近鉄の親会社、近畿日本鉄道の山口昌紀社長が22日、注目発言した。楽天など新規参入に名乗りを上げる企業への売却案について「宮内オーナーか機構側から指示が出た場合は、応じるかどうかは別にして話を聞くのはおかしいことではないでしょう」と初めて球団売却の可能性に言及。合併相手のオリックス宮内オーナーや日本プロ野球組織(NPB)の出方次第で、合併凍結という大逆転が起きる可能性が出てきた。一方この日、楽天の三木谷浩史社長が、本拠地を仙台とした加盟申請を24日、NPBに対し行うことを表明。ライブドアとの勝負になるが、周囲の状況から楽天の参入が有力。合併を白紙に戻し近鉄を買収した上でのパ6球団存続−の仰天構想が浮上した。
山口社長が初めて、売却の可能性を口にした。「うちは、野球ビジネスからの撤収を進めている会社。新規参入を認められた会社から(球団を買いたいという)話がありオリックスの宮内オーナーか機構側から『話を聞いてみてはどうか』という指示があれば、話を聞くのはおかしいことではないでしょう」と合併への流れに向う中で、注目発言を行った。
これまで山口社長は、世論や選手会からの合併阻止の声にも「合併凍結は絶対にない」と、かたくなな姿勢を崩さなかった。この日も、近鉄が球団を持ち続ける可能性、近鉄が自ら合併凍結や新規参入企業の商談に動く可能性については「オリックスさんとの契約がある。信義を守らなければならんでしょう」と否定はした。ただその否定も「近鉄側から」という“注釈”つきだ。
流れを変える可能性があるとすれば、楽天の新規参入が認められることと、オリックス宮内オーナーや、既に両球団の合併を承認した機構側の“変心”だ。実は楽天側からはつい最近、買収話を持ちかけられていた。「しかるべき筋を通じて(球団売却についての)話が間接的にあったが、物事にはタイミングがある。うちは契約を進めているし、うちのステージを離れている」と打診を断ったことを明らかにした。だがオリックスや機構など「ステージ=外的要素」が働けば、事態が変わる可能性があることは、冒頭の軟化した姿勢で推測できる。
一方、その新規参入を表明している企業にとって、いくら資金があっても「球団」としての実態がないのが泣きどころだ。この日、楽天の三木谷社長は「(近鉄とオリックスの)合併であふれた選手を受け入れる」と説明したが、近鉄をチーム丸ごと買収できれば最大の障害がクリアされる。この日の労使交渉でセ6パ6の方向性が打ち出され、スト回避の流れにはなったが、選手会側の最後の要求とされるのが、近鉄礒部選手会長が主張する「近鉄選手全員の新規参入球団への移籍」だ。楽天が近鉄を買収すれば、この点もクリアされる。この日の労使交渉でセ6パ6の方向性が打ち出され、スト回避の流れにはなったが、選手会側の最後の要求とされるのだ、近鉄礒部選手会長が主張する「近鉄選手全員の新規参入球団への移籍だ」。楽天が近鉄を倍手すれば、この点もクリアされる。
この日、小林哲也球団社長も「宮内オーナーや機構からの話があれば、話を聞く余地はある」と山口社長と同じ言葉を口にした。本社、球団両トップの注目発言で、新規参入企業によるバファローズ存続が現実味を帯びてきた。
三木谷社長は、来季参入が認められた場合、長野で10〜15試合を開催したい意向を明かした。楽天側が長野市に対し、本拠地を置くことが可能かを鷲沢長野市長に打診していたが、準本拠地としての含みがあったと思われる。「素晴らしい地域だし、スタジアムもある。いきなり長野に行って試合をする訳にもいかないから市民とコンタクトしていきたい」と話した。
本拠地変更を三木谷社長は“苦渋の決断”とした。「第1希望を神戸、第2希望を大阪にしてきた。しかし占有地の問題は新規参入においては切り崩すのは困難。断腸の思いで断念した」。神戸市は自身の出身地、大阪からは太田府知事からラブコールを受けていた。だが近鉄とオリックスの本拠地、さらに阪神との競合を避ける形となった。
そこで方向転換したのが仙台だ。9月に入りメールや電話などで「田代も候補に」というアピールが届き、地方自治体の関係者と接触。他の地域と比べて熱意が高いこともあり本拠地とすることを決めた。「地域と一体化するのが重要な要素。宮城球場は改修しないとダメですね」。老朽化が目立つ同球場の改修費用は、今後、自治体と相談していく。練習用施設の買い上げや新設も検討。新監督やコーチも調査を進めている。
そこで注目されるのが、既に仙台市を本拠地として参入申請したライブドアの存在だ。これに対しても三木谷社長は「共同になるかもしれないが、これはプロ野球の方達に判断してもらうこと。早い者勝ちではない」と自信たっぷり。仙台以外を本拠地にする代替案はなく、ライブドアとの“二者択一”の真っ向勝負となる。
その「IT戦争」の行方だが、球界関係者の話を総合すると、資本ry区はJリーグチームを持ちスポーツビジネスのノウハウを持つ楽天を支持する声が多い。三木谷社長が堤(西武)、宮内(オリックス)の両オーナーと親交が深いことは知られており、つい最近も堤オーナーと会談したという情報もある。第3の本拠候補地と思われた松山など四国ではなく、あえてライブドアが表明した仙台を選択したのも「勝算がなければ申請しない」(三木谷社長)という自信の表れ、とみるのが妥当だろう。
ライブドア | 社名 | 楽天 |
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1997年8月 | 設立 | 1997年2月 |
239億6400万円 | 資本金 | 397億9100万円 |
堀江貴文(31) | 社長 | 三木谷浩史(39) |
六本木ヒルズ森タワー | 主要事業所 | 六本木ヒルズ森タワー |
1288人、29歳 | 従業員数、平均年齢 | 710人、30歳 |
108億2400万円 | 売上高 | 180億8285万円 |
13億1400万円 | 経常利益 | 44億3871万円 |
ホームページの企画、制作から出発し金融、ソフト販売などの多角化推進 | 事業内容など | ネットショッピングモールで断然首位。調達資金テコにM&Aに積極的 |
日本グローバル証券(64億円)バリュークリックジャパン(36億円) | 買収した主な企業 | DLJディレクトSFG証券(301億円)マイトリップネット(323億円) |
04年8月、近鉄の買収に名乗りを上げ「新球団構想計画骨子」を発表した | プロスポーツとの関り | 04年1月、関連会社クリムゾングループがJ1神戸と経営上と契約を結ぶ |
