20日からの今季最後の西武2連戦にプレーオフ進出をかける。先発するのは、ともに今季9勝を挙げている小林宏と清水直。この日、両投手は千葉マリンのブルペンで投球練習を行い、大一番に備えた。先陣を切る小林宏は「1試合も負けられない。僕ができる1番の投球をすれば結果はついてくると思う」と必勝宣言。「こういうプレッシャーのかかった試合に投げられるのが、すごく嬉しい」と、2試合のストの後に最高の舞台に立てる喜びをかみしめていた。
史上初のストライキを決行した労組・日本プロ野球選手会のヤクルト古田敦也会長は19日、22日にも再開される労使交渉で、あくまで「来季からの新規参入に向けた最大限の努力」を要求する意向を示した。選手会はスト2日目のこの日、ファンへの罪滅ぼしとして都内で「みんな野球が好きなんだ」をテーマに50選手参加のイベントを緊急開催。約1000人のファンから「古田」コールを浴びるなど、ストへの理解を示された。20日にストは一時解除されるが、経営側が譲歩する姿勢を示さない限り、25、26日もストへ再突入する可能性は消えない。
ファンイベントは「古田」コールで幕開けした。せめてもの罪滅ぼしとして急遽、前日午後になって開催が決まった緊急イベント。にもかかわらず朝からファンが詰め掛け、急遽2部制に切り替えて行われた。午後3時の1分開演とともに、約480人のファンは「古田」の名前を合唱した。イベント中盤、古田会長は「本当に昨日、今日と2試合、土、日のプロ野球を楽しみにしていたファンにお詫び申し上げます」と謝罪した。そのとき、会場から「謝らなくてもいいぞ!」とゲキがとんだ。ファンは選手会の行動を支持していた。
ストへの反応を、古田会長は自分の目で見、耳で聞いた。プロ野球の未来のため、そしてファンのために、決断した。きっとファンも理解してくれる−。その思いは間違っていなかった。だからこそ、裏切る訳にはいかない。第1部後に開かれた記者会見。古田会長は、22日にも再開される労使王将への固い決意を示した。報道陣から「経営者側から近鉄選手の自由契約が認められれば、05年からの新規参入を譲歩することはあるか」と質問が飛んだときだった。「ないと思う」と、即座に否定した。選手会は17日の労使交渉で来季からの12球団維持とともに、合併される近鉄選手の自由契約を要求していたが、後者は議論に至らないまま決裂していた。
取引をするつもりはない。17日の交渉は「から」「以降」などの文言をめぐって、決裂した。新規参入に関して選手会は「来季からの最大限の努力」を求めたが、経営側は「05年に向けて増やすように最大限努力するという言葉は、05年から増やさなきゃいけないということ」(巨人清武代表)と05年以降の対応という表現でとどめることにこだわった。「問題は姿勢です。来年はダメで再来年から検討する、という感じだった。残念ながら1球団減ったけど、球団を増やしたいのか、減らしたいのか。その姿勢、その辺の言葉をいただかなければ」と、古田会長は曖昧な回答や、交換条件で納得する考えは全くない。
涙のスト決断から一夜明けたスト初日の前日は、公の場に姿を見せなかった。「1日、部屋にいました。寝てましたよ。起きたのは夕方の6時くらいで、おなかが減って起きましたから」。疲労はピークに達していたようだ。それでもこの日は、午後5時から行われたイベントの第2部にも参加。合わせて1000人のファンに頭を下げ、そして宣言した。「これから進んでいくものに対して重大な責任がある。これからもいい方向に進むように、気持ちを強く持って頑張っていきたい」。その決意は固い。せめてセ6、パ6維持へ最大限の努力を−。経営側の譲歩なくしては、25、26日のスト再突入、10月のプレーオフ、日本シリーズへの影響さえ避けられない状況になってきた。
ストを行った選手会に対し、機構側は損害賠償請求をするか、しないかで意見が分かれていることに、選手会の松原事務局長は「やってこないでしょう。選手の気持ちを思っていれば、(損害賠償請求しない方針の)阪神と中日が本音。ストに追い込んだのは球団だし、その事を知らない球団は、(球団を)持つ資格がないと思います。脅しているだけですから」と話した。
