侍ジャパンの面々が、世界に通じる一芸を披露した。強化合宿2日目を迎えた侍ジャパンは7日、QVCマリンでシート打撃などを行った。本拠地で登板した石川歩投手(28)が、代名詞のシンカーを駆使して打者10人を無安打。今季パ・リーグ最優秀防御率の原動力となった球種を存分にアピールした。過去をさかのぼっても、日本野球が誇る技術が国際大会の局面を打破している。それぞれ懐刀を忍ばせた侍たちが、2大会ぶりの世界一へと導く。
新侍が懐刀を抜いた。順調に斬り捨てていった石川のシート打撃。8人目の刺客は手ごわい筒香だ。4球目。外角に逃げながら沈むシンカーでタイミングを外し、中飛に仕留めた。初の代表招集、初の実戦で打者10人を無安打。「とにかくカウントを有利にするのがスタイル。僕は当落線上の選手。アピールではなく、まずは、すごい選手たちに追いつけるようにですね」と謙遜した。
周囲は絶賛の嵐だった。捕手大野は「ボールが滑ると言いながらあれだけ低めに集めるのはさすが」。ネット越しから凝視した小久保監督も「あのシンカーは後ろから見ていて落ちも良かった。武器だなと思います」と大きくうなずいた。打席の筒香は「変化も大きいしいいボールだった。完敗です」と刀を預けた。
世界の猛者たちをなぎ倒すには、一流の技が欠かせない。第3回WBCで、幾度となく敗退危機を救った井端(巨人内野守備走塁コーチ)の右打ちが記憶に新しい。今回のメンバーにも代名詞の技を誇る選手はたくさんいる。面々はこの日の練習でも随所に披露した。
坂本が内角を鮮やかにさばき、緊迫した空気を切り裂く。菊池は体をよじらせながらも曲芸打ちで三塁内野安打。大谷は大きなストライドで一塁を駆け抜けた。嶋も犠打のサインに1球で完璧に投前へ転がした。パワーだけでもなければ、技術だけでもない。長い年月をかけて研ぎ上げてきた最上級の刀がきらりと光った。
古来日本の侍は、護身のために隠し持っていた小さな刀を命がかかったここ一番で抜いた。石川のシンカーは中学時代に習得し「右打者の外角に外から中に入ってきて落ちる軌道が理想です」と妥協を許さずに研ぎ続けてきた。短期決戦に簡単な試合は存在しない。勝利だけが求められる世界の舞台。懐刀は窮地、大一番で必ず威力を発揮する。
ロッテ柿沼友哉捕手(23)が日本時間7日、メキシコで開催された第1回U23W杯決勝のオーストラリア戦に「8番捕手」でスタメン出場した。4回に勝ち越し適時打を放つなど3打数1安打1打点で優勝に貢献した。
「初代王者になれて本当に嬉しいです。大会初打点も挙げることが出来ました。スタメンで使ってもらえる機会も多く、とても勉強になりました。この経験を将来に生かしたいと思います」と話した。帰国後は、10日から千葉・鴨川の秋季キャンプに合流予定。
来年3月のWBCに向けた強化試合を控える侍ジャパンの“弟分”が世界一になった。U23(23歳以下)ワールドカップ(W杯)は6日、メキシコのモンテレイで決勝が行われ、日本がオーストラリアを10−3で破り、新設大会の初代王者に輝いた。大会MVPには4本塁打を放った真砂(ソフトバンク)が選ばれた。
直近の3試合は全て1点差ゲーム。接戦を通じてたくましさを身に付けた日本は、劣勢にも動じなかった。先発の笠原(ソフトバンク)が3失点と苦しいスタート。しかし4回裏に敵失などで同点とし、なおも2死一、二塁の好機で柿沼(ロッテ)が勝ち越しの左前適時打を放った。
6回には広岡(ヤクルト)が左翼へ特大の3ランを運ぶなど一挙5点を追加してリードを広げた。守っては救援陣が踏ん張り、大野(三菱日立パワーシステムズ横浜)、本田(西武)、岸本(中日)、歳内(阪神)とつなぎ反撃を封じた。
記念すべき第1回大会を制し、決勝打の柿沼は「初代王者になれて本当に嬉しいです。大会初打点も挙げることが出来ました。スタメンで使ってもらえる機会も多く、とても勉強になりました。この経験を将来に生かしたいと思います」と話した。