スト回避ムードが流れる中、近鉄の礒部公一選手会長が強硬な態度で機構側に要求を突きつけた。来季の新規参入球団が認められた場合、近鉄全選手がそこへ移籍することを認めるよう求めたもの。オリックス戦出場のため交渉途中の午後1時すちに会場を出た礒部は「バファローズというチームをバラバラにしたくないという気持ちがある。仮に新規参入があるのであれば、そこにこのままの形で選手もファンもついてきて欲しい」と語った。「私見」ではなく「みんなバラバラになりたくないと思っているので考えはまとまっています」と近鉄選手会の総意とした。既に機構側には、合併凍結を断念する代わりに近鉄選手を雇用の保証された自由契約とすることを求めており、プロテクトとウエーバードラフトによる振り分けを受け入れない姿勢でいる。一連の要求は合併による戦力強化の妨げになるとあって、近鉄小林球団社長は慎重。プロテクト拒否については「協議中のことなので、検討しますと。これまで話をしていなかったので」と語るにとどめた。
労働組合・日本プロ野球選手会と日本プロ野球組織(NPB)による労使交渉(協議・交渉委員会)が22日、名古屋市内のホテルで再開され、23日にも第2のスト回避が決まる可能性が出てきた。経営者側は来季からの新規参入に対して前向きに検討、早期に審査委員会を立ち上げ、ガラス張りの審査をする歩み寄りを見せた。選手会もこの新提案を前向きに評価。労使交渉は今日も継続して行うが、予告していた25、26日の2週連続週末ストは回避に向けて動きだした。
スト決行が決まった17日の労使協議とは対照的に、経営者側は手応え十分だった。ロッテ瀬戸山球団代表(選手関係委員長)は「新たな提案をした。新規参入企業から申請をいただき、審査を経た上で迎え入れることには全く問題はありません」と語った。来季から新球団が誕生してセ6球団、パ6球団で運営していく可能性が示された。
新提案は審査の方法だ。協議中で詳細は明かされなかったが「透明性を高め、ファン、選手会にも納得を得るものにしていく」と瀬戸山代表は説明した。16日に根来コミッショナーが3つの新規提案をした。その1つが「新規加入球団審査委員会」。その段階では「年内立ち上げ」をメドにしていた。それを可能な限り迅速に設立する。
既に申請しているライブドア、申請予定の楽天について、同じ期間を前提に同委員会で10月中を目標に審査。審査過程も選手会に報告されるとみられる。「審査をしてOKであれば来季から参入は可能。審査をして足りなければ指導もさせていただかないと。球場事情をとってもそうだと思う」と瀬戸山代表は話した。
18日の交渉で、選手会は「来季からの新規参入に向けて最大限の努力」を求めた。これに経営側は「来季以降」「誠意を持って対応」を主張。経営側の中でも阪神、中日、横浜などが応じる意思を示したが巨人、西武、オリックスなどが反対した。オリックス小泉球団社長は「審査してそれが良ければ、来季から6と6になっても大歓迎」と一転。新球団への選手供出について「協力?そういうことになるかも」とエクスパンション(拡張)ドラフトの可能性さえ示した。
来季セ6、パ6の運営について瀬戸山代表は「増える方向で考える?もちろん」という姿勢だった。ダイエー佐藤球団代表は「6、6にするのもやぶさかでない」とした。巨人清武球団代表は「審査を公平にやった上での話」という。「お互い歩み寄れている。信頼関係は大幅に改善されつつあると思う」と瀬戸山代表は自信を見せた。代替試合、選手のプロテクト問題、損害賠償などについては継続協議。双方で事態収束を目指す。
オリックス三輪、近鉄礒部の両選手会長が23日の近鉄−オリックス26回戦(大阪ドーム)を欠場して名古屋市内で行われる労使交渉に出席することになった。この日の労使交渉に出席した際、NPB側から継続出席を要請されたもの。当初は公式戦出場を優先する方針だった2人は、大阪ドームでそれぞれの所属球団と話し合った上で労使交渉への出席を決めた。三輪は「それだけ重要な話し合いということです」と説明。礒部も「決着がつかなければ明後日(24日・広島)も出向くことになるでしょう」。機構側としては特定球団の選手に公式戦欠席を求めるのは“特例”といえるが、合併当該球団の選手会長を同席させた上で一気にスト回避にこぎつけたい思惑があるようだ。
スト回避に向けて好感触を得たのは選手会側も同じだ。労使交渉で示された機構側からの譲歩案を、選手会としても受け入れる方向で話が進んだ。古田会長も「今まで出ていなかった具体的な案が出てきた。明日全てが出揃うと思う」と妥結ムードを漂わせた。
選手会が評価したのは、来季から新規参入できる可能性が出てきたこと。審査委員会によるガラス張りの調査で参入希望企業を審査することに、可能な限り早く取り掛かることが伝えられた。「ちゃんと審査に通れば、入れるんだという仕組みができるまで、頑張らないといけない」と古田会長。そこが妥協点という訳ではないが、最低限譲れない点として答えた。
会議は必要以上にピリピリしたムードもなく、冷静に進められた。広島の西山会長は「今までで1番、まともな交渉ができた。細かい部分で合意できるんじゃないか」と手応えを口にした。選手会側は「経営上の統合というけど、戦力補強をお金をかけずにできるのはおかしい。礒部は6・6でできるのなら、近鉄がまるまる移るのがベストと言っていた」(西山)などと強硬な意見も提案した。それには返答はなかったが、エクスパンション(球団拡張)ドラフトの制度化などについては、23日書面で返答をもらうことになった。新規参入に関して、機構側の譲歩の姿勢は顕著だった。
もちろん、申請を出した企業が審査の結果、不適当と判断される可能性はある。しかし、古田会長は「今のところ審査基準というのは厳しいものはないと思う」と、参入条件として適当な範囲内の基準だと認識している。23日の交渉で数点の詰めの作業を行う。スト突入につながった前回の労使交渉の経験から「書面になると変わってくるんだよ」(古田会長)と予断は許さないが、方向としては、誰も望まない今週末のストは、回避されそうな状況となってきた。
ストライキ回避の結論は出なかったが、選手会の松原事務局長は「1週間前の交渉とは雲泥の差。(経営者側の態度が)ガラッと変わったのは事実です。色んな対立があっても、パートナーとして共通するのは球界発展。あとは信じるだけです」と妥結の方向へ進んでいることを強調した。最大の争点となった来季からの新規参入については「具体的にはいえませんが、審査機関を早く設置する話はあった。各球団の意見が統一されて、意欲は感じられた。色んな問題はあるが、一緒に方向性を見つけていこうということで、いい方向へ進んでいる感じはある」と感触を得た様子だった。
NPBと選手会双方の弁護士はこの日、これまでとは違い当事者間の意見交換を優先させたようだ。「賠償問題は話しませんでした」とNPB側の安西愈顧問弁護士。選手会川の山ア卓也弁護士も「今日はあまり話すこともありません。(新規参入については)建設的な話になればいいですね」と言葉少な。争点の自由契約問題も「営業譲渡すれば一般の社会なら社員の同意が必要ですが、プロ野球の場合は営業権に選手はついてくる。見解はどうしても平行線になるし、今日は差し控えた」と安西弁護士。山ア弁護士も「そんな簡単なことではない」と論評を避けた。