また次回の協議交渉委員会については、古田会長が今週は21〜23日はナゴヤドームで中日戦、24日からは移動日を含め広島戦で試合があるため、22日と23日に名古屋で行えるように経営者側に伝えていることを明かした。ただ「もし決まらなければ、(ヤクルトが)広島に移動する24日にもやるでしょう」と、強行軍でもスト回避へ交渉する構えをみせた。
近鉄の礒部選手会長は「12球団の一致団結」を予告した。次回の協議交渉委員会は「(新規参入の)来季から…をどうとらえるかから始まるでしょう」とした上で「12球団の意見をまとめた上で、話し合いに臨みたい」と、労組プロ野球選手会の一枚岩を強調した。藤井寺でのサイン会の盛況も、活動の大きな手応えに。「ストはできるだけ避けたかったが、こうなった以上仕方がない。(交渉日は)何とか時間をつくって行きたい」と大阪ドームでの試合前練習までの時間をやりくりしながら、妥協のない姿勢で交渉に臨む。
中日川相が次回のスト回避へ、最高責任者の団交参加を提案した。「ストを今後、ムダにしないようにやっていかないといけない。今のままでは前に進まない。どうせなら球団の代表、オーナー、セ、パの会長に選手会、それに新規参入を目指している企業の社長も入れて会議をやった方がいいんじゃないかな。そうしないと、発展的は話し合いはできないよ」。その口調は熱気を帯びていた。
阪神野崎球団社長が世論に沿ったストライキ収拾を呼びかけた。「世論の力は大きい。高度な価値判断をされる今のファンが見る中で、一部の経営者でもムチャはできない」とファンのジャッジを重視。「古田(選手)会長が頑張れるのも世論の支持があるから」とストライキに賛同する声の多さに注目した。
争点となっている新規球団の参入時期についても「申請から30日以内に審査はできるし、せなアカン」と力説。「すぐに6、6(球団)とは約束できない」と経営者側の足並みに配慮しつつ「(11球団は)正常でないから早く戻す必要はある」と新規参入を歓迎する立場をあらためて明確にした。また、複数の企業から参入申請を受けた場合、先着順ではなく、審査を並行すべきとの見解を示した。
プロ野球の再編問題で、長野県の田中康夫知事が19日、長野に新規参入球団などの誘致を検討してもいい、との意向を示した。田中知事は日刊スポーツの取材に対し、IT関連企業の楽天やライブドア、シダックスが新規参入の意向を示していることについて「(新規参入は)地方を元気にする試みだ。そういう考え方には、長野県も賛同できる。長野市にも野球場のオリンピックスタジアムがある。日本の背骨に位置する長野にきてもいいという球団があるなら、場合によっては、長野市にお願いして、よく話し合った上で、誘致を検討したい」と述べた。この日フジテレビの「報道2001」に、北海道の旭川から中継で出演した中でも、同様に前向きな発言をした。
田中知事はまた「そうした場合にはメジャーの球場のように天然芝で、親子で楽しめるアミューズメントパークのようにしたい。やり方によって観客は集めることができる。選手の保養には、長野の温泉を利用したりすする。長野県には最適だ。新規球団になるのか、2軍のチームということも考えられるかもしれない。プロ野球の球団を誘致して欲しい、といったメールは私のところにも複数来ている」とも話した。オリンピックスタジアムは長野市の所有で、現在は人工芝。毎年プロ野球公式戦や、今年のオールスター戦なども開催されている。
田中知事は、楽天の三木谷浩史社長やシダックスの志太勤会長らとも面識はある。今回の球界再編の流れの中で、新規参入を表明した企業がラブコールを送っていない地方自治体の首長の側から誘致発言が出たのは初めての形で、新規参入を目指す球団などとも絡み、今後が注目される。
日本ハムと激しいプレーオフ出場権争い演じるロッテは19日、千葉マリンで自主練習を行った。イベント開催により、グラウンドが使用不能だったが、砂浜を走るなどして最終調整。20日からの西武2連戦(西武ドーム)の連勝を狙う。
