ロッテ瀬戸山隆三球団代表が来季公式戦開催準備のため、成田発の航空機で韓国入り。開催地の釜山と仁川、韓国野球委員会(KBO)、韓国ロッテを表敬訪問する。
オリックス入りを拒否していた前近鉄の岩隈久志投手が22日、金銭トレードで楽天に移籍することが決まった。オリックス小泉隆司球団社長が神戸市の球団事務所で明らかにした。偶然にもテレビ収録のため楽天本拠地の宮城県を訪れていた岩隈は、仙台市内で会見。「開幕投手、20勝」を目標に掲げた。「岩隈問題」は、岩隈の希望が全面的にかなう形で決着した。
運命の分配ドラフトから44日。岩隈が心の底から笑う日が訪れた。会見の第1声は、オリックスへの素直な気持ちだった。「小泉社長、中村GM、仰木監督など、オリックス関係者の方々に感謝の気持ちでいっぱいです」。最終的に意思を尊重してくれた誠意に対し、感謝の言葉以外は浮かばなかった。
重い肩の荷が下りた。「新しい球団で新しい気持ちでやれます」と喜んだが、すぐに表情を引き締めた。意思を通すことが、これほど球界を巻き込む騒動に発展するとは思わなかった。責任は重く受け止めている。「球界やファンに迷惑をかけた分、プロ野球全体を盛り上げたい。個人的には防御率のタイトル、20勝、開幕投手も狙います」と決意の言葉を並べた。
楽天には、運命を感じずにはいられない。局面が大きく動いたとき、偶然にも岩隈はテレビの仕事で楽天本拠地の宮城県にいた。「本当に嬉しい偶然です」。この日は、義父で楽天コーチの広橋公寿氏夫妻、妻子ら家族8人と宮城県塩釜市内のホテルの一室にいた。午後6時ごろ、オリックス小泉社長から電話を受け「自分の意思を尊重すると言われました」。吉報に、家族全員と握手して喜びを分かち合った。苦しい時を支えたのは、最愛の家族だった。
実は、この日収録を終えたテレビ番組も「家族愛」がテーマ。初の宮城訪問は、一生忘れられない思い出になった。今1番したいことに「家族に心配をかけたので、家族サービスというか一緒にいて落ち着きたい」と笑って答えた。家族に支えられた岩隈が“本拠地”で笑顔の封印を解いた。
岩隈の年度別成績 | ||||||||||||
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年度 | 所属 | 試合 | 勝利 | 敗戦 | 勝率 | 投球回 | 安打 | 三振 | 四死 | 失点 | 自責 | 防御率 |
01 | 近鉄 | 9 | 4 | 2 | .667 | 43 2/3 | 46 | 25 | 16 | 28 | 22 | 4.53 |
02 | 近鉄 | 23 | 8 | 7 | .533 | 141 1/3 | 132 | 131 | 50 | 62 | 58 | 3.69 |
03 | 近鉄 | 27 | 15 | 10 | .600 | 195 2/3 | 201 | 149 | 51 | 85 | 75 | 3.45 |
04 | 近鉄 | 21 | 15 | 2 | .882 | 158 2/3 | 149 | 123 | 38 | 57 | 53 | 3.01 |
通算 | 80 | 42 | 21 | .667 | 539 1/3 | 528 | 428 | 155 | 232 | 208 | 3.47 |
オリックス小泉球団社長がカメラフラッシュの中で岩隈断念の決断を発表した。「双方が譲らなければ、来シーズンから新しいスタートを切ろうとしているプロ野球、オリックス、そして岩隈選手の将来に大きな影響がある。宮内オーナーの判断により、岩隈選手を東北楽天ゴールデンイーグルスに金銭トレードすることになりました」。徹底抗戦を宣言していたはずの同社長は、方針転換を「超法規的措置」と表現した。
