ロッテは同点とされた直後の3回2死二、三塁からベニーの左前打で2点を勝ち越し。4回には渡辺正の2ランで加点。ともに失投をとらえた。渡辺俊は6回で8安打されたが1失点。サムスンは9回に反撃したが及ばなかった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
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サムスン | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 |
千葉ロッテ | 1 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | x | 5 |
ロッテベニーの集中力は最後まで切れなかった。同点の3回2死二、三塁。初球を左前に運ぶ2点適時打を放つ。余ったアドレナリンを解き放つかのように、一塁ベース上で右手を突き上げる。追いついたばかりのサムスンを突き放す価値ある1打だった。
文句なしの今シリーズMVPだった。4試合で9打点。興農(台湾)戦では2打席連発もあり、チャイナ戦でも決勝打。この日も決勝打だ。「とにかく勝ちたかった。俺達は日本を代表して戦っている。もし負けたら多くの人を失望させてしまう」。元メジャーリーガーの意地が、日本代表の執念と重なっていた。
賞品の車に「偶然、来年は車に乗りたいからいいのを探しておいてくれと昨日友人に言ったんだ。そしたら今日、車が手に入ったよ」と報道陣を笑わせた。バレンタイン監督が世界一決定戦をベニーの故郷、ハワイで開催する提案をしたことにも茶目っ気タップリ。「いいアイデアだけど、かなり多くの人にチケットを買わなければならない。財布が空になるから、ちゃんと払ってもらうよ」。
ヒーローインタビューではスタンドに向かって「チバ・ロッテ・マリ〜ンズ」とファンと同じ声援を叫んだ。心優しき男が爆発すれば、来季のロッテも勝ち続ける。
ロッテはソフトバンクと対戦したプレーオフ第2ステージ第5戦から、日本シリーズ、アジアシリーズと無傷の9連勝で飾った。ポストシーズンに限れば、昨年のレッドソックスと今年のホワイトソックスがマークした8連勝の大リーグ記録をも上回った。
今江が左足首を故障し、途中交代した。1回表の守備で、ジャンピングスローした際に痛め、4回表の守備から大事をとり交代。「前から痛かったんで」と説明した。1回裏には左手首に死球を受けるなど災難続きだったが「当たった瞬間、オフのゴルフができないかと思った」と報道陣を笑わせていた。
今季本塁打がなかった渡辺正が、左越えへ貴重な中押し2ランを放った。3−1で迎えた4回2死一塁から直球を振り抜き、打った瞬間に両手を上げてガッツポーズ。負傷した今江に代わって4回表の守備から入り、すぐに回ってきた打席で結果を出した。「(今江に)デッドボールが当たった時から準備していた。チャンスがきたって感じだった」。
最後もボビーの舞で、今年のプロ野球は幕を閉じた。アジア初代王者を決める「KONAMI CUP アジアシリーズ2005」の決勝で、ロッテ(日本)が5−3でサムスン(韓国)を下し、アジア最強軍団の称号を手にした。同点の3回にベニーの2点打で勝ち越し。4回には途中出場の渡辺正の2ランで突き放した。先発渡辺俊やYFKと呼ばれるリリーフ陣を含め「ロッテの時代」を演出した男達が最後まで力を発揮。ポストシーズン9連勝で締め、リーグV、日本一、交流戦に2軍の2冠を含めると史上初の「6冠」を達成した。最優秀選手はロッテのベニー・アグバヤニ外野手(33)が選ばれた。
2点差に詰め寄られヒヤリとしたが、外野を埋め尽くしたロッテファンの「コバヤシ・コール」が守護神を後押しした。2死一、二塁。最後は小林雅が相手5番を空振り三振に切った。一塁ベンチからナインが飛び出し、たちまちマウンド付近に輪が出来た。2度、3度。この日もしっかりと右手にウイニングボールを握り締めたバレンタイン監督の体が宙を舞った。