根来泰周コミッショナーは22日、楽天の新規参入申請の動きに歓迎の意向を示した。この日は楽天の役員がコミッショナー事務局を訪れ、長谷川事務局長に申請の手続きなどでアドバイスを受けた。コミッショナーは「局長いよると『(楽天は)まじめに球界参入に取り組んでいる。細部を詰めてキチッとした形で申請する』ということなので、それを待ちたい。あとは既存球団が、新しいところへ協力していくことが必要だろう」と話した。
辞意の固いコミッショナーだが、今後は自ら提案した「新規参入審査機関」や「有識者会議」の立ち上げに全力を注ぐ。特に「審査機関」については、新規参入希望相次ぐ中「できるだけ早く組織づくりをしたい。メンバーなどの腹案を固めている」と意欲を燃やしていた。
楽天が仙台市を新球団の本拠地にすると表明したことに対し大阪府の太田房江知事は「残念。一昨日(20日)の時点では大阪(を本拠地にする)と明言したのに何があったのか」と落胆した表情を見せた。太田知事は20日に三木谷社長と会談。この日午前は「楽天が大阪を本拠地にすることに確信に近いものを得た」と自信を見せていただけに同日午後は「近鉄売却を含め、大阪は最後まで頑張らなければならない」と諦めきれない様子。仙台希望の理由については「大阪ドームのフランチャイズ問題が難しいと考えたのだと推測する」と述べた。
オリックス小泉隆司球団社長が近鉄との合併は不変であることを強調した。この日、「楽天」が新規参入申請することを正式表明。近鉄礒部選手会長からはプロテクト拒否発言も出たが「近鉄選手がそのまま新球団に移籍する可能性?そうではなく、審査の結果、良ければ新規参入を認めようということ。統合は予定通り進めます」と話した。
プロ野球への新規参入を目指すライブドアと楽天が「本拠地」としてあげた仙台市には、歓迎と戸惑いが交錯した。宮城県の浅野史郎知事は「ライブドアを優先的に(宮城県営球場を)使用させると言っている。2つというのはない」と、突然の楽天参戦に戸惑い気味。仙台市の藤井黎市長は「娘1人に婿2人ですね。どちらか1社には来ていただきたい」と話した。宮城県民、関係者らの困惑はしばらく続く。
楽天側から事前の打診がなかっただけに、宮城県幹部は「楽天は大阪じゃないの?」と戸惑い気味に話した。報道で初めて知った浅野知事も困惑した。出張先の東京都内で「ライブドアを優先的に使用させると言っている。2つというのはない」と述べ、県営宮城球場をフランチャイズとする場合、ライブドアを優先する意向を示した。夜になって仙台に戻り、ようやく「プロ野球に宮城球場を優先的に使わせるということ」と、軌道修正した。
藤井仙台市長は市議会終了後、「娘1人に婿2人ですね。東北の可能性が各方面で評価されている」と歓迎。「二兎を追う者は一兎も…ということがないように、新しい球団ができることだけを願いたい」。77年まで仙台を本拠地としたロッテ以来となる、プロ野球球団の誕生へ期待を寄せた。
衆院比例区東北ブロック選出の自民党・中野正志議員は「個人的に」と前置きした上で「会社の規模や認知度、Jリーグ神戸の運営実績などから楽天の方が、地域に受け入れられやすいのでは」。週明けにもスポーツ議員連盟の森喜朗会長と会談し、来季からの新規参入を認めるようNPBに働きかけていく意向を示した。
球団誘致を目指す宮城野ボールパーク構想推進協議会の松坂宏会長は「軽軽しくどっちとは言えないが、より地域に密着した球団ができることにるながれば」。宮城県高校野球連盟の木村淳理事長は「経営戦略上だけでなく、野球文化を育てていくという理想を持って土壌が育つまで長い目でやって欲しい」と話すなど、野球関係者はライブドア、楽天に関係なく好意的に受け止めた。
鷲沢正一長野市長は、楽天が同市でも年間10〜15試合したいと表明したことに「大変名誉なことで、ありがたい」と歓迎の意向を示し、「(プロ野球は)地方密着型という方向に行かざるを得ない。立派な球場があれば、いずれ話があるのではないかと思っていた」と話した。
河村建夫文部化学相は22日、文科省で緊急会見し、「プロ野球の発展に向けた関係者へのメッセージ」を発表、「(選手会と経営者側が)泥沼に入ってしまうと困る。ストを繰り返さない覚悟で話し合って欲しい」と述べ、スト回避へさらなる努力を求めた。河村氏は、新規参入を認め、現行のセパ6球団による運営が望ましいとの考えを表明。新規参入時の預かり保証金制度などをめぐり、日本野球機構の定款変更が必要となる可能性を挙げ「所割庁として、迅速に対応できるよう準備したい」と述べた。
労働組合・日本プロ野球選手会と日本プロ野球組織(NPB)の代表者による協議・交渉委員会が22日、名古屋市内のホテルで行われた。機構側から新規加入球団審査委員会の早期設置と公開審査の導入が提案され、審査を通過すれば05年からの参入を認める譲歩案が示された。選手会側も大筋で理解を示し、25、26日以降のスト回避の可能性が高くなってきた。
スト決行を決断した17日の表情とは一変していた。古田会長は時折笑みを浮かべながら、労使交渉の手応えを口にした。
午前11時すぎから始まった労使交渉。この日は冒頭、前日の実行委員会で機構側が一致した新規加入球団審査委員会の早急な設置の提案がなされた。さらにダイエー・佐藤球団代表が「密室で議論されているという批判もありますし、審査を公開してもいいと話をしました」と明かすなど、公開審査を確約した。
これまで05年からの参入に否定的だった巨人・清武球団代表は「公正な審査をした上で増えることは問題ない」と話し、オリックス・小泉球団社長も「慎重に審査して良ければ、来季パ・リーグが6球団に戻っても大歓迎」とし、12球団一致で05年からの新規参入への意欲が示された。審査基準の要件なども提示され、選手会最大の要求へ道が開けたことで次回以降のスト回避の最低条件は整った。
松原徹事務局長は機構側の譲歩に一定の理解を示した上で「1つのヤマを越えても枝葉の部分で問題が残されている」と話した。選手会のもう1つの要求である合併当該球団選手のプロテクト撤廃。承認されている合併球団25人プロテクト、および残りの選手の全球団のウエーバー制では、参入した新球団への分配はなされない。選手会の要求である合併当該球団の選手の球団選択の自由も含め、合意文書作成へ急ピッチで調整が進められることになる。
選手関係委員会の瀬戸山隆三委員長は「溝は埋まったと思う」と妥結に自信を見せた。古田会長は「あと数点つめていかなければいけないですけどね」と話しながら「信用していいんじゃない?信用できない?」と言って笑わせもした。古田会長が瀬戸山委員長の握手を拒んだのは10日の労使交渉。あれからスト決行という最悪の事態に発展したが、23日にも歴史的な握手が交わされる。