潮風を受けながら、砂浜を走り込んだ。ストの影響を受けながらも、ナインは幕張の砂浜やブルペンで汗を流した。小坂選手会長は「ファンに試合を見せられず申し訳ない」と謝罪した上で「2つとも勝てるよう力を合わせてやるしかない」と残り2試合の連勝を誓った。
現在3位のロッテだが、残り試合が2つ多い4位・日本ハムに3位マジック「4」が点灯中。だが、ロッテが連勝すれば、日本ハムは残り4試合を全勝するしかプレーオフへの道はなくなる。
20、21日は「8月以降調子が上がってきた」と話す好調の小林宏と、今季西武戦3戦3勝のキラー・清水直が先発。「重要な試合で投げられて嬉しい」と小林宏。「シーズン最後までこういう戦いができるのは幸せなこと」という“バレンタイン・イズム”が浸透したロッテに、気負いはない。
プロ野球史上初のストライキを決行した労働組合・日本プロ野球選手会は19日、東京・中央区の銀座ヤマハホールで「みんな野球が好きなんだ」をテーマにファンとの集いを緊急開催。古田会長は集まった約1000人のファンに対してストの謝罪を行うとともに22日にも再開される日本プロ野球組織(NPB)との協議・交渉委員会では徹底抗戦の構えを見せた。プロ野球は20日に再開。セ、パ6試合が行われる。
温かい声援が心に染みた。本来なら「古田」として球場でプレーしている週末。だが、史上初のスト突入。緊急イベントを行った古田は「会長」の肩書を背負いスーツ姿でファンに頭を下げた。
「土、日の野球を楽しみにしていたファンに野球を見せられなかったことをお詫び申し上げます。ただ、野球がこの先衰退していく危機にある中で何とかそれを阻止したかった」。約500人のファンから大きな拍手と「古田コール」が起こる。「スト支持」と書いたプラカードを手にしたファンから「謝ることはないぞ」と声が飛ぶと目を潤ませた。
17日の協議・交渉委員会では「来季から」の新規参入を最大限努力をするよう主張した選手会側に対して機構側は「来季以降」を譲らず交渉は決裂。22、23日にも行われる協議・交渉委員会で妥結しなければ25、26日は再びストに突入する。古田会長は「ストは回避したいと誰でも思っているけど、本当にいい方向にいくためには強い気持ちを持ってやっていきたい」と不退転の決意を示す一方、巨人・清武球団代表が「05年から(新球団が)増えてもいい」と発言していることには「本当にそうなら譲歩する用意はあります」と話した。
球音が消えた週末に全国のプロ野球ファンは寂しい思いをした。この日はヤクルト、横浜、西武、ロッテから50選手がイベントに参加してファンと交流を図った。「ストが間違っていたか間違っていないかは、もうちょっと時間がたった時に結果が出る。できればやってよかったなと言える未来にしたい」と古田会長。ひとまず、20日から試合が再開される。野球のない「最悪の週末」が繰り返されることだけは、誰も望んでいない。
選手会側が次に示している妥結期限は24日の午後5時。スト突入が決まった17日の段階で選手会は早期決着に向けて週末の労使交渉を申し入れたものの機構側が拒否した。機構側は21日、都内で午前中のセ、パ各理事会を経て午後から緊急実行委員会を行う。争点となっている新規参入球団の受け入れ時期については12球団で足並みが乱れているのが現状だけにまずは各球団による意思統一が先決となる。協議・交渉委員会の再開について松原選手会事務局長は「22、23日に名古屋でやりたい。もしそれで駄目なら24日に広島でやらないといけないと思う」として古田会長が委員会に出席できるようヤクルトの遠征先でそれぞれ行いたい意向を示した。23日までに決着がつかなければ24日、広島へ移動して交渉を行うハードスケジュールとなる。
長野県の田中康夫知事は19日、プロ野球の新規参入を表明した楽天の三木谷浩史社長に長野県を本拠地としてもらうようラブコールを送った。フジテレビの「報道2001」に出演した田中知事は「長野は今年オールスターをやったスタジアムもあるし、北信越からのファンも期待できる。療養施設も充実しているし、ぜひ長野でお待ちしています」と話した。中継での出演となった田中知事と生出演の三木谷社長が話す場面はなかったが、田中知事は「三木谷さんとはお友達」と話した。
