ロッテが小刻みに加点し、主導権を握った。1−2の3回に清田のソロと今江の中前適時打で逆転。6、7回にそれぞれ西岡の適時打と井口の本塁打で1点ずつ加えた。成瀬は徐々に立ち直り、5回2失点。以降は小林宏まで細かくつないだ。中日は3回3失点でKOされた吉見が誤算。打線が立ち上がりの成瀬を攻め切れなかったのも響いた。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千葉ロッテ | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 5 |
中日 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
やっぱりエースだ。成瀬善久投手(25)が5回4安打2失点ながらポストシーズン3連勝。06年6月に自身が勝って以来となるナゴヤドームでの登板。チームはそれ以降、鬼門の敵地で8連敗中だったが、自ら連敗をストップさせた。左腕の粘投にリリーフ陣もこたえた。6回からは薮田−内−伊藤−小林宏の無失点リレーでオレ竜打線を封じ込めた。
抜群の安定感は、初舞台の日本シリーズでも変わらなかった。成瀬は「初回から全力でいきました。不安もあったけど直球が走ってた。最後はバテたけど、楽しめました」と満足そうに振り返る。5回4安打2失点で、CSから負けなしの3連勝。大役を果たし、誇らしげに胸を張った。
成瀬らしい失点、そして立ち直りだった。2回に2発を浴び、1度は逆転された。和田に外角高めの抜けた直球、谷繁にはカウントを悪くして変化球をすくわれ「短期決戦で警戒しないといけない中での2発。大きな反省点です」と振り返るが、尾を引かない。シーズンでも今季リーグワースト29発を浴びたが、そのうちソロが21本。「21本で21点なら十分」と割り切り、精神的に引きずらない。自分のリズムをすぐに取り戻し、後続を絶った。
ロッテナインにしてみれば、成瀬の被弾は見慣れた光景。立ち直ると信じて、背中を押してくれる。再逆転に成功した3回、無死一塁では、バントの小飛球に里崎が飛びついて併殺を完成。女房役に救われ、6回以降を無失点リレーのリリーフ陣にも救われた。中4日登板が続いたCSの疲労もあって、5回88球で降板したが「後ろがいいんで、安心して任せられました」と感謝した。
ナゴヤドームの連敗を「8」で止めたが、最後に勝った06年交流戦で登板したのも成瀬だった。中日打線に立ちはだかり、2度のCSと同様、短期決戦の初戦でチームを勢いづける力投。日本シリーズでも主役は譲れない。
36年ぶり2度目の顔合わせとなった対戦は、ロッテが中日に先勝した。前回対戦した1974年以来、日本シリーズでは8連勝。牽引したのはポストシーズン男2人だ。1点を追う3回、清田育宏外野手(24)が新人ではポストシーズン最多3本目となる同点ソロ。05年の第1戦でも4打数4安打と打ちまくった今江敏晃内野手(27)が3打数3安打と「シリーズ男」の本領を発揮。中日強力投手陣を打ち崩し、最高のスタート切った。
清田が、とてつもないことをやってのけた。3回、1死。吉見の2球目のフォークを思いきり振り抜いた。角度よく上がった打球はグングン伸び、バックスクリーンへ一直線。三塁を回ると、何度も小さくガッツポーズで喜びを表現した。逆転された直後の同点弾。「1打席目にヒットが出て、2打席目は余裕を持って打席に入れました」と、堂々とした表情だった。
とびっきりの笑顔を見せる、あどけない新人も肝っ玉はすごかった。レギュラーシーズンでは2本塁打だが、ポストシーズンでは3本目。長嶋、原、仁志を越え、新人最多となった。試合前「打席に立つより、シートノックが緊張しますよ。(CSファーストステージ)西武のときの方が緊張しましたね。でも昨日の夜から緊張はしてたんですけど、しっかり眠れました」と、緊張感よりも初めての舞台を楽しむかのような口調だった。
前日29日の練習でも、感覚をつかんでいた。上半身の力を抜いて振り抜く形に、金森打撃コーチも「今の感じだったらいいぞ」と太鼓判。その感覚を忘れず、最高の結果を生んだ。千葉マリンでは恒例となった早出特打。今では肩を組んだり、師弟愛のような仲の良さを感じさせるほど、金森コーチを慕っている。それでも、今季開幕直後にブレークした荻野貴を引き合いに「僕は2番弟子ですよ。最初は荻野ですから」と、おどけて話す明るい性格も併せ持つ。CSファイナルステージを勝ち抜いた直後は、知らない人からも祝福メールが来るほど知名度も上昇。チームに欠かせない頼もしい存在となった。
ポストシーズンではキーマンとなる「短期決戦男」を襲名する勢いだが、忘れていけないのが今江だ。この日3打数3安打。05年の日本シリーズと合わせ、第1戦に限っては7打数7安打とシリーズ男ぶりを発揮した。「05年のシリーズは無我夢中。今回は05年から、色々苦しんだこと、勉強したことを出そうと思っています」と満足そうだ。お立ち台では「清田が1、2打席目に打ったんで、僕の記録(8打席連続安打)抜いちゃうんじゃないかと思いましたよ」と冗談めかしたが、清田は「新シリーズ男?なりません。今江さんです」ときっちり先輩をたてる余裕も見せた。
若手の活躍が光り敵地で大きな1勝。西村監督も「3回にすぐに逆転できたのは大きかった」と目を細めた。日本シリーズは中日と対戦した74年第4戦から8連勝。もはやミラクルだけではない。5年前の日本一を思い起こすような強さがある。