プロ野球新規参入で仙台IT戦争が勃発した。インターネット商取引大手・楽天の三木谷浩史社長は22日、東京・六本木の本社で宮城県仙台市の宮城県営球場を本拠地にして24日に日本プロ野球組織(NPB)に加盟申請することを明らかにした。既にライブドアも仙台市を本拠地として16日に加盟申請を行っており、IT2社が同条件でNPBの審査を受けることになった。24日の正式申請を前に急遽開かれた三木谷社長の会見。飛び出したのはあっと驚く「仙台本拠地」表明だった。
新規参入を表明していた三木谷社長は当初、Jリーグ・ヴィッセル神戸の本拠地である神戸市を本拠地とすることを希望。その後、複数の地方自治体に受け入れを打診。20日に同社長が大阪府の太田知事と会談し大阪ドームを本拠地とするプランが両者で検討された。また21日には、楽天の取締役が長野市に本拠地、準本拠地として公式戦開催を打診したことが明らかになっていた。しかし最終的に決断したのはライブドアが本拠地として申請した「仙台」。三木谷社長は「1つは球団が東北にないこと。もう1つは、色々な地方自治体の人と話をして野球に対する熱意が高いこと。神戸、大阪から強いラブコールを受けたが(保護地域の問題などで)難しいという結論に至り、断腸の思いで諦める」と説明した。
楽天が競合覚悟で「仙台」を決断した背景には、他地域では参入審査で不利になるとの考えがあったようだ。神戸、大阪とも阪神と近鉄、オリックス合併球団のダブルフランチャイズとなっており両球団の反発は必至。長野では集客面に不安がある。仙台ならば、本拠地審査ではライブドアと同条件。企業規模やスポーツビジネスの実績では明らかに楽天が上回っており、審査で有利に働く可能性が高まる。三木谷社長は「この2〜3週間の違いは大した違いではない。早い者勝ちって訳じゃない」とライブドアをけん制した。
楽天は24日にNPBに正式申請。ライブドアとともに参入審査を受けることになる。本拠地が競合となれば参入が承認されるのは1チームとなることは確実だが三木谷社長は「プロ野球機構に決めてもらう。球団の関係者から(申請が)認められるんじゃないかとの感触を得ている。勝算がなければやらない」と言いきった。
楽天の衝撃発表から約30分後、“先駆者”ライブドア社が緊急会見を行った。渡英中の堀江社長に代わり、熊谷副社長が「全くキャッチしていなかった。どういうふうにお考えなのか若干の不信感を持っている」と不快感をあらわにした。楽天の本拠地候補が転々としたことに「(仙台側とは)2週間前から話している。タイムアドバンテージがあるし、我々が有利」としたが、関係者との確認作業に慌てた様子だった。
同副社長はライブドア・ベースボールの中野取締役とともに21日からこの日の午前まで仙台に滞在。仙台ではJリーグ・ベガルタ仙台を運営する東北ハンドレッドの名川社長と会談。熊谷副社長は「一緒に協調していくというコンセンサスが得られた」と話したが、名川社長は「新球団設立は構わないが、計画の段階で一緒にやっていくのは無理ではないか」と温度差も見られた。帰京直後の楽天の発表は寝耳に水。「信じるしかないですね」と祈るばかりだった。
楽天の突然の仙台本拠地表明で、宮城県の浅野知事は「戸惑っている」としながら「2つの熱心な会社が意思表示したことは(プロ野球の)適地だということの表れ。希望の持てる話だ」と球団誘致にプラスとの考えを示した。出張先の都内で「2つはない。今の流れでやるしかない」とライブドア優先の方針を示したが、仙台市に戻った後で軌道修正し「(宮城県営球場を)ライブドアに優先的に使用させるのではなく、プロ野球に優先的に使わせるということ」と強調した。
プロ野球への新規参入を表明していたインターネット商店街最大手、楽天の三木谷浩史社長が22日、東京・六本木の本社で会見。既にIT関連企業ライブドア(堀江貴文社長)が名乗りをあげている宮城県仙台市を本拠地として、24日に日本プロ野球組織(NPB)に加盟申請する計画を明らかにした。後発となる三木谷社長だが、「勝算がなければやらない」と自信をのぞかせた。
衝撃の方向転換だ。本社で会見した楽天の三木谷社長は、神戸市、大阪市の本拠地断念をまず表明。そして衝撃の第3候補地を明らかにした。
ハイテク企業が並ぶ六本木ヒルズ森タワーに同居するライバル企業に真っ向勝負宣言。本拠地強奪の姿勢を鮮明にした。
本拠地選定は、この日昼過ぎまで続けられていた。三木谷社長は21日、太田房江大阪府知事と会談。近鉄の買収を持ちかけられ、この日午前まで最終折衝したが、最終的に拒絶された。そこで東北の財界関係者から持ちかけられた仙台本拠地案に“転向”。新規参入が議論の焦点になる協議・交渉委に合わせるかのように正式表明した。
ライブドアが浅野史郎宮城県知事の全面支援を受けていることに対し、楽天はまだ自治体と折衝にも入っていない。それでも人口100万人の大都市で、野球熱が高く、既存の球団がない仙台市はマーケットとしては魅力的。また、田中康夫知事が長野県への球団誘致を表明する中、長野市でも年間10〜15試合を行う計画を立てている。三木谷社長は「知事の意向もあるだろうが、皆さんでどちらがいいかご判断していただければいいと思う。(パ・リーグ)7球団はないでしょう」と断言した。
ライブドアに先行されても、新規参入球団を審査するのはNPB側。型破りなライブドアは、オーナー側に好印象を与えているとは決して言えない。ネット業界を代表する三木谷氏は西武・堤オーナー、オリックス・宮内オーナーとも親交がある。盤石の企業体質を誇る楽天が、あえてライブドアと同じ本拠地に選定し、参入申請すれば、競合しても仙台を勝ち取れる−。逆転は十分可能だとの計算だ。
「勝算?勝算がないとやらないタイプなんで」。口ぶりは謙虚だが、“同じテーブルに着けば落ちるはずはない”という自信を見せた。IT企業から球界参入をにらむ39歳の青年実業家が、球界再編の最終局面で豪腕を発揮した。
ライブドアに続き、楽天が仙台市を本拠地とする新球団設立を表明したことに、地元からは一様に驚きの声が上がった。宮城県の浅野史郎知事は出張先の都内で「悪い気はしないが、困った状態」と正直な反応。同県は既にライブドア側と交渉についているが、宮城県営球場について「ライブドアに優先的に使用させるのではなく、プロ野球に優先的に使わせる」との考えを示した。
仙台市の藤井黎市長は「娘1人に婿2人。東北の潜在的可能性が評価されて嬉しい」と笑顔を見せつつも「二兎を追う者は一兎も得ずということにならないように」と慎重。「どちらがいいか」の問いにも「戸惑う。どちらが来ても仙台に末永く定着してほしい」と話すにとどめた。
仙台でドーム球場の建設を提唱してきた『宮城野ボールパーク構想推進協議会』相談役の菊地博文県議は「戸惑いがあるが、嬉しい悲鳴。プロ野球の東北への新規参入は達成したようなもの」と大歓迎。「できることならライブドアと楽天が共同で新球団を作ってくれないかと思っている」とも期待を込めた。
楽天の仙台本拠地プランは、ライブドアの堀江貴文社長が欧州出張に出発後、数時間して東京・六本木の本社に届いた。これを受け、熊谷史人副社長らが緊急会見。楽天に対する不信感をあらわにした。
