ロッテが接戦を制し連敗を4で止めた。ロッテは、1点を追う8回に西岡の2点適時三塁打で逆転に成功すると、9回にも里崎の適時打などで2点を追加した。最後は4人目の守護神小林雅が三者凡退に抑えて、横浜・佐々木のペースを上回る史上最速、通算4人目となる150セーブを達成した。広島は、7回に新井の2点適時打で一時逆転に成功するが、先発黒田が8回途中まで4失点と踏ん張れず、連勝はならなかった。借金は今季ワーストタイの3となった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
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千葉ロッテ | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 2 | 2 | 6 |
広島 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | 3 |
ロッテ小林雅は、静かに帽子を取った。広島ラロッカを150キロのシュートで三ゴロに打ち取り、二転、三転した総力戦の最後を締めくくった。チームの連敗を4で止める今季13セーブ目は、節目の通算150セーブ目。佐々木、高津、江夏というそうそうたる名前を上回る史上最速での到達となった。花束を受け取ると、スタッフを含めたチーム全員とハイタッチ。バレンタイン監督から「マサ、オメデトウ」と祝福された。
「幕張の防波堤」。そう呼ばれる絶対的な抑えとして、どんな環境にも対応できるよう心がけてきた。昨年まで両肩を大きく揺らして始動する投球フォームだったが「無駄な動きは省きたい」と今年からやめた。縫い目の高い球にも、他の投手が変化が増す効果を口にする中で「抑えは荒れたマウンドでいきなり投げる。環境の違いは考えない」と気に留めなかった。初体験の福山市民球場での登板も、いつも通りだった。
「自分の武器」というシュートで記録を達成。「これでプロに入れた。これが投げられなくなったら終わり」と自信を持つ。ウイニングボールは、抑えのマウンドでの気持ちを込め「Stop here」と刺繍されたグラブに収められた。「これ(150S)で終わりじゃない。優勝目指して頑張りたい」。プレーオフ、日本シリーズ目指してセーブを重ねるつもりだ。
通算セーブ10傑 | ||
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1 | 高津臣吾(ヤクルト) | 260 |
2 | 佐々木主浩(横浜) | 252 |
3 | 江夏豊(西武) | 193 |
4 | 小林雅英(ロッテ) | 150 |
5 | 赤堀元之(近鉄) | 139 |
6 | 大野豊(広島) | 138 |
7 | 大塚晶則(中日) | 137 |
8 | 斉藤明夫(横浜) | 133 |
9 | 鹿取義隆(西武) | 131 |
10 | 山本和行(阪神) | 130 |
[注]所属は現役最終
ロッテの小林雅英投手(30)が17日の広島1回戦(福山)でプロ野球4人目の通算150セーブを挙げた。312試合での達成は横浜・佐々木の315試合を抜く史上最速。近年では珍しいシュートを武器にする投手が金字塔を打ち立てた。ロッテが最後に優勝した74年生まれ。チームの連敗を4で止めたストッパーが31年ぶりの優勝に向けチームを引っ張る。
ウイニングボールを李承Yから手渡された瞬間、小林雅から笑みがこぼれた。「コバヤシ、コバヤシ」。何度も繰り返されるコールに、花束を抱えた右手で左翼席のファンに応えた。佐々木を超える312試合での150セーブ達成だ。
佐々木がフォークなら、小林雅はシュートだ。節目の試合も9球中、7球がシュートだった。ウイニングショットは全てシュート。ラロッカへの最後の1球は150キロのシュートだった。
現在の球界にあっては異端の存在と言っていい。フォーク、スプリットなどの縦の変化やチェンジアップに代表される緩急が主流。しかし、東京ガス時代に覚えたシュートを頑固に使い続けている。「プロ入りできたのもシュートのおかげ。それで打たれても悔いはない」と言う。直球は140キロ台後半だがシュートは150キロ以上出る。その原因を「直球よりシュートの方が腕が振れる。指の掛かりもいい」と分析してみせた。井上投手コーチは「決して大きな曲がりじゃない。打者の手元で曲がるからすごい」と舌を巻く。
加えて精神的な強さも持っている。同期入団の捕手・里崎は「打たれた翌朝にはもう表情が明るい」と言う。東京ガスでは「お客様サービス」で苦情処理の業務をこなした。「苦情には慣れているのでヤジには強い」と話したこともある。
