を)入れないという姿勢から開かれて、本当にやる気がある方々が入って来ることが、野球人気につながる」と語った。預かり保証金は数億円になるとみられ、球団が万が一破綻した場合、選手の救済費用にあてられる。具体的な金額については16、17日に行われる次回の協議交渉委員会で話し合われる。
日本プロ野球組織(NPB)の根来泰周コミッショナーとセ豊蔵一会長、パ小池唯夫会長の3首脳は10日、東京・内幸町の事務局でスト回避の一報を受け、直ちに鳩首会談を行った。根来コミッショナーは「関係者のご労苦に感謝、17日以降の回避に努力したい」旨の談話を発表した。小池会長は「プレーオフに向け11、12日はいいゲームも。ファンの期待に応えられる」と話した。
しかし、肝心の交渉内容などについては口が重い。豊蔵会長は議長を務めた臨時実行委員会で検討された近鉄・オリックス合併の再考問題に「回答を延期するということで、細かいことは分からない」と言い、小池会長も多くを語らなかった。根来コミッショナーも、スト全面回避への手応えか?の問いに「それはノーコメントです」と慎重に言葉を選んでいた。
根来コミッショナーはこの日、「団体交渉をしていない」という高裁の見解に強く反発した。「相手が労働組合かどうかは別として、事務局員も一生懸命やっている。努力してないという点は修正してほしい」。また、自らが「退職金はいくらか?」と聞いたという一部報道にも「1リーグになったら事務局員を縮小せにゃいかん。だから彼らの退職金がどうなっているか聞いただけ。自分は退職金をもらうつもりはない」と、いつになく本音をぶつけていた。
この日、労使で新規参入球団の加盟を促進する方向で合意したことについて、新球団づくりを進めるライブドアの堀江貴文社長は「(合意内容は)いいと思う」と評価。9月中に新球団の本拠地を決め、経営会社設立の準備を整えた上で加盟申請する意向を示した。60億円の加盟料などに代わって導入が検討されることになった預かり保証金について「Jリーグは2000万円だが、プロ野球もリーズナブルなものにしてほしい」とし「経営が立ちゆかなくなった球団を支えるというのであれば、全球団の負担によりデポジット(預金)を設けるべきだ」との考えを示した。また近鉄買収については「合併が止まるなら、買う準備はある」と意欲を見せた。
中日白井文吾オーナーが10日、新規参入球団について注目発言を行った。11、12日のスト回避が決まったことを受け「よかったねえ。みんなにとってよかった」と話した上で、新規参入の可能性について「名乗りを上げたいというところが3つくらいあるみたいだね」と明かした。独自の情報網から複数の企業が参入に意欲を見せていることを確認していることをうかがわせた。実行委員会で、叩き台をつくっている。ただ、名乗りを上げて1、2年でつぶされては困る。そういうことのないようにしないといけない」と、参入へのしっかりした道筋をつくるべきとの考えを示した。ただし、来季からの参入には「1週間や2週間で球団がつくれるもんじゃないから」と否定的だった。
スト一時回避!労働組合・日本プロ野球選手会と日本プロ野球組織(NPB)の労使協議(協議・交渉委員会)が10日、大阪市内で行われた。妥結はしなかったが、暫定合意には達し、11日と12日のストライキは回避された。古田敦也選手会長らは「来季セ6球団以上、パ5球団以上で実施、これ以上の球団削減はなし」の確約を勝ち取った。これはセ6、パ4もしくはセ5、パ5による「10球団1リーグ」と「ダイエーとロッテの合併」を完全に阻止した形。まずは球界再編の流れを大きく変えた。次回の協議交渉委員会は16、14日に都内で開かれる。
全てのエネルギーを燃焼し尽くしたように、選手会長は会見の席についた。午後4時43分。2日間で9時間近い議論の末に古田が下した結論は『ストの延期』だ。あくまで暫定合意。スト決断期限のわずか17分前だった。
