わたしはかもめ2006年鴎の便り(3月)

便

3月3日

WBC…1次リーグA組

◇中国2−18日本(東京ドーム)

日本が猛打で圧倒した。2−2の5回に西岡、福留が連続本塁打。6回に3点を加え、7回には多村が2ラン。8回に打者一巡で7点を奪いコールドゲームとした。上原は1発を浴びたが5回を2点でしのぎ、その後は清水が締めた。

123456789R
日本0110432718
中国000200002

◇台湾0−2韓国(東京ドーム)

韓国は大リーガー4人の投手リレーで台湾に2−0と完封勝ちした。

123456789R
韓国0001100002
台湾0000000000

ページトップ

西岡勢いつける勝ち越し3ラン[ニッカン]

王JAPANが大勝発進した。初戦の中国戦。先発上原浩治投手(30=巨人)がまさかの同点2ランを喫した直後の5回だ。西岡剛内野手(21=ロッテ)が1死一、三塁から左越えへ勝ち越し3ランを放ち、打線に勢いをつけた。8回には俊足を飛ばしてタイムリー三塁打。王監督が掲げた「ストロング&スピーディー野球」を実践し、大舞台初戦で主役の座を奪った。日本は18−2と、地力の差を見せつけて8回コールド勝ち。4日は台湾と対戦する。

西岡は、ホームランを狙って打席に立った。上原がまさかの同点本塁打を打たれた直後の1死一、三塁のチャンス。西岡はあくまで強気だった。「ここでホームラン打ったらヒーローだなと思った」。初球、強振したが空振り。「やっぱ無理だな」。考えを変え、続く球にはセーフティースクイズの構えを見せた。しかし、ここで再び考えが変わる。カウント1−2からの4球目を強振すると、大歓声の中、打球は一直線に左中間スタンドへ飛び込んだ。

球場中に漂う重苦しい空気を一振りで振り払い「自分で真っ青になった。ホームラン入ってしまったって感じ。びっくりしているし、最高の気分です」と笑顔を見せた。ゆっくりとダイヤモンドを1周し、東京ドームに響き渡る「西岡コール」にベンチで帽子をとって応えた。打席の中で二転三転した若き思考。最終的に強振した理由については「一塁手が後ろだったので、バントにいったらたまたまボールになった。でもこの球なら外野フライ(犠飛)は打てると思った」と振り返った。

昨季の本塁打は、僅か4本。41盗塁を記録し、史上2位タイの若さで盗塁王を獲得し、王監督から「スモールベースボール」の象徴として不動の2番に指名された。それが、記念すべきWBC日本代表初本塁打をマーク。8回には右翼線に適時打を放ち、俊足を飛ばして一気に三塁に到達した。結局2安打5打点と大爆発。王監督が大会前日になって変更したスローガン「ストロング&スピーディー」をだれよりも実践してみせた。歴史的なWBC初陣の主役は、イチローでも王監督でもなく、紛れもなく21歳のニューヒーロー西岡だった。

3年目の昨季は初めてロッテでレギュラーを獲得し、31年ぶりの日本一に貢献した。飛躍を目指す今季、キャンプ中にバレンタイン監督から「イチローの打撃を良く研究してこい」と送り出された。「全てを学びたい」と向かった福岡合宿を経て、今では1、2番コンビとして、日本代表に欠かせない存在になった。「イチローさんはものすごい、いい打者で光栄ですけど、それよりもJAPANのユニホームを着て試合できることが光栄」と大舞台を思い切り楽しんでいる。

結果は残したが、もちろんここで満足などしない。「まだ1勝。何とか1位通過できるように明日も頑張りたい」。勝ち続け、走攻守3拍子そろった「日本の西岡」を、広く世界にアピールする。

ページトップ

王JAPAN18点コールド発進[ニッカン]

まさに「ストロング」な初勝利だ。王JAPANが開幕戦を8回コールド勝ちで飾った。先発全員安打の15安打18得点。「本塁打も出たし、足を使って、良かったね」。前日2日に「スモール・ベースボール」から訂正したばかりの「ストロング&スピーディー野球」をいきなり展開し、王監督も留飲を下げた。