プロとアマの混成チームを1つにまとめた斎藤雅樹監督(巨人)は「しっかり守って数少ないチャンスをものにする日本の野球ができた。胴上げは選手の時より嬉しい。3点をリードされたことがなかったので今日の勝ちが1番嬉しい」と喜んだ。小久保ジャパンにも勢いを与える、若侍の快進撃だった。
5日に放送されたフジテレビ系「中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞」で珍プレー大賞に輝いたロッテ・角中の記念Tシャツが、今月下旬をめどに緊急発売される。受賞したのは7月6日の西武戦で清水三塁コーチャー、10月4日の楽天戦で松山一塁コーチャーに打球を命中させたプレー。ゴルゴ13も仰天の神業に球団も即応した。山室球団社長は「ジャンボ宝くじ、競馬の有馬記念と夢のあるイベントが続きます。『よく当たる』ということで、このTシャツを着込み、買いに行ってください」とPRした。
野球日本代表「侍ジャパン」は7日、メキシコ、オランダとの強化試合(10〜13日、東京ドーム)に備えてQVCマリンで練習した。12日のオランダ戦に先発する石川(ロッテ)がシート打撃に登板。大谷ら打者10人に対して、安打性の当たりを許さず「自分の投球スタイルでいければいい」と自信を深めた。初選出で、ロッテからはただ1人の代表入り。「1人は結構寂しいですよ。代表の経験もないので…」と本音ものぞかせていた。
ヤマハは前日に続く先行逃げ切りで、決勝進出を決めた。1回に5長短打で4点を先取。ロッテからドラフト4位で指名された土肥を打ち崩した。美甘監督は「いい攻撃だった。僕も信じられない。お見事」と絶賛した。5回を投げ、先発の役割を果たしたナテルは「気持ちで負けないことを意識した。粘り強く投げられた」と笑みを浮かべた。
ロッテが来季の新外国人候補として昨季までソフトバンクに所属し、今季マリナーズでプレーした李大浩(イデホ)内野手(34)をリストアップしていることが7日、分かった。今季のチーム本塁打は12球団最少の80本。大砲補強は急務で、オリックス、ソフトバンクの日本通算4年間で98本塁打を放った韓国出身の大砲に注目した。球団関係者は「リストには入っている」と明かした。
李大浩は今季マリナーズと1年契約を結び104試合で打率.253、14本塁打、49打点をマークした。4日にFA選手として公示され、楽天も獲得調査に乗り出している。球団はキューバ政府とデスパイネの残留交渉を行っているが、去就は未定。ナバーロの退団も決定的で、今季24本塁打を放ったデスパイネが退団する事態になれば、本格な獲得交渉に乗り出すことになりそうだ。
ロッテ・角中の幸運Tシャツが緊急発売される。今季、清水三塁コーチ、松山一塁コーチの両者にファウルの打球を当てたことが5日放送のフジテレビ系「中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞」で珍プレー大賞を受賞。山室晋也球団社長は「有馬記念や年末ジャンボに向けて“よく当たるよ”ということで、皆さん、着てください」とPRした。
ドラフト会議で5球団競合の桜美林大・佐々木千を引き当てた山室社長Tシャツに続く「当たる」シリーズ第2弾となる。
初招集の石川がシート打撃でアピールした。「まだまだ。いつでもストライクを取れる球が今はない」と自己評価は厳しかったが、打者10人相手に1三振を含む完全投球。小久保監督は何度も空振りを奪ったカーブを「武器になると思います」と評価した上で「(投手陣を)引っ張る気持ちで頑張って欲しい」と大きな期待を寄せた。
今季最優秀防御率のタイトルを獲得した右腕。残り5人からは日本製より粘り気があるWBC用ロジンに替えて臨み、制球がより安定。先発する12日オランダ戦へ「ストライクをどんどん取ってカウントを有利にして勝負したい」と意気込んだ。