ヒーローインタビューでのバレンタイン監督の声も上ずっていた。「ホームのファンの前で胴上げされて本当に最高の気分だよ。ロッテのファンがイチバンです!」と絶叫した。これで交流戦、パ・リーグペナント、日本シリーズ、イースタンリーグ、ファーム日本選手権に続く6度目の優勝。前人未到の6冠を達成した。ポストシーズン9連勝はなんと「世界初」。ロッテは大げさではなく、プロ野球史上に語り継がれるチームとなった。
この日の相手は10日の初戦で6−2と快勝していたサムスン。満を持してエースのペ英洙(ヨンス)投手を先発に立てるなど、死に物狂いで向かってきた。それでもバレンタイン監督が「私が指揮したチームの中で、1番バランスが良い」というナインが、全てに上回った。1−1の3回裏にはベニーが勝ち越しの2点適時打。4回裏には今江に代わり途中出場した渡辺正が、値千金の2ランを左翼席中段に突き刺した。03年以来という1発が飛び出す。前日4番のベニーを6番に下げてもV打。ボビー・マジックは大一番でも発揮された。
そしてこの日の勝利は、世界へと向かう、初めの1歩だった。バレンタイン監督は常々、「アジア王者と米国王者で、真のワールドシリーズをやりたい」と言い続けてきた。今大会で、圧倒的な強さをアジアはもとより、世界へ発信することに成功した。「今大会は、いつか行われる世界一を決める大会への、非常に大きな1歩だよ」と噛み締めるように話した。
バレンタイン監督がチームに戻ってきてから、わずか2年。31年ぶりパ制覇から日本一、そしてアジアの頂点にまで上り詰めた。今春のキャンプで「日本で行われる最後の公式戦に出場して、それに勝とう」とナインに話した目標を、見事達成した。試合後の会見では「目標に向かう時には、自分達の全てをささげなければならない。でもそれをしていると、周りの様々な力が味方になってついてきてくれる。それがこのチームだ」と説明した。ボビーというカリスマのもと、選手達は素晴らしい本物のチームを築き上げた。
ロッテのサブマリンが、アジアの宝になった。渡辺俊は初対決の相手にも、自分の軸をぶらさなかった。4点のリードをもらった5回表。先頭の朴漢伊に右前打を許す。だが2番姜東佑を遊ゴロ併殺に仕留めた。さらに安打を浴びたが、4番を中飛。8被安打も、得点さえ与えなければ構わない。6回1失点の仕事納めだった。
アジアNO.1にチームを導く投球にも、満足しない。「結構タイミング合っていた打者も多かったし、慎重になりすぎた。普段の倍、疲れました」と振り返る。10月23日の日本シリーズ第2戦から投げていない登板間隔や、決勝独特の雰囲気。初対戦の重圧もあった。唯一の失点となった3回に「甘く入ったのを後で里崎に怒られた。逆転されないように最少失点で抑えようと思った。たくさん打たれました」と反省しきりだった。
徹底マークに遭っていた。必ず対戦することを想定していたサムスン宣監督は「内を捨てて外を攻略していこうと。安打はほとんど外角だった」と明かした。だが完全攻略できず「途中から徹底的に内を攻めてきた」と脱帽。外角に広く内角に厳しいストライクゾーンを物ともせず、渡辺俊は攻めきっていた。スタイルを崩さない。投手としての我の強さだった。
今季のチーム初勝利となった3月27日の楽天戦完封。ここから快進撃が始まった。長く、そして圧倒的な1年を自らの登板で納めた。シーズンではリーグ2位の防御率を記録。10月からの4度にわたる短期決戦でも、最少失点以上、許すことはなかった。「来年につながる過程の1年にしたい。まだまだやらなきゃいけないことはたくさんある。満足してないんで。1度もローテを抜けずに守れるよう体をつくり直します」。世界一低いところから投げる右腕の視線は、どこまでも上を見続ける。
アジアの頂点に立つためにも、最後はこの3人の力が必要だった。先発渡辺俊が6回1失点に封じ込めると、あとは「YFK」投入の必勝パターンで逃げ切るだけだった。
7回は藤田だ。サムスンの切り込み隊長、朴漢伊から続く上位を3人で仕留めた。「いつもの仕事。勝ててよかった」。05年のラストゲームも、淡々と与えられた任務を全うした。
