ロッテが連敗を2で止めた。打線は2回ベニーの2点タイムリー二塁打とスクイズ失敗の間の本塁への盗塁で3点を先制。7回、8回にも1点ずつ加点した。先発・渡辺俊は8回まで三塁を踏ませぬ好投。9回に2点を失い今季3度目の完封を逃したが、8回1/3を7安打2失点で11勝目。05年3月27日〜5月8日以来2度目、自身最長タイの6連勝。楽天は9回にフェルナンデスの2点タイムリー二塁打などで2点を返すのみ。先発・片山は6回2/3を7安打4失点で3敗目。チームの連勝は2で止まり借金10、5位ロッテとのゲーム差は3に広がった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
東北楽天 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 |
千葉ロッテ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | x | 5 |
両リーグ最多となる今季3度目の完封は目前で逃したが、6連勝で11勝目を挙げた渡辺俊。「勝てばいいんです」とクールに話しながらも、「(9回のセギノールへの)死球が余計だった」と少しだけ悔しそうに振り返った。
1回から3回まで全て先頭打者を出す立ち上がり。しかし、低めへの制球、緩急ともに抜群で、1回は後続3人を打ち取り、2、3回は「狙って取れた」という併殺で3人ずつで切り抜ける。試合中に「併殺の日本記録(6)はいくつだろう」とベンチで話す余裕があった。
6回にも先頭の礒部に左前打を許したが、続く塩川にはシンカーを引っかけさせ、二ゴロ併殺打。計三つの併殺を奪い、8回まで全く危なげのない投球を続けた。
試合前には、北京五輪で同僚の成瀬が快投するのをテレビで見ていたが、「(影響されることは)全然ないです。帰ってきたらフル回転してもらわないと」とひょうひょうとした受け答え。「自分のやることをやって投げる試合を勝つだけ」。役割を自覚するサブマリンはチーム浮上へ、フル回転を宣言した。
千葉ロッテの渡辺俊が6連勝で11勝目を挙げた。走者を背負った時の方が安定感が増した。「体が重かった。前半を踏ん張ろうと思った」と、序盤はストライクとボールがはっきりしており3回まで毎回先頭を出塁させたが、変化球が低めに決まり後続を打ち取った。
一汗かいて中盤からは体が動くようになり、「狙って取れた」と無死一塁とした6回には3個目の併殺。5度も先頭を出しながらも「体も投球もイメージどおりできている」と、勝利を積み重ねてきた自信が揺らぐことはなかった。
ただ、9回に「余分だった」と反省した死球を与えて長打を浴び失点。今季3度目の完封を目前で逃した。お立ち台では「勝てばいいんです」と話していたが「そういう気持ちもあるんですけどね…」とベンチ裏では悔しそうな表情。それでも「自分が投げる残りの試合は全部勝つつもりでいる」と話していたサブマリンは、Bクラス脱出へチームに勢いを与える快投だった。
自分の仕事に徹したサブマリンはお立ち台で堂々と胸を張った。ロッテ渡辺俊介が、6月28日の西武戦から続く自身の連勝を6に伸ばして今季11勝目。完封目前だった9回に失点して完投も逃したが「勝てばいいんです」と、飄々と答えて千葉マリンのスタンドを大爆笑させた。チームの勝利に貢献し続ける右腕にとっては、今季3度目の完封を逃したことは大きな問題ではなかった。
夏場を乗り越える術は心得ている。連勝中のこの日も、急激に変化する気温のせいか体調は決して良くなかった。「今日は体が重かった。野手の人も『いつもの倍くらい走ってる気がする』って言ってましたから」。序盤の3回までは毎回先頭打者を出す内容。ならばと2、3回は狙って併殺を奪った。「積み重ねです。ちょっと悪くてもそれで自信が揺らぐこともない。体作りも技術面もイメージ通りできている」。重ねてきた経験が巧みな試合運びを実現させた。
試合前には北京五輪カナダ戦で好投した後輩成瀬の姿を目に焼き付けた。自らもアマ時代にシドニー五輪出場、プロ入り後もWBCで投手陣の軸として活躍したジャパン戦士。今回の北京は予選、本大会とも最終候補に残りながら落選したが、悔しさは胸に秘め「中継ぎ待機もあると思うんで頑張って欲しい。帰ってきたらまたフル回転してもらいますよ」と成瀬にエールを送った。頼れる右腕は7月以降負け知らず。フル回転の夏はまだまだ終わらない。