メキシコで開催された第1回U−23W杯に出場した日本は決勝でオーストラリアに10−3で勝利し、初代王者となった。
ロッテの柿沼は「8番・捕手」で先発し、4回に決勝の左前打を放った。3打数1安打1打点の活躍を見せた柿沼は「初代王者になれて本当に嬉しいです。大会初打点も挙げることが出来ました。スタメンで使ってもらえる機会も多く、とても勉強になりました。この経験を将来に生かしたいと思います」とコメントした。
今季育成選手から支配下登録された23歳はロッテから唯一の出場。10日に千葉・鴨川秋季キャンプに合流する。チームでは今季、田村が130試合に出場し正捕手争いで一歩リードしているが、世界一の称号を手にした柿沼も2年目の飛躍を目指す。
第1回U−23W杯は6日(日本時間7日)、メキシコ・モンテレイで決勝が行われ、日本はオーストラリアを10−3の逆転勝ちで下し、初代王者に輝いた。中盤までに3点のリードを許したが4回、敵失に乗じて1安打で同点に追いつくと、柿沼友哉捕手(ロッテ)の適時打で逆転。6回にも2本の本塁打で5点を加えて突き放し、世界一を引き寄せた。
3点のビハインドも、1次リーグで11−2と大勝している相手を前に焦りはなかった。
0−3で迎えた4回、安打と敵失などを絡めて1死満塁とすると、山下(DeNA)の一ゴロが2点適時失策となり1点差。続く三好(楽天)の左犠飛で、この回ここまで1安打ながら同点に追いつくと、さらに2死一、二塁から柿沼(ロッテ)の左適時打でさらに1点。4点を挙げて一気に逆転してみせた。
勢いづいた日本は6回、先頭の真砂(ソフトバンク)が左翼席へのソロ本塁打を放つと、適時野選で1点、さらに1死一、三塁から広岡(ヤクルト)が左翼へ3ラン。この回5点を加え、8回にも1点を追加し試合を決定づけた。
先発の笠原(ソフトバンク)は4回途中3失点で降板したが、救援陣が無失点リレー。大野(三菱日立パワーシステムズ横浜)、本田(西武)、岸本(中日)とつなぎ、最後は歳内(阪神)が締めて、オーストラリアの反撃を許さなかった。
ロッテ・石川歩投手(28)が7日、来年3月のWBC本大会へアピールに成功した。この日のシート打撃では打者10人に対し、許したのは大谷の内野安打1本だけ。小久保監督からは、投手陣のリーダー的存在としても期待を寄せられた。
本拠地にしているQVCで、1番手としてマウンドに上がった。直球は切れ、カーブとシンカーを自在に変化させた。「いつでもストライクを取れる球がなかった。制球もアバウトだった」。初代表の本人採点は辛口。それでも、中飛に仕留められたセ・リーグ2冠(本塁打、打点)の筒香が「特にシンカーがすごかった。いい球ばかりでした」と脱帽するほどだった。
今季は最優秀防御率のタイトルを獲得。右の先発型にライバルが多い中で、小久保監督は「(投手陣を)引っ張る気持ちで頑張って欲しい。(性格が)控えめらしいので…」と評価を上げた。12日のオランダ戦(東京D)に先発。コツコツと信頼を積み重ねる。
来年3月の第4回WBCに向けた強化試合(10、11日メキシコ戦、12、13日オランダ戦・東京D)に出場する侍ジャパンは7日、QVCで強化合宿2日目を終えた。
社会人野球の日本選手権準決勝が7日、京セラDで行われ、大阪ガスは2−4でヤマハに敗れ、2004年以来14年ぶりの決勝進出を逃した。ロッテにドラフト2位指名された右腕・酒居知史投手(23)が好リリーフを見せたが、実らなかった。
その実力はしっかりと示した。酒居は2点ビハインドの6回から4番手で登板。最速145キロの直球を軸に9回までの4イニングを2安打無失点に抑えた。今大会は1日の初戦・JR四国戦で完封するなど、3試合に登板し、20イニング無失点。この日も7回を投げた5日のホンダ鈴鹿戦から中1日で登板し、「(疲労が)あったことはあったけど、その中で投げて抑えるのがエースだと思う。ゼロで抑えることが出来て良かった。1つの自信になればいい」とうなずいた。