袋小路に追い込まれた末の結論だった。11月4日に岩隈をプロテクト入りさせる直前、選手会と「残留を説得できなければ楽天に金銭トレード」という取り決めを交わした。これ自体「9年でFAになる」というルールを無視したものだが、隠密裏に説得できると判断して同意。交渉を続けてきた。が、岩隈の楽天志願は揺るがなかった。万策尽きた形で前日21日、宮内オーナーに状況を報告。「断念やむなし」を了承されたようだ。
失ったものは大きい。小泉球団社長は「移籍金?リーズナブルな線になる」と話しており、楽天から2億円程度の移籍金を受け取る模様。だがエース流出の痛手は金銭で測れない。元近鉄礒部の楽天入りを認め、中村のメジャー挑戦を容認してきたが、また1人「顔」を失った形。球団イメージの悪化も避けられない。保有権の問題を曖昧にする「取り決め」を交わしたことで選手の“我儘”を許す前例をつくった責任も重い。今後、戦力整備、球団イメージの回復が急務となる。
オリックス中村GMは「残念、無念極まりない」と唇を噛んだ。礒部に続いて近鉄の主力が楽天へ。思うように戦力が整わないが、補強については否定した。「岩隈ほどの投手の手当ては考えられない。ただ、先発陣は前近鉄のバーンとパウエル、川越が軸になるが今季の3人合計白星はわずか「21」。一難去って、本当の戦いはここから始まる。
楽天キーナートGMは「軸ができたことで、チームは大きく変わる。優勝争いできる戦力になる」と手放しで喜んだ。これまで獲得した投手22人(外国人と新人除く)の今季合計勝ち数はわずか「26」。岩隈の15勝は、その半分を上回る。先発陣は新人の一場、金田(今季2勝)川尻(4勝)小倉(4勝)高村(2勝)、そして未知数の外国人だっただけに、岩隈加入の大きさは計り知れない。
オリックス仰木監督は球団広報を通じて「オーナーの決断を聞いてスッキリした思い」とコメントした。一時は岩隈交渉の前面に立ち、2度にわたり食事の席で思いをぶつけた。願いは届かなかったが、岩隈から「監督とは分かり合えた」と信頼を得ただけに、悔いは残っていない様子。「あとはみんなで力を合わせて、いいゲームができるよう頑張っていきたい」と来季を見据えていた。
楽天田尾安志監督は、岩隈をエースに即決した。都内でニッポン放送のラジオ番組「ショウアップナイターストライク」に出演。午後6時45分頃に一報を聞き「じっくりと(岩隈の話を)聞いてみたい」と話した。また「今年中に決まって良かった。いつ決着するか気になっていた」と岩隈の心情を気遣った。「岩隈君はエースです。パ・リーグを代表する投手ですから。(期待する)数字はまだ…。決まったばかりなんでね。ベストプレーをしてくれればいい」。親心を感じさせた。
ただ、手放しで喜ぶことは避けた。「有頂天にはなれない。オリックスにとっては苦渋の選択だったでしょう。大投手は自分のところにいて欲しかったでしょうから」と、言葉を選びながら慎重に話した。
番組終了後は「岩隈問題」長期化を受け、改革の必要性を訴えた。「色んな問題が起きた時に、決める人がいない。コミッショナー裁定で色んなことが決められるとか、そういう環境にしていかないと」。第2の岩隈が出ないことを願っていた。
岩隈獲得が決まった楽天の三木谷オーナーは無言を貫いた。神戸市内のステーキハウスで夕食をとった後、午後9時に報道陣の前に現れたが、口を閉ざしたまま車に乗り込んだ。オリックス小泉球団社長がトレードを発表したことは当然知っていたはずだが、心情に配慮して発言を避けたものをみられる。
セ・リーグ豊蔵一会長とパ・リーグ小池唯夫会長は22日、元ロッテ投手の小川博容疑者が強盗殺人の疑いで21日に逮捕されたことを受けて「NPB(日本プロ野球組織)として今後何らかの対応策を検討していかなければならない」と共通の認識を示した。