ロッテの渡辺俊が6連勝で今季11勝目をマーク。「序盤は体が重かったけど踏ん張れた」と胸を張った。120キロ台の直球を速く見せる90キロ台のカーブ、シンカーを駆使し9回途中まで1失点。バレンタイン監督も「変化球で緩急をつけていた」と絶賛した。この日は同僚の成瀬が北京五輪・カナダ戦で7回無失点の好投。「(成瀬に)金メダルを獲ってもらわないといけない。僕は投げる試合で全部勝ちたい」。3位・日本ハムと2差をキープ。CS進出へサブマリンがチームを引っ張る。
お立ち台で、渡辺俊は少し口をとがらせた。「勝てばいいんです」。
11勝目を挙げたものの、9回に2失点し完封も完投も逃した。言葉とは裏腹に表情は不満げだった。それでも、6月28日の西武戦以降6連勝。05年にマークした自身最長記録に並んだ。
8回1/3を7安打2失点。楽天打線に8回まで三塁を踏ませなかった。「最初は体が重かった。しんどかったけど、踏ん張ろうと思って投げた」。
体が重い序盤の2、3回に併殺を奪い、波に乗った。「いい守備陣をうまく使って、併殺を取っていた。動く直球で凡打に出来たし、変化球にも緩急をつけていたね」。バレンタイン監督も、サブマリンの妙技を堪能した。
同郷の後輩に負けてはいられない。午前11時過ぎに起床すると、テレビに成瀬が北京五輪で快投する姿が映っていた。五輪本番前、成瀬は出ては打ち込まれるパターンが続いた。心配だったが、あえて連絡を取るのを控えた。「そりゃヘコむでしょうけど、悩めばいいんですよ。周りにいっぱい、いい見本がいるし、こちらから何か言うこともない」無言の激励が届いたのか、成瀬は自力ではい上がった。「元々いい投手なんだから。帰ってきたらフル回転してもらわないと」口では尻を叩きながら、心では成長を認めていた。
チームの連敗を2で止め、クライマックスシリーズ進出のライバル、3位の日本ハムを2ゲーム差で追走。19日からの直接対決に弾みがついた。「成瀬は成瀬で金を取ってもらわないとね。こちらは一戦一戦やれることをやります」とシーズンの“金メダル”を見据えて、力強く締めた。
ロッテの渡辺俊が楽天打線を翻弄した。連打を許さず、8回1/3を7安打2失点。完封目前の9回に降板し「詰めが甘い」とこぼしたが、随所にその投球術が光った。
5度も先頭打者を出塁させたが、失点につながったのは9回だけ。2回は1死一塁で憲史を遊ゴロ、3回も1死一塁から渡辺直を遊ゴロ、6回には無死一塁から二ゴロと、三つの併殺打を打たせた。「ゲッツーは狙って取った」と振り返る計算ずくの投球だった。
リーグ2位に並ぶ11勝目。6月28日の西武戦から6連勝となったが、好調さを強調する様子はない。「何年かの積み重ね。今年急に良くなった訳じゃないし、ちょっと悪くなっても自信は揺らがない」。その口ぶりに、築き上げてきた技術への自負がにじんだ。
ロッテ渡辺俊介投手(31)が9回途中2失点の好投で11勝目を挙げた。8回までは三塁を踏ませぬ完封ペース。9回に長短打などで失点し降板したが「勝てばいいんです。ちょっと詰めが甘かったですけど」とあっさり言った。これで6月28日西武戦から自身6連勝。この日は復刻版ユニホームの最終日だったが「このユニホームはこれで見納めですけど、本当のユニホームでもどんどん勝っていきたい」とさらなる連勝を宣言した。
ロッテ・ベニーが楽天片山から先制2点適時打を放った。2回無死二、三塁でスライダーを左翼線に運んだ。この日は好評を博した復刻版ユニホームの最終日。ベニーは「この誇りあるユニホームを着てここまで1勝3敗。偉大なる先人達のことを思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。最後は快勝して、このユニホームに相応しい試合をしたい」と燃える思いをバットにぶつけていた。