三木谷社長は「神戸、大阪を考えています。(合併球団の)ダブルフランチャイズについては3年後にどちらかにするんだったら、今決めて譲ってほしい」と話したが「いろんな地域からお話をいただいている」としており、長野も有力候補地に浮上。また三木谷社長は新規参入した場合について「自分達のノウハウを球界全体でシェアしたい。各オーナーとも話し合いができればいい」と話した。
来季からの新規参入を目指すライブドアの堀江社長が、日本テレビの報道番組「バンキシャ!」に生出演。「来年からやりたい。その方が野球界のためにもいい。これだけ盛り上がってるんだから」と、あらためて意気込みを語った。注目の監督やコーチ陣の人事については「まだ決めてません」と話したが、厳しいことが予想される参入への審査には「客観的に球団を持てないということはないと思う」と強気な姿勢を崩さなかった。
選手会の松原事務局長は銀座でのイベント終了後、ニッポン放送の「プロ野球よどこへ行く!」に緊急生出演。「球団が減るとプロを目指す子も減る」と底辺維持のため縮小に反対する持論を展開した。同番組には日本サッカー協会の川淵キャプテンも電話出演。「コミッショナー就任を要請されたら?」と質問されると「もちろん引き受けますよ」と答え、再編問題で指導力を発揮できなかったコミッショナーの存在意義に苦言を呈した。
16日に新規参入の申請を行ったIT関連企業のライブドア・堀江社長は、19日もテレビ各局の番組に出演。連休中だが、これまで加盟申請について「(機構側に)届いているとは思うが、何もない」と話した。また、週明けに申請予定のネット仮想商店街最大手の楽天・三木谷社長も「(来季からの参入が)間に合わないことはない。(パを)5球団に削減して実施する作業の方がよほど時間的に厳しい」と、来季からの新規参入を希望した。
神宮球場に隣接する室内練習場の駐車場でサイン会を実施。この日、急きょ開催が決まったが、それでも約300人のファンが集まった。「明日(20日)からはプレーで恩返ししたい」と金本。ただストも2日目とあり、ファンの反応には微妙な変化も。「試合がないのだから選手がやれる最低限のことをするのは当然」「ストをしても解決にならない気がする」といった声も聞こえた。
20日に再開される試合に向け、古田選手会会長をのぞく1軍選手が神宮室内などで汗を流した。先発予定の試合がストで中止になったゴンザレスは「大変なシチュエーションだけど、仕方ない。頑張るだけ」。前日に続き選手は自前のTシャツに短パン姿で食事は店屋物。その後は26選手が、銀座で行われたファンイベントに参加した。
中日との合同イベントには、風邪をひいて名古屋市内の宿舎で静養した清原を除く25選手が参加。終了後は20日の中日戦(ナゴヤドーム)に備えて約2時間、練習した。客席で見学していたファンのために工藤は練習を軽めに切り上げ、約2時間にわたり“臨時サイン会”を開催。「ファンあってのプロ野球だからね」とすがすがしい顔で球場を後にした。
ナゴヤドームで午後3時から、巨人選手会と合同のサイン会を実施した。18、19日の入場券を持っていた小学生以下に限定したが、子ども6000人と保護者4000人が集まる大盛況。予定より30分延長されたが、全ての子供にサインを手渡すことができないまま、途中で打ち切り。泣きだす子供や怒鳴り声を上げる親なども出たため、井端選手会長が「不手際な点もあり申し訳ない。これからも応援してください」とファンに謝罪した。
横浜スタジアムで横浜の選手とともにサイン会を実施。好天の中、選手会のホームページなどを見て駆け付けたファン約1万人が球場周辺に長い列をつくった。握手攻めにあった前田は「ほとんどの人が支持してくれている」と手応えを感じている様子だった。