3回までに2点をリードした。2点目は敵失を足掛かりに、無安打で1点を奪った。だが、4回に先発上原が同点弾を浴びた。「ベンチも、守ってる選手、見ていたファン、中国ベンチもビックリしたと思う。でもあれでピリっとした」。西岡の1発で勝ち越すと、あとは一方的な攻撃だった。3本塁打、4二塁打、2三塁打、と15安打のうち9本が長打を占めるパワー野球。「スモール野球はあまりアジアでは前面に考えていない。パワーでもアジアで1番だと思っている」。王監督の眼力通りだった。

記念すべき王JAPAN開幕の前夜。「緊張で眠れないとかそういうことはなかったよ。準備はしっかりできたから」と平常心を保てた。試合前のミーティングでは選手に「準備はできた。アジアで1番強いプライドを持って、自信を持って戦おう」と説いた。初戦の重圧ははね返した。4日の台湾戦に勝てば、2次リーグ進出をほぼ手中に収める。

ページトップ

王JAPAN 世界制覇へ猛爆18点[デイリー]

これぞ理想の戦い方だ。“スモール・ベースボール”改め、“ストロング&スピーディー”を掲げ直した王JAPANが、3本塁打を含む先発全員の15安打18得点。8回コールドの爆勝発進で世界制覇への第1歩を踏み出した。

決して楽な試合ではなかった。「あれでぴりっとした。同点だったから、それで慌てるということはなかったけど、あれで選手の目が覚めた」。試合後の王監督が振り返ったのは、4回の被弾。王偉に食らった同点2ランが、この日も湿りがちだった打線を劇的に変えた。

“ストロング”の先駆けは“スピーディー”部門を担う西岡だった。同点とされた直後の5回1死一、三塁。「正直、打席に立つ前はここで打てばヒーローだなと思っていた」。犠飛狙いの一振りが左中間席に吸い込まれる勝ち越し3ラン。続く福留も右中間へソロ。この2発が、重苦しいムードに覆われていた日本ベンチを一気に活気づけた。

6回に3点、7回にも多村が2ラン。中盤以降の東京ドームはまるで日本代表の打撃練習だった。そして8回、打者11人の猛攻で7点を加え、試合を終わらせた。

出陣を前に王監督はナインに言った。「準備はできた。現在がベストコンディションと考えて試合に臨もう。アジアでは日本が1番強い。自信を持ってプレーしよう!!」。細かい指示はなかった。前向きなゲキを飛ばし、選手を戦場へと送り出した。

この日は格下とされる中国投手陣が相手。結果を単純に喜べないことは王監督自身が1番心得ている。「今日、打てたからと言って、台湾、韓国の投手も打ち崩せるとは思っていない」。指揮官は勝ってカブトの緒を締めた。

当然、慎重に過ぎる必要もない。「気分的には今日1試合でいい形でつながった。打者は1本出るとガラッと変わる。だいぶほぐれたし、明日につながる」と王監督。初戦の大勝で確実に弾みはついた。4日の台湾戦に連勝し、一気にアメリカ行きを決める。

ページトップ

西岡V弾!流れグイッ![スポニチ]

21歳が流れを変えた。「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」が3日開幕し、日本は18−2で中国に8回コールド勝ちした。2点リードを追いつかれる嫌な流れだったが、5回に西岡剛内野手(21)が値千金の3ラン。この一打が打線に火をつけ、先発全員の15安打で中国を圧倒した。また韓国は台湾に2−0で快勝。4日に日本が台湾に勝ち、韓国が中国と引き分け以上なら日本の2次リーグ進出が決まる。

ちらっと見た視線の先にイチローがいた。まさかの同点になって迎えた5回1死一、三塁。背番号51に背中を押された西岡が一振りで重い空気を一変させる。打球は左中間席へ吸い込まれていった。

西岡
「ここで打ったらヒーローだなと思ったけど、ホームランはたまたまです。ボールがスタンドに入って、自分でも真っ青になった。」

それほど驚いた1発だったが、その打席に向かうとき、一塁ベースに立つ背番号51から受けた言葉を思い出した。「気にするな。初球から打っていいぞ」。2番打者に指名されて以来、ずっとそう言われてきた。初球はど真ん中の甘い球を大きな空振り。「これじゃいけない」とセーフティースクイズへ切り替えたところ、ボール球が2球続いた。見送りながら「これなら最悪でも外野フライは打てる」と判断。1−2からの4球目が王ジャパンの記念すべき公式戦第1号となった。それも値千金の決勝弾だ。