幹部2人は午前まで仙台に出張し、関係機関と協議していた。午前はJ2仙台の幹部と会談。今季限りで廃部となる社会人野球JTの球場、合宿所、室内練習場を宮城県を介して譲り受けることでも基本合意した。そんな中で寝耳に水の楽天の発表。熊谷副社長は「楽天が仙台でやりたいという情報は全くなかった」と動揺を隠せなかった。
今後はNPB側の審査が始まる。「財務体質的な部分、時価総額、売上実績は楽天さんに弱冠劣っているが、球団を運営する上で大差はない。最後は自治体との協力関係を築けるかが最後の判断基準になると思う」と同副社長は強調した。
阪神の久万俊二郎オーナーは、球界への新規参入を目指す楽天が仙台市を本拠地として加盟申請すると明らかにしたことを受け「新しい球団が新しい場所でやるのは大変だが、球団が分散するのはいいこと」と歓迎の意向を示した。楽天は当初、本拠地に神戸市を希望しており、同じ兵庫県を保護地域とする阪神が反発していた。
楽天・三木谷社長の会見を受け、大阪府の太田房江知事は「残念。一昨日(20日)の時点では大阪(を本拠地にする)と明言したのに何があったのか」と落胆を隠せなかった。太田知事は20日に同社長と会談。この日午前は「楽天が大阪を本拠地にすることに確信に近いものを得た」と自信を見せていただけに「近鉄売却を含め、大阪は最後まで頑張らなければならない」と諦めきれない様子だった。
日本プロ野球組織(NPB)側が歩み寄り、来季からの新規参入を容認する姿勢を見せた22日の協議・交渉委員会。労組・日本プロ野球選手会の古田敦也会長は「球団を減らす気はないといわれた」と勝利の手応えを口にする半面、「スキを見せちゃあかん」と23日の交渉にさらに強い姿勢で臨む構えを見せた。一方、これまで来季の新規参入に慎重だった巨人、パの球団首脳らはスト決行に至った前回交渉から態度を一変。来季12球団を歓迎する意向を表明した。
約4時間半の交渉を終え、会議室の扉を開けた古田会長。悲壮な表情は消えたが、慎重な態度を崩すことはなかった。「先週に比べて機構側から具体的な提案を頂いたのは確か。もう(球団数を)減らす気はないと言われた。信用していいでしょう。来季に向けて元(6・6)に戻す方向でやってくれるんじゃないかな」。細かい提案の中身は「もっと詰めないと」として明かさなかったが、来季の12球団維持に確かな手応えを感じている様子だった。
選手会は17日の労使交渉で新規参入は『05年から』とする主張を断固として貫き、日本プロ野球史上初のストライキを決行。経営者だけでなく選手、ファンも痛みを伴う格好で球団削減の流れにストップをかけた。
選手会の強い意志の前にスト後初の労使交渉でNPB側は態度を軟化。24日に参加申請を行う楽天を承認し、来季からの新規参入を認める方針だ。古田側にもこうした確かな具体案が提示されたからこそ、経営者側を「信用していい」と判断できた訳だ。ただ、その半面「書面になると違ってくる。正直、明日にならないと分からないよ」という慎重な言い回しも見せた。前回は細かな文言の行き違いからスト決行となった経緯もあり、さらに近鉄とオリックスの合併球団のプロテクト選手の問題、エクスパンション(拡張)ドラフトなど選手会側の提案については「明日、回答するということだった」。経営者側の出方しだいでは、再び選手会内部に強硬意見も生じかねない状況だ。
この日の中日戦の試合前に「会見の顔つきが和らぎましたね」という同僚選手からの声に「スキを見せちゃあかんな」と答えたという古田。3ヶ月の長期戦となった古田会長の闘い。交渉は最後の山場を迎えようとしている。
労使の話し合いが進む中、近鉄の礒部公一選手会長だけが強硬な姿勢を崩さなかった。「なぜ選手の自由を奪うのか。プロテクトでメリットを得られるのはオリックスだけ。経営者の考えも理解できますが、もっと選手の意見を聞いてほしい」とプロテクト拒否権と移籍の自由を強い口調で訴えた。さらに、来季から新規参入球団が誕生した場合、「今のバファローズをバラバラにしたくない」とチーム丸ごとの移籍を主張。23日の会議では“台風の目”となりそうだ。
経営者側が新規参入時の加盟料60億円などを撤廃し、預かり金制度導入を決めたことについて、公正取引委員会の上杉秋則事務総長は22日の定例記者会見で「以前よりも分かりやすくなった気がする」と話した。新規参入については「独禁法上問題があるのは正当な理由がないのに参入を拒否された場合であり、現段階でコメントすることはない」とした。
民主党の仙谷由人政調会長は22日、党本部で記者会見し、球界再編について「ストを回避しながらプロ野球が拡大、発展し、地域活性化の核となるための新たな『統治機構』を確立すべき」と日本プロ野球組織(NPB)の抜本的な組織改革が必要との考えを強調した。同氏はプロ野球に関する民主、共産両党議員の懇談会筆頭発起人。また、共産党の志位和夫委員長も、事態収拾に向けオーナー側の譲歩が必要との認識を示した。
新規参入の時期をめぐり、選手会と決裂した前回の労使交渉がウソのような展開となった。巨人の清武球団代表は22日の交渉後、来季の球界運営について「(新規参入の)審査をして、相応しい企業なら受け入れるのは当たり前」との見通しを語った。
17日には12球団を代表してロッテの瀬戸山球団代表と、選手会の古田会長、さらに松原事務局長で延長・別室交渉のかいもなく、球界初のストに突入。清武代表は最後まで選手会が要求した「05年からの新規参入」との文言を認めず「誠意を持って交渉」として、選手会の強硬派弁護士らの猛反発を買った。だが、やはりスト決行の衝撃は大きかった。今週末の第2波ストは、東京ドームの阪神戦を直撃する。18日から2日間決行されたストでは経営者側の経済的な損失は約19億円と試算された上に、決行後も世論のスト支持は変わらなかった。
あるパの球団幹部は今週に入り「前回の決裂では、選手会側の要求を巨人を中心とした球団が強硬に反対した。ストを回避するか否かは巨人が譲歩するかが鍵だ」と分析していた。「言葉じりの問題」と強調したが、巨人が1リーグを求める西武、オリックスらの要望を受ける形で一時は旗振り役となり、そのことが選手会の不信を増大させたのは事実だ。
球界に影響力のある巨人の歩み寄りで、パの各球団も同調。オリックスの小泉社長は来季の新規参入は審査が必要としながらも「来季から(パの)6球団は賛成。大歓迎」とまで言い放った。「誰しもパが5というのが歪なのは分かっている。基本的にはパの球団を救うために色々考えてきた。同じことだと思う」と清武球団代表は『10球団1リーグ』から『5・5』、『6・5』…と再編の流れは変わっても、巨人のスタンスは変わらなかったと強調した。再編の火種は消えないが、来季12球団2リーグ維持の方向性は、巨人の軟化でひとまず定まった。