完全勝利ではない。視線は空をにらんでいた。だが、ストを回避するにいたる果実は手にした。その最も大きな要素が『セ6、パ5の確保』だった。8日のオーナー会議で、ロッテとダイエーの「もう1つの合併」はなかった。一方で「万が一、球団が消滅する動きが出た場合にはオーナー会議としては機動的に動いていく」の確認。ダイエー本社の産業再生機構入りで、球団保有が困難になる事態に備える方針だった。
経営側(NPB)に「来季はセ・リーグ6球団以上、パ・リーグ5球団以上とすることを確約」させた。10球団にはさせない。『セ6、パ4』も『巨人のパ移籍』も『1リーグ』もない。ダイエー消滅の阻止。そしてロッテとダイエーの合併の可能性をゼロにした。球団削減による再編にストップをかけた。「経営に口を出すな、とか知らない人は入れないとか、言われてきた」。急速な再編に異を唱えても門前払いされたが、この日は譲歩を引き出した。スト回避後も近鉄とオリックスの統合凍結は不可能と繰り返す経営陣。たしかにオーナー会議でオリックスと近鉄の合併が承認された現状、近鉄を残せるとは思えない。
だから古田は、近鉄に代わる新規参入によるパ6球団維持を「大阪の近鉄バファローズを残せる可能性」という言葉にして執念を見せた。合意事項第2項(別項)の新規参入球団の加盟促進の積極的検討だ。オリックス、近鉄の統合はやむを得ないとしても、来季からの新規参入の道は閉ざさせない。6球団2リーグ&交流試合で経営が健全化されることの証明と、新規参入システムの確立。これが次回交渉−スト再回避の条件になる。「近鉄が残るのが1番だが、新規参入の障壁をなくすことも必要。午後5時までにはできない、もう1週間待ってくれということ。でもその後は、待つ気はない」。
会見後、経営側代表のロッテ・瀬戸山球団代表(選手関係委員会委員長)が求めた握手を「まだ…」と拒否した。笑顔を見せずに再びスト決行の可能性を示した。「まだ、登りはじめたところ」。闘う選手会長は、ファイティングポーズを崩していない。
古田会長は午後7時過ぎの新幹線で帰京。JR新大阪駅では"時の人"を一目見ようと一般乗客ら約200人が改札口付近に集まり一時はパニック状態。警察官にガードされた古田が姿を見せると「選手会長、頑張れ」などと激励も飛んだ。都内に戻った古田は深夜、東京・台場でフジテレビ『すぽると!』に生出演。「大阪にバファローズが残るよう最大限努力したい」と語った。
日本プロ野球史上初となるストをひとまず回避した経営者側には、安堵の雰囲気が漂った。「昨日からの話を詰めて、何とか合意した」と西武・星野代表がため息をつけば、疲労で目を赤く腫らしたロッテ・瀬戸山代表も「選手会もオリックス、近鉄の統合は覆らない、と理解してくれていると思う」と、歩みよりを強調した。
スト回避に向けてまさに必死の交渉劇だった。選手会側が求めた「新規参入球団の承認要件の明確化」については、早期実現を目指して合意文書における“積極的に”という文言の使用を訴えた選手会側の要望を受け入れた。
これだけではない。9日の協議交渉委員会で、8日のオーナー会議で決定したセ6、パ5の来季運営に関して「不透明だ」と追及されると、各オーナーにお伺いを立てるなど必死の作業。前夜(9日)、巨人・滝鼻オーナーが「今からどういう事態があっても来季は6・5しかない」という発言をしたが、この言葉は“もう1組の合併”を否定し、昼間の交渉経過を受けた事実上の回答でもあった。そして、この日は“積極的に”という言葉を使用させて、新規参入球団実現の道を広げた。日本ハム・小嶋オーナー代行が「パ5球団では厳しいというのは我々も思っているし、選手会だけの意見ではない」と理解を示す球団も現れるなど、完全対立から雪解けムードすらうかがえた。