8回は薮田。1安打こそ許したが、2つの三振を奪い無失点。力で押し続けたこの1年の投球スタイルを貫いた。昨年、バレンタイン監督の提案で先発から中継ぎへ配置転換された。「僕は先発で中5日とかで投げていると、考えすぎちゃう。中継ぎが合っている」。今の仕事を与えてくれた指揮官の下でのアジア一は格別の味だった。
今年3度目の胴上げ投手となった小林雅は、2点を失ったものの最後は三振で締めた。開口一番「やっと終わった〜」と、充実した1年をすがすがしい表情で振り返った。「YFK」がいる限り、来年以降も強いロッテは続く。
プロ野球の根来コミッショナーは13日、アジアシリーズを総括し「1発花火ではなく、続けてやらないと。この勢いを加速させることが必要だ」と大会継続の必要性を訴えた。第1回は日本が主催したが、将来的には他の国・地域で開催する可能性にも触れ「当面は日本でやって、ある時にはほかでやれるように持っていければいいと思う」と話した。
日本代表のロッテがサムスン(韓国)を下して優勝し、賞金5000万円を獲得した。ロッテは日本シリーズに続いて無敗で大会を制し、プレーオフを含めてポストシーズン9連勝で今季を締めくくった。MVPにはロッテ・ベニーが選ばれた。
ロッテに勝利の流れを引き寄せたのは、伏兵の1発だった。3−1の3回裏、2死一塁。負傷した今江に代わり、途中出場で「2番三塁」に入った渡辺正が、この試合初打席で左翼席中段へ2ランを叩き込んだ。今年、シーズンでは1本も本塁打を打っていない渡辺正だったが「剛(西岡)が塁に出て盗塁ストップのサインが出ていたので、ストレート1本だけ狙って打ちました」と振り返った。相手エースのペがマウンド上でガックリと肩を落とす、会心の1打だった。
ボビー5冠だ。「KONAMI CUP アジアシリーズ2005」の決勝が13日行われ、ロッテがサムスン(韓国)を5−3で下し、初のアジア王者に輝いた。ボビー・バレンタイン監督(55)率いるマリーンズは1、2軍の日本一、リーグ優勝、交流戦に加え、アジアNO.1の称号も獲得。ポストシーズン9連勝で05年を締めくくった。ロッテには賞金5000万円が贈られ、MVPにはベニー・アグバヤニ外野手(33)が選ばれた。
マリーンズサポーターで真っ白に染まったスタンドから無数の紙テープが投げ込まれた。リーグ優勝、日本一に続く3度目の胴上げ。バレンタイン監督はアジアNO.1になったことを報告する。
「リーグ優勝、日本一の時は地元ファンの前でできなかった。スタンドを埋めてくれたファンの前で、優勝の瞬間をともにできて最高の気持ちです」。ポストシーズン9連勝で初代アジア王者になった。交流戦優勝、リーグ制覇、日本一に、ファーム選手権の勝利を加えて5冠。全てのタイトルを手中に収めた。
最後もボビーのマジックだった。2点リードで迎えた4回だ。魔法をかけられたのは左足首を痛めた今江に代わって途中出場していた渡辺正だ。
2死一塁の場面で一塁走者・西岡に指揮官が送ったのは「盗塁ストップ」のサイン。サムスンのバッテリーは俊足の西岡を警戒し、直球主体の配球になる。西岡にストップをかけておいて、渡辺正に直球を狙わせた。「監督から楽しみなさいと言われ気持ちが楽になった」と渡辺正は言った。
プロ8年で通算9本塁打の男は、狙い通りに直球をフルスイングすると打球は左翼席中段へ吸い込まれた。バレンタイン監督は「ファンを喜ばせるのは選手。その選手達が素晴らしいプレーをしてくれる」と笑顔で渡辺正を迎えた。
ドジャースなど3球団が招聘に意欲を見せたことで起こった去就問題。それも「世界一のファンとこの選手達と一緒に来年もその先も一緒に時間を過ごすことができたらと思う」と自らで終止符を打った。
春季キャンプで「最後に行われる公式戦で勝利しよう」と言った言葉を実現した。アジアを制し、次なる目標は世界だ。大リーグ優勝チームと世界一を争う場を指揮官は「夢」とは思っていない。「このアジアシリーズは将来、世界一を決める大会への大きな1歩となっただろう」。今季の開幕前にロッテが全てのタイトルを獲得すると予想した人は多くはなかった。だが、それは実現した。世界一を目指す旅はまだ途中である。
