ソフトバンクがサヨナラ勝ちでプレーオフ初白星を挙げた。ソフトバンクは4点を追う9回、大村の適時打と代打・荒金の2点適時打、ズレータの押し出し四球で同点に追いつくと延長10回、1死二、三塁から川崎が5人目・藤田からサヨナラ打を放った。ロッテは3回橋本の内野ゴロと福浦の適時打で2点を先制、8回にも福浦の適時二塁打で2点を追加するも、9回・3人目の小林雅がリードを守りきれず、第1ステージからの連勝は4で止まる。明日の予告先発はソフトバンク・和田、ロッテ・小林宏。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | R | |
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千葉ロッテ | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 4 |
福岡ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 1x | 5x |
あと1イニングだった。31年ぶりの優勝を目前にしながら、まさかの黒星。延長10回、サヨナラ負けが決まると、選手はぶ然としてベンチに引き揚げた。プレーオフ初黒星。9回裏、4点リードを小林雅が守りきれなかった。「すいません。情けないが、仕方ない」。守護神は振り返った。
敵地での優勝王手戦。グラウンドに投げ込まれた1つのトイレットペーパーが、流れを変えた。
発端は9回、1点を失いなおも1死一、二塁の場面。川崎の左前打で、二塁走者と今江が交錯した。1度は走塁妨害で、二塁走者の本塁生還が認められた。バレンタイン監督が三塁ベンチを飛び出し、審判に猛抗議。これで判定が覆り、福岡ドームが騒然となった。
異様な雰囲気の中、小林雅の投球が続いた。スコアは2−4から1−4に戻ったが、逆に塁は全て埋まった。代打荒金に中前へ2点打を許し1点差。“事件”は2死二、三塁から松中を迎え、歩かせての満塁策を選択したときに起こった。カウント0−3。スタンドから三塁線上の手前へ、トイレットペーパーが投げ込まれたのだ。試合が中断し、松中も思わず異様なムードの高まりを制すほどだった。
流れはもはや、完全に相手に傾いた。ズレータに押し出し四球を与え、とうとう同点。「ヒットを打たれたが、その間に物が投げ込まれたり、審判の協議があったり、中断したことがリズムを崩したと思う」。バレンタイン監督は小林雅を思いやった。
8回までは完璧な試合運びだった。3回に下位打線から好機を広げ2点を先制。8回には福浦が2点二塁打で貴重な追加点を奪った。投げても渡辺俊が7回0封。あとは歓喜の瞬間を待つだけだった。4点リードでの小林雅投入は、抑えとしてチームを支えてきた功労者に、胴上げ投手を託したものだった。
優勝に王手の優位な状況は変わらない。「もう1つ勝つという目標がある。明日、全力を尽くす」とバレンタイン監督。小林雅は「中断?関係ない。やられたら、やり返す。これぐらいのことを明日に引きずっているようじゃ、仕事は務まらない」。16日、仕切り直しの優勝を目指す。
小林雅が1イニングで被安打5、4失点の乱調。小林雅のレギュラーシーズンでの1試合3点以上は、昨年5月1日の西武戦で中島に満塁本塁打を浴びた4失点以来になる。また投球1イニング以下で5安打以上の集中打を許したのは03年5月14日の日本ハム戦で5安打を打たれ、1/3回で降板して以来プロ入り2度、目。また、押し出し四球は新人時代の99年9月2日ダイエー戦でニエベスに与えて以来、6年ぶりとなった。
福浦がヒーローになり損ねた。3回に2点目の右前打、8回は2点に塁打と2本のタイムリーを放っていた。1本目の適時打を「うまく(一、二塁間を)抜けてくれた。1点で終わるのと2点とでは大違い」と振り返ったが、まさかの逆転負け。サヨナラの打球が右横を抜けると、ぼう然と立ち尽くした。