先発・上原がよもやの同点弾を浴びた直後。川崎が死球で出て、イチローが走りに走った遊撃内野安打でつないだ好機を逃さなかった。「同点になって気付いた。このままじゃ駄目、勝つなら大差で勝たないといけないと」。21歳の若武者は、真っ直ぐ前を見てそう言った。6回に左犠飛、8回は右翼線へ適時三塁打で計5打点を挙げ、15安打18点の猛打の中で堂々の主役を演じてみせた。

福岡での壮行試合。調整のつもりでいた西岡はイチローの「勝ちにいこう」の言葉で「これから負けられないんだ」と意識を変えたという。すぐに答えを出し、イチローから「2番は日本人がいい。一緒に(メジャーで)やりたいね」と事実上の指名を受けた。天才打者の後を打つ2番。制約の多くなることは覚悟していたが、掛けられた言葉は「自由にやれ」。だからこそ、イチローを生かすも殺すも自分だと肝に銘じた。そのイチローは6打数1安打。「僕だけ(ゲームの雰囲気が)感じられていない」と苦笑いしたが、その存在が西岡の活躍の背景にある。イチローが導き、その“最強の恋人”西岡が決めた。王ジャパンは世界一へ最高のスタートを切った。

ページトップ

王JAPAN、新スローガンピタリ![スポニチ]

西岡の3ランに左手親指を突き立て、松中の好走塁に拍手。王監督が2日に掲げたばかりのスローガン「ストロング&スピーディー」が、初戦からいきなりはまった。

9長打に足を絡めて先発全員の15安打、全員得点。プロが参加したシドニー五輪以降の国際大会で最多、アテネ五輪の長嶋JAPANも超える18得点の8回コールド発進だった。「ホームランも出た。足も使えた。向こう(中国)にホームランを打たれるとは思わなかったけど(笑い)」。シーズン中も欠かさない試合後のコーヒーをすすりながら王監督は満足そうに笑った。

自らの発言が、選手に重圧を与えていると気付いていた。「スモールベースボール」。王監督が掲げていたつなぎの野球を過剰に意識し、練習試合4試合で1本塁打。両リーグの本塁打王を抱える重量打線から、快音が消えていた。そこで2日の公式練習中にひらめいた。「スモールというとどうも野球が小さくなる感じ。これからは“ストロング&スピーディー”でいく」。この一言が魔法の言葉になった。試合前ミーティングでは「準備はできた。今が1番調子がいいと思って試合に臨もう」と言った。ほかに言葉は必要なかった。

今日の中国の投手陣を打てたからといっても、台湾、韓国の投手を打てるとは限らない」。王監督はそう気を引き締めると同時に「スモールベースボールはアメリカに行ってから。アジアでは我々がパワーの上でも1番なんだから」と残る台湾、韓国戦でも新たなスローガン通り、打線の爆発を期待した。

「ファンは自分にない速さやストロングなものを求めて球場に足を運ぶんだ」。王JAPANの進む道がこの夜、はっきりと照らし出された。

◇中国、王偉2ランも…

王偉(ワン・ウェイ)の同点2ランで4回までは2−2と善戦したが、5回以降は若手の投手陣が大量失点してコールド負けを喫した。ラフィーバー監督は「途中まではいい展開でしたが、終盤は手がつけられなくなった。彼らは凄いチーム」と脱帽した。王偉も記念すべきWBCの大会第1号を放ったものの、捕手としてはつらい展開となってしまい「日本の攻撃は凄いものがあった」とうなだれた。

ページトップ

王ジャパン18点爆勝!決勝弾生んだイチローの全力疾走[サンスポ]

王ジャパンが爆勝発進だ!!日本が中国に18−2で8回コールド勝ち。同点の5回、西岡剛内野手(21)=ロッテ=の勝ち越し3ランで流れを引き寄せた。その西岡に火をつけたのが、直前に見せたイチロー外野手(32)=マリナーズ=の全力疾走での内野安打。チームリーダーに引っ張られた日本は、4日の第1試合で韓国が中国に勝つか引き分けた後、台湾戦に勝てば2次リーグ進出が決定する。