「プロ野球全体を貶めるような事件で残念」(セ豊蔵会長)「どういう事情でこうなったのか」(パ小池会長)と、球界両首脳は共に沈痛な表情を見せた。そして豊蔵会長は「構造改革委員会で話し合ってもらう」と明かした。来年1月25日にある同委員会にはNPBの全球団の代表と選手会長が集まる。社会人教育やセカンドキャリアの問題を取り上げ、実践に向けて動く絶好の機会となる。
パ小池会長も選手の指導教育を充実させていくなど「コミッショナー事務局と相談してできることからやっていく」と話した。今回はOB選手の不祥事だが、転ばぬ先の杖で現役から指導する必要性も強調。NPBは20年来新人研修を続けているが、今後はキャンプ期間などに警察当局などとも連携して研修活動を行うことや、年明けから前東京高検公安部長熊崎勝彦氏が顧問に就任するコミッショナー直轄のコンプライアンス(法令順守)部門の協力を得るなどして、より本格的に取り組んでいくことになる。なおこの日、捜査本部は小川容疑者を送検した。
一OBの逮捕から一夜明け、ロッテ関係者もショックを隠せなかった。小川容疑者のユニホーム時代を知る関係者は「気は弱そうだったが、怒るとカッとなる面があった」と振り返った。02年オフにロッテを退団後も、しばしば自宅に近い2軍のロッテ浦和球場を訪れ、若手に声を掛ける姿が見られたという。同容疑者が現役時代、広報を務めた手塚運営部長は「1度知った生活レベルは落とせなかったのかな」と残念がった。
労組・選手会もセカンドキャリアに向け、機構側と協力したい考えを示した。小川容疑者の逮捕を受け、両リーグ会長が対応策の必要性を口にした。既に選手会はセミナーを行うなどしてきたが、松原事務局長は「野球機構と一緒に、もっと幅広く取り組んでいきたい」と賛同した。「金銭の価値観など、現役時代から次の人生を少しでも意識していく必要があります」と話していた。
合併によるオリックス入団を拒否していた前近鉄の岩隈久志投手が希望する楽天に金銭トレードで移籍することが22日、決まった。オリックスの小泉隆司球団社長が神戸市内の球団事務所で記者会見を開き、宮内義彦オーナー(本社グループCEO)の判断として、説得の断念と楽天への金銭放出を発表。泥沼化の様相を呈していた移籍問題が決着し、岩隈は仙台市内で喜びの会見を行った。
会場入りした岩隈は緊急会見にもかかわらず、50人以上集まった報道陣を見て「数が多いですね」と思わず苦笑した。強い信念を貫き、夢をつかんだ。その第1声は自分の意思を尊重してくれたオリックスへの感謝の気持ちだった。
6月13日のオリックスと近鉄の球団合併構想発表から6ヶ月。育ててもらった近鉄球団への愛着が大きかった分、最後までオリックス入りには心が動かなかった。「合併問題に始まり、自分の中で辛い部分があった。長かったです…」。小泉球団社長からはこの日電話で「君の意思を尊重する」と言われ、まどか夫人(22)からも「良かったね」と優しい言葉を掛けられたという。その言葉で、自らの使命は楽天でのプレー、迷惑をかけた球界への恩返しをすることだと気持ちは切り替わった。
「今年獲れなかった防御率のタイトルを獲りたい。20勝を目標に頑張りたい。また野球ができる喜びを感じ、感謝の気持ちで野球をします」。現在楽天にいる投手の今季合計白星は26。今季15勝の岩隈は、1人でその半分を上回る。楽天では不動のエースとしての働きが求められる。「開幕戦は大事な試合なので(開幕投手を)狙っていきたい」と開幕投手宣言まで飛び出した。
田尾監督も都内で会見し「本当に核になる投手が入ってくれた。彼がいなかったときの構想とはまるっきり違う。ほかの選手にも好影響を与えてくれる楽天のエースです」と、ちょっぴり早いクリスマスプレゼントに表情は崩れっ放しだった。
「これから新しい気持ちでプロ野球全体を盛り上げ、楽しい野球を見せたい」。その引き締まった表情は「楽天・岩隈」としての決意表明でもあった。