社会人での公式戦はこの試合が最後。大阪ガスで過ごした2年間を「野球もそうだけど、会社で社会人としての礼儀を教わって、人間的に一回りも二回りも成長できた」と振り返った。
今後はプロの世界に飛び込むことになる23歳の右腕。「これからは職業が野球なので、結果を残さないと職業がなくなることになる。プライベートも全て野球につなげて、自分に妥協しない生活を送っていかないといけない」と気を引き締めていた。
ロッテ・柿沼友哉捕手(23)が6日、メキシコ・モンテレイで行われた野球のU−23W杯に「8番・捕手」で出場し、3打数1安打1打点。初代王者に貢献した。
柿沼は昨年の育成ドラフト2位でロッテに入団し、7月に支配下選手登録。「初代王者になれて本当に嬉しいです。大会初打点も挙げることができました。スタメンで使ってもらえる機会も多く、とても勉強になりました。この経験を将来に生かしたいと思います」と、来季は1軍で活躍することを誓った。帰国後は10日から千葉・鴨川秋季キャンプに合流する。
ロッテ・石川がシート打撃に登板し、打者10人に対して日本ハム・大谷の1安打に抑える好仕上がりを見せた。強化試合第3戦のオランダ戦での先発が内定しており、「コントロールはまだアバウトだけど、試合ではストライクをどんどん取ってカウントを有利にして勝負したい」と意気込んだ。
小久保監督は「シンカー落ちも良かったし、カーブもなかなかいい」とうなずいた。
準決勝が行われ、第2試合で大阪ガスはヤマハに敗れ決勝進出を逃した。ロッテからドラフト2位指名を受けた酒居知史投手(23・大体大)が六回から救援登板し、4回無失点と好投したが、初回の4失点が大きく響いた。第1試合は日本通運が1点を追う9回1死から試合をひっくり返し、王子を下して22年ぶりの決勝進出を果たした。
流れを引き寄せようと必死だった。最速145キロを計測した直球で押しまくった。2点ビハインドの六回から救援登板し、4回2安打無失点の好投も打線の援護なく敗れた酒居。それでも昨年と今年の日本選手権を合わせ36回連続無失点は驚異的な数字だ。
相変わらずの安定感を誇った。「とにかくゼロで抑えることだけを意識して」と酒居。プロ入り後、敵地となるマウンドで残した実績が、即戦力右腕として確かな期待を抱かせる。
大学4年時に右肩を痛め、2年間の回り道を余儀なくされた。それでも「すごく意味のある2年間。社会人として学ぶべきことが多かった」と言う。社会人野球で得た経験と実績を糧に、プロの世界へ羽ばたく。
セ、パ両リーグの理事会が7日、都内で開かれ、米大リーグで今季導入された併殺阻止の危険なスライディングを禁止するルールについて、来季からの実施を見据え、春季キャンプ前の来年1月に12球団の担当者に説明会を開くことを決めた。
大リーグでのルール変更を受け、日本でも来年1月に開かれるプロ、アマ合同の規則委員会で公認野球規則が改定される。主に二塁上での走者と野手の激しい接触を避けるためのもので、大リーグでは危険なスライディングと判断された場合、走者と打者の両方がアウトとなる。セ・リーグ杵渕和秀統括は「適用する方向で、キャンプまでに周知徹底する手順を確認しました。具体的に、こういうプレーだとランナーもバッターも両方アウトになりますよとか、そこはまだです」と説明した。
セ・パ両リーグは7日、都内の日本野球機構(NPB)事務局で開いた理事会で「併殺に関するコリジョン(衝突)プレー」の禁止を了承。来季からベース付近で走者が行う併殺を防ぐための危険なスライディングを禁止する新ルールを導入する方針でまとまった。
大リーグでは今季から導入され、日本でも来年1月に開かれるプロ、アマ合同の規則委員会で公認野球規則が改定される。走者はベースに向かって真っ直ぐに走ることが原則で、併殺プレーを阻止する目的のスライディングをしたと審判が判断すれば走者だけでなく打者もアウトになる。ロッテの林信平球団本部長が「成功した米国の事例を見てということ」と話すなど、新ルールは大リーグに準じる方向だ。