だが、あくまで交渉は途中の段階。完全なスト回避に向け、再び1週間の交渉は続く。最悪の事態を回避した経営者側は、これまで踏みこませなかった経営権にもかかわるような来季の試算シミュレーション作成にも応じるなど、対話と誠意で全力を尽くす。
根来泰周・プロ野球コミッショナーら球界首脳も10日、選手会がストを先送りしたとの一報に胸をなで下ろした。東京・内幸町のコミッショナー事務局で根来コミッショナーは報道陣に対して「ホッとした。ストを歓迎している人はいないから」と語り、協議に当たった経営陣を「どこまで(選手会に)譲れるかというところまでやったと思う」と評価した。
また、豊蔵一セ・リーグ、小池唯夫パ・リーグ両会長も最悪の事態に備え、午前の緊急実行委後に帰京。同事務局でストの場合の対応協議を予定していた。小池会長によると、ストの全面的な回避に向けた今後の方針は、13日の12球団代表者会議で選手会との合意事項を聞いたうえで決めるとしている。
合併当事者である近鉄・小林、オリックス・小泉の両球団社長はスト回避に満足げな表情。小林社長は「いい方向に進めようという意味で、同じ認識に立てた」と話した。ただ、来季のシミュレーションについては「新球団で、ということ。存続につながるということじゃない」との認識を示した。小泉社長は終始笑顔。ストの可能性も残ってはいるが「2つ3つの協議事項が残っており、それを回答して、話が進めば行わないということになっているので、私は前向きにとらえている」と妥結に自信をのぞかせた。
オーナー会議の議長を務める巨人・滝鼻オーナーは、スト回避の経緯を冷静に受け止めた。「まだ今後も交渉は続くんでしょ。継続中のことをあまり僕が言わない方がいいな」。ただ、前日9日に「今後、何が起きてもセ、パ6対5で確定だと思う」と発言した来季の両リーグ運営については「(この日の結果を受けて)オーナー会議で再審議?それはあまり(必要)ないんじゃないかな」と、改めて球団数拡張について否定的な見解を示した。
横浜の峰岸進球団社長は10日、横浜スタジアムで“共同オーナー制”に関する私案を披露した。預かり保証金について「(アパートの敷金のように)出るときに部屋を直した分のお金を引いて返してもいいのではないか」と発言。新規参入企業にも「オーナー会社が1つでなく、オーナーが3人、4人といった仕組みでもいいのではないか」と米メジャーのような1球団での複数オーナーを認めるべきとの持論を展開した。
阪神・久万俊二郎オーナーは10日、大阪・野田の電鉄本社で選手会側が求めた新規参入要件について「1、2年でやめられたら困る」とし、預かり保証金は「100億円取ってもいいんと違いますか」と仰天案を明かした。安定した経営実績を残せば保証金を全額返還すればいいとの考えで「(プロ球団経営は)大金持ちになるためにやるのではない。大金持ちが自分の金を使ってやることだから」との持論も披露した。
日本プロ野球組織(NPB)が来季セ6、パ5球団以上を確約したことは、ダイエーにとって大きな意義があった。今後の情勢次第では合併話が再燃する可能性も残されていたが、今回の合意でその懸念は消えた。王監督は「(合併は)少し話が飛躍していたし、これで安心して野球に打ち込める」。松中選手会長は「福岡のファンも安心したんじゃないか」。高橋広幸球団社長も「福岡で継続して単独保有することに変わりはない」と従来通りの方針を強調するなど、一様に歓迎ムードだった。
日本プロ野球史上初のストライキはとりあえず回避されたが、まだ予断を許さない。10日の合意はあくまで暫定。16、17日に都内で開かれる労使交渉が第2ラウンドだ。回答の内容次第ではスト決行が再浮上する可能性もある。1週間の延長戦。18日以降のストを回避するための“今後”には「パ6球団存続」に向けたライブドアの存在が見え隠れする。