あの上原が、まさかの同点2ランを浴びた。絶対に勝たなければならない1戦が、一気に重苦しい展開に。その勝負の分かれ目でもう1度流れを引き寄せたのは、茶髪のえり足を伸ばしたいまどきの21歳、西岡だった。

西岡
「犠牲フライでもいいから、1点を取りにいこうと思っていました。結果がたまたま、ホームラン。自分でも真っ青になりましたよ。まさかホームランなんて。」

歓喜の一撃は5回1死一、三塁。強振した打球はグングン伸びて、左翼席に着弾した。嫌なムードになりかけた日本ベンチの雰囲気を本人のいう“まさかの1発”返しで振り払った。この一撃で目が覚めた日の丸軍団。続く福留も連続弾を放ち、先発全員安打での8回コールド勝ちを引き寄せた。

大舞台でも臆することない、チーム最年少のハツラツプレー。その持ち味を引き出したのが、イチローだ。西岡の殊勲弾の直前、1死二塁で遊撃前に詰まった当たり。これを全力疾走で内野安打にして、東京ドームに大歓声を巻き起こした。試合前に「思い切り(自分に)プレッシャーをかけていこう」とナインにゲキを飛ばしたチームリーダー。文字通り背中で引っ張る激走で、ビッグイニングを演出した。

イチローは2月24日の壮行試合前にも「シーズン中のように本気で戦おう!」とナインを鼓舞していた。その一方で西岡には「オレがランナーに出ても気にせず、好きにやっていいよ」と声をかけていた。さりげない一言が1、2番のコンビネーションを生み、長打の少ない西岡の1発を呼び込んだ。

「みんな、ボールに触れたし(大会の)ムードを感じられたんじゃないですか。ボクだけ感じられなかった」。イチロー自身は1安打に終わって苦笑いだが、今はチームが勝つことだけが全て。世界最高の安打製造機が本領を発揮するのは、もっとあとでいい。いまは勢いのある若い力を、さらにあおることが先だ。

「ボクがまだ若いからといって、周りから日本代表の力がないと思われたくない。さすがは代表に選ばれたヤツだ、と思わせたいんです」。西岡もその期待は十分に分かっている。れっきとしたイチローのパートナーとして、その存在感も自分の力に変えて、日本代表を勝利に導く。

◇イチロー・イン・WBC

チームリーダー
王監督は日本代表が集合した2月20日、イチローについて「背中で引っ張って欲しい」と、チームリーダーに指名した。イチローも「王監督に恥をかかせる訳にはいかない」と以前から話しており、自覚は十分。練習前は誰よりも早くミーティング室に現れ、ウオーミングアップでは先頭を走る。その姿に他の選手たちは心を動かされた。
ユニホーム
21日からの合宿で、日本代表のユニホーム姿を披露。初めての日の丸に「気持ちいい。サイコーです。気合入っちゃいますよ。これを着たらね。それは入りますよ」とご機嫌。マリナーズでプレーするときとは違い、ソックスをひざ下まであげる“オールド・スタイル”で、やる気満々だ。
舌も滑らか
マリナーズの試合後は言葉数が少ない印象があるが、今回は囲み取材でも報道陣の質問が途切れるまで対応。日本代表に対する熱い思いを語っている。「戦った相手が『向こう30年は日本に手は出せないな』という感じで勝ちたいと思う」と強気のコメントも残した。

◇主軸でダメ押し

たしかに「ストロング・ベースボール」だ。福留、多村がダメ押し弾をお見舞いした。福留は5回、西岡の勝ち越し3ランが飛び出した直後にガツンと連発弾。「いい緊張感を持ってやれた。この流れであしたもやりたいね」と笑顔。多村も7回無死一塁から、左中間スタンド上段に豪快な2ランを放った。「いつもより思いっきり振れました」。松中を含むクリーンアップで2発を含む4長打3打点。王ジャパンのスラッガーが持ち味を存分に発揮した。

