順位 | 名前 | 位置 | 投打 | 所属 |
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1巡目 | 大嶺祐太 | 投手 | 右左 | 八重山商工高 |
2巡目 | 佐藤賢治 | 外野手 | 右左 | 横浜高 |
3巡目 | 黒滝将人 | 投手 | 右右 | 札幌日大高 |
慎重に慎重を期して、今年のドラフトは混乱なく終わった。これまで当たりくじと外れの区別がつきにくく、昨年は確定球団が訂正されるなど混乱が起きた。そのためコミッショナー事務局では会議前に「当たりは交渉権確定と書かれており、外れには何も書かれていません」と説明。長谷川コミッショナー事務局長が確認作業をするなど、徹底した。
意外にスンナリ!?25日に行われた高校生ドラフトで、ロッテは八重山商工・大嶺祐太投手を1巡目で指名。当初はソフトバンクとの相思相愛がささやかれた“離島右腕”の略奪指名だけに、入団交渉は難航しそうな雰囲気だが…。
都内ホテルのドラフト会場では、当たりクジを引いたバレンタイン監督はご機嫌だった。「2週間前から大嶺1本だった。(30日からの)国体が終わった後、沖縄に行くプランがある。できるならそうしたい」と自ら獲得交渉に乗り出すことを表明した。
出馬宣言も致し方ないところだ。大嶺はソフトバンクと相思相愛とされていた。クジが外れた場合、球団懇意の大学への進学プランもささやかれていたほど。指名直後に同校で行われた会見で大嶺は「予想もしない球団でびっくりしている」と険しい表情。教え子の心中を察してか、同校は会見を途中で打ち切り。日本最南端の高校からの初のプロ誕生を祝福すべく予定していた胴上げも中止。ショックは計り知れない様子だ。
こんな状況を見ると思い浮かぶ事例がある。98年ドラフトの際に起こった「新垣事件」だ。
このドラフトでオリックスが1位指名。だが熱烈なダイエー(現ソフトバンク)志向だった新垣は断固拒否。難航する交渉を苦にした担当スカウトが自殺した。この悲劇に今回のシチュエーションが似ていることから、瀬戸山球団代表も「最大限の誠意でお迎えしたい。意向を聞いてできることをやろうと思う」と慎重な姿勢で臨むことを明言した。
ヘタをすれば第2の「新垣事件」に発展する可能性がある事態だが、実際にどうなるか−。「ソフトバンクとはガチガチだったけど最終的にはロッテにいくでしょ。要は“誠意”の問題。それ次第で大嶺周辺は簡単に崩せる。絶対にプロにいくよ」(セ某球団スカウト)。
実際、スカウト間では本人は12球団OKと言う声もある。その線をニラんでロッテも指名を強行したはず。だが、ロッテ側にも障害あり。バレンタイン監督自身が金銭まみれの日本のドラフトを糾弾している点だ。
やはり肝要なのはオモテとウラの使い分けか。それをしくじれば、難航必至の交渉は泥沼化する可能性も秘めている。
高校生を対象としたプロ野球新人選択会議(ドラフト会議)が25日、都内のホテルで行われた。ロッテから1巡目指名された八重山商工の大嶺祐太投手(3年)が、プロ入りせず1年間の浪人生活も視野に入れていることが明らかになった。相思相愛とみられたソフトバンクが1巡目指名したが、抽選の末、ロッテが入団交渉権を獲得。大嶺サイドは、ソフトバンク以外の球団の場合には“浪人プラン”も考えていた。また、注目の駒大苫小牧の田中将大投手は楽天、愛工大名電の堂上直倫遊撃手は中日が交渉権を獲得した。12球団で33選手が指名された。大学・社会人ドラフトは11月21日に行われる。