労組・日本プロ野球選手会と日本野球組織(NPB)の協議・交渉委員会(労使交渉)が22日、名古屋市内で開かれ、選手会が25、26日に構える第2波のストが23日にも回避される見通しとなった。NPBは来季の新規参入について「審査した上で受け入れることは問題ない」と表明。選手会もこの譲歩案を評価した。日本球界が来季12球団維持へと動き出した同日、インターネット商店街最大手の『楽天』は、仙台市を本拠地として24日に加盟申請すると表明。IT関連企業の『ライブドア』とともに審査を受けるが、財務状況などから『楽天』の新規加盟が濃厚だ。
ストライキの痛みを分かち合った労使に、敵対ムードは薄れていた。名古屋市内のホテルで行われた労使交渉。午前11時から約5時間半の交渉を経て、経過報告に臨んだNPB側の選手関係委員長、ロッテ・瀬戸山球団代表が言いきった。
ほぼ時を同じくして、東京・六本木で『楽天』の三木谷浩史社長が24日に加盟申請し、本拠地を17日に申請した『ライブドア』と同じ仙台市にする考えを明かした。ライバルと同じ土俵で、新規参入の審査を受けることを宣言。この偶然とは思えないタイミングでの表明が、妥結ムードを高める追い風になった。
瀬戸山球団代表は、選手会が求めていた審査の透明性確保を強調。指導については「例えば球場など」と、老朽化が指摘される仙台宮城球場を連想させた。各球団代表からも「審査は公開してもいい」(ダイエー・佐藤球団代表)「許されるなら(2社を)同時に。結果は10月に出るような形になればいい」(ヤクルト・倉島球団常務)と、ガラス張りの『参入コンペ』を要望する発言が相次いだ。
審査機関は実行委員会の下に小委員会を置き、第3者機関の監査法人に財務内容を精査させる方針を選手会に示した。実行委員会議長の豊蔵会長は「健全性、安定性、継続性」などを基準に挙げた。楽天とライブドアでは現状、財務力、売上高で圧倒的に楽天が優位に立つ。
しかも三木谷社長は、オリックス・宮内オーナーとも懇意。巨人・渡辺前オーナーはライブドアについて「ボクの知らない企業」と発言したが、楽天は一時は1リーグ推進で共同歩調をとった宮内氏の“身元保証”つき。両社をガラス張りの参入コンペにかければ、並列審査の行方は自ずから明らかともいえる。
選手会は、決裂した前回協議からオリックスと近鉄の合併については事実上容認。NPBが曲折を経て、新規参入を容認して来季12球団維持へと転換し、妥結への最大の障害はクリアされた。23日の労使交渉では新規参入の審査基準、プロテクト、代替試合などについて細部を詰めて合意文書の作成に入る。ストライキの痛みを味わった労使は、楽天の参入を契機に、交渉妥結に至ることが濃厚になった。
楽天vsライブドア・比較表 | ||
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楽天 | ライブドア | |
三木谷浩史(39) | 社長 | 堀江貴文(31) |
米ハーバード大学経営大学院でMBA取得 | 学歴 | 東大中退 |
平成9年2月 | 設立 | 平成9年8月 |
東京都港区六本木 | 所在地 | 東京都港区六本木 |
IT関連 | 業種 | IT関連 |
インターネット商店街の運営など | 事業内容 | プログラムの開発、販売など |
716人(30歳) | 従業員数(平均年齢) | 1288人(29歳) |
398億2500万円 | 資本金 | 239億6400万円 |
206億2300万円 | 売上高 | 80億9100万円 |
平成12年4月(ジャスダック) | 上場 | 平成12年4月(東証マザーズ) |
DLJディレクトSFG証券、マイトリップネット | 主な買収 | 日本グローバル証券、バリュークリックジャパン |
ヴィッセル神戸(J1) | 所有球団 | なし |
[注]売上高は中間連結決算
日本プロ野球組織(NPB)と労組・日本プロ野球選手会の団体交渉となる「協議・交渉委員会」が22日、名古屋市内のホテルで開催され、NPB側は新規参入球団について「審査を通れば、来季の参入は可能」とする見解を提示。来シーズン、セ6、パ6の12球団制維持の可能性を示した。選手会側も態度を軟化。23日の交渉で妥結、25日、26日に予定されたストライキ第2波が回避される見通しとなった。また、新規参入を目指すインターネット仮想商店街大手の楽天が、仙台を本拠地にして24日にNPBに申請すると発表した。
5時間を超える交渉が終わり、会見場の金屏風の前に座った伊藤修・選手会担当顧問(中日参与)は「明日も継続審議となるが、いい雰囲気の中で話し合いが進められた」と口火を切った。「まだ、微妙な段階ですので、会見ではなく、報告とさせていただく」と慎重な口ぶりだったが、「決裂」の2文字は見えなくなりつつある。
NPB側はストの回避を優先順位の第1とした。そのために大幅な譲歩案を提示。前回、17日の交渉では選手会が「来季、12球団に戻すことを最大限努力する」と求めたのに対し「来季以降の新規参入の審査を、最大限の誠意を持って行う」と譲らなかった。しかし、この日はセ、パが足並みをそろえ「現在、新規参入を求めている企業がある。きっちりした審査を行い、それに通れば来季からの参入は可能ではないか」(伊藤顧問)と、来季のパ・リーグ6球団復帰に言及した。
NPB側は根来泰周コミッショナーが提案した「新規加入球団審査委員会(仮称)」を早急に立ち上げ、審査過程をガラス張りとすることを選手会に伝えた。ヤクルト・倉島球団常務は「透明性のある審査をして、よければ、来季から仲間に入っていただく」と断言。「透明性ということでは、公開にしてもいいのでは」とダイエー・佐藤球代表が言うように、選手にも情報開示する可能性にまで踏み込んだと見られる。また、審査条件についても具体的には明らかにされなかったものの提示された。
午前11時のスタートからおよそ30分間、労使双方が同じテーブルで話し合いを持った。その後、それぞれ別の部屋に待機。これまで通り、古田会長や伊藤顧問、瀬戸山選手関係委員長(ロッテ代表)らが条件をぶつけた。しかし、今回は双方の顧問弁護士同士の話し合いはなく、あくまで当事者同士が生の意見を戦わせた。「今後、もう球団を減らすことはない、と言われた。そう言われても疑うところがあったが、無理やりに減らす気はないと言ってくれた。信用していいのでは」と古田会長は話した。
NPB側は新規参入が認められた場合、米大リーグに倣い、選手は各球団から供出する「エクスパンション(拡張)ドラフト制」で集めることなども想定。また「申請書に落ち度があれば、こちらが指導する」(瀬戸山委員長)と最大限の誠意を燃えさせている。「パが5球団というのがいびつだと誰もが分かっている。しかし、パが6球団という前提ではない。公正な審査をして、通れば増えるということ」と巨人・清武代表は強調したが、スト回避に向けての流れができたことは間違いない。