午後6時半から神戸球場(前ヤフーBBスタジアム)内で会見した小泉社長は「双方譲らず、長期化させるのは球界や岩隈投手の将来に影響が出る。現状回復のためオーナー宮内が承諾した」と岩隈を楽天へ金銭トレードすると発表。21日に都内で同オーナーの承諾を得ての判断だった。
楽天の米田球団代表に連絡し、条件折衝に入った。金額は「非常にリーズナブル」と、近く正式に譲渡契約を交わす。
会見では苦悩が滲み出た。理事会、実行委員会でタンパリング疑惑を提起した楽天へのエース放出。「異常な事態に終止符を打つため」と主張の野球協約順守での保留権を手放した。「超法規的措置」と説明。9月23日労使合意でオリックス・近鉄と選手会が別室で「プロテクトでは選手の意思を尊重する」と申し合わせた点には具体的言及を避けた。「今となっては、どうであったかと言うつもりはない」「スト回避への私の判断に間違いはなかった」。
誤算は「近鉄の足高代表も“彼は問題ない”と話していた」と悔やむ意思確認。4度の説得も不調。水面下の弁護士間折衝も劣勢。全面対決で敗北が表面化する前に譲歩した。
合併球団オリックスは22日、入団を拒否していた岩隈久志投手を新規参入球団の楽天へ金銭トレードすると発表した。希望がかなった岩隈は同日、仙台市内のホテルで緊急会見。満面の笑みを浮かべて、新天地での「20勝&防御率タイトル」を誓った。これまで楽天が獲得した投手22人(外国人と新人除く)の今季合計勝ち数はわずか26。同投手の15勝は、その半分を1人で上回る数字で、事実上、開幕投手も決定だ。
極度の緊張状態から解放されたことが、その表情から分かる。黒のジャケット、黒のジーンズという軽装で会見場に姿をみせた岩隈は、満面の笑みを浮かべていた。
最後まで自分の意思を貫いた。この日、オリックス・小泉球団社長から直接電話を受け、「君の意志を尊重する」といわれた。岩隈は即座に「ありがとうございます」と回答。一連の騒動にやっとピリオドが打たれた瞬間だった。
正式な入団発表は後日となるが、それでも岩隈は自分の希望する球団でプレーできる喜びを素直に表現した。さらに開幕投手についても「こだわりたいですね」と口にしたが、楽天の現有戦力からすれば2年連続15勝を挙げ、今年は最多勝のタイトルを獲得した岩隈以外、その存在は見当たらない。
事実、これまで楽天が獲得した投手は22人(外国人と新人除く)で、今季の合計勝ち数はわずか26。先発陣として期待していたのは金田(今季2勝)、川尻(同4勝)、小倉(同4勝)、高村(同2勝)にラスやメイヨット。ベテラン勢はシーズンを通した体力に不安を隠せず、外国人選手は未知数な部分が大きい。今季、岩隈が近鉄でつけていた背番号『21』を空けて待った楽天にとっても悲願成就だ。
岩隈は自信のコメント。楽天で、そして東北で新たに羽ばたく。
岩隈久志の年度別成績 | ||||||||||
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年度 | 所属 | 試 | 勝 | 敗 | 回 | 安 | 振 | 球 | 責 | 防御率 |
平12 | 近鉄 | 1軍登板機会なし | ||||||||
13 | 〃 | 9 | 4 | 2 | 43 2/3 | 46 | 25 | 16 | 22 | 4.53 |
14 | 〃 | 23 | 8 | 7 | 141 1/3 | 132 | 131 | 50 | 58 | 3.69 |
15 | 〃 | 27 | 15 | 10 | 195 2/3 | 201 | 149 | 51 | 75 | 3.45 |
16 | 〃 | 21 | ※15 | 2 | 158 1/3 | 149 | 123 | 38 | 53 | 3.01 |