その瞬間、大嶺の表情が凍りついた。5時間目の授業終了後、添石邦男校長(59)が、大嶺のいるクラスに足を運び「指名があったよ。ロッテから」と一報を伝えた時だった。ロッテの入団交渉権獲得が決まってから約35分後。大嶺は目を赤くした。報道陣から感想を求められ「嬉しいです」と気丈に振る舞ったが、本音とは程遠かった。相思相愛とみられたソフトバンクは1巡目指名したが、ロッテとの抽選の末、交渉権を得られなかった。「予想もしていない球団でビックリしています」。伊志嶺吉盛監督(52)と臨んだ校内での会見の席でも、大嶺は表情1つ変えなかった。
幼年時代から憧れだったプロ入りだが、苦渋の決断を下すことになりそうだ。伊志嶺監督は「試合に負けたような予想外の結果…」「進学は100%ない。社会人か、1年間浪人するか、プロに行くか、3つの選択肢になる」と大きなため息をついた。ソフトバンク小川一夫編成部チーフスカウト部長(51)らが1巡目指名を伊志嶺監督に伝えた19日に大嶺は監督を交えて家族会議を開き、ソフトバンク以外なら浪人で1本化。さらに23日、伊志嶺監督は石垣島にいた大嶺を秋季大会中で滞在していた那覇市のチーム宿舎に呼び、2日間、2人で話し合い、ソフトバンクか浪人か、今後の進路が二者択一で変更ないことを確認した模様だ。
伊志嶺監督は「大嶺にはプロで勝てる投手になって欲しい。2、3年で終わる選手になって欲しくない。バックアップしていけるのは私しかいない。応援したいなと思っている。高校が4年あれば心も体も即戦力として送り出せるけど…」。石垣島で心身共に1年間の浪人生活を経て、プロに再挑戦させるプランをほのめかした。
会見後、ナインからの胴上げを予定していたが中止となった。大嶺は「目の前に(30日開催の兵庫)国体があるので、それが終わってから、じいちゃんとばあちゃんと監督と相談して(進路を)決めたい」と慎重な姿勢を崩さなかった。
過去のドラフトで1位(1巡目)指名を拒否した高校生は12人いる。最近の1巡目以外では、昨年の高校生ドラフトで巨人4巡目指名の福井優也投手(済美)が指名順の低さを理由に拒否。ロッテは、95年8位の大橋晋也捕手(駒大)に拒否されたのを最後に全員入団させている。
過去にドラフト1位(1巡目)指名を拒否した高校生 | |||||
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年 | 選手名 | 校名 | 位置 | 指名球団 | 進路 |
65 | 河本和昭 | 広陵 | 投 | サンケイ | 亜大 |
70 | 樋江井忠臣 | 中京 | 投 | ロッテ | 三協精機 |
73 | 江川卓 | 作新学院 | 投 | 阪急 | 法大※ |
75 | 住友一哉 | 鳴門 | 投 | 阪急 | 法大※ |
76 | 黒田真二 | 崇徳 | 投 | 日本ハム | 日本鋼管福山※ |
76 | 武藤一那 | 秋田商 | 外 | 南海 | 法大※ |
80 | 川村一明 | 松商学園 | 投 | 阪急 | プリンスホテル※ |
80 | 高山郁夫 | 秋田商 | 投 | 日本ハム | プリンスホテル※ |
89 | 元木大介 | 上宮 | 内 | ダイエー | 浪人※ |
95 | 福留孝介 | PL学園 | 内 | 近鉄 | 日本生命※ |
98 | 新垣渚 | 沖縄水産 | 投 | オリックス | 九州共立大※ |
00 | 内海哲也 | 敦賀気比 | 投 | オリックス | 東京ガス※ |
[注]※はその後プロ入り
ロッテ・バレンタイン監督が、大嶺を強行指名し引き当てた。静まり返った会場の中で、左手で目を隠し、引いたくじを高々と掲げるパフォーマンス。最後はソフトバンク笠井オーナー代行のくじをのぞき込んで、同時に開封した。笑いを誘おうとしたが「実はその前に当たりを確認していた」と余裕の行動だった。