陽気なハワイアンはお立ち台で東京ドームを埋め尽くしたファンと高らかに歌った。
「チバ〜、ロッテ、マリーンズ!」。決勝の舞台でもベニーは勝負強さを発揮した。1−1の3回2死二、三塁。サムスンのエース、ペ・ヨンスの150キロ直球を叩くと打球は三遊間を真っ二つに破った。予選リーグの興農戦で2打席連発、チャイナスターズ戦でも満塁の走者を一掃する逆転二塁打、そして決勝2点打。今シリーズの4安打が通算9打点を稼ぎ、初代MVPを獲得した。
「日本の代表として絶対勝ちたかった。負けたらファンを失望させる。だから気合が入った」。バレンタイン監督と並んだ記者会見では息子のように寄り添った。昨年、指揮官のロッテ復帰と共に日本へ。MVPの賞金100万円にも「自分にとって大きなボーナス。全てはボビーのおかげ」とジャパニーズドリームに導いてくれた指揮官に感謝した。
副賞のドイツ車にはびっくりだ。バットは免許皆伝のベニーだが、33歳で車の免許は持っていない。偶然にも試合前、友人に車購入の相談。試合後には「もう手に入っちゃったよ。免許を取って来年から運転したい」とノリノリだ。指揮官からの「アブナ〜イ」の言葉には「だから僕の車に近づかないで!」とファンに忠告。運転技術に磨きがかかれば、その打棒も止まらなくなりそうだ。
ロッテの李承Y内野手(29)が13日、アジアシリーズ終了後の東京ドームで高津、石井一らをメジャーに送り込んだ水戸重之氏(48)と代理人契約を結んだと発表。今季までの2年契約が切れる今月30日までに残留交渉がまとまらなければ、以前から希望していた大リーグも視野に他球団移籍の可能性を示唆した。
来日2年目の今季は昨季の14発を上回る30本塁打。この日の古巣との対戦は4打数無安打だったが、大砲としての地位を確立した。だが夢のメジャー挑戦、バレンタイン監督の日替わりスタメンによる守備機会の減少もあり、移籍も考慮した代理人契約に踏み切った。
来季の去就については「代理人に任せてある」を繰り返したが「ロッテで最後の試合?そうならないようにお願いしたい」と今後の残留交渉次第では移籍する可能性も示唆した。
満を持して決勝に先発したサブマリン渡辺俊が、苦しみながらも6回を1失点。ゲームをしっかりつくって勝ち投手となった。「独特の雰囲気があって、1度も対戦したことがない相手だったから」と、初回から毎回走者を背負う投球。8安打を浴び、3回に4番・キム・ハンスに右前へ同点打された。それでも「失点した回は甘く入ったが、逆転されないように投げた」。打線の勝ち越しを呼び込んで最後は笑顔だった。
重光オーナー代行が、世界一決定戦の実現を熱望した。アジア王者に輝いた試合後、「ボビー(バレンタイン監督)とも相談して、数年後にはクラブチームチャンピオンシップを実現したい。アメリカ(MLB)とも話し合いを持って、世界で戦えるようにしたい」と熱弁。韓国の“新旧財閥対決”を制しただけに「日本代表より、アジア代表の方が重みもある」と鼻息は荒かった。
ロッテがサムスンを5−3で下し、初代アジア王者となった。3回にシリーズMVPのベニー・アグバヤニ外野手(33)が勝ち越し打。4回にも2点を追加して粘るサムスンを振り切り、優勝賞金5000万円を手にした。ロッテは交流戦、パ・リーグ、日本シリーズの優勝に続く4冠。2軍も含めて6冠の完璧なシーズンとなった。
3万7078観衆がいっせいに立ち上がり、紙テープが舞う。真っ白に染まった東京ドームの中心で、バレンタイン監督が3度、宙に舞った。交流戦、パ・リーグ、日本シリーズに続き、4つ目のタイトルとなるアジア王者。イースタン優勝、ファーム日本一を含めれば“6冠”達成だ。最強ロッテが、プロ野球改革元年を最高の形で締めくくった。
この日もマジックが炸裂した。前日の4番から6番に下げたベニーが3回に勝ち越し打を放つと、4回の守備から出場した渡辺正が左翼席に2ラン。守備でミスした直後に「(監督から)楽しんでプレーしなさいと言われ、楽になった」。ボビーの一言が、ここ2シーズン本塁打0だった伏兵の1発を生み出した。