選手会側が今週末のスト回避を決断した理由の1つは『パが6球団に戻る可能性』に手ごたえを得たからだった。2日間に及ぶ労使交渉で、選手会は来季からの新規参入要件に強いこだわりを見せた。新規参入球団の促進に関する合意事項2で「積極的に」、球団削減阻止に関する同3で「5球団以上」という文言に固執した、現実的には可能性が低い来季の「6球団2リーグ制継続」に、望みを見いだしたからでもあった。
背後にあるのが、既に新規参入申請の意思を表明している、IT関連企業「ライブドア」の存在だ。同社の堀江貴文社長はこの日「新球団を経営するための会社設立準備をしている。9月中に本拠地を決めて申請までいきたい」と今月中にも具体的なアクションを起こすと明言。さらに「最後の1球団を任せていただけるのであれば…」と話した。選手会はその申請のためにも、新たな新規参入要件の早期の確立と公表を求めている。
経営側は来週以降のストを避けるためにも、13日の12球団代表者会議で新たに導入する「預かり保証金」の金額を決定する必要がある。「球団が消滅しても選手、関係者が路頭に迷わないための金額」(巨人・清武球団代表)と、現行の参加料と同程度の30億円前後に設定される見込みだ。さらに経営者側に求められているのは交流試合導入を踏まえた来季の収支シミュレーション。選手会は6球団ずつ2リーグと、セ6、パ5の11球団2リーグ制での比較分析を要求している。
もともとリーグ編成は偶数の方が日程上、ロスが少ない。交流試合でパも巨人戦が主催でき、収入アップが見込める。もともと「5球団では経営は成り立たない」(ロッテ・重光オーナー代行)という意見もあり、交流試合アリでの6球団ずつ2リーグ制では、赤字はどの程度なのか、そのうち選手の人件費はどの程度の比率なのか。選手会側は腹を割った話し合いで、6・6維持、何としても球団削減を食い止めようとしている。
野球協約では11月30日が来季の新規参入リミット。「もちろん審査は必要と認識している」(松原事務局長)と、無条件での受け入れは否定しながらも、労使交渉第2ラウンドではさらにハードルが下げようする選手会側とNPB側で綱引きが展開されそうだ。
労働組合・日本プロ野球選手会と日本プロ野球機構(NPB)の代表者による協議・交渉委員会が10日、大阪市内の大阪国際会議場で行われ、継続協議などで暫定合意し、11日、12日のスト回避が決定した。新規参入球団の加盟促進などで合意し、球団数の減少に歯止めをかけるという成果を挙げた選手会。17日午後5時までに再回答を求め、16、17日の協議・交渉委員会次第では18日以降の9月中の土、日曜日に再びスト突入の可能性を残した。
会見の最後だった。瀬戸山選手関係委員長から手を差し伸べられた古田会長は一瞬考えるそぶりを見せながら、それを握り返しはしなかった。だが、スト“回避”で、さらに機構側との話し合いの時間が生まれたことに安どの表情も見せた。
前日と合わせて10時間を超えるロングラン交渉。選手会がスト回避の前提条件に挙げた「近、オの合併1年凍結」の要求に機構側から交流試合を含めたシミュレーションを行い、選手会側に回答するという譲歩案が示された。午後5時のタイムリミットまであと38分という土壇場での決断だった。
120万人の署名を得て、賃金カットなど自らも血を流す覚悟で臨んでいた。その中で機構側から引き出した譲歩案の意義は大きい。特に(2)新規参入の促進を検討することで合意した点に、松原事務局長は「セ6、パ6でやることを前提に話を進めてくれると思う」と期待をかけた。機構側も11月2日のオーナー会議で協約改正し、加盟料撤廃の承認を目指しているが、機構側との開きがある保証金額や新規参入球団の受け入れを今年中に行えるかなどの問題を解決できれば、パ6球団維持という可能性も出てくる。さらに(1)についても、オーナー会議での決議事項を実行委員会で来季への影響などを分析することになったことで、選手会側は「近鉄存続」の望みをつないだ。