18日に続き、広島と合同でサイン会を開いた。用意した色紙600枚はあっという間に“完売”。2時間が過ぎても球場の半周分ほど列が残り、途中からは握手会に変わった。最後は勝利の儀式“ハイタッチ”に。選手も楽しみながら約3時間、ファンと交流した。鈴木尚選手会長は「応援してくれているのも分かったし、勇気づけられた。やってよかった」と笑顔。
福岡ドームで大盛況のサイン会を終え、午後1時から約2時間の自主練習。その後、日本ハム2連戦に備えて空路で札幌に移動した。ストの代替試合は行われない方向のため、1位でのプレーオフ進出はほぼ確定だが、和田は「(状況がどうなっても)自分のピッチングをするだけ」と早くも“スト明けモード”だった。
埼玉・所沢の西武第2球場で1、2軍の合同練習を行った。練習時間を告知していなかったが、約200人のファンが集まったため、豊田、西口らベテラン勢が中心となって約1時間半の緊急サイン会。和田選手会長は「試合がないのに、こうやって足を運んでくれるのは本当に嬉しいこと。このような(ファンと触れ合う)機会が増えていけばいいですね」と笑顔。
全選手が午前10時から札幌ドームで約2時間、フリー打撃などをこなした。午後1時からはドーム内で、選手が4組に分かれて750人にサイン会を行うなど、ファンサービスに努めた。小笠原選手会長は「今日も選手会を支持します、という多くの声をいただいた」とファンとの一体を強調していた。
午前11時から千葉マリンで練習を行った。グラウンド内は草野球に貸し出す予定が入っていたため、ブルペン、ウエート場での調整。その後、小坂、清水直らは銀座へと移動し選手会のイベントに参加。ナインは20日からの西武戦(西武ドーム)に備え、夜には立川市内の宿舎に入った。
かつての本拠地・藤井寺球場が熱気に包まれた。練習終了後、右翼席でスト決行に対するお詫びのサイン会。3時間余りで約300人のファンが詰めかけた。「疲れましたけど、やってよかったですよ」。懐かしい3色柄の帽子をかぶった中村は充実の笑みを浮かべた。
ヤフーBBスタジアム近くの屋内練習場で、選手約40人が集まって自主練習を行った。「足を運んでくれたファンにサービスをしたい」と急きょ練習を公開、終了後には子供野球教室やサイン会も開いた。しかし、ファンの1人は「土日に観戦することが多いのでストが続くと困る。これっきりにして欲しい」と複雑な心境を口にした。
阪神の野崎勝義球団社長は19日、兵庫・芦屋市内で、新規参入に関して経営者側でも意見が分かれている現状を明かした。同社長は新規参入企業の審査は短期間で可能との考えを示すとともに、このままでは日本シリーズを含めた10月中のストも避けられないと指摘した。
危機感を抱いているのは明白だった。芦屋市内のホテルで報道陣に対応した阪神の野崎球団社長は今週、それ以降も再び直面するであろうストの危機を声高に訴えた。
『来季から』か『来季以降』なのか。新規参入企業の扱いをめぐり、経営者側は“5対7”に分裂している。阪神を含めて、選手会に歩み寄りを見せる巨人を除くセ5球団。『来季以降』の線を譲らない巨人とパの計7球団。野崎社長は「オーナーから厳命をされているかも」と、説得の難しさも感じている。
「今の状態なら選手会は27日(の臨時運営委員会)で、もう1回(次回の)ストを設定するでしょう。世論もある。経営側は苦しい」。場合によっては10月、プレーオフや日本シリーズにもストが及ぶ可能性も否定できない状況だという。
野崎社長は私的な意見としながらも新規参入企業の審査は「例えば財務ならその専門家に見てもらうとかしてやれば、30日以内に十分検討できるはず」と短期間で可能との考えを示している。
選手会支持の世論をバックに21日の理事会、12球団代表者会議で巨人などを譲歩させられるのか。「(経営者側も)もう少し努力すべき」という野崎社長は、歩み寄りによる早期妥結を訴えつもりだ。
21日の12球団代表者会議では、スト関連だけでなく、来季の交流試合についても協議される。6試合制(ホーム3、ビジター3)か、12試合制(ホーム6、ビジター6)か。一方に絞られることになりそうだ。