年明けに12球団に詳細を説明。春季キャンプで全監督、コーチ、選手に徹底する流れとなる。
日本野球機構(NPB)が、併殺阻止を目的とした危険なスライディングを禁止するルールを来季から導入する方針であることが7日、明らかになった。この日、セ、パ両リーグの理事会が都内のNPB事務局で開かれ、春季キャンプ前の来年1月に12球団の担当者に同ルールの説明会を開くことを決めた。
今季のプロ野球で物議を醸したコリジョン(衝突)ルールに続き、“併殺崩しルール”も導入される。米大リーグでは、すでに今季から導入。これを受け、日本でも来年1月に開かれるプロ、アマ合同の規則委員会で公認野球規則が改定される。具体的な運用方法は各競技団体に委ねられるが、NPBが来季からの実施を見据えて検討を進めている。
セの杵渕和秀統括は「どういう条文にするか練っているところ。(新ルールを)適用する方向で、手順を確認した」と説明。主に二塁へのスライディングが対象となる見込みで、大リーグでは、危険と判断された場合、走者と打者の両方がアウトとなる。
1月の説明会では、該当プレーをまとめたDVD映像を流して、各球団のコーチらに具体的な運用指針を示すが、関係者は「基本的には、走者はベースに向かって真っ直ぐ行くということ」と話した。
QVCマリンフィールドで練習を行い、10日からのメキシコ、オランダとの強化試合に備えた。
シート打撃には千葉ロッテの石川らが登板し、ヤクルトでは二塁を守る山田が三塁守備に就くなど、各選手が複数のポジションを試した。小久保監督は「自分のチームで守っているポジション以外を守ってもらう可能性もある」と意図を説明した。
代表に初選出された千葉ロッテの石川がシート打撃で上々の“デビュー”を果たした。得意のシンカーやカーブを織り交ぜ、打者10人に対して安打性の打球は1本のみ。それでも「いつでもストライクを取れる球がなかった」と厳しい自己評価を口にした。 第3戦となる12日のオランダ戦に先発予定。「ストライクをどんどん取って、カウントを優位にして勝負したい。それが投球スタイルなので」と気負うことなく話した。
マリーンズの勝利を告げる試合終了のアナウンスが流れると、鈴木大地内野手は、声を掛けた選手たちを連れてライトスタンドに走り出した。「マリーンズ、勝ちました!」。拡声器片手に勝利の喜びをスタンドのファンに伝えた。そして「WE ARE」と3回、連呼。最後に選手達が肩を組み、「CHIBA LOTTE!」と何度も叫びながら、飛び跳ねた。スタンドを見渡すと、ファンの人達も横の人達と肩を組み、勝利の喜びを分かち合ってくれた。3月25日、ファイターズとの開幕戦から始まった本拠地マリンでの勝利の儀式。今シーズン、マリンでの勝利ゲーム全試合で行い、選手とファンによる「WE ARE」はマリン名物として、すっかり定着した。それはキャプテンのファンと一体になりたいとの強い思いから始まった。
「勝利を共有して、みんなで楽しむ。一緒に飛ぶことで、より一体感が出たと思います。楽しかったし、自分はやって良かったと思っています」。
シーズンも終わり、誰もいない静まり返ったスタンドを見渡しながら、鈴木は充実した表情を見せ、しみじみと話しだした。最初は不安でいっぱいだった。ファンが受け入れてくれるだろうか。仲間たちは一緒にやってくれるだろうか。そもそもイメージ通りにうまくできるのだろうか。ただでさえ、キャプテンとしてチームをまとめる重い任務を背負っていながら、背番号「7」は自ら率先して動き、新たな挑戦をすることを決めた。