2勝2敗で、準決勝進出も楽観できない状況で迎えたカナダ戦の先発は左腕、成瀬(ロッテ)。プレッシャーのかかるなか、成瀬は7回を2安打10奪三振の無失点と好投。5回、稲葉が右越え本塁打を放って先制し、藤川(阪神)、上原(巨人)の必勝リレーで通算3勝目を挙げた。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日本 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
カナダ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
稲葉が5回に先制ソロ本塁打。カナダの先発右腕の甘い変化球を打ち損じることなく、右翼に運んだ。前を打つ新井が復調していく陰で、結果が出ていなかった。だが、この大事な一戦で持ち前の勝負強さを発揮。メンバー選出前、星野監督に五輪に出場したいか否かを問われ「出たいです」と答えた5番打者。その自信と意欲を放物線に表した。
打順 | 守備 | 名前 | 打 | 得 | 安 | 点 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回 | 6回 | 7回 | 8回 | 9回 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 中 | 青木 | 4 | 0 | 0 | 0 | 右飛 | 遊併 | 三ゴ | 遊ゴ | ||||||
2 | 二 | 荒木 | 3 | 0 | 2 | 0 | 中安 | 三振 | 投犠 | 三安 | ||||||
3 | 左 | 森野 | 4 | 0 | 0 | 0 | 一併 | 左飛 | 捕邪 | 一ゴ | ||||||
4 | 一 | 新井 | 4 | 0 | 1 | 0 | 左安 | 三振 | 三振 | 三ゴ | ||||||
5 | 右 | 稲葉 | 3 | 1 | 1 | 1 | 遊ゴ | 右本 | 二ゴ | 敬遠 | ||||||
6 | 三 | 村田 | 4 | 0 | 0 | 0 | 三振 | 三振 | 二ゴ | 三振 | ||||||
三 | 宮本 | 0 | 0 | 0 | 0 | |||||||||||
7 | 指 | 阿部 | 3 | 0 | 0 | 0 | 三ゴ | 投ゴ | 三振 | |||||||
8 | 捕 | 里崎 | 3 | 0 | 0 | 0 | 三振 | 二ゴ | 二ゴ | |||||||
捕 | 矢野 | 0 | 0 | 0 | 0 | |||||||||||
9 | 遊 | 中島 | 2 | 0 | 1 | 0 | 左安 | 遊失 | 四球 | |||||||
計 | 30 | 1 | 5 | 1 | 0 |
打順 | 守備 | 名前 | 打 | 得 | 安 | 点 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回 | 6回 | 7回 | 8回 | 9回 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 二 | クラップ | 4 | 0 | 0 | 0 | 三振 | 二ゴ | 三振 | 遊ゴ | |||||
2 | 遊 | ガルシア | 4 | 0 | 1 | 0 | 二ゴ | 中安 | 三振 | 二ゴ | |||||
3 | 右 | サンダース | 3 | 0 | 1 | 0 | 一邪 | 一二 | 三振 | ||||||
4 | 一 | ソーマン | 3 | 0 | 0 | 0 | 三振 | 三振 | 一邪 | ||||||
5 | 左 | ウェグラーズ | 3 | 0 | 0 | 0 | 三振 | 三振 | 左飛 | ||||||
6 | 指 | フロスタード | 3 | 0 | 0 | 0 | 二邪 | 三振 | 二ゴ | ||||||
7 | 三 | ロジェルスタド | 3 | 0 | 0 | 0 | 二直 | 三邪 | 三振 | ||||||
8 | 捕 | ロビンソン | 2 | 0 | 0 | 0 | 遊直 | 三振 | |||||||
打 | ラドマノビッチ | 1 | 0 | 0 | 0 | 三振 | |||||||||