「セ6・パ5で組んで、6・6になっても、同じ試合数にすればいい。6・6への切り替えは、いまの形態だから組みやすい」と野崎球団社長。29日の臨時オーナー会議での承認へ向け、試合数決定を急ぐ。
涙のスト突入を決断した労組・日本プロ野球選手会の古田敦也会長は19日、東京・銀座で2日ぶりに公の場に姿を見せ、改めて鉄の意志を貫く覚悟を口にした。約1000人のファンを集めた選手会主催のイベントに出席した古田は「新たな決意がわいてきた。10年後にストをしてよかったと思える未来にしたい」。ファンからの絶大な支持をバックに、今後も来季からの新規参入に向け徹底抗戦を続ける構え。粘りの交渉であくまで不変の姿勢を強調した。
登場直後から1分近くも鳴りやまない『古田コール』。目の下のクマは消えず、疲労の色はまだ濃く残ったが、壇上の古田の視線には新たな強さがみなぎっていた。
「心配していただかなくても大丈夫。(経営者を困らせるために)球場に来ないなんて言わないでください。ファンの声を聞いて、これからも交渉を続けていきたい」。東京・銀座でファン約1000人を集めたイベントで、球界を背負う会長が毅然と言いきった。
2日前の17日。“男泣き”で日本球界史上初のストを決断した。選手会ではスト決行が決まった直後に緊急のファンイベントを計画。この日は4球団の計49選手が参加し、交流会が開かれた。
古田はこの2日間、ヤクルトのチーム練習にも姿を見せなかった。前日18日には「夜の6時まで寝ていた」。心身ともに憔悴しきっていた。それでも「これから進んでいくことに対して、責任がある。1日たって新たな決意がわいてきた。10年たってあそこで(ストを)やっておいてよかったと思える未来にしたい」。“闘う選手会長”は再び走り出した。
今週も予定されている日本プロ野球組織(NPB)側との交渉は、新規参入企業を来季から受け入れるかどうかが最大の焦点となることに変わりはない。「NPBが球団を減らしたいのか増やしたいかの姿勢が問われている」と古田。選手会の松原事務局長も「こちらの主張は一点。30分で決まるかもしれないし、場合によっては3日間になるかも」と現時点で1歩も引く気はない。
さらに選手会はオリックス・近鉄の合併は認めたものの、25人のプロテクト枠を撤廃し、当該選手に移籍先について希望を聞くよう主張。選手の労働条件に関わる部分だが、前回の労使交渉ではほとんど論議されておらず、継続審議となる。
古田は今週も遠征先の名古屋で交渉を続ける予定。リミットは24日午後5時だ。妥結しない場合は、今週末の25、26日の週末もストが実施されることになる。現時点ではファンの理解を得られている部分もあるが、プレーオフ、日本シリーズを控えてストが長期化するようなら、批判噴出は必至。ストは経営者側だけでなく、選手側も深い傷を負いかねない危険な“両刃の剣”なのだ。
日本列島から野球が消えた週末。ヤクルトには中止試合の払戻金を「選手会で使って」というファンからの支援の電話も相次いでいる。古田宛てには「これでお茶でも飲んで」と高齢の女性から現金書留が届くなど、幅広い応援が寄せられているという。20日からペナントは再開されるが、選手会長・古田はさらに難しい選択に突きつけられることになる。
選手会によって緊急開催された『ファンと選手の集い』には古田会長、横浜の魔神・佐々木ほか、ヤクルト、横浜、西武、ロッテから計49選手が参加。ファンも早朝から会場に詰めかけて大混雑となった。正午前から配り始めた整理券は30分足らずで予定の400枚に達し、急遽午後3−4時、同5−6時の2部制に切り替えて行われた。集いは質疑応答やサインボールのプレゼントなどで盛り上がり、古田会長が「昨日、ウチの前に報道陣が100人以上いました」と近況報告し、爆笑を誘う場面も見られた。
次回の労使交渉(協議交渉委員会)は22、23日に名古屋で開かれることが濃厚となった。ヤクルト・古田の試合日程に配慮したもので、労組選手会の松原事務局長は「その方向で古田会長と話している」とNPBに連絡することを明かした。