藤田がサヨナラ打を喫した。同点の10回、この回から登板した小野が安打と犠打で1死二塁とされ、ここで藤田がマウンドへ。大村に中前打を許してピンチを広げ、続く川崎にスライダーを右前へ運ばれた。「甘いところじゃないと打たれませんから…」と肩を落とした。気持ちを切り替えるか?という質問に笑顔でうなずいて球場を後にした。
渡辺俊の好投は報われなかった。3者凡退のイニングは5回のみだったが、走者を出しながらも粘りの投球で7回を無失点に抑えた。「調子は普通だった。(攻め方を)変えたのは松中さんだけです」と振り返った。延長の末、敗れたが「簡単には優勝できない印象。でも、トイレットペーパーとかは…」とスタンドからモノが投げ込まれたことに不快感を示していた。
16日の第4戦に先発する小林宏は悪夢のサヨナラ負けにも無関心を装った。「何も変わらないです。全然、何の影響もないです。普通です」。第1ステージ第2戦では西武を8回2死まで完封。大一番になるほど勝負強さを発揮する右腕はポーカーフェイスの中に気迫をみなぎらせた。
31年ぶりのパ・リーグ制覇に王手をかけていたロッテが延長戦で敗れた15日、本拠地千葉マリンスタジアムでは集結した2万人のファンが大きな溜息をついた。同スタジアムではプレーオフ第2ステージ初戦からスタンドを無料開放してきたが、この日は初めて内野2階席も開放。2万人が雨の中、スタンドを埋め尽くした。9回表まで4−0。その裏、追いつかれ、延長10回サヨナラ負け。喜びと落胆を交錯させつつ遠く福岡へ熱烈な声援を送った。
怒号とも悲鳴ともつかない大音響が千葉マリンを包み、そして溜息に支配された。内野スタンドを埋め尽くした約2万人のファンがうな垂れ落胆ムードが広がったかに見えた。その直後、拍手がわき起こった。「まだ、負けてないよ」「次、勝てばいいんだ」「明日こそ優勝だ」。千葉ロッテの31年ぶりのリーグ覇権奪還−ファンの思いは1つの敗戦でぶれることはなかった。
千葉マリンでは、プレーオフ第2ステージ第1戦から内野1階スタンドを無料開放して、パブリックビューイングを行った。第1戦が5000人、第2戦が7000人。そしてこの日、内野2階席も開放し、試合開始の午後6時には1万5000人が入場。最終的には2万人が内野スタンドを真っ白にした。午後8時25分、試合は8回表でロッテが攻撃中だった。それでもファンの来場は止まらなかった。
優勝決定と同時に優勝記念Tシャツ(1枚2500円)の販売準備が計画されていた。敗戦が決まり慌てて撤収した販売会社の担当者は「まさか、こんなに早く決まりそうになるなんて。急いで発注したのですが、3000枚をつくるのがやっと。でも明日は売りますよ」と話した。
一塁側スタンド裏の売店では「今日の売り上げはいつもの5倍は超えてる。残念なことに食べ物は300食ずつしか用意してなくて、3回までになくなった。計算ミスです。明日は倍以上の量を用意しておきます」と苦笑いを浮かべた。
ロッテの31年ぶりの優勝がかかったプレーオフ第2ステージ第3戦だが、地上波での中継がなく、NHKなどテレビ各局に問い合わせや苦情の電話が相次いだ。この日、試合を放送したのはKBC(九州朝日放送)とBS朝日、スカイパーフェク300スポーツ・アイ。首都圏ではBS、CSの受信設備がないと、お手上げだった。千葉マリンのパブリックビューイングもCS放送で「球場に来ることができなかったファンはどうしたらいいのか」という声が上がった。16日の第4戦はテレビ東京が生中継する。
31年間分の重圧が、わずかな油断を生んだのかもしれない。殺伐とした雰囲気の三塁側ベンチ。サヨナラ打を浴びた藤田はバットケースを蹴り上げた。座り込んだバレンタイン監督は、しばらく動きを止めた。延長10回1死二、三塁から川崎に右前打を浴びてサヨナラ負け。暗転は急だった。あと3つのアウトを積み重ねるだけで74年以来の優勝を勝ち取ることができるはずだった。しかし、勝利は消えた。
4点のリードがあった9回。第1ステージから4試合連続セーブを挙げている小林雅がマウンドに登った。だが、5安打を集中されて3点を失うとなおも2死二、三塁。指揮官は4番・松中を敬遠して満塁策を選択したが、裏目に出た。直後のズレータに同点の押し出し四球。小林雅は「押し出しは力んだ」と重圧に負けたことを認めるしかなかった。