捕 | コレント | 0 | 0 | 0 | 0 | ||||||||||
9 | 中 | スターン | 3 | 0 | 0 | 0 | 投ゴ | 三ゴ | 投ゴ | ||||||
計 | 29 | 0 | 2 | 0 |
名前 | 投球回 | 打者 | 球数 | 安打 | 三振 | 四球 | 死球 | 失点 | 自責 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
成瀬 | 7 | 23 | 86 | 2 | 10 | 0 | 0 | 0 | 0 |
藤川 | 1 | 3 | 13 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 |
上原 | 1 | 3 | 9 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
名前 | 投球回 | 打者 | 球数 | 安打 | 三振 | 四球 | 死球 | 失点 | 自責 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ベッグ | 5 1/3 | 19 | 70 | 4 | 5 | 0 | 0 | 1 | 1 |
デービッドソン | 2 2/3 | 9 | 25 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 |
グリーン | 1 | 5 | 21 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
韓国 | 7 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 9 |
台湾 | 0 | 2 | 0 | 0 | 4 | 2 | 0 | 0 | 0 | 8 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
キューバ | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 | 4 | 0 | 4 | 14 | |
オランダ | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
中国 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 |
米国 | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 4 | 0 | x | 9 |
絶不調男が星野ジャパンをがけっぷちから引き上げた。先発した左腕成瀬善久投手(22)がカナダを7回2安打10奪三振の無失点に抑え、勝利を手にした。シーズンで苦しみ、五輪直前のオールスターでは最悪に打ち込まれた。だが、大舞台でストレートは走りスライダーが切れ、今季最高の投球で、ベテラン稲葉篤紀外野手(36)の本塁打の1点を守った。日本逆襲のターニングポイントとなる快投だ。
成瀬は開き直った。4回裏1死二、三塁。この日唯一にして最大の危機で、本来の持ち味である攻撃的なスタイルを貫いた。「一塁が空いていたので、ぶつけてもいい、ぐらいの気持ちでいった」。4番ソーマンは高めの直球で、5番ウェグラーズは変化球で空振り三振に仕留めた。ここを切り抜けると、もうピンチはやって来なかった。
4回以外は全て3者凡退という完ぺきな投球。10奪三振の力投で7回を無失点に抑えて、藤川にバトンを渡した。ロッテでも女房役を務める里崎が「キレキレ。ズバズバ。今年1番のピッチング。急に去年の成瀬に戻っちゃった」と興奮気味にまくし立てるほど、圧巻の86球だった。16勝1敗という驚異的な成績をマークした昨季の姿を取り戻した。
今季は苦しみ続けた。ロッテでは6勝6敗。オールスター第2戦は球宴ワースト記録の11安打を浴びて8失点した。自信を失いかけた左腕は、代表の主将宮本から「オールスターもいい思い出じゃないか」と笑顔で肩をたたかれ、気持ちが少し楽になった。「自分は落ちるところまで落ちた。もう開き直るしかない」。日本代表の仲間に支えられ、どん底まで落ちた成瀬の調子は上昇カーブを描いていった。