◇WBCの規定

コールドゲーム
1次、2次リーグのみ実施して、5回以降15点差、7回以降10点差で打ち切りとする。
同率の場合の順位決定
(1)直接対決の勝利チーム
(2)総失点の少ないチーム
(3)総自責点の少ないチーム
(4)打率の高いチーム
(5)抽選で勝ったチーム
が上位に行く。

ページトップ

王ジャパン最高の船出!先発全員15安打、コールド発進[サンスポ]

ベンチ前に立っているだけでよかった。自らが招集した日の丸戦士が、ダイヤモンドを駆け回り、笑顔でベンチに戻ってくる。打ちも打ったり先発全員15安打の18得点。格下の中国相手に8回コールドを突きつけ、王ジャパンが最高の船出を切った。

王監督
「オレは何もせずにいただけだよ。昨日言ってた通りになったね。今日はつながるようになった。本来の打撃ができてきたと思う。」

2点リードで迎えた4回、中国の伏兵・王偉に「想定外だった」という同点2ランを浴びたが、その1発が眠っていた大和魂に火をつけた。5回には西岡、福留の2者連続弾で4点。ムードが一気に日本に傾いたところで、6回、7回と着実に加点し、8回は打者一巡となる6安打7得点。24時間前に「明日は打線の爆発を期待します」と予言した指揮官も最敬礼で選手を迎えた。

日本の『スモールベースボール』が注目を浴びる今大会。王監督はアジア1次リーグ開幕前日になって否定した。

王監督
「アジアでは『スモールベースボール』を前面に押し出すことは考えていない。パワーの上でも1番だと思っている。米国に渡ったときに、スモールでないと勝てないと思っているだけだよ。」

2番・西岡が2長打で5打点、4番・松中が普通なら単打の当たりを激走で二塁打に変えた。自ら考えたテーマである「ストロング&スピーディー」の役回りは入れ替わったが、チーム全体が打ち、走り、躍動した。

順当にいけば、4日の台湾戦に勝てば2次リーグ進出が決定。父親が台湾出身で、日本国籍を持っていない指揮官だが「私は日本で生まれ、教育を受けてきた。国籍は違うが、日本人的な人間だと思っているよ」と大会前、静かに語っていた。日の丸を背負った“世界の王”は、球歴が50年を超えた今年、集大成となる野球を世界にとどろかせる。

◇松中、激走で流れ変えた!

これが日本の誇る3冠王だ。これが「ストロング・ベースボール」だ。プレッシャーに押しつぶされた“弱い4番”はもういない。ヒーローの座は譲ったが、王ジャパンを奮い立たせたのは間違いなく松中だった。

松中
「走塁?短期決戦では数少ないチャンスをものにしないといけない。ソフトバンクでもやっていること。普段通りにやっているつもりですよ。」

スタンドは松中の足にも沸いた。2回、先頭でチーム初安打となる右翼線二塁打で出塁。1死三塁から、岩村の浅い左飛に猛然と本塁に突進。間一髪のプレーで先制点をもぎ取った。さらに4回1死の第2打席では、左前打を左翼手が前に弾いたと見るや、フルスピードで二塁を奪った。

「1本出て自分が1番ホッとしていますよ」。短期決戦の屈辱を嫌というほど味わってきた。3冠王を獲得した一昨年のプレーオフは19打数2安打。昨年は16打数1安打に終わった。ファンのブーイングは今も耳に残っている。「プレーオフはボクが(チームを)引っ張らないといけない、という思いが強過ぎた。WBCは(自分が)何タコでも勝てばいい」。

実は松中、国際試合にはめっぽう強い。2度の五輪の通算成績は、17試合で打率.353、6本塁打、18打点。1人ではない。そんな思いが本来の打撃につながっている。「明日も気持ちを込めて戦うだけですよ」。重圧から解き放たれた4番が、今度は豪快な1発をお見舞いする。

◇岩村が先制犠飛

先制点は岩村だ。2回1死三塁からの左飛は定位置付近だったが、三走・松中の激走で先制の犠飛になった。「とにかく先制点が欲しかったから、左方向に打つことだけ考えていた。よく松中さんが(本塁に)還ってきてくれました」。6回には右中間三塁打で猛攻のきっかけを作り、打線を勢いに乗せた。

◇青木、つかん打!