ただ、バレンタイン監督は最初からこの日を思い描いていた。12球団が日本一を目指してキャンプインした2月。ボビーだけは「今季はアジアシリーズがある。我々は、スケジュールされている最後の試合まで戦う」と宣言していた。そのキャンプには、韓国ロッテから4選手を招待。自軍選手に“お手本”となるよう言い続けた。日本だけでなく、いつも「アジアの視点」を持っていた。
実は、昨オフに韓国も訪問。野球関係者と激論を戦わせた。アジアの野球熱に触れたことで高まった意識。初代アジア王者への執念は、そこから生まれていた。
そして、この優勝が新たなスタートとなる。重光オーナー代行とは、クラブ世界一決定戦の構想を検討中。「世界一を決める戦いに向けて、大きな1歩となった。私は来年以降も、ファンに最高のプレーを見せたいと思う」。
夢にはまだまだ続きがある。アジアから世界へ−。ボビーの挑戦は始まったばかりだ。
ロッテの倍以上の13安打を放ちながら11残塁の拙攻。それでも9回に2点を返して見せ場を作り、宣銅烈監督は「最後まで良く粘った。褒めてあげたい」と選手をねぎらった。中日のストッパーとしても活躍した同監督は「リードして中継ぎ投手陣につなぎたかったが、それができなかった」と敗因を挙げ「今大会で得たことは多い。来年に向け、また準備をしたい」と笑顔で話した。
「日本代表として勝とうと決めていた。MVPは大きなボーナス。全て監督のおかげです」。同点の3回2死二、三塁で、三遊間を破る2点タイムリー。失いかけた流れを引き戻した。4試合で12打数4安打9打点、2本塁打。アジア王者をそのバットで引き寄せた。
MVPで賞金100万円と外国車1台をゲット。実は、来年は自動車免許を取得し、マイカー通勤することが目標だった。「試合前、友人に『(来年は)車を貸して』といっていた。そしたら試合後、車が自分のものになっていたんだ」と、表情はクシャクシャだ。
尊敬するバレンタイン監督のために、4戦スタメン出場で貢献。陽気なハワイアンの存在感は、来季さらに高まっていく。
日本シリーズではMVPを獲得した今江だが、この日は1回の守備で左足首を痛め、4回の守備から退いた。「あのまま試合に出てもチームに迷惑かかると思ったから」。もっとも患部は軽症で、第1打席で左手首に受けた死球について「当たった瞬間、オフのゴルフができなくなるのは勘弁と思いました」と冗談を飛ばすなど明るい表情だった。
ロッテ・李承Y内野手(29)が弁護士の水戸重之氏(48)と代理人契約を結んだことを発表した。同氏はメッツの石井や高津の代理人も務めている。
ボビーマジックでアジア王者だ−。ロッテがサムスンの粘りに苦しみながらも、バレンタイン監督に“マジック”をかけられた渡辺正の2ランなどで、韓国王者に勝利。初代アジア王者に輝いた。これでボビー・ロッテは交流戦からパ・リーグ、日本シリーズと合わせて“4冠”を達成。バレンタイン監督は15日に来日するブッシュ米大統領に、クラブ世界一決定戦の実現を訴える。
緑の絨毯を踏みしめ、歓喜の渦に駆け出した。大切そうにウイニングボールを握りながら、ボビーは無数の笑顔の中心にもぐり込んだ。福岡、甲子園に続く今季3度目の舞い。至福の時に浸った。「ホームのファンの前で胴上げされて、本当に最高の気分だ」。交流戦V、リーグ制覇、日本一、そして初代アジア王者。9年連続Bクラスから、最後はポストシーズン9連勝で、一気に2005年のタイトルを総なめにした。「ロッテのチームはスバラシイ!ロッテのファンはイチバンデス!」。4冠監督の日本語の勝利宣言が、東京ドームに響きわたった。
今季の“ラスト・マジック”がサムスンに引導を渡した。負傷した今江に代えて4回の守備から投入した渡辺正が、いきなり2度のお手玉。緊張感を察すると、ベンチで声をかけた。「楽しんでプレーしなさい」。
効果はテキメンだった。その裏、2死一塁で渡辺正に打席が回る。一塁走者は俊足の西岡。警戒するサムスン・バッテリーを見て、ボビーは盗塁ストップのサインを出した。渡辺正は直球1本にヤマを張る。「監督の一言で気持ちが楽になりました」。打った瞬間、ガッツポーズが飛び出した。左翼へトドメの2ラン。精神と戦術のマジックで最終決戦を制した。