当面、交渉は2日間の予定だが、次回のスト予定は25、26日に設定されているため、24日までズレ込む可能性がある。「できれば名古屋の2日間で決めたい。無理だったら24日(の労使交渉)は広島になる。3日間になる可能性もある」と同事務局長。労使間の争点は新規参入の来季受け入れに絞られており、経営側が譲歩すれば「次は30分で終わるかもしれない」(同)と期待も半分。
日本ハム、中日などから声が出始めた「損害賠償請求しない」という経営者側の声には「そういう声が出てくるのが正しい。脅しだけ。脅すような人々に球団を持つ資格があるのか」とあくまで正当な権利にもとづくストであることを強調した。
スト突入から2日目となった19日、最大の争点となっている球団数について、大阪府立大の宮本勝浩教授(数量経済学)のグループが試算を行った。それによると、セ・パ両リーグが来シーズンから交流試合を導入しても、11球団では72万円増の効果しかなく、12球団なら球界全体の総収入は32億円増となるが、全球団で170億円と言われる赤字の抜本的解決にはならないという。
試算は11球団の場合、現状の140試合(セはリーグ戦22試合×5、交流試合6×5。パはリーグ戦26試合×4、交流試合6×6)を設定。近鉄・オリックス合併球団は、観客収入約4億4000万増などを含む8億4000万円のプラス。パ・リーグ5球団全てが5億円以上のプラスとなった。対照的に、セ・リーグは巨人が881万円のマイナス、6球団では30億円以上の減収になる。
一方、新規参入が認められ、12球団となった場合はどうか。試合方式を22試合×5の110試合、交流試合を6試合×6の36試合、計146試合と設定。「新規参入のシミュレーションはしていない」(宮本教授)ため、代わりに近鉄存続として試算した。セ・リーグでは巨人のみが約8億7000万円の増収で、あとはヤクルトの6億8000万円など全球団が減収。パ・リーグで全球団が増収と明暗が分かれた。
球界全体の赤字は16日に発表された近鉄39億円、オリックス37億円を筆頭に、約170億円と見られており、宮本教授も「(6球団による交流試合は)赤字の改善にはなるけど、根本的な解決にはならない」と指摘。さらに、どちらのケースでも、巨人戦の放映権料が減少するセ・リーグ球団の猛反対に遭うのは明白。抜本的解決に見えた交流試合も、プロ野球の赤字体質には“焼け石に水”のようだ。
日本プロ野球選手会・古田敦也会長が19日、東京・銀座で行われたファンとの交流イベントに出席。全国で行われた各球団選手会イベントに約6万人を集め、ファンから大きな支持を受けた同会長は、日本プロ野球組織(NPB)との今後の交渉について、あくまで「来季から」の新規球団参入への努力をストライキ妥結の絶対条件とすることを改めて強調。1歩も引かない構えを見せた。一方、NPB側は「来季以降」の文言は譲らない構えだが、不信感払拭へ向けて、そのほかの方策を探る動きも出てきた。
涙のストライキ決断から2日。再びファンの前に姿を見せた古田会長は、すっかり“戦う会長”の顔に戻っていた。4球団49人の選手を後ろに従えて壇上に上がると、「この土、日とプロ野球を見せることができなくなり、心からお詫びします」と深々と頭を下げた。会場のファンからは「気にしなくていいぞ!」「よくやった!」の大合唱。激励の声に押され、感動の面持ちで視線を上げた。
激務の疲れが僅かに癒やされた。16、17日の協議・交渉委員会で、合計13時間にわたってNPBと交渉。スト突入の断を下すと、その足でテレビ各局に生出演し、ファンへ謝罪と説明を行った。最後のフジテレビを出たのは、日付が変わった午前4時過ぎ。18日は1歩も自宅から出ず。この日もチーム練習を欠席したため、体調面が心配されたが、「昨日(18日)は(午後)6時過ぎまで寝てましたから」と心配を一掃。最後まで元気にイベントに参加した。
だが、記者会見でスト妥結の条件に話題が及ぶと、穏やかな表情は一変した。前回交渉では新規球団の参入について、NPB側が「来季(2005年)以降」と提案したのに対し、選手会は「来季から」を主張。最後まで両者譲らず、スト決行に至った。