ロッテにとっては希望がかなったが、すぐに入団とはならない現状だ。大嶺がソフトバンク入りを強く希望していた気持ちは知っている。瀬戸山球団代表は「最大限の誠意を見せるしかない」と話す。国体終了後に交渉が可能になるが、バレンタイン監督は「石垣島がどんなところか知りたいし、許されるなら監督ともお会いしたい」と直接交渉を希望した。「今日にでも行きたかった」という瀬戸山球団代表を含めて、最大限の誠意を見せて招き入れる考えだ。
今年も最後まで指名選手を公表しない隠密ドラフトを貫いた。バレンタイン監督は「我々は1番欲しい選手を取りたかった」と満足そうだった。
今年1番のボビーマジックがドラフトを震撼させた。ロッテが1巡目指名したのは八重山商工の大嶺祐太投手。ドラフト戦略について一切の情報を遮断してきたバレンタイン監督が出した答えは、ソフトバンクと相思相愛だった150キロ右腕の“強奪”だった。
「素晴らしい直球を持っていてトップクラスと聞いている。体のサイズも大きく1番欲しい選手」と高評価。私生活面でも「テレビの特別番組で彼と監督の関係を見て、この経験はきっとプロで役に立つ」とベタボレ。
抽選ではドラフト史上初?のパフォーマンスも見せた。左手を顔に当て、祈るようなポーズを見せながら抽選箱をまさぐり、ソフトバンクの笠井オーナー代行と一緒にくじを開封。だが「実はチラッと先に見ていたからね。どうしようかなと思っていた」。笑いながら裏話を公開するなど大はしゃぎだ。
一方で横やりを入れられたソフトバンク・角田代表は唇をかむばかり。「制度だから仕方がない」。外れ1巡目でロッテの隠し玉・多摩大聖ケ丘の福田秀平内野手を“報復”指名したものの、悔しさをにじませた。
ただ相思相愛関係に割り込んだロッテと大嶺の交渉は難航の様相。この日、八重山商工・伊志嶺監督に電話での指名挨拶を試みたが、話はできなかった。国体終了後に石垣島を訪れる予定のバレンタイン監督は「できる限りのことをしたい」。誠意を尽くしてライバル球団の秘蔵っ子獲得に全力を挙げる。
ソフトバンクとの競合の結果、ロッテが1巡目で交渉権を得た八重山商工・大嶺祐太投手(18)は入団について「白紙」を強調した。ソフトバンクからの単独1位指名を想定していただけに、ショックは大。同校の伊志嶺吉盛監督(52)も入団拒否を含め、交渉の長期化を示唆。今後は社会人野球、さらには野球浪人も辞さない構えだ。
会見場となった視聴覚室は、お通夜のような空気に包まれた。八重山商工・大嶺に届いた一報はロッテの“強奪”1位指名。同校初のプロ野球選手が誕生するはずだった歴史的1日は、想定外の結果となった。
「自分でも予想していなかった球団でした。びっくりした。(入団の意思について)今はちょっと分かりません」。
ソフトバンク単独指名のはずだった。しかし、ドラフト直前の午後零時28分、伊志嶺監督の携帯電話にロッテの永野スカウトから「1位で指名させていただきます」との連絡が入る。そして皮肉にもおどけた様子でくじを引いたバレンタイン監督が大当たり。大嶺には非情な結果だった。
「言葉がない。非常に予想外の結果。大嶺は精神的に強くないので1番近い(福岡の)球団に行ってボクらが支えてやれると思ったんですがね」。
言葉が出ない大嶺に代わり、小学校から指導してきた伊志嶺監督が代弁した。「石垣の人間の気質を考えると、関西や関東に行かしたらダメになる。社会人を含めて考える」と入団拒否も示唆。1度内定が出ているJR東日本など社会人チームに進むか、1年間の野球浪人も辞さない構えだ。
10月4日に閉幕する兵庫国体後にロッテのスカウトが石垣島に挨拶に訪れる予定だが「時間がかかるだろう」(同監督)と態度を硬化。日本最南端球児にとって、希望の船出となるはずだった『9・25』は悲劇の1日となった。