ただ、近鉄存続の可能性について、機構側は瀬戸山委員長が「合併はオーナー会議で承認されており、覆えることは考えられない。(近鉄を存続させての)6対6でのシミュレーション?それはないでしょう」と話した。あくまでセ6、パ5で交流試合を交えた案を示し、これまでのシーズンと比較した上で、いかに合併に正当性があるかを証明する考え。16、17日に都内で行われる協議・交渉委員会で満足のいく回答を得られる可能性は低い。
「来週は近鉄の存続が(スト回避へ)大きく影響することは間違いない。不誠実な対応があれば、(ストの可能性は)10月まであります」と古田は話した。近鉄存続を第一としたパ6球団維持に向けた戦いはまだまだ続く。古田の握手拒否はその意思表示でもあった。
近鉄存続を仮定して現在の2リーグ制で交流戦を導入した場合、テレビ放映権料と入場料収入だけでも11億円近い増収が見込める。総試合数146試合(リーグ内対戦を各カード22試合、交流戦を各カードともホーム&アウエーの各3試合)を試案とすると、対巨人の放映権料1億2000万円×3、対阪神が5000万円×3で約5億円。また03年の近鉄のホームゲームの1試合平均入場者数は2万500人だったが、巨人、阪神戦では大阪ドームも満員の4万8000人となるのは確実で、単純計算でも2万7500×6=16万5000人の観客動員増。入場料を平均3500円としても約5億8000万円の増収となり、放映権料と合わせれば11億円近くが改善される。
今回は機構側の歩み寄りもありストライキは先送りとなったが、16、17日の協議・交渉委員会が本当のヤマ場となる。選手会側の最大の要求は近鉄とオリックスの合併の1年間凍結だが、機構側から新規参入へ向けた加盟料撤廃などの確約を得たのは大きな収穫。松原事務局長は「近鉄存続が1番いいが、新規参入もある。来季からも6にできるよう今から準備した方がいい」と話し、6対6の2リーグ制維持への可能性を示した。
しかし、新規参入の場合はその実施時期の問題はクリアになっていない。松原事務局長は「今年減らしてからまた来年増やすのでは余計に手間がかかる」とし、選手雇用の問題でも「いったん引き取ってもらった選手を再び新球団に戻すということはできないでしょう」と今季中にも導入する必要性を訴えた。話し合いの中で新規参入球団について、来年以降公募しようという案が出たことも明かした上で、選手会はあくまで来季の6球団維持を目指している。
「球界再編じゃなくて球界再生ですよ。ただ今度の交渉はもっと難しくなる。かなり緊迫した会議になるでしょう」。ひとまずスト突入は回避されたものの、次回の交渉が本当の意味での“闘い”となりそうだ。
最悪の事態は何とか回避できた。しかし、労使の溝はまだ深い。機構側の代表として会見に臨んだ瀬戸山・選手関係委員長(ロッテ球団代表)は苦しい弁明に追われた。
合意事項の(3)では、来季球団数についてセが6球団以上、パが5球団以上であることを確約している。古田会長はこの合意事項を「球団を減らす方向ということは絶対にない。減らすことはこれ以上ないということ」と新たな合併や球団破綻が完全に消滅したととらえていたが、瀬戸山委員長の“解釈”は微妙に違う。「今どきのご時世ですから分からないですけど、基本的に球団の消滅は想定していません」。現在の球界情勢を前提とした“確約”を強調した。瀬戸山委員長は、会見で古田会長から「つまりそれ(5球団)以下ではないということですね」と確認を求められると、しどろもどろ。さらに「(消滅は)しないんでしょ?」と問いかけられると「しないです」と言葉に詰まってしまった。