通算5年 | 80 | 42 | 21 | 539 1/3 | 528 | 428 | 155 | 208 | 3.47 |
[注]※はタイトル
合併球団オリックスの小泉隆司球団社長は22日、神戸球場(ヤフーBBスタジアムから改称)内で会見し、入団を拒否していた前近鉄の岩隈が金銭トレードで楽天へ移籍することが決まったと明らかにした。
同社長は「このまま双方で譲らなければ、球界やオリックス、岩隈の将来に大きな影響を及ぼしかねない。野球協約や統一契約書における選手の保有権は球団にとって非常に重要だが、現状にかんがみて超法規的判断をした」と説明。決定は「宮内オーナーの判断による」と話した。楽天とは今後、金銭面で具体的な交渉に入る。
一足早いクリスマスプレゼントに楽天・田尾監督も笑みがこぼれた。この日、ニッポン放送のラジオ番組出演後、「本当に核になるピッチャーが入ってくれた。いるといないとでは(投手陣の)構想はまるっきり違う。他の投手にもいい影響になる」と“岩隈効果”を口にした。ただ、オリックスに対しては「苦渋の決断だったでしょう」と気遣いを見せていた。
オリックス・小泉隆司球団社長は22日、神戸球場(旧ヤフーBB)で緊急会見を開き、スポーツ報知既報通り残留を拒否する岩隈久志投手の楽天への金銭トレードを発表した。同社長が前日(21日)に東京都内で宮内義彦オーナーと協議、同問題の長期化による岩隈本人、球界への悪影響を危惧した上でオーナー裁定が下された。合併球団が11月8日に同投手をプロテクトしてから約1ヶ月半、混迷を極めた岩隈問題はオリックス側の“全面敗北”でようやく決着をみた。
迷走を続けた騒動は、オリックスの全面敗北で決着した。「双方が譲らなければ野球界、オリックス、岩隈の将来にも影響を及ぼしかねない。野球協約や統一契約書における選手の保留権は非常に重要だが、超法規的判断をした」小泉球団社長は楽天への金銭トレードを発表した。
考えられる着地点は
の4つあったが、最も避けたかった選択肢を、宮内オーナーに最終決断を仰いで選んだ。
「残留決着」へのハードルとなったのは、営業譲渡の形態で行われた今回の球団統合。民法、労働法は、営業譲渡により選手を承継する際は個別の同意が必要とし、労組プロ野球選手会がこれを法的根拠とした。
次善の策に異例の「小池会長案」が浮上したが、これも岩隈が拒絶。さらに「楽天以外のトレード」についても、岩隈の身代わりとして新たな犠牲者を生む。9月23日の労使交渉の際には、選手分配について小泉社長が「選手の意思を尊重する」と発言したとして、選手会側も反発した。
同じく残留を拒否していた前近鉄・礒部には希望通りプロテクトから外しておきながら、岩隈はプロテクト。近鉄の(足高)球団代表の「彼については問題ない」と説明に基づいた判断だったが、見通しが甘かった。
説得交渉が7度にも及ぶうちに、最多勝エースの要求を認めないオリックスが悪者であるような世論が形成され始めた。宮内オーナーは「長期化することで岩隈、球界への影響を危惧」(小泉社長)したことで決めたというが、最も恐れたのは本社へのマイナスイメージだろう。
同社長はこの日の緊急会見に先立ち、楽天・米田球団代表と岩隈本人に相次いで電話連絡を取った。トレードマネーについても「これから交渉するが、リーズナブルなところになるでしょう」と発言。騒動に対する責任からか、見返りも多くは望まない考えを示した。オリックスと近鉄の球団統合は、最多勝エースの流出により、何らメリットはなくなった。
楽天への金銭トレードが決まった岩隈久志投手は22日夜、仙台市内のホテルで緊急記者会見を開き、意思を尊重してくれたオリックスへの感謝、そして新天地となる楽天での夢を語った。これまで言及できなかった来季の目標に目を輝かせ、開幕投手、初の20勝、そして防御率タイトル取りを誓った。