午前10時半開始のデーゲームで、チーム宿舎出発は7時半だった。前夜は緊張からなかなか寝付けなかった。ロッテでは寝坊、遅刻の騒ぎを起こしたこともあり「睡眠は4時間ぐらいです。寝坊も怖いし、1時間おきに目を覚ましてしまいました」と“恐怖の夜”を苦笑いで振り返った。「今日をいいきっかけにして、去年のようにいいピッチングを続けていきたい」。厳しい戦いはまだまだ続くが、さすがにこの日はぐっすりと眠れたに違いない。
ロッテでコンビを組む里崎の好リードが成瀬の快投を引き出した。左打者の多いカナダ打線に対し、直球とスライダーを外角低めに集めるリード。ここ一番で要求する内角高めのつり球が効果的だった。「昨年に近い形だった。直球のキレがよく、チェンジアップを無理に要求する必要がなかった」と納得していた。
試練を与え続けた神様が、ようやくほほ笑んでくれた。自信を失い、暗い迷路をさまよった。不運なアクシデントも襲った。それら全てを反骨心に変えた成瀬が、カナダを相手に7回2安打無失点の快投。星野ジャパンに価値ある1勝をもたらした。
「今日はブルペンからリラックスしていて、投げ間違いさえしなければ大丈夫だと思った」。直球の最速は140キロに届かなかった。それでも、出どころが見えにくい左腕から放たれたキレのいいボールは、球速表示以上の威力を発揮した。
腕っ節自慢の強打者たちから、面白いように空振りを奪った。「日本の審判と違ってストライクゾーンが外角に広かったので」。10奪三振。抜群の制球力でアウトローを突き、ズラリと並んだカナダの左打者たちに何度も天を仰がせた。
唯一のピンチは4回。1死から連打で二、三塁のピンチを招いたが、後続を連続三振に仕留めた。この回以外は全て三者凡退で1本の安打、1個の四球すら与えない横綱相撲。これまで成瀬に厳しく接してきた星野監督も「完璧やった」とうなるしかない。
代表選出後、度重なる不運が襲った。中継ぎで登板した球宴第2戦で、2回を共に球宴ワースト記録の被安打11、8失点と打ち込まれた。7日の守備練習では森野の悪送球が後頭部を直撃。北京入り後も、ブルペン投球中に西岡の打球が右ひざを直撃した。
「何で自分だけ…」。落ち込む成瀬を励ましたのは兄のように慕う藤川だ。「(8失点は)いい思い出やないか。なかなかできることじゃない」。他の選手からも同じように励まされたといい「落ちるところまで落ちた。上がるしかない」と開き直った。苦しんだ日々に比べれば、マウンド上の重圧も優しかった。「まだ登板があるかもしれないのでしっかり投げたい」。大舞台で最高の結果を残した成瀬の表情からはもう、暗い影は消えていた。
西岡剛内野手(24)が18日のカナダ戦を欠場した。15日に痛めた右脇腹が回復しなかったため、この日は試合前のフリー打撃をこなした後、ベンチで待機。17日には選手村内の医療施設で治療を受けたが「肉離れなんで早く治ることはない。痛み止め薬を多めにのんで準備していましたが…。でも(日本に)帰ってからのことは考えていない」と、予想以上に重症であることを明かした。田淵コーチは「医者からは『出場できないことはない』と言われている」と話しており、首脳陣は20日のアメリカ戦から復帰させる意向だ。
成瀬が崖っ縁の星野ジャパンを救った。予選リーグ2勝2敗の日本代表は18日、ウーケソン第2球場でカナダと対戦。負ければ予選敗退が色濃くなる一戦で、先発の成瀬善久投手(22)が7回をわずか2安打10奪三振の快投を演じた。継投策も完璧に決まり、5回に稲葉篤紀外野手(36)が放った右中間ソロによる1点を死守。3勝2敗で予選突破に王手をかけ、19日の中国戦に勝てば4位以内が確定する。
夏の太陽を浴びて左腕がしなる。これこそ“招き猫”の本領。カナダ打線のバットが面白いように空を切る。成瀬が崖っ縁のマウンドでさんぜんと輝いた。
負ければ3敗目。米国との最終戦を残す日本にとって、絶対に負けられない一戦だった。スタメンに8番・ロビンソン以外左打者が8人。「序盤に外のボールのスライダーを振ってくれるのが分かった」。外に広い国際審判の特徴も利用し、得意のチェンジアップを少なめにして直球とスライダーを外角に集中。22歳の左腕が立ち上がりから威力を発揮した。