セットポジションに入る際に右肩を揺らす独特のフォームも修正した。球種の癖を隠すために始めたスタイルだったが、ボーク対策として昨年8月のアテネ五輪で封印した。それでも球威、制球には悪影響はなかった。プロ7年目を迎えても進化をやめようとしない。
「150セーブのためにやってきた訳じゃない。日本一になるために託された役割を果たすだけ。今年は(優勝する)チャンスだと思う」。ロッテが優勝した74年に生まれた。自身に課した使命は1つだ。チームの4連敗も止めた。あとは目標へ走り続けるだけ。記録の余韻に浸るのはこの日だけと決めている。
終盤で二転三転する展開の中、勝負を決めたのは西岡だった。1点を追う8回、無死一、二塁から走者一掃の右中間三塁打。「結果は出たが満足はしていない。それよりもバントを失敗したことを反省です」。送りバントを2球失敗した後の強攻策が決勝打に。打線が低迷しての4連敗中だっただけに、ホッと胸をなで下ろしていた。
3点差の9回、マウンドに立ったのは守護神・小林雅。最後はラロッカを三ゴロ。プロ野球史上4人目、史上最速の312試合での150セーブを達成した。
記録達成はあくまでも通過点。それ以上にチームの連敗が止まったことが嬉しかった。
連敗阻止へ、一丸となっていた。投手陣が広島を丁寧に抑えれば、打線は粘り強い攻撃。逆転された直後の8回無死一、二塁では、西岡が再逆転となる右中間2点適時三塁打。負ければソフトバンクにゲーム差なしまで迫られる危機を何とか回避した。
小林雅が口にした「優勝」の2文字。今季最長のトンネルを抜けたロッテが、31年ぶりの美酒に向けて再加速する。
150セーブ達成スピード | ||
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試合 | 投手(所属) | 通算 |
312 | 小林雅英(ロッテ)※ | 150 |
315 | 佐々木主浩(横浜)※ | 252 |
378 | 高津臣吾(ヤクルト) | 260 |
423 | 江夏豊(日本ハム) | 193 |
[注]※は現役で、所属は達成時。江夏はセーブ制定後(昭和49年)からの登板数。高津は現Wソックス。
ロッテが連敗を4で止めた。1点を追う8回、黒田を捕らえ、西岡が右中間に2点三塁打を放って逆転。9回にも里崎の適時打などで加点した。3番手の薮田が2勝目。小林雅は通算150セーブを達成。広島は好機を生かし切れずに借金3。
360度をチームメートに囲まれて、小林雅は何度も頭を下げた。有無を言わせない3人斬り。「これがあってプロに入れた」という最速151キロのシュートの連投で偉業を達成した。佐々木、高津、江夏を超え、プロ野球最速記録となる150セーブ。拍手に包まれ、笑顔がはじけた。「周囲のサポートあっての記録。監督、コーチ、トレーナー、先発、中継ぎ…。1番は丈夫に産んでくれた両親と、嫁さんに感謝したい」花束を手に感謝の言葉を繰り返した。ロッテの背番号30が、名実共に「日本NO.1ストッパー」の称号を手に入れた。
7年間、勝利を全てに優先させてきた。「セーブより勝つことが大切」が口癖。ストッパーならではの哲学は、自身のプロ人生にも当てはまる。「入団して0点のシーズンしかない。1度も優勝していないから」。いくつものセーブを挙げようと、V逸なら年間の自己採点は0点。優勝への飢えが守護神を突き動かす。
1つだけ誇れることがある。「入団してから1回もファームを経験したことがないんですよ」。普段は謙虚な守護神が、誇らしげに切り出したことがあった。先発時代に1度だけ登録抹消の経験があるが、その時も1軍に帯同。「唯一、自慢できることですね」。大きな故障もなく、常に1軍の主力であり続けた。
連敗を4で止めた試合での記録達成。だが、小林雅に慢心はない。「150セーブのためにプロ野球選手をやってる訳じゃない」。「NO.1ストッパー」の称号より、日本一の栄冠。その歓喜を味わうためなら、何度でも荒れ果てたマウンドに上がる。
ロッテの小林雅英投手(30)が通算150セーブを達成した。6−3の9回に登板。打者3人で退け、チームの連敗を4で止めた。
150セーブは高津臣吾(260)、佐々木主浩(252)、江夏豊(193)に続きプロ4人目。初セーブは00年8月17日の日本ハム戦(千葉マリン)で記録している。また通算312試合目での達成は、佐々木の315試合を上回るハイペースだった。
記録達成に「素直に嬉しい」と喜びながらも「150セーブのために野球をやってきた訳じゃない。1番は優勝」と言う。4連敗中の最悪のチーム状況の中、不振だった打線が何とかつくった3点のリード。常々「セーブよりもチームの勝利。僕が狙うのは優勝」と口にしており、この日もそれは同じだった。
これで、交流戦のチーム成績も5勝5敗の5分とした。「今年は(優勝する)チャンスだと思う」と、自らの記録ではなく、フォア・ザ・チームの言葉で締めくくった。