古田選手会長は、交渉の手応えを確認して午後3時30分に途中退席し、中日戦が行われるナゴヤドームへ移動した。「来季、何とか12球団を維持できる形にもっていきたい。(ストを打ったことで)はっきりとおっしゃってくれるようになった。信用していいんじゃないですか」雑念を払い、フリー打撃に汗を流し、試合に集中した。
前回の交渉で決裂し、史上初のストへと導いたのは、「来季から」(選手会)か「来季以降」(NPB)か、新規参入における合意文書のたった2文字の文言の相違だった。松原徹事務局長は「もう文言はやめようと。文言よりも、実際にやってくれるかというのが感じられた。『最大限の努力』(という文言)がなくても、やってくれれば、それが最大限の努力。結果ですから」と、NPBの姿勢から、これまで見えなかった“誠意”を感じ取ったようだ。
前回は新規参入の時期で止まっていた話を、今回はさらに踏み込み、既存球団から選手を供出するエクスパンションドラフトなどを提案。23日午前11時にNPB側が書面で回答することになった。近鉄・礒部が主張するオリックス・近鉄合併後の選手契約問題など望みが薄い部分もあるが、その回答文書に同意できれば、早期妥結、スト解除となる。
試合後、古田は「書面になると変わるからね。それを見てから。明日にならないと分からない」と慎重さを取り戻し、球界の明るい未来が見える文書であることを祈った。
プロ野球への新規参入を表明している楽天・三木谷浩史社長が22日、東京・港区の楽天本社で記者会見。当初希望していた神戸、大阪を断念し、宮城・仙台市をフランチャイズとして来季参入を目指す方針を明らかにした。既にライブドア(堀江貴文社長)も仙台をフランチャイズとする加盟申請を行っており、IT関連企業同士の“杜の都争奪戦”が勃発。楽天は、24日に日本プロ野球組織(NPB)に対し加盟申請を行う。
IT業界の花形は“ウルトラC”を用意していた。三木谷社長は「現在考えている第1候補は仙台です」と、既にNPBに加盟申請を行ったライブドアに続いて、宮城球場を本拠地として来季参入を目指す決意を語った。
参入表明当初、三木谷社長は出身地の神戸をフランチャイズとする意向を持っていた。さらに近鉄にも買収を打診するなど、大阪も有力候補として交渉を重ねてきた。だが、兵庫と大阪はオリックス・近鉄の合併球団が07年まで保護地域としているため「ラブコールを受けたが、壁を崩すのは困難。断腸の思いで諦めた」と明かした。
最終的に狙いをつけたのは宮城・仙台市。ライブドアに“挑戦状”を叩きつけた形だ。仙台を選んだ理由について、三木谷社長は「1つは東北に球団がないこと。もう1つは野球に対する熱意が高いこと」と説明。宮城球場を本拠地とし、長野市(長野オリンピックスタジアム)でも年間10〜15試合を行うという。選手は合併球団から漏れた選手を受け入れ、監督は現在、リサーチ中。来季開幕までに球場改修を行い、設備・合宿所は既存のものを利用する方針。今季限りの解散が決まっているJTから譲り受ける可能性が高い。この日午後には楽天の吉田敬常務取締役らがNPBを訪ね、申請方法を確認。ライブドアに6日遅れての“参戦”となるが「期限を守ってない訳でもない。勝算がなかったらそんなことはしない。早い者勝ちではない」と“宣戦布告”した。
同日の協議・交渉委員会では、2005年からの新規参入実現の可能性が浮上。審査委員会の設置を提案している根来コミッショナーも、早急な立ち上げに向けて人選に入っている。「1番重要なことは、これからの野球界が新しい血を受け入れて、変革再編されていくこと」と三木谷社長。NPB側が決めた保証金25億円、入会金5億円についても「問題ない」という。“杜の都”をめぐって、IT業界をリードする若手社長2人による、待ったなしの争奪戦が始まった。
楽天は経営展開として、本業のインターネット事業を活用する戦略を打ち出した。一足早く申請し、仙台で「激突」することになったライブドアも、同じネット企業として同様の方針で、プロ野球関連サービスをネットで提供することで、主力ビジネスの収益を拡大できると考えている。楽天の三木谷浩史社長は、具体的には
などを行うと表明。ライブドアも、ネット上での試合のチケット販売や、ブログ(公開ウェブ日記)による選手とファンの双方向コミュニケーション―などのビジネスモデルを示している。
プロ野球への新規参入を目指す楽天の三木谷社長が「近鉄買収の可能性も視野に入れている」と一部で報道されたことを受け、近鉄の小林球団社長は「報道では聞いていますが…」と困惑の様子だった。三木谷社長は「(参入後)すぐに動けるので、近鉄の買収が望ましい」と発言。これに対して、小林球団社長は「私ども1社で言えることではない。合併は相手があることで、近鉄だけでどうこう言えることではない」と話した。「機構から“話を聞いてみたら”と言われたら、聞かなきゃいけないかもしれない」とも続けたが、既にオーナー会議でも合併の正式承認が出ており「今さら何を…」と言いたげだった。
ライブドアが、楽天の仙台本拠地発言に不快感をあらわにした。海外出張中の堀江社長に代わり熊谷史人副社長が22日、都内で会見、「楽天側は神戸、大阪、長野と(本拠地候補が)出たのに、仙台とはどういう気持ちなのか。若干の不信感を覚えます」と反発した。
ライブドアが宮城球場(仙台市)をフランチャイズとする参加申請書を日本プロ野球組織(NPB)に提出したのは16日。同副社長は「(楽天の)会見は驚きです。サッカーとの融合と言って神戸に乗り出したのはどうなったのか」と憤りを隠せない様子だった。
地元との協議も進めている。同副社長らは21日夕方仙台市入りし、球団誘致活動をしている市民団体「仙台市民球団企業組合」や県の関係者と会談。この日午前もサッカーJリーグ、ベガルタ仙台を運営する東北ハンドレッドの名川良隆社長と会談し、両社での連携のあり方を話し合ったばかり。ライブドアはベガルタ仙台とのファン交流やユニホームに互いの名前を入れるなどの連携策を模索しているが、一方の名川社長は「計画の段階から一緒にやっていくのは急である」として慎重な姿勢。それでも「仙台以外にはあり得ない」と本拠地を変えるつもりはなく、プロ野球の歓迎を口にした宮城県の浅野史郎知事についても「(同知事に)事実関係を確認したところ、知事からはライブドアを全面的に支援していくとの返事をもらった」というコメントを発表し、1歩も引かない構え。堀江社長は24日に帰国予定。週明けにも仙台入りし、関係者へ直接、熱意を伝えるつもりだ。
楽天からの突然のラブコールを受け、宮城県の浅野史郎知事は22日、「2つの熱心な会社が意思表示したことは(プロ野球の)適地ということの表れ。希望の持てる話だ」と、球団誘致にプラスとの考えを披露した。
出張先の東京都内では「ライブドアを優先的に使用させる」と話したが、仙台に戻った夜になって「ライブドアに優先的に使用させるのではなく、プロ野球に優先的に使わせる」と方向転換。楽天からの事前の打診はなかったものの「一応、話を聞かなければならない」と今後の話し合いにも応じる構えだ。