唯一のピンチは4回だった。1死から連打を許して二、三塁。ここで4番・ソーマン、さらに今大会打率トップのウェグラーズを連続空振り三振に仕留めた。絶妙の制球と配球。ロッテでバッテリーを組む里崎も「今季1番のベストピッチ」とうなるほどだった。6回の投球を見た星野監督から「もう1イニング行け」と送り出された7回も3者凡退。7回を2安打10奪三振に「僕は落ちるとこまで落ちたから。上がるしかないと思っていた」としみじみ話した。
北京では先発はできないかもしれなかった。昨年12月のアジア予選(台湾)の韓国戦で先発に抜てきされた左腕も今季は不調。合宿集合日の球宴第2戦(1日)は球宴ワースト8失点で自信を失った。星野監督は「このままじゃ敗戦処理や。合宿で徹底的に走れ」と指令。炎天下のジャイアンツ球場で走り込んだ。下半身を使う意識を高めて体の開きを抑え、左腕が頭の近くを通って出てくるように修正。「頭を使えッ」とも怒られ、打者から球の出どころが見えにくい“招き猫投法”が北京でよみがえった。
13日のキューバ戦ではダルビッシュを救援した直後、カウント2−0と追い込みながら勝負を急いで決勝打。「悔いが残る。次は抑えてやろうと思った」。その言葉にウソはなかった。崖っ縁の快投。「あー、オレを殺す気か」と1−0勝利に安どした星野監督はこう続けた。「成瀬が見事に期待に応えてくれた。あとは中国戦をしっかり戦います。緩めずにね」。
中国戦に勝てば予選突破。成瀬の左腕が準決勝へ道を切り開いた。
崖っぷちの男達が、日本を救った。先発の成瀬善久投手(22)=ロッテ=は、左打者が8人並んだカナダ打線に対し、7回2安打無失点の好投。1日のオールスター第2戦(横浜)では2回8失点と無残に打ち込まれた左腕が鮮やかに復活だ。また、右臀部故障で五輪出場が危ぶまれた稲葉篤紀外野手(36)が、5回に値千金のソロ本塁打を放ち、ベテランの底力を見せつけた。
日本で“かっぱえびせん”と呼ばれた男が、北京で救世主となった。準決勝への切符は、ドン底からはい上がった成瀬がたぐり寄せた。「ブルペンからリラックスしていました。左打者が多いので、とにかく一発に気をつけようと」。7回2安打無失点。無四球10奪三振の完璧な内容で、緊迫の1−0勝利を演出した。
唯一のピンチの4回1死二、三塁も、マスクをかぶった里崎や大野コーチから「歩かせてもいい」と言われ「強気になれた」と2者連続三振。外角を振る左打者へ、チェンジアップよりスライダーを多投。4回以外は3者凡退の圧巻投球だった。
「ボクは落ちるところまで落ちたんで、上がるしかないですから」。昨年12月のアジア予選で韓国戦を託された左腕も今季は苦しいシーズンを送ってきた。1日の球宴第2戦(横浜)では2回11安打8失点。止まらない炎上に星野監督から“かっぱえびせん”と揶揄された。
7日の練習ではシート登板前に野手の送球が頭部を直撃した。11日の北京初ブルペンでは、投球中にフリー打撃の打球を足に受ける悲運が続いた。そして13日のキューバ戦では5回無死二、三塁から救援し、2点適時打も浴びた。それでも、指揮官の信頼は不変だった。「選手のミスはオレのミス。ああいうのは忘れてやるんだ」。
第1戦後は「もうちょっと頭で考えろや」とだけ声をかけ、ニヤリ。成瀬は「(あれで)今日は冷静な自分がいた」と、星野監督の言葉に感謝した。
15日にカナダ戦の先発を通告されたが、16日の韓国戦は中継ぎ待機。「毎試合準備していたら、自分らしさが戻ってきた」。チーム一丸の心が復活の原動力となった。
カナダ戦の1勝で、建築会社「君津住宅」から、成瀬に家がプレゼントされることが決まった。成瀬が「将来、両親に家を建ててあげたい」と話していることを知った林起津雄社長(50)が6月、成瀬が出演する同社のCM撮影の際、「五輪での勝利投手」を条件に家を贈ることを約束していた。林社長は「本当に嬉しいですね。もちろんプレゼントします」と成瀬の活躍を喜んでいた。