パフォーマンスを連発してクジを引き当てたロッテのバレンタイン監督は満面の笑顔だ。
「とにかく1番欲しい選手だった。ホークスが他チームを近づけない努力をしていたのかもしれないが、我々の推し量れないところ」と強行指名にしてやったり。
テレビのドキュメンタリー番組で大嶺と八重山商工・伊志嶺監督との絆に感動。「規律に厳しく、高い技術を指導していた。ロッテができるかぎりこの環境でうまくやっていけるように努力していく」とラブコールを送った。
ボビーは9月30日から始まる兵庫国体を自ら視察するプランも急浮上。当日はファーム日本選手権を観戦予定だったが、この日「(国体に)行くかもしれない」と発言。指名挨拶は国体終了の10月4日以降となるが、ボビー自ら八重山商工を訪れることも含め、大嶺説得に全力を注ぐ。
ドラフト会議の様子をテレビで見ていた横浜高・佐藤は、ロッテに2巡目で指名されると、ほっとした表情を浮かべた。前夜は一睡もできず「こんなに緊張したのは初めて」だったが、念願のプロ入りが実現、「威圧感のある打者になりたい」と抱負を語った。今年2月に4番手投手から外野手に転向。わずか8ヶ月の経験で指名されたことに、小倉野球部長は「大変な選手になるかもしれない」と期待していた。
会場ではソフトバンクが福田(多摩大聖ケ丘)を指名したのは“相思相愛”だった大嶺(八重山商工)に横やりを入れられた仕返しなのでは、との声が上がった。福田はロッテが4巡目で指名する予定だっただけに「やり返したんちゃうかな」(阪神・岡田監督)など各球団とも興味津々。ソフトバンクの角田球団代表は「大嶺は抽選制度だから仕方のないこと。福田は独自にシミュレーションした結果だ」と冷静に話した。
抽選で大嶺の交渉権を逃したソフトバンク・角田球団代表は「こういう制度。仕方がない」。指名選手のシミュレーションでも、ロッテの緊急参戦の可能性は折り込み済みで、その場合は野手指名を優先させる方針を立てていた。指名の3選手はいずれも野手。会議後に王監督に電話を入れた同代表は「監督からも『長打の打てる野手が欲しかったし、よかったんじゃないか』と言われました」と語った。
今年の高校生ドラフトでの主な指名漏れ選手は次の通り。
そんな、まさか−。高校生ドラフトが25日、東京・港区の新高輪プリンスホテルで行われた。ソフトバンクの単独1巡目指名が濃厚と見られていた八重山商工・大嶺祐太投手(18)をロッテが強行指名。ボビー・バレンタイン監督(56)がくじを引き当てたものの、“相思相愛”の仲を引き裂かれた大嶺は会見で涙。プロか、拒否か−。春夏連続で甲子園を沸かせた、日本最南端の150キロ右腕の心は激しく揺れている。
想定外の衝撃だった。大嶺がロッテの交渉権獲得を聞かされたのは、午後2時50分。5時限目を終えた教室だった。まさかの一報に「嬉しいです」とつぶやいたが表情は硬くなり、たちまち目を潤ませた。
「感謝しているけど、自分も予想してなくて。目の前に国体があるし監督やじいちゃん、ばあちゃんと相談して決めたい」。午後5時すぎからの会見では終始うつむき加減。1巡目指名された選手のそれではなかった。
高校入学時から自分を見てくれていたソフトバンクに愛着があった。小学校の卒業文集に「将来の夢は絶対プロ野球選手」と記した大嶺にとって地元・石垣島に1番近い福岡でのプレーに憧れを持つのは必然だった。ソフトバンクも今センバツ時に1巡目指名の最有力候補に確定。“相思相愛”で他球団が割り込むスキはないと思われた。よもやの競合、そしてロッテの交渉権獲得。18歳右腕は動揺を抑えることができなかった。