古田会長はこの点について、「NPBは(新規参入を)来年はだめで、再来年は検討するという感じだった。問題はその姿勢。NPBが球団数を増やしたいのか、減らしたいのか。そのへんの言葉をいただけないと」と要求。前回は継続審議となった近鉄選手の自由移籍については、「(交渉の)ポイントとなるのは間違いない」としたものの、「そこで譲歩があってもスト妥結はないですね」とあくまで「来季から」の文言にこだわることを強調した。
次回交渉は22、23日にヤクルトの遠征先の名古屋で行われる予定。NPBも「来季以降」に固執しており、難航は必至だが、古田会長は「我々もストを回避したいと思っている。結果どうなるか分からないが、気持ちを強く持って粘り強く頑張りたい」と語った。この日は他の選手がカジュアルな服装で現れる中、「僕にはファンに説明責任がある」と1人スーツに身を包んだ選手会会長。強い責任感を胸に、長い1週間を戦っていく。
阪神・野崎勝義球団社長は19日、来季からの新規参入は可能との考えを明らかにし、プロ野球選手会の古田敦也会長を援護した。
芦屋市内のホテルで会見した同球団社長は「審査は30日以内で間に合うと思うし、間に合わせないといけない」と、野球協約で定められている申請の日から、30日以内の審査期限で処理できると主張。「財務内容は専門家が見れば、分かります。5年間の安定(経営)を見るとか、ポイントをチェックすればいい」と、具体的な例を挙げたほか、21日の両リーグ理事会と実行委員会に向けて「そこで、こちらの方向性を決めていかないといけない。まずは、交流試合の数を決めないと仕方がない」との考えも示した。
また、阪神・久万俊二郎オーナーはこの日、神戸市内で「(ストで)いらん金を使うのは、ばかばかしい。ストをやってしまった以上は、1球団潰れるぐらいまで話し合わないと、お互い信頼できないんじゃないか」と、泥沼化を避けるように訴えていた。
スト決行2日目の19日、12球団の選手会はそれぞれ各地でファンサービスを行った。ナゴヤドームでは、中日と巨人が合同でイベントを行い、1万人のファンと交流した。ダイエー単独でサイン会を行った福岡ドームには、何と2万人が詰めかけた。1軍選手が全国9ヶ所で、およそ4万7850人のファンに直接おわびし、ストへの理解を求めた。2軍選手によるファンサービスも含めると、5万人近いファンと触れ合った1日となった。
選手会の熱意とファンの熱気で、ナゴヤドームは息苦しいほどだった。ストで試合中止となった18、19日のチケットを所有している小学生以下とその保護者が対象で1万人が来場。午後3時から始まったイベントで、多くの子供達は選手との触れ合いを喜び、選手会とファンの結束は強まった。
開始時に中日井端と巨人高橋由の両選手会長が「5年後、10年後の球界を考え決断しました。野球を見せられず申し訳ありませんが、理解していただければと思います」と話すと、ファンからは「頑張れよ!」と大きな拍手がわいた。巨人ファンの大軒慶次くんは「阿部選手に肩をたたかれた」と満面の笑み。中日ファンの杉山拳斗くんは憧れの中日山本昌からサインをゲット。「最高です。部屋に大切に飾ります」と親子で喜んだ。
ただ、来場者が想像以上に多かったため混乱する場面もあった。グラウンド内2ヶ所と外野入り口の計3ヶ所でサインや握手に応じる態勢を敷き、約400人の警備員も用意したが、人の波をスムーズにさばききれず、数人が擦り傷を負うなど軽いケガ人も出た。予定時間をオーバーした午後4時半、中日の井端選手会長が場内マイクで「ケガ人も出ましたので(グラウンドでのイベントを)打ち切らせていただきます」と告げた。外野入り口では、サイン会から握手会に切り替え、こちらは午後5時15分まで続けられた。
「少しでも楽しんでもらおうと企画したが、こちらの不手際で申し訳なかった」と井端。それでも気持ちはファンに伝わった。高橋由は「これだけ多くの人が集まってくれるとは思わなかった。勇気づけられる。感謝しています」と振り返る。スト期間中だけではなく、日ごろからファンを大切にしていけば、もっと心強い味方になる。