「9回のソフトバンクの攻撃はやるべきことをやっていた。いい打球でなくても安打になったり、必要なところで四球もあった」。バレンタイン監督の目は充血していた。野球には何でも起こることなど熟知している。だが、この敗戦のダメージは大きかった。
悪夢の9回。1点を許し、なおも1死一、二塁で三塁手の今江が川崎の打球にジャンプした際、二塁走者の鳥越と交錯した。走塁妨害でいったんは鳥越の生還が認められたが、結局、審判団の判断で三塁止まり。判定を不服としたファンからは大量のメガホンやペットボトルがグラウンドに投げ込まれた。「物を投げられたり、協議による中断もあったのでリズムが崩れてしまった」。バレンタイン監督は説明したが…。
小林雅がマウンドに上がった時点で、リリーフ陣は全員がベンチで胴上げ態勢に入っていた。ソフトバンクに1点を許したところで、小野と藤田が肩をつくったが既に試合の流れは失っていた。マリーンズは、ソフトバンクよりも、むしろ自分達の心に敗れたのではなかったか。
先発した渡辺俊は、まさかの敗戦にも「簡単には優勝できない。苦労した方がいいでしょう」と淡々としていた。7回を投げ7安打で無失点。レギュラーシーズンでは6本塁打を浴びた松中も無安打に抑えた。先発の役割を果たしただけに「追いつめられた訳じゃないから」と前向き。第4戦以降は「監督が必要というなら、いつでも投げる」と中継ぎ登板にも意欲を見せていた。
パパとなった今江が、いきなり第1打席で安打をマーク。3回無死一塁から中前打で好機を広げ、この回の2得点につなげた。前日の14日に幸子夫人(31)が第1子を出産。試合がなかったため、早朝に東京に空路移動して子供と対面し、夜の最終便で福岡に戻った。試合には敗れたが、夫人に活躍を誓っていただけに「奥さんとの約束を守った?そうですね」と満足そうだった。
本拠地・千葉マリンは“涙雨”に濡れた。入場料無料のパブリック・ビューイングには雨にもかかわらず3戦目で最多の2万人が集結。1000キロ離れた福岡に熱い声援を送った。9回表まで4−0の展開に球場では割引された「優勝カウントダウンビール」が告知されたが、まさかの逆転負けで発売中止。スタジアムDJとして場内を盛り上げたbayFMのKOUSAKUは「明日こそみんなで乾杯します」と誓った。
これも、31年分の重圧か。三塁側の選手達は身を乗り出して、歓喜の瞬間を待っていた。4点リードの9回、あとは胴上げをするだけ…。しかし、ロッテファンの期待も背負った守護神・小林雅が、まさかの悪夢を演じてしまった。
「情けないけど、仕方がない…。同点押し出し?開き直って投げようとしたんだけど、力んでしまいました」。試合後、ヤフードームに隣接するホテルへ続く通路。1度も顔を上げることはできなかった。
西武との第1ステージ第2戦から、3試合連続完全リリーフの守護神が、音を立てて崩れた。9回1死一塁で代打・大道の投ゴロを一塁悪送球(記録は安打&失策)した時点で、これまでと違う姿があらわに。1点差の2死二、三塁で不振の松中を敬遠したが、ズレータに同点押し出し四球を与えてしまった。
この回の途中、三塁・今江の走塁妨害をめぐって一時中断。スタンドからはメガホン、ペットボトルが投げ込まれ騒然となった。ますます集中力がそがれていく状況。だが、そんなことは理由にできないほど痛過ぎるマウンドとなった。
当然のように延長10回、左腕・藤田が川崎にサヨナラ打を浴びる。31年ぶりのリーグ優勝が、手中からスルリと逃げた。流れが変わると、何が起こるか分からないのがプレーオフ。第1ステージから4連勝だった勢いを止めてしまった、大きな1敗だ。
それでも、バレンタイン監督は気丈に振る舞った。「スピードもあったし、疲れもみえなかった。(小林雅は)誰よりもセーブを挙げているし、これからも仕事をしてもらう」。球場を出るときには笑顔さえ見せた。こちらが王手をかけていることに、変わりはないのだ。