7回の守備から途中出場した青木が、8回の最初の打席で、三遊間を抜ける左前適時打。「少ない打席。回ってきてよかった。明日につながります」。点差が開いてからの出場となったが、日の丸を背負った試合に、緊張感を持ってプレー。8回はあと2人出塁すれば、打席が回ってきただけに「本当はもう1打席回ってこないかなと思っていた」と残念そうだった。

◇ムネリン初盗塁

2−2の同点で迎えた5回、川崎は死球で出塁すると、すかさず二盗に成功。西岡の勝ち越し3ランを演出した。記念すべき王ジャパン初盗塁に「盗塁は自分でいこうと思った。ソフトバンクでやっている野球ができた」と笑顔。王監督が掲げる“ストロング&スピーディー”を本番で披露し、指揮官を喜ばせた。

今江
「安打を打って、ようやくチームの一員になれた。」(8回に2点適時打)
WBCの親善大使で中国−日本の始球式を行った元ドジャース監督のトミー・ラソーダ氏
「(優勝候補は)日本、米国、ドミニカ共和国、ベネズエラ、キューバ。1番いい投手が揃っているところが勝つでしょう。」

◇中国・ラフィーバー監督、日本に脱帽

王偉の同点2ランで4回までは2−2と善戦したが、5回以降は若手投手陣が大量失点してコールド負け。ラフィーバー監督は「途中まではいい展開でしたが、終盤は手がつけられなくなった。彼らはすごいチーム」と脱帽した。王偉も記念すべきWBCの大会1号を放ったものの、捕手としてはつらい展開。「日本の攻撃はすごいものがあった」とうなだれた。

ページトップ

王JAPAN18点コールド発進[報知]

◇WBC1次リーグA組

「王JAPAN」が3発18点の爆勝コールド発進−。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の1次リーグ初戦で中国代表と対戦した日本代表は、序盤こそ苦しんだものの、中盤からは王監督自慢の「ストロング&スピーディー」打線が爆発。5回、西岡(ロッテ)の3ランで勝ち越すと、その後は中国投手陣に猛打の雨を降らせた。幸先のいいスタートを切った日本代表は、4日の第2戦(18時、東京ドーム)で台湾代表と対戦。先発マウンドには松坂(西武)が上がる。

新スローガンの「ストロング&スピーディー」がピタリとはまるコールド発進だ。日の丸打線が中国相手に圧倒的な破壊力を見せつけた。「アジアではパワーでも我々が1番と思っている。そういう形が出せてよかった」勝利のコーヒーを味わいながら、王監督が声を弾ませた。3発を含む先発全員の15安打18点で、8回コールドのド派手な初陣を飾った。

上原がまさかの同点2ランを浴び、スタンドが凍り付いた直後の5回表だった。西岡の一振りが、猛打ショーの号砲となった。1死一、三塁。緊迫したムードが漂う中、21歳のチーム最年少は恐ろしく冷静だった。「この球なら外野フライはいけると思った」打席に向かう前は、セーフティースクイズを考えていたが、相手投手との力関係を見極め方針を変更。カウント1−2からの4球目を振り抜くと、高々と舞い上がった打球が、左中間席へ飛び込んだ。

一塁ベンチのお祭り騒ぎが冷めない中、続く福留が右中間席へ2者連続のソロ。これで打線は完全に目覚めた。7回には多村も左中間席中段への特大2ラン。8回には、打者11人の猛攻で一挙7点を奪って、規定で定められた、7回以降10点差以上のコールド勝ちを決めた。

開幕前日(2日)、脱スモールベースボールを宣言した王監督は「プロはスピードだけでなく、ストロングな部分がないと。勝ち負けも大事だけど、それだけではダメ。球場に足を運びたいと思わせるものを見せないといけない。テレビではバットの音は聞こえない」と、試合前に改めて力説していた。その言葉通り、グラウンドでは選手達が、何度も心地よい乾いたバットの音を響かせ、ファンを酔わせた。