アジアの頂点に君臨したボビーは、夢の「世界一決定戦」の実現に動き出す。「今大会は将来、世界一を決める大会への非常に大きな1歩になった」。15日には日米首脳会談のため、レンジャーズ監督時代のオーナー、ブッシュ米大統領が来日。バレンタイン監督は過密日程の合間をぬって、大統領が降り立つ大阪空港を電撃訪問する。「日米1位のチーム同士で、真のワールドシリーズを戦いたい」と常々話す指揮官。野球に造けいの深い米大統領に持論の「世界一決定戦構想」を披露して、来季以降の開催を訴える可能性が高い。
アジアシリーズ前、バレンタイン監督は1度も「優勝」の言葉を発しなかった。「世界で唯一、野球がNO.1スポーツである日本に誇りを持っている」。野球大国・日本の代表として、史上初のアジア制覇は義務でしかなかった。
メジャー、日本で優勝を経験したカリスマが目指す「リアル・ワールドシリーズ」。「私は日本の野球がメジャーと同じレベルに達していると信じて疑わない。ロッテは今あるどのチームより強い」。アジアNO.1チームを率いて、世界の舞台へ。最後にして最大の夢を情熱に変えて、ボビーの挑戦は続いていく。
プロ野球の根来泰周コミッショナー(73)は13日、アジアシリーズを定着させた上で、米大リーグのワールドシリーズ覇者とクラブチーム世界一を争う「リアル・ワールドシリーズ」の実現へ意欲を示した。
アジアシリーズ決勝戦の試合前、「まずはアジアでやって、アメリカとクラブチーム同士で争って世界一を決めるのが最終的にいい。アジアの基盤を固めるのが順序としては先でしょう」と語った。
世界一決定戦につながらなければ、アジアシリーズの意義も薄れていく。ソフトバンクの孫正義オーナー、ロッテのバレンタイン監督も実現を強く主張。根来コミッショナーは「3年後にどこまで熱が高まるか。1発花火じゃなくて続けてやらないと。下火になるようじゃしようがない」と展望を語った。
ロッテは20日の優勝パレードを“6冠パレード”と位置づけて行う。1軍の「4冠」にイースタンV、ファーム日本一を加えて「6冠」となるため、全選手が参加。当日は千葉市街、幕張の2コースをパレードした後、優勝報告セレモニー、ファンフェスタを実施する。当初は幕張メッセでの開催も検討されたが、「やはり本拠地でやるのが1番ですから」と荒木企画広報部長。千葉マリンでファン参加型のイベントを行うことになった。
ロッテがサムスンを破り、初代アジア王者に輝いた。同点の3回、ベニーの左前2点適時打で勝ち越し。4回に渡辺正の2ランで追加点を奪った。先発の渡辺俊は6回を被安打8も1失点の粘投。7回から藤田、薮田、小林雅のリレーで逃げ切った。
真っ白に染まったスタジアムを見回して、ベニーは太い両腕を何度も突き上げた。4試合9打点。文句なしのMVPだった。
副賞のフォルクスワーゲン社「ニュービートル」に目を輝かせた。実は、来季から千葉マリンへの車通勤を決意。「昨日(12日)、友人に車を探しておいてと頼んだのに、試合が終わったら手に入っていたよ」と嬉しい悲鳴で笑いを誘った。
頼れるハワイアンの打棒が最終決戦でも爆発した。同点とされた直後の3回2死二、三塁。サムスン・ベ英洙の初球、内角直球を叩くと、火を噴くような当たりが三遊間を切り裂いた。「日本のプロ野球ファンにとっても、負けられない試合だった。いいところで打てて良かったよ。私達は1番です!!」重責を果たした達成感を漂わせながら、ベニーは会心の決勝打を振り返った。
大車輪の活躍だった。コールド勝ちに導いた2戦目の興農戦では2打席連発、3戦目のチャイナ戦でも走者一掃の逆転3点二塁打。メッツ時代の2000年3月30日には、カブスとの日本開幕第2戦で代打決勝グランドスラムを同じ東京ドームで放っている。月日を経て、ユニホームは違えど、当時も指揮を執っていたバレンタイン監督と、歓喜の抱擁のシーンだけは変わらなかった。