都内自宅で抽選結果を知った王監督は「大嶺君を逃したのは残念だけど、制度だから仕方ない」とコメント。ドラフト直前の20日、入院中の病室で行った編成会議では「伸びシロがある」と期待を寄せ、2日前までは「競合チームはない」と聞かされていただけに失意は明らかだった。
大嶺は家庭の事情で祖父母に育てられた。伊志嶺監督が少年野球チームに勧誘し“親代わり”として公私両面でサポートしてきた。会議直前にロッテスカウトから指名の連絡を受けていた指揮官は「本当に幼い部分がある。あの子の性格は遠い都会は無理。誘惑に負け、帰ってきてしまう」と心配顔。その上で「今は全くの白紙。進学は100%ないが社会人か1年浪人するか、プロに行くか。選択肢は3つ」とロッテ入りを拒否して浪人の可能性も示唆した。
予定されていたチームメートによる祝福の胴上げもキャンセル。ロッテとの初交渉は国体終了後の10月5日以降の見込みだが「自分も監督も納得するための話し合いになる。多分時間は長くかかると思う」と大嶺。野球人生最大の岐路。日本最南端の150キロ右腕はとことん話し合って答えを出す。
大嶺との交渉は難航が予想されるがロッテ・瀬戸山球団代表は「最終的に本人はどの球団でも行くという話が担当スカウトから来ている」と自信をのぞかせた。とはいえ担当の永野スカウトは「伊志嶺監督に3度電話したがつながらなかった。監督に付いていた人から聞いた話では、僕からの着信を見たら寂しそうな顔をして(電話を)取らなかったらしい…」と“着信拒否”に不安げな表情をみせた。
公式戦では不発だった“ボビー・マジック”がドラフト会場でサク裂した。抽選箱の前に立ったバレンタイン監督は左手で自ら目隠し。右手でクジを引くと、そのクジを高々と突き上げた。所定の位置に戻ると、今度はそのクジで再び自ら目隠しして小躍り。ドラフト史上初と言ってもいい仰天パフォーマンスだった。それだけではない。「ソフトバンクの方が“同時に封筒を開けましょう”と言ってきたが、もうその前にチラッと盗み見て“当たり”を確認していたんだ」とフライング。その背広のポケットはスカウト陣から「幸運のパワーをくれ」と徴収した5円玉から100円玉までの硬貨で膨らんでいた。
今月15日、NHKで放映された八重山商工・伊志嶺監督の特番に感動して“強行指名”を決めたという同監督。さらには「ソフトバンクが他球団を寄せ付けないようにして、3巡目で指名する可能性があるという情報も得ていた」として“1本釣り”まで頭に描いていた。会心のドラフト。国体終了後にも指揮官自ら直接出馬する意向も示した。
まさかの指名に1年浪人も−。プロ野球の新人選手選択会議(ドラフト)が25日行われ、ロッテが1巡目で、ソフトバンクの“1本釣り”が確実視されていた八重山商工・大嶺祐太投手(18)を強行指名。ボビー・バレンタイン監督(56)が当たりくじを引き当てた。困惑を隠せない大嶺サイドはロッテからの電話を着信拒否するなど態度を硬化、入団拒否の可能性も示唆した。ロッテ側はバレンタイン監督が自ら沖縄・石垣島の同校へ指名挨拶に赴く意向で、誠意を尽くして未来のエースの心を動かす考えだ。
どよめく会議場の中で、ボビーの表情だけは確信めいていた。抽選箱の前に立った指揮官は、なぜか左手で両目をふさいだ。黄金の右手でつかむと、開封前にもかかわらず、封筒を高々と突き上げる謎のパフォーマンス。当選者さながらの行動で、当たりくじを引き寄せた。
「とても興奮している。何としても手に入れたかった。ラッキーコインでパワーをもらったんだ」。右ポケットには、スカウト陣から渡された小銭があふれていた。ソフトバンク・笠井オーナー代行との一騎打ちとなった抽選を、ボビーが圧倒的な存在感で制した。