「やられたらやり返す。これくらいのことを引きずっているようじゃ、やってられないですよ」。最後は、小林雅も気を取り直した。視界良好だったゴールに霧がかかったが、大きな目標は見失っていない。
打線で気を吐いたのが福浦だった。3回に右前適時打を放つと、8回には右翼線へ2点適時二塁打。三塁を狙いアウトになったものの、好調を維持している。この日は3打点を挙げる活躍だったが、悔しい結果に。「打席では集中できている。貴重なヒットを打てたと思ったが…」。逆転負けに肩を落としていた。
31年ぶりのリーグ優勝を託された先発の渡辺俊は7回無失点。苦手の松中を封じるなど、先発の役割をきっちりこなしたが、試合は逆転負け。それでも「まだ、いいじゃないですか。今日勝ったらでき過ぎでしょ」と平静を装った。勝利を確信していただけに、ショックを受けたのは確かだが「(小林)宏之が準備できていますから」と前を向いた。
まさかの逆転負けで小林宏に出番が巡ってきた。16日、大事な第4戦に先発する右腕だが「負けたからって何も変わらない」と淡々とした表情。西武との第1ステージ第2戦では8回途中まで4安打1失点と好投するなどノリに乗っている。「自分のピッチングをするだけ。いつも通りやるだけです」と静かに闘志を燃やしていた。
まさかの逆転負けに、ビールかけの準備をしていた球団関係者はガックリ。選手宿舎の駐車場に作られた特設会場のテーブルには、31年ぶりの優勝にちなんで3100本のビールが並んでいたのだが…。残念ながら撤収作業に取り掛かることになった。同関係者は「また明日ですね」。今度こそ栓を抜きたいところだ。
ソフトバンクが逆転サヨナラ勝ち。9回に大村、荒金の適時打とズレータの押し出し四球で同点とすると、延長10回、川崎の右前適時打で決着をつけた。ロッテは渡辺俊が7回無失点。8回まで4点をリードしたが、最終回に登板の小林雅が誤算だった。
目の前の惨劇を信じることができなかった。敗れたバレンタイン監督は、しばし、まばたきを忘れていた。延長10回、サヨナラ負け。拍手で鼓舞する指揮官の横を、うな垂れる選手が通り過ぎる。自らが宙を舞うはずのグラウンドでは、ホークスが歓喜の輪を作っていた。
鉄壁の守護神がついに崩れた。4点リードの9回。小林雅を待っていたのは、思い描いた理想とはまったく逆の現実だった。1死一塁から大道の投ゴロを一塁に悪送球(記録は内野安打)。ここから大村、川崎、荒金と4連打を許し、リードは1点となった。2死後、プレーオフ無安打の松中を敬遠。ズレータ勝負を選択したが、落とし穴があった。
ストライクが入らない。ストレートの押し出し四球で同点。1イニングを5安打4失点。小林雅は「すいません。情けない。申し訳ない」と顔面蒼白で球場を去った。川崎の左前安打の時には、三塁・今江と二塁走者が接触。一時は走塁妨害を巡りプレーが中断。右翼席のホークス・ファンがメガホンを投げ込み、試合は一時中断。バレンタイン監督は「中断があってリズムが崩されてしまった。いい当たりでない安打も多かった」と守護神をかばった。
チーム最年長の小宮山が危惧した事があった。「ウチの連中は怖さを知らない。だからイケイケドンドンでここまで来られた。けれど、マサ(小林雅)は怖さを知ってしまっている。他の連中も大舞台で借りてきた猫になるかもしれない」。悪い予感は当たってしまった。誰よりも重圧を体験しているがゆえ、「あと2人」から悲劇を招いてしまった。
2勝1敗。ボビーは「まだ1敗でしかない。マサには故障、病気がない限り、次も同じ仕事をしてもらう」と前を向いた。王手の状況は変わらない。31年間閉ざされた重い扉を今1度、全力でこじ開ける。
悔しさは見せなかった。4点差を返される逆転負けにも、渡辺俊は気持ちを切り替え、前を向いた。「簡単に優勝はできないんだなって。苦労した方が良いんじゃないんですか」。決して強がりではない。「これで終わりじゃないし、追い込まれた訳じゃないですから」と残り2戦を見据えた。