8日の臨時オーナー会議でセ6、パ5球団の2リーグ制を発表した滝鼻議長(巨人オーナー)は「球団が消滅するとか、その他の動きが出た場合にはオーナー会議は機動的に動いていこうと確認した」と、今後の展開次第では来季のリーグ編成を見直す可能性を否定しなかった。瀬戸山委員長の弁明は滝鼻発言に沿ったもので、セ6、パ5球団の確約はあくまでも現時点の球界情勢が前提で、劇的な情勢変化があった場合には再検討が必要との立場に立っている。瀬戸山委員長は「不測の事態とは予測できないから不測なんです。僕らの悪い頭では明日どうなるか予測できる範囲は限られている」と続けた。
ダイエー球団は本社が産業再生機構活用問題を抱え、近い将来、再生機構入りが実現した場合には、球団の存続が危ぶまれている。選手会側にとって「セ6、パ5」の合意事項は機構側がダイエーの合併、破綻はなく、これ以上の球団削減がないことを保証した点で大きな意味合いがある。しかし、それも“現時点”の確約の条件付きでは空証文にすぎない。機構側は13日に臨時実行委を開き、対応を協議する。しかし「セ6、パ5」の解釈など、選手会とのずれは小さくない。最終妥結へ。機構側が越えなければいけないハードルはいくつもある。
東京・内幸町のコミッショナー事務局で、ストライキが延期されたとの報告を受けた根来コミッショナーは「ホッとしています。引き続き、協議・交渉委員会の努力を願うしかない」と話した。しかし、経営者側と選手会側の主張には依然として隔たりが大きいこともあり「譲れる線と譲れない線がある」と楽観はしていない。この日午前9時からの実行委員会で議長を務め、帰京した豊蔵セ・リーグ会長は「合併に関しては最終的には回答を保留している」。小池パ・リーグ会長は「パの場合はプレーオフも予定していて盛り上がっているところ。11、12の両日のストは回避されて大変良かったと喜んでいる」とスト延期に胸をなで下ろしていた。
最悪の事態だけは、とりあえず回避することができた。5時間を超える話し合いを終えて、会見場に姿を見せた伊藤修・実行委員会選手会担当顧問は、疲れ切った表情で声を絞り出した。「11、12日に予定されていたストライキは回避されました」。前日(9日)の6時間協議を合わせると、11時間を超えるロングラン交渉。両者間で6項目の事項に関して暫定的に合意したが、会見で並んでいた古田会長から険しさは消えていなかった。
合意事項の(1)は、オリックス・近鉄の合併を1年間延期するとの選手会の申し入れに、交流試合の導入をふまえた来季の影響などを具体的に分析して回答するもの。「大阪にバファローズを残せるかもしれないという可能性にかけて、延期という柔軟な対応を取りました」とストは中止になった訳ではないことを強調。18、19日と25、26日に予定しているスト中止は言明しなかった。
NPBは60億円の加盟料、30億円の参加料の撤廃や、2リーグ制続行、ドラフト改革の検討の協議など大幅に譲歩したが、選手会の最終目標はオリックス・近鉄の合併1年間凍結であり、近鉄の球団存続だ。両球団の合併は8日の臨時オーナー会議で正式に承認されたが、選手会はまだまだ諦めていない。そこで、選手会は現行のセ6、パ6チームによる2リーグ制での交流試合導入によるシミュレーションをするように、NPB側に要望。近鉄が生き残る道を探そうとしている。
古田としては当然、パに近鉄が存続してのシミュレーションも想定。6チーム同士、来季から導入されることになるセ6、パ5での交流戦のパターンを比較して、どちらが球界のためにいいのか、はっきりと数字で表して正当性を訴えようというのだ。「球界全体の利益がどうなるか。6・6でもうかるのなら、その利益で近鉄の赤字を補填できるのでは」と選手会の石渡顧問弁護士はプランを打ち明けた。