運命の瞬間、岩隈は仙台にいた。急遽午後9時30分に設定された記者会見は仙台市内のホテルで開かれた。雪がパラパラ舞う中、会見会場に入った岩隈は、目を潤ませ、安堵の笑みを浮かべていた。「オリックスの小泉社長、中村GM、仰木監督、オリックス関係者に強い感謝の気持ちでいっぱいです」“選手の意思を尊重する”という約束を果たしてくれた球団にまず感謝した。
「なぜ仙台に?」という質問が当然のように飛んだ。「それはノーコメントです。仕事上のことで」とはぐらかしたため、ますます勘ぐられたが、実はテレビ番組の企画で義父の楽天・広橋公寿守備走塁コーチら家族とともに温泉旅行に来ていたのだ。小泉社長からの電話をその中で受け、タイミングよく、新しいホームタウンでの会見となった。そのためオリックス番や、東京の記者は間に合わず、これから付き合う東北の記者だけの会見となった。それでも約40人が集まり「多いなあ」と緊張が解けた。
「まだ正式に決まった訳ではないので」と言いながらも「新しい球団なので、地域密着で東北のファンと一緒に楽しい野球をやりたい」と意気込み「今年も(近鉄で)開幕をまかせられたので、開幕は大事ですから狙っていきたい」と開幕投手を宣言した。
さらに「今年取れなかった防御率のタイトルを取りたい。数字的には20勝を目指して頑張りたい」と誓った。今季はストライキをはさむなど、前年から上乗せできず15勝どまりだったが、新天地では近鉄時代を上回る初の20勝と防御率タイトル取りを狙う。そして新球団を夢のプレーオフに導く。6月の合併発覚から半年、岩隈が“悪夢の再編シーズン”からようやく解放された。
田尾安志監督は、東京・有楽町でニッポン放送のレギュラー番組出演後、岩隈の入団決定について「年内に結論が出て本当に良かった。年を越したら岩隈自身が辛かっただろう。ホッとした」と喜びを語った。
のどから手が出るほど欲しかった。「パ・リーグを代表する投手。楽天のエースになってくれると思います」と田尾監督。外国人投手のラスとメイヨットのほか、ルーキーの一場を計算に入れても川尻らベテラン勢の奮起を期待するしかなかった来季のローテーションが、岩隈の加入でうまく回りそうだ。来年3月26日の公式戦開幕投手も、最多勝右腕でほぼ決まったとみていい。
岩隈に期待する数字について、田尾監督は「今はまだ分からないが、とにかくベストを尽くして欲しい。彼が楽天でプレーしてくれることが心強い」と指摘。勝ち星以前に、チームの士気が高まる効果を予想した。
一方、岩隈問題が長期化したことについて、「何か問題が起きたとき、決める人がいないのがプロ野球界の実情。コミッショナー裁定で、色々決められる環境をつくるべきだ」と、プロ野球界への提言も忘れなかった。
パ・リーグの小池唯夫会長は岩隈問題の集結を聞き「かねてから年内に円満解決するよう要望してきましたが、宮内オーナーの大所高所に立った決断で解決したことを喜んでいます」と事態収拾に胸をなで下ろした。
混迷する岩隈問題の打開策として、14日のパ・リーグ理事会で「強い要望」として「1年後の移籍を前提としたオリックス残留」案を提示したものの、岩隈を翻意させることはできず、越年を覚悟していた。泥沼化した背景には、9月23日の協議交渉委員会でオリックスの小泉球団社長が近鉄の礒部、オリックス(いずれも当時)の三輪両選手会長らに対し、密室で「他球団への移籍の際は本人の意思を尊重する」ことに同意したとする選手会側の主張があった。一方でエースを手放せない球団の心情も理解。「選手会との約束があったが、オリックスはオリックスの立場があった。そういう中で、何とか解決の糸口を探せないものかと(強い要望を)提案した。宮内オーナーの決断には敬意を表したい」と年内決着を喜んだ。