また「より地域に密着した球団ができることにつながれば」(宮城野ボールパーク構想推進協議会・松坂宏会長)、「どっちが来ても嬉しい」(仙台市泉区の20代男性)など、地元も楽天社長の仙台本拠地発言を好意的にとらえているようだ。
オリックスの宮内義彦オーナーは22日、東京・港区の自宅前で報道陣に対応。05年から新規参入を目指すライブドアが仙台をフランチャイズに希望していることに対し「全国展開するというのは、僕は喜ばしいことだと思う」と、歓迎する意向を見せた。また、一時は神戸を本拠にすることを望んでいた楽天も、仙台をフランチャイズにすることを表明。参入時期などには触れなかったが、一時は2軍(サーパス神戸)の本拠地移転をほのめかしていた同オーナーだけに「将来的にはいいこと」と話した。
近鉄・礒部公一選手会長が、孤立無援に追い込まれた。オリックスとの合併に伴って行われるプロテクトについて、近鉄選手の自由を奪うと猛反発する礒部の意見は、現実的な解決策を模索する話し合いの中で完全に浮き上がった。
この日の協議では新規加入球団ひとつを加えた来季のセ6球団、パ6球団維持に道筋がつけられたが、礒部だけはその流れに逆行。「経営の理由での統合なのに、どうしてプロテクトが出てくるのか」と切り出すと、続けて「(合併の)メリットはオリックスだけ。強くするだけの合併なら他球団もするかも」とオリックス・近鉄の合併そのものに異議を唱えた。
議論が来季からの新規参入に移ると、今度は「チームをバラバラにしたくない。仮に新規参入があるなら、近鉄で育った“遺志(遺産)”をそのまま、入ってくる球団に持っていきたい」と表明。近鉄ナインを丸ごと新球団に移籍させるという、法外な要求まで突きつけた。
選手会の古田会長、松原事務局長はともに経営者側の歩み寄りを評価し、妥結へ前向きな発言に終始。円滑な議論の妨げになると判断したのか、礒部発言については無視を決め込んだ。NPB側もあまりの強硬姿勢に困惑し、大阪ドームでのオリックス戦に出場予定だった張本人を23日の協議・交渉委員会に出席させることを要請。球団側からも了承が得られた。
「(経営者を)本当に信じていいものかどうか。移籍の自由にこだわる?そうです」と強硬姿勢を崩していない礒部。笑顔で妥結を迎えられるか、強硬論者の動行が注目される。
オリックスの三輪選手会長は22日、機構側の要請を受け、23日の協議・交渉委員会に“完全出席”することが決まった。23日は近鉄戦(大阪ドーム)が予定されているが、試合前に伊原監督と会談した三輪は「監督に許可をもらったので、明日は最初から最後まで(会議に)出ます」と宣言。この日は僅か2時間あまりで退席したため言葉少なだったが「オリックスのスタンスは変わりません。単独で球団維持ということです」と、譲らない構えを見せた。
この日の交渉では、18、19日にストで中止になった試合の代替試合については議題に上らなかったという。また、ストによる賠償請求についても「全ての球団が権利を留保している状況」と近鉄・小林球団社長は話し、賠償請求に踏み切るかどうかは、まだ、未定の状況だ。
ダイエー・王貞治監督は22日、ストで流れた2試合の代替試合の有無を巡ってドタバタするNPB側の対応に苦言を呈した。「自分のところの利益だけで言うと世間にバカにされるし、選手会にもなめられる。球団の利益とかを超越した問題として話し合わないといけない」と、現場を預かる身としていらだちを隠さなかった。
自軍は21日にプレーオフ1位進出を決めたものの、日本ハムとロッテの3位争いは、2試合の取り扱いで大きく変わってくる。だが、「そういう形でやると選手会がストをやりやすくなる。雨天中止と一緒で痛みを感じなくなる。悲しいことを繰り返さないためにどうするかを考えないといけない」と、この期に及んで利害を絡み合わせ、前に進めない状況が許せない様子。
個人的にはストで流れた西武との完全決着を熱望しながら、損得勘定での代替試合の開催は中止を訴えずにいられない。「今週末は我々(パ・リーグ)には関係ないけど、ストは絶対阻止しないといけない」もう2度と球音を消さないため、球界全体が利害抜きの視点を持つ必要性を唱えていた。
楽天の三木谷浩史社長が宮城・仙台市を新球団の本拠地にすると表明したことに対し、大阪府の太田房江知事は22日、落胆の表情を見せた。テレビのニュースを見て知ったという知事は「残念。一昨日(20日)の時点では大阪(を本拠地にする)と明言したのに何があったのか」と寝耳に水の様子。太田知事は20日に三木谷社長と会談。22日の午前には「楽天が大阪を本拠地にすることに確信に近いものを得た」と自信を見せていただけに、同日午後は「近鉄売却を含め、大阪は最後まで頑張らなければならない」と諦め切れない様子。仙台希望の理由については「大阪ドームのフランチャイズ問題が難しいと考えたのだと推測する」と述べた。
シダックスの志太勤会長がテレビ朝日系の情報番組「モーニング」(午前8時〜9時55分)に録画で出演。プロ球界参入構想について「ウチは(プロに)参加するのが目的じゃない。『野球界のためにお前、何とかしろ』と言われればやるというスタンス」と話した。球界再編について周囲には「三木谷さんや堀江さんが申請してOKとなれば、それはいいこと」と漏らしていることから、仙台での球団経営を目指すライブドア、楽天の動向を見守ることになりそうだ。
松山市・中村時広市長は22日の市議会一般質問で、プロ野球再編問題について「個人的見解だが、四国というエリアで試合数や連戦をカバーできる運営が可能なのではないか」と述べ、四国4県が共同で球団運営できるとの考えを示した。松山には今季、プロ野球がオールスター戦を開催した「坊っちゃんスタジアム」がある。中村市長はさらに、松山市ともう1つの都市による「ダブルフランチャイズ制」でも球団運営は可能との見解を示した。
阪神の久万俊二郎オーナーは22日、プロ野球へ新規参入を目指す楽天が仙台市を本拠地として加盟申請すると明らかにしたことを受け「新しい球団が新しい場所でやるのは大変だが、球団が分散するのはいいこと」と歓迎の意向を示した。楽天は当初、本拠地に神戸市を希望しており、同じ兵庫県を保護地域とする阪神が反発していた。また久万オーナーは同日、大阪市内の電鉄本社で星野仙一シニアディレクターと会談したが、来季の契約については結論が出なかった。
楽天が仙台市を新球団の本拠地にすると表明したことについて、大阪府の太田房江知事は22日、落胆の表情を見せた。「残念。一昨日(20日)の時点では大阪(を本拠地にする)と明言したのに何があったのか」と話した。太田知事は20日に三木谷社長と会談。22日午前は「楽天が大阪を本拠地にすることに確信に近いものを得た」とまで話して、新球団誘致に自信を見せていただけに、同日午後は「近鉄売却を含め、大阪は最後まで頑張らなければならない」と諦めきれない様子だった。仙台希望の理由については「大阪ドームのフランチャイズ問題が難しいと考えたのだと推測する」と分析した。