あれは、毎年2月に石垣島での春季キャンプ中に行われる選手会と球団とのミーティングでのことだった。今年もそこで大まかなファンサービスの内容が議論された。開幕セレモニーやシーズン中イベントの概要など一通りの議題が終わった時、話題は「WE ARE」になった。元々、昨年の2015年シーズンに球団側の提案を選手側が組む形で試験的に数試合、行った。ただ、過去にプロ野球ではやったことがない試みということもあり、チーム全体的に戸惑いを感じさせる雰囲気があった。それは受け取るスタンドのファンも感じていたはずだ。
継続するか、同じような趣旨で何か新たな事に切り替えてチャレンジするか。意見は分かれた。「戸惑いながら、照れながら行っていてはファンも喜ばない。無理して続けるより、ここは1回、方法を考え直すのが手かもしれない」。1人の球団職員が意見をした。一時は、その方向で話がまとまろうとした。その時、鈴木が手を挙げた。「ちょっと、待ってください」。会場にいた全員が主将に注目をした。静かに立ち上がるとキッパリと言った。「続けましょう。続けたいです。せっかく、ファンとの方と一体になるように、何かできないかと考えて試みたことをあっさり止めてしまうのは、ボクはどうしても嫌です。僕が率先して、その日、乗り気な選手を連れて、中心になってやりますので、続けましょう」。少しの沈黙が続いた。今度は球団職員が話し出した。「続けてくれるという積極的な意見はありがたいし、大変嬉しい。大地(鈴木)が率先して行ってくれるという姿勢は助かる。ただ、それをシーズン途中で止められたり、今日はやらないという日があっては困る。時には大地が体調の悪い日もあるかもしれない。勝ったけれど、キミ自身はミスをしたり、チャンスの場面で凡退をして出たくないようなこともあるかもしれない。それでもやってくれるのかな?」。建設的な意見ではないが、それは事前にしっかりと意見を酌み交わさないといけない大事なことだった。長いシーズン、なにが起こるか分からない。いい時もあれば、必ず悪い時もある。予期もしないマイナスな出来事も多数、発生するものだ。夏場は疲れがドッと出る。もしかすれば、率先して勝利の儀式を行う鈴木が試合に出れずにベンチを温める日があるかもしれない。
それでも勝ったら、中心となって元気よくライトスタンドに行ってくれるのか。その覚悟を最初にハッキリと問う必要は確かにあった。「もちろん、行きます。ファンの方に喜んでもらうために絶対にやります。昨年みたいな特定の何試合か限定ではなく、ボクは全試合やります!」。キャプテンの心は固まっていた。ブレることが絶対にない強い信念に会場にいた全員が圧された。こうして、本拠地マリンで勝利した試合では、選手たちが自分達で人選をして、率先してライトゾーンまで走り、勝利の儀式を行うことが決まった。
「ボクにとっては誇りです。あれは他球団にはないこと。ファンの方々と僕達が勝利の喜びで1つになれる瞬間だった。もちろん、ミスをしたり、調子が悪くて悩んでいる日もありました。特に今年は自分自身の思い通りの結果がでなくてつらいこと、悔しいことが多かった。雨の日もあった。それでも、外野に行って一緒に飛び跳ねていると、不思議と気持ちが晴れやかになったんです。それにあの時、『ボクは絶対に行く!』と約束をした。ファンの方から直接、意見を聞いた訳ではないので、何ともいえませんが喜んでくれたのではないかと信じています。ボクはあの時、『やりたい』と意見をして本当に良かったと思っています」。
マリーンズは今年、本拠地で38勝をした。だから、38回、「WE ARE」をした。最初はぎこちない部分もあったが、徐々に形ができた。スタンドではファンが肩を組み、飛び跳ねた。グラウンドでは選手たちが拡声器でスピーチをして率先して喜びを表現してくれた。その中心にいたのは間違いなく背番号「7」だ。どんな時も試合後、ベンチで選手達に呼び掛けを行い、楽しいムードをつくり上げてくれた。12球団でマリーンズにしかない誇れる勝利の儀式。それはキャプテンが魂を込めて作り上げたイベント。みんなでマリーンズの勝利ということに、心が1つになれる最高の瞬間だった。
(千葉ロッテマリーンズ広報・梶原紀章)