ボビーが提唱する「真のワールドシリーズ」構想では、舞台は出身地・ハワイが想定されている。「そうなったら色んな人にチケットを買わなくてはいけないね。でも、お金はしっかり払って欲しいよ」とジョークを口にしたベニー。実現すれば、2006年秋にも最高の形で地元凱旋を果たす可能性も十分にある。
貫録の投球だ。渡辺俊は3回、4番の金翰秀に右前適時打を許したが、失点はそれだけ。8安打されながら6回を1失点にまとめ、決勝の先発マウンドという大役を立派に果たした。
約1年7ヶ月ぶりとなる東京ドームのマウンドに加え、アンダースローに慣れている韓国の打者を相手に、序盤は手こずった。「1度も対戦したことない相手で慎重になった。タイミングがあってる打者が多かったし、独特の緊張感もあって、倍疲れました」要所を締めて切り抜けるシーンはもう見慣れた光景だった。
今季、途中KOされた試合はゼロ。1年間、安定した内容でローテーションを守り続けた。「去年から力をつけてきた成果。今年で終わらないように、(成長への)過程の1年になるようにもう1度、体づくりをしたい」最高の年も通過点。右腕は早くも来季へと目を向けていた。
実力差は大きくない。だが確かに、何かが足りない。ロッテを上回る13安打を放ちながらも惜敗。サムスン・宣銅烈監督(42)は「これが野球。好機に点を取れるかが、強いチームの条件」と敗因を語った。エースが誤算だった。
先発した194センチの長身右腕ペ英洙がマリンガン打線に捕まった。150キロ近い剛球が打ち返され、4回7Kも5失点KOだ。キョンブク高の5年先輩に当たる李承Yには、3打数無安打2三振と意地を見せたが「制球力や変化球の精度を上げなくては、日本に勝てない」と、課題を口にした。
主砲・沈正洙が戦線離脱。韓国では未体験のドームでのプレー、そしてロッテへの熱狂的応援…不利な状況が重なっても、ナインは力を出し切った。「諦めずによくやった。ほめてあげたい」と指揮官。国別対抗戦となる来春のWBC、来秋のアジアシリーズとリベンジの機会はまだある。敗戦を糧に、いつか必ず借りを返す。
今季で2年契約が終了する李承Y内野手(29)が13日の決勝戦終了後、日本の他球団への移籍を視野に入れ、代理人を起用することを明らかにした。代理人は石井一、高津らメジャー選手の代理人を務める水戸重之弁護士(48)。李は「ポイントはお金より、自分の力を出せるチームであること」と話し、一塁、外野での起用を確約する球団を最優先に、移籍先を探す方針を示した。
ロッテでは主にDHで起用されたが、将来メジャー移籍をにらむ李は「守備がネックになっている」と不満を持つ。「今オフのメジャー移籍はない」と公言するように、米移籍は早くて再来年。来季の進路は、ロッテ残留か国内他球団への移籍に絞っている。
ロッテ側はシーズン中からの方針通り、残留要請を行う。重光オーナー代行はこの日、「ぜひ来年も残っていただけるようお願いします」と明言した。現時点では残留が濃厚だが、李は「早く決めるのは難しい」と長期戦覚悟でオファーを待つ覚悟だ。
ロッテが18日の大学生・社会人ドラフトで、東北福祉大の根元俊一内野手(22)の上位指名を検討していることが13日、分かった。
根元は俊足好打の内野手で3、4年と日米大学野球の日本代表に選ばれている。13日の明治神宮大会・創価大戦では3番・二塁手で出場。希望入団枠で日本ハム入りが決まった八木から決勝の本塁打を放った。さらに50メートル5秒8の俊足に加え、堅実な守備も評価されている。
ロッテは西岡、今江ら若手内野手が台頭しているが、二塁は西岡を回したり、堀、小坂のベテランに頼っているのが現状。次の世代の内野手として根元に早い段階から注目していた。
今季限りでロッテとの契約が切れる李承Y内野手が、今後の交渉窓口として水戸重之氏(48)と代理人契約を交わしたことを発表した。水戸氏は01年オフにメッツ石井一がドジャース入りした際の日本側代理人を務めるなど、メッツ高津、横浜斎藤、サッカーのフェイエノールト小野ら数多くの選手を担当している。李は既に今オフの大リーグ移籍と韓国球界復帰がないことは明言しており、試合後の会見では「水戸先生に全て希望は伝えてあります。今月中はロッテとじっくり話し合いたい」と話した。