メジャーリーガーらトッププロが参加して行われる初の国際野球大会WBCの、記念すべき開幕日。王監督にとっても、この日は忘れられない1日になった。監督通算1133勝を誇る指揮官が「オレの初勝利だな」と国際試合での初白星の味を噛み締めた。だが、本当に喜ぶのは、まだまだ先。「明日はもう1回、気持ちを引き締めてスタートラインに立つつもりでいます」と最後は表情を引き締めた。4日の台湾戦、5日の韓国戦と3戦全勝でアジアラウンドをトップ通過。その先は、アメリカでの2次リーグ、準決勝、決勝へと、階段はいくつも続く。夢のワールドチャンピオンへ、まずは順調に第1関門を突破した。

◇力負け…中国完敗

日本のパワーの前に投手陣が力尽きた。両国の力差は5回を過ぎて、スコアボードに表れた。2対2の同点から救援陣が崩壊。8回には連続失策もあり、コールド負け。ラフィーバー監督は「日本の爆発力はすごかった」と舌を巻いた。

得点差こそ完敗だったが、一瞬だけ奇跡を予感させた。2点ビハインドの4回1死一塁。王偉が上原の外角直球を右翼席に運んだ。日本ベンチが静まりかえった同点2ラン。急速に進歩を遂げる中国の潜在能力を示す1打だった。それだけに、指揮官は「あそこまではいい展開。その後、若手投手に制球力がなく、劇的に試合が変わってしまった」と悔しそうに振り返った。

日本に冷や汗を流させた4回までの実力が真実なら、奇跡への道のりは途絶えていない。「点差ほどひどいデキではなかった」とラフィーバー監督。秘めたる力を全て出し尽くし、残り2試合での大番狂わせを狙う。

ページトップ

西岡が勝ち越し3ラン「最高」[ニッカン]

西岡
「一、三塁だったので最初はセーフティーバントでも走者を還せたらと思っていた。それを途中から切り替えて、犠牲フライでも1点、と思って振った。自分はホームランバッターではないので、まさかこんな結果が出るとは。ビックリしているけど、嬉しい。最高の気分です。」(5回にチーム1号、勝ち越しの3ラン)

ページトップ

ファンサービスを率先[朝日新聞・千葉]

自分から行動を起こすか、それとも、やらされるか。これだけでファンサービスには大きな違いがある。千葉ロッテマリーンズの選手は誰もが積極的にファンサービスに努めているが、中でもその意識が高いのはエースの清水直行だ。

「今日も、サイン会をしていいかな?」。あの時の言葉が頭から離れない。春季キャンプでは昨年に続き土、日には必ず主力選手を何人か呼んでサイン会を行うよう心がけてきた。キャンプ最初の土曜日となった2月4日、清水が率先してサイン会に参加。気温10度弱と寒い中、1時間近くペンを走らせた。

広報としてはエースにこれ以上、負担はかけられないと、翌日のサイン会のメンバーからは外していた。しかし、清水はこれが不満だった。「遠くからオレを見に来てくれるファンがいるかもしれない。子供にとっては今日の思い出が一生残るかもしれない。だから、オレはサインをする。30分だけでもいいから開いてくれ」。

エースの思いに応えない訳にはいかない。急遽、サイン会のメンバーに清水を追加。ファンからは大歓声があがった。結局、清水は毎週土、日に行ったサイン会にチームで唯一、フル参加した。

こんなこともあった。その日は首脳陣から軽めの練習で終わるよう指示を受けていた。本来ならメーン球場で一通りの練習を行うとホテルに戻ってよいのだが、清水はあえて、走り込みのメニューを行うために使用するサブグラウンドに顔を出した。

「なんでランニングのメニューもないのに、そこに行くのかって?だって、オレがもうすぐここに来るだろうと思って待っているファンがいたら申し訳ないから。顔を出すだけだよ」。

なるほどと、うなるしかない。これぞ、プロフェッショナル。エースは背中でチームを引っ張る。このような清水の姿勢は確実にチームに浸透しつつある。球団にとって、これほど頼もしく、ありがたい存在はない。

もう1つ、捕手・里崎智也のエピソードも紹介したい。彼はバレンタインチョコを女の子からもらい、それが何個目かを聞かれるたびに「これが初めてだよ。今年、初めてもらった」と言い続けていた。その理由は?「だって、その方がプレゼントしてくれた人も喜ぶでしょう。10個目だよ、なんて答えるより、絶対に嬉しいと思う」。この心がけもファンサービスの1つだと思う。

ページトップ