大嶺は早い時期からソフトバンクと相思相愛と言われてきた。単独指名が確実視される中での強行指名。理由を問われたバレンタイン監督は「我々は1番欲しい選手を指名しただけ」と語り、「ホークスが他球団を(大嶺に)寄せ付けないようにして、3巡目で取るかもしれないと聞いたが、彼は1巡目に相応しい」と続けた。
不穏な空気は収まらない。大嶺を“横取り”されたソフトバンクは、ロッテが狙っていた多摩大聖ケ丘・福田秀平内野手(17)を外れ1巡目で指名。だが、ボビーは「彼は4巡目で指名予定だった選手。むしろ外れ1巡目が(ロッテ2巡目の)佐藤じゃないかと心配していたから、よかった」と勝ち誇った表情を浮かべた。
大嶺の交渉権を得たロッテだが、前途は厳しい。21日、スカウト陣が八重山商工を訪れた際は好感触を得られず。瀬戸山代表は「スムーズにいかないことは承知。最大限の誠意をもって交渉していきたい」と話した。
国体終了後に行われる指名挨拶には、バレンタイン監督自ら石垣島の同校を訪問予定。ボビーが「テレビで見たが、選手と監督が素晴らしい関係を築いている」、「監督は中学時代から選手の面倒を見て大切にしている。規律に厳しく、うまく指導している」と称賛した伊志嶺監督との直談判に持ち込む考えを示した。失意の大嶺を入団に導けるのか。ボビーは全精力を注いで、未来のエースの心を奪いにかかる。
大嶺がロッテ入りを拒否した場合、来年以降は高野連の所属選手ではなくなるため、対象ドラフトは「大学・社会人」扱いになる。ただし1年浪人した場合は希望枠対象外選手のため、ソフトバンクと相思相愛だとしても確実に入団できる保証はない。社会人チームなど国内の野球団体でプレーした場合は3年後のドラフト対象選手となり、希望枠での入団は可能。ただし、現在のドラフト制度は2年間の暫定措置のため、制度改革されて完全ウエーバー制が導入されたりすれば、3年後でも希望球団に入れない可能性もある。
本格派右腕の札幌日大・黒滝将人投手がロッテから3巡目指名を受けた。黒滝は「若いチームだと思っている。(西武の)松坂投手みたいに直球で押して、スライダーで抑える投手になりたい」と早くも意欲満々だった。
高校生ドラフトで、ソフトバンクとロッテの1巡目指名を受け、抽選でロッテが交渉権を得た八重山商工の大嶺祐太投手は、戸惑いを隠せなかった。25日、添石邦男校長から情報を伝えられると顔をひきつらせた。その後、行われた会見では「予想もしていない球団だったのでビックリした。(今後は)監督と話をして決めたい」と笑顔はなかった。
今春のセンバツを制した横浜からは外野手の佐藤賢治と捕手の福田永将の2人が指名された。ロッテから2巡目に指名を受けた佐藤は強肩、俊足が売り。「高校の先輩の成瀬さんがいるので色々話を聞きたい。上位指名されて嬉しい」と頬を緩ませた。
福田は中日の3巡目。指名をパソコンで確認すると「朝からドキドキしていた」とほっとした表情。中日には球界を代表する捕手の谷繁がいるが「すごい選手で尊敬している。リードのことを聞いてみたい」と意欲満々だった。
ロッテ・バレンタイン監督が高校生ドラフト1巡目で指名した大嶺祐太投手(八重山商工)を引き当てた。ソフトバンクとの一騎打ちになり、自らクジを引いた。「当たりクジを引いた時は非常に興奮した。素晴らしいストレートを持っていて、スピードは高校生のトップクラス。体も大きくて変化球にも切れがある。体を壊すことのないようにしたい」と話した。
八重山商工の大嶺祐太投手(183センチ、83キロ、右投げ)はロッテ、ソフトバンクから1巡目指名を受けた。抽選の結果、ロッテが交渉権を得た。同投手はチームを春夏甲子園出場に導いた最速150キロの本格派右腕。