左足甲を悪化させた川崎と右脇腹の違和感を訴えている西岡が18日、カナダ戦前の練習で星野監督が見守るなか、フリー打撃を再開。山本守備走塁コーチは「ムネはちょっと分からないけれど、西岡は明日(19日)行けるかもしれない」と話した。
崖っ縁の星野JAPANを成瀬が救った。野球日本代表は18日、カナダとの1次リーグ第5戦に1−0で辛勝した。負ければ1次リーグ突破が厳しくなる一戦で、不調の成瀬善久投手(22)が7回2安打、10奪三振の好投。16日の韓国戦で継投を失敗した星野監督は「勝利の方程式」を崩して成瀬を7回まで引っ張り、稲葉のソロによる1点を藤川−上原で守った。日本は3勝2敗とし、涌井が先発する19日の中国戦に勝てば、決勝トーナメント進出が決まる。
北京の太陽が救世主を照らし出した。成瀬が地獄から生還した。「僕は落ちるところまで落ちた。あとは開き直って、上がるしかないですから」開幕からの不振、球宴での大炎上、キューバ戦で献上した決勝打。試練の果てに至福の時が待っていた。星野監督に求められた握手。復活の証しを右手に感じた。
絶体絶命の大一番。負ければ1次リーグ敗退が濃厚となる一戦で、昨季16勝1敗の常勝左腕がよみがえった。スピンの利いた直球、鋭く滑るスライダー、絶妙な制球。「投げ間違いがなければ大丈夫だと思った」。4回1死二、三塁。唯一のピンチを連続三振で切り抜けると、この回以外は1人の走者も許さなかった。
重圧を押しのけ、7回2安打無失点。2度の3者連続を含む10三振を奪い、日本五輪史上4人目の2ケタ奪三振をマークした。星野監督は「1点もやれない状況でよく投げてくれた。完璧だった」。女房役の里崎も「1番大事な試合で1番いい(去年の)成瀬に戻った」と目を丸くした。
オールスター第2戦(横浜)では、2回8失点の球宴ワースト記録を作った。落ち込む成瀬は仲間の言葉に励まされた。「色んな人が『いい思い出じゃないか。なかなかできることじゃない』と。もうやるしかないと思いました」。宮本、藤川ら10人以上に激励された。キューバ戦では決勝打を許したが、星野監督は「(打たれた)1球以外は完璧」と擁護。日の丸でつながった監督、選手の温かい言葉に復活への思いを強めた。
中継ぎ待機しながら投球練習を繰り返し、登板前日の17日に代表から落選した小林宏に「つかめた気がします」と打ち明けた。7月中からセットポジション投球を続けてきたが、「先発ならタイミングを狂わせる独特のフォームの方がいい」とノーワインドアップに変更。星野監督が強調する「右手の壁」を意識し、左打者8人のカナダ打線を手玉に取った。
昨年のアジア予選・韓国戦では緊張で足が震え、記憶を失い、4回持たずに降板。今季も不振に悩んだ左腕は「成績も良くないのに選んでもらって感謝しています」と感謝した。今後は決勝トーナメントで中継ぎ待機する。成瀬が敷いた金色のレールに乗って、星野JAPANが頂点へ突っ走る。
成瀬にビッグボーナスが約束された。ロッテのチームスポンサー「君津住宅」(千葉・君津市)は、成瀬が五輪で勝ち星を挙げた場合、両親への一戸建てプレゼントを公約。林起津雄社長(50)は改めて「もちろん実行します」と断言した。本人の希望をくんだ建坪60坪(約198平方メートル)強、約2000〜3000万円相当の平屋を検討しており、帰国後に詳細を詰める。成瀬は「本当にもらえるんですか?」と半信半疑のようだが、夢がかないそう。土地は自分で用意する必要がありそうだが…。
右脇腹肉離れの日本代表・西岡剛内野手(24)が18日、カナダ戦の試合前練習で、左足甲を痛めている川崎宗則内野手(27)とフリー打撃を再開。快音を響かせ、二塁の守備練習にも就いた。患部は回復しつつあるが、完治しておらず、19日の中国戦出場は微妙。西岡は「今日の試合も出場する準備をしていました。ただ肉離れなのでそんなに早くは治らない」と、複雑な表情だった。
日本は先発の成瀬善久投手(22=ロッテ)が7回無失点、10奪三振の快投を見せた。3回までパーフェクト。4回に不運な安打などで1死二、三塁の大ピンチを迎えたが4、5番を連続三振に仕留め切り抜けた。成瀬は「もう後がないということで、自分らしいピッチングを心掛けました。(捕手の)里崎さんに“シーズン中よりいい”と言われました」と笑顔を見せた。