優勝を確信していた。福岡ヤフードームを包み込む異様な雰囲気の中でも平常心を貫いた。7回を7安打無失点。5回以外、毎回安打を許す苦しい展開にも動じなかった。「昨日の方が緊張していたけど、投げたらそうでもなかった。ヒットを打たれるのはいつも通り」と2点のリードを守り役目を果たした。
「今日勝ったらすんなり行き過ぎでしょ?必要であればいつでも投げますよ」。残された2戦。先発2枚は揃っているが、その余裕と心意気があれば、ロッテの勢いは失われない。
パブリックビューイング(PV)観戦のため千葉マリンに集まったロッテ・ファンは、ガックリ肩を落とし家路についた。
31年ぶりの優勝を見届け、喜びを分かち合おうと集まったファンは、徹夜組を含めてなんと2万人。初戦の5000人、2戦目の7000人を大きく上回った。この日、仙台から駆けつけたという20代の男性ファンは、「ここでみんなと喜べたら最高じゃないですか!」。
その思いは土壇場で伏された。8回まではロッテの一方的な攻勢に沸いた。祝杯のビールを手にするものもいた。しかし9回、この日初めて悲鳴が歓声を上回った。同点とされると、10回にソフトバンクがサヨナラ勝ちを決めた。スタンド全体からは一斉に溜息が漏れた。
それでも下を向く者は誰もいない。「まだ明日がある。歓喜の瞬間が少し延びただけさ」。16日こそロッテ・ファンの歓喜の雄叫びが上がる。
猛虎の聖地が千葉のビッグウェーブに戦々恐々!?阪神の本拠地・甲子園球場の関係者は15日、ロッテ名物「ジャンプ応援」のオーバーアクションに警鐘を鳴らした。
頂上決戦が実現すれば、熱狂的なマリーンズファンが甲子園の左翼席で虎党に負けじと、独特の“タテのり”応援を繰り広げるのは確実。6月3〜5日の交流戦で約3000人(推定)の「黒装束軍団」の熱狂ぶりを目前にした甲子園球場関係者は「お客様の楽しみを邪魔する訳にはいかない。ただ、将棋倒しの恐れもあるし心配です。場内アナウンスなど、現場での対応を考えています」と、対策に頭を悩ませている。
無理もない。千葉マリンは1998年に完成した比較的新しい球場。約7000席の外野座席は幅42センチ、前後約80センチとゆったりとした間隔で並んでいる。一方、甲子園は1924年に造られたため、約2万2000ある外野席は幅40センチ弱、前後約60センチと狭い。しかも、スタンドの高さは千葉マリンの約1.5倍の15メートル。もし、狭いスペースに慣れないマリーンズファンが足を踏み外せば、将棋倒しの大惨事に発展する危険性もある。
また、外野スタンドの土台基礎は土嚢で補強されているが、上部だけはテナントが内部に陣取るため空っぽのすき間が生じている。「まさか人が飛び跳ねただけで抜け落ちるなんてことはないと思いますが…」と球場関係者。勢いづくチームだけではなく、ファンにも警戒感を強めている。
4点リードの9回、ロッテのリリーフエース小林雅が崩れた。5安打に自らの失策や押し出し四球が絡んで同点とされた。相手方に流れた勢いは戻らず10回サヨナラ負け。連勝で優勝に王手をかけたロッテが、思わぬ展開で足踏みした。
9回の小林雅は直球が低めに決まらず、先頭カブレラに中前打。1死後は代打・大道の打球処理を慌てて悪送球し一、三塁と傷口を広げる。この後大村、荒金に適時打を浴び、満塁策で迎えたズレータには同点の押し出し四球。小林雅は「(大道の場面は)普通に投げればアウト。押し出しは力んだ」と、重圧に負けたことを認めた。
ベンチは優勝ムードで表情が緩んでいただけに、このつまずきは痛い。バレンタイン監督は「どのチームも必ず負けることはある」と平静を装うが、4点差をひっくり返された選手のショックは小さくない。
ロッテ渡辺俊は「こんなことがあるんですね」と、どんでん返しの敗戦にも淡々と試合を振り返った。ヒーローになり損ねた。巧みな投球で7回を無失点で乗り切り、リーグ制覇に大きく近づいたはずだった。だが、頼みの小林雅が崩れ、9回に4点を追いつかれ手中の勝利が消えた。「簡単には優勝できないんですね。でもこれで終わりではないし(逆転負けは)恥ずかしくない」と気持ちを切り替えていた。