9月19日9月19日野球予選リーグで日本がオーストラリアを7−3で下し、2勝1敗として予選突破へ大きく前進した。五輪初登板の先発・黒木が8回を5安打3失点9奪三振。日本のプロ投手として初めて、五輪で白星を刻んだ。次回は中4日で、24日のキューバ戦に先発予定。そこまでに4強入りが決まれば、26日の準決勝まで温存できる。
オーストラリアの先住民・アボリジニのダンスを真似たガッツポーズを、オランダが「ばかにしている」と猛反発。相手を侮辱する意味が含まれているため、黒木は「不快な思いをする人がいるのでやめた」と、親指を立てる新ポーズに切り替えた。
残り試合を総力戦で4位を目指す。現在、4位のオリックスと0.5差、最下位・近鉄とは1.5差と、厳しい争いが続いている。練習前には山本監督が全ナインの前で「残り15試合を必死になって頑張ろう」とゲキを飛ばした。五輪から帰国後の黒木、小野らローテ陣は、中4日登板の連続となる見込み。
地元オーストラリアと対戦した日本は先発の黒木知宏投手＝ロッテ＝が力投し、3回に元中日のニルソン（登録名ディンゴ）に3ランを浴びたが、8回を5安打3失点に抑えた。打線も同点の6回に1点を勝ち越し、沖原佳典内野手＝NTT東日本＝の左越え1号3ランで逆転勝ち、予選リーグ2勝1敗とした。20日のイタリア戦には山田秋親投手＝立命大＝が先発する。また、米国はオランダ、キューバは韓国を下してともに3連勝。
左胸の日の丸を何度も右手で触った。「日本の皆さん、僕に力を貸して下さい」−。そして黒木は魂を込めた。雄叫びを上げながらの熱投。オーストラリア打線を抑え込む姿はサムライそのものだった。
強気でなる男も初めて経験する国際試合、それも五輪の大舞台に震え、前夜はほとんど眠れなかった。MAX147キロの直球とフォークで三振の山を築くが、3回2死一、二塁から「スキのない打者。バリバリのメジャーです」というニルソンに3ランを被弾。だが、許した得点はこの一発だけだった。キャンプで右太腿を痛めて前半戦は3勝9敗と辛酸をなめ、ようやく復活。5連勝で乗り込んだ夢舞台を8回5安打9奪三振と文句なしの内容だ。
「個人の成績よりも自分達の野球をやればいい結果が出ると思った」。プロとアマの中心にはいつも黒木がいた。開会式の15日に同期の中村、松中と宿舎で結団式を行い、酒の勢いもあってテレビで見たオーストラリアの先住民アボリジニのダンスを披露した。ナインは手首を曲げて突き出すこのパフォーマンスを試合に採り入れたが、前日オランダが「ばかにしている」と猛反発。相手を侮辱する意味が含まれているため、黒木は「不快な思いをする人がいるのでやめた」と親指を立てる新ポーズに切り替えて試合に臨んだ。
「期待以上です。（8回での）交代は最初から飛ばしていたからね。非常にいいゲームだった」と大田垣監督。5勝が予選突破ラインだが、20日のイタリア戦と22日の南アフリカ戦で2勝を計算。23日の韓国戦での松坂か、24日のキューバ戦で黒木が勝てば決勝ラウンド進出が決まる。
「お前は凄いヤツだよ。サムライ軍団に入れてやるよ」。米国戦に延長で敗れた17日の夜、黒木は松坂にそう声を掛けた。後輩の力投に素直に感動していた男はこの日のオーストラリア戦の意味を痛いほど分かっていた。だから燃えた。日本を魂のボールで乗せた。雄叫びの“世界1勝”左胸の日の丸の下には裕子夫人から渡されたお守りが隠されていた。
スタンドでは黒木の両親が日本から応援に駆けつけ、祈るように声援を送った。父・正博さんは「日本を背負ってるから緊張しているみたいだね。こっちもドキドキして見てますよ」。母・アツ子さんは「ヒヤヒヤしましたけど良かったです」と逆転勝利を喜んだ。この日の夜は黒木と食事を共にし、五輪での1勝を祝った。
ロッテナインは千葉マリンでの練習前にテレビ観戦。7回終了後にグラウンドに出たが、結果を知らされた諸積は「こっちにいた時と同じで調子がいい。そのままの調子で戻ってきて欲しい」。山本監督も「あの1発だけだろ。貢献できてよかったよ。松坂と共に期待されて行ってるんだから、もう1回といわず決勝にも出て頑張って欲しい」とエールを送った。