NPBは今後、検討に入り週明けにも回答していく考え。13日の実行委員会で検討し、16、17日に予定される協議・交渉委員会でスト中止を目指して交渉していくが、選手会の意志は強い。「ちゃんとしてくれると思っているし、そうでないとストは避けられない」と礒部は口調を強めた。「交流試合を入れた結果、シミュレーションして近鉄を残して頂ける可能性を探していただける。来週早々には返事をいただけるというので、たくさんの方が近鉄が残れるのではと期待している」と古田は力説した。
選手会は球界発展に向けた環境整備を求める「条件闘争」に変化させ、それなりの譲歩を引き出した。しかし、まだ最大の課題に対する明確な回答をもらっていない。会見後、瀬戸山委員長(ロッテ球団代表)が握手を求めたが、古田会長はあえて手を差し出さなかった。
日本プロ野球組織(NPB)と日本プロ野球選手会の暫定的合意事項は次の通り。
選手会は、あくまでも強気だった。結果的には、翌日に迫っていた11日のスト回避となり、NPB側に大幅譲歩した形だが、松原徹事務局長は「回避ではなく延期です。まだまだ難題は多いが、機構側が何とかしようという姿勢を見せてくれたので延期ができた」と、1歩前進ではあるものの、まだ“闘争態勢”の姿勢は崩していない。
8日の仮処分申請の即時抗告審で、東京高裁から団交権を認められ、"初の団交"として臨んだことが、妥協なき要求につながった。新規参入条件の緩和など協約改正を迫ることができたのは、これまでになかった手応えだ。「選手の気持ちとファンの後ろ盾の成果。ストというのがなければ、何も決まらなかった内容が出てきた」とスト予告の効用も認めた。
だが、ストは決して脅しだけではない。選手会の山崎卓也顧問弁護士は「スト予告をしている訳ですから、(来週も)このままだとストに入ってしまう」と話した。新規参入やドラフト改革など譲歩を引き出したが、あくまでもオリックス・近鉄の1年間合併凍結がメーンで、これを取り下げた訳ではない。「オーナー会議で承認されたが、来季からとは決まっていない」と諦めないことを強調した。
NPB側の対応で次のタイムリミットに設定された17日の協議・交渉委員会でさらに延期を求められる可能性も出てくるが、同弁護士は「来週の延期はさすがに難しいでしょう」と、17日がスト決行か回避かの最終期限である考えを示した。
プロ球界参入に意欲をみせているIT関連企業「ライブドア」の堀江貴文社長が10日、ストライキ回避を歓迎した。都内で会見を行い、「ストは、色んな方に迷惑がかかる。回避されたのはいいこと」と話した。この日の協議・交渉委員会では、加盟料・参加料を撤廃し、預かり保証金制度の導入を検討することで合意した。堀江社長は「保証金を積むことに問題はありません」と前向きにとらえているが、「保証金なら、新規参入だけでなく全チームが出すものではないでしょうか」と主張し、異を唱えた。
8月19日に球団運営のための新会社設立構想を正式発表。9月中の立ち上げに向け、準備を進めている。会見では新球団が誕生した場合の新たなフランチャイズとして大阪以外にも複数の都市をピックアップしていることを明かした。「大阪を含めて3、4ヶ所の都市を調査しています。最低でも数十万人の人口がないと。具体的な(誘致の)話も若干、あります」と、都市名は明かさなかったが、既に話し合いに入っていることを認めた。
ストの一時回避に根来泰周コミッショナー、セ・リーグの豊蔵一、パの小池唯夫両会長は、安堵の表情を見せた。豊蔵、小池両会長は午前中の緊急実行委員会出席後、すぐに帰京。協議・交渉委員会が終わるとコミッショナー事務局に根来泰周コミッショナーを訪問した。「とりあえずホッとしている。ストを歓迎している人はいない。関係者のご苦労に感謝します。合意事項の中で協議すべき問題については、双方が誠意を持って話し合い、17日以降のスト回避に向け努力したい」と根来コミッショナーは話した。
緊急実行委の議長を務めた豊蔵会長は「(選手会に)誠実に対応しようということで、色々(実行委で)話をした。加盟料の(撤廃)方針などを打ち合わせました」と語り、小池会長も「互いに譲り合わないと交渉事はまとまらない。その意味では努力が実った。選手配分のこと、ストへの対応について協議したことが実を結んだ」と、ギリギリでの話し合いの成果を強調した。
ストの全面回避に向けては、選手会との協議すべき事項が多い。両リーグともに13日に臨時の理事会を開催。16日から予定されている協議・交渉委員会に向けて話し合いを続ける。
阪神・久万俊二郎オーナーが、選手会と合意事項となった預かり保証金制度に関し、破格の高額設定を要求した。10日、大阪・野田の電鉄本社で「(新規参入組に)乱暴なことをさせないためにも、100億ぐらいにしたらいい」と、珍プランを提案した。
新規参入で、久万オーナーが最も危惧するのが球団経営に対する本気度だった。「ほんの数年で経営をやめてしまうのが1番困るし、被害も大きい」と説明。たった2、3年で球界から手を引かないようにするためには、あえて高額な保証金が必要だと主張した。「(球団経営とは)お金持ちが自分の金を使ってやることで、儲かる事業ではない。新規参入組には熱意、能力、資金を見極めないといけない」。長年にわたって球団経営に携わった球界最高齢オーナーらしい、厳しい“牽制球”だった。
プロ野球史上初のストライキは、ひとまず回避された。日本プロ野球組織(NPB)と労組・プロ野球選手会(古田敦也会長=ヤクルト)は10日、協議・交渉委員会(瀬戸山隆三委員長=ロッテ代表)を大阪市の国際会議場で開催。オリックス・近鉄の1年間の合併凍結が認められない場合、11日からのスト突入を予告していた選手会に対し、NPB側は合併凍結には回答を保留したが、加盟料60億円の撤廃など大幅な譲歩を示した。選手会はこれを受けて11、12日のストを延期。話し合いは今後も継続し、17日午後5時までに要求が受け入れられない時には、18日からストを決行する。
記者会見に臨んだ選手会の古田敦也会長は厳しい表情だった。経営者側との握手にも応じず、複雑な胸中を感じさせた。
労働組合・日本プロ野球選手会が、予告していたストライキのうち11、12日については回避することを決めた。プロ野球の再編問題をめぐる選手会と経営者側代表の労使協議は10日、最終的な妥協点には到達しなかったものの、継続協議などで暫定合意した。選手会は17日午後5時までに再回答を求めた。暫定合意事項は
など。このため選手会はセ、パ両リーグで今月の土、日曜日の計30試合で予告していたストライキのうち11、12日分については行わないと伝えた。17日までにきちんとした再回答があった場合は、18日以降のストライキも取りやめる。
経営側は8日の臨時オーナー会議でオリックスと近鉄の合併を承認し、来季はセ・リーグ6球団、パ・リーグ5球団での2リーグ制維持を決定。10日午前にはセ・リーグの豊蔵一、パ・リーグの小池唯夫両会長も出席して臨時実行委員会も開き、選手会への対応策を協議。今回の労使協議では、選手会側に大幅に譲歩した。
ストライキ突入か回避か、大詰めの交渉第2ラウンドが始まった。プロ野球の選手会と経営者の代表者が出席する労使協議(協議・交渉委員会)が10日午前11時から、9日に続いて大阪市北区の大阪国際会議場始まった。9日に経営者側が提示した新規参入球団の加盟料60億円の撤廃など、双方が出した譲歩案について審議される予定。選手会が回答期限とした10日午後5時までに経営者側から有効な妥協点が見いだせない場合、11日から9月の毎週土、日曜日に史上初めてストに突入する可能性がある。
この最悪の事態を回避するため、日本プロ野球組織(NPB)は10日午前9時から、労使協議が行われる同会場で、セ・リーグの豊蔵一会長、パ・リーグの小池唯夫会長らに12球団の球団代表クラスが出席して緊急の実行委員会を開き、選手会の要求事項について対応策を練った。