西村徳文監督(50)のタクトがさえた。6回だ。先頭7番岡田幸文外野手(26)が遊撃内野安打で出塁すると、8番里崎智也捕手(34)に犠打を命じる。1−3と打者有利なカウントになっても、あくまで犠打。1死二塁を作った。続く9番成瀬善久投手(25)の場面で、代打根元俊一内野手(27)。宮崎での練習試合(27日)で代打適時打を放つ好調ぶりを買った。根元は遊ゴロだったが、2死三塁にする最低限の仕事を果たした。そして西岡剛内野手(26)が適時打を放つ。動いて、つかんだ追加点だった。
最強投手陣を打ち崩した。しかも敵地ナゴヤで。大方の先発予想はチェンだったが「7、3で吉見」と読み切っていた。だが、試合前練習の打撃投手は左が並んだ。実はこれこそがダミーだった。中日側に「ロッテはチェンと読んでいる」と思わせるためだった。その吉見を3回でKOした。
西村監督にとって、落合監督はオリオンズ時代の偉大な先輩だ。「局面ごとに勝つための方法を複数考えて、その中からベストの方法を選択する落合流野球観に、現役時代から影響を受けていた」と、当時を知る関係者は言う。29日は「胸を借りるつもりでやりたい」と話していたが、その言葉通りの戦いぶりで大先輩から先勝した。「監督就任1年目の日本シリーズの初戦を勝てたのは最高ですね」と、お立ち台では笑顔だったが、ベンチ裏に戻ると「敵地ですから、まずは初戦と思っていました。まだ1勝。喜んでいられません」と、次の戦いに気持ちを移した。
清田だ!びっくり弾だ!!プロ野球日本一を決める日本シリーズ(4戦先勝の7試合制)が開幕。パ・リーグ3位から5年ぶり4度目(前身の毎日時代を含む)の進出を果たしたロッテが、5−2で中日に先勝した。3回に清田育宏外野手(24)=NTT東日本=が同点弾を放ち、新人では初となるポストシーズン3本塁打をマーク。日本シリーズ第1戦で新人が一発を記録したのは、1958年の巨人・長嶋茂雄以来2人目の快挙となった。
初体験の大舞台で、甘い球を見逃さなかった。2回に逆転を許した直後の3回1死。清田は吉見の2球目、高めに抜けた128キロのスライダーを振り抜いた。
バックスクリーンで弾む推定飛距離130メートルの同点弾に、控えめながら両手で何度もガッツポーズ。左翼席に陣取るロッテファンの大歓声を体いっぱいに浴びながら、ダイヤモンドを一周した。「(バットの)しんに当たれば入りますね。制球のいい投手なので、見ていたらやられる。早めに振っていきました」。
レギュラーシーズンでわずか2本塁打の2番打者が、ポストシーズン新人最多となる3本目。日本シリーズ第1戦では1958年の巨人・長嶋茂雄以来、2人目となる新人本塁打も達成した。
プロ1号は8月4日の楽天戦(Kスタ宮城)。「もっとホームランを打てるようになりたい」と話していた清田は、9月8日のオリックス戦(京セラドーム)の後、金森打撃コーチから宿舎の自室に呼ばれた。そこには同コーチの西武時代の教え子で、阪神戦に出場するため大阪入りしていた中日・和田がいた。
「焦らずやればいい。1年目(本塁打なし)はオレも打てなかった」と諭されたが、清田は宿舎でも金森打撃コーチとの居残り練習を欠かさずに好調をキープ。この日の試合前には同コーチから「今はいいぞ」と状態に太鼓判を押されていた。
2006年から1分けを挟んで8連敗中だったナゴヤドームでの逆転勝ちに、西村監督は「逆転されてからの清田の本塁打。あれでチームが一気に盛り上がった」と嬉しそう。打率が2割台前半と低迷しても使い続けた指揮官の我慢勝ちだ。
就任1年目の監督が日本シリーズの初戦を取れば、日本一の確率は100%と心強いデータもある。ルーキーが新人監督の期待に応え、レギュラーシーズン3位から初の頂点へ大きな一歩を踏み出した。
ポストシーズン男がロッテに敵地での貴重な1勝をもたらした。日本シリーズ第1戦に先発した成瀬善久投手(25)が要所を締め、5回2失点で日本シリーズ初勝利。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージからのポストシーズン連勝を3に伸ばした。6回以降は4投手が無失点リレー。投手陣もチームスローガン「和」で踏ん張った。
エースの責任を果たした。大事な初戦のマウンドを任された成瀬は、5回2失点で降板。物足りなさは残ったが、逆転してもらった後はしっかりと試合を作った。「初回から全力で飛ばしました。5回は少しバテたけど、最低限の仕事はできたと思います」。
2回に先制点をもらったが、直後に和田と谷繁にソロを浴びて逆転を許した。今季リーグワーストの29被本塁打を記録した“一発病”が出てしまったが、CSで自信を深めた左腕はそこから踏ん張った。「うちの打線が振れていたし、2点で抑えていけば何とかなると思った」。3回以降は得点を許さず、リリーフ陣にバトンを渡した。
ポストシーズン男だ。CSファーストステージ第1戦は8回途中2失点で勝ちこそつかなかったが、チームは逆転勝ち。プロ7年目で初めて中4日で先発したファイナルステージ第1戦は完投勝利を挙げた。再び中4日となった第6戦は完封勝利し、成瀬が投げた試合は4連勝。万全の状態ではなくても、ナゴヤドームでは1分けを挟んで8連敗中だったチームに初戦の勝利をもたらした。
西村監督は5回で降板させた理由を「いつもの投球ではなかった。いっぱい、いっぱいでしょう」と説明したが、エースの存在は短期決戦では頼もしい限り。結果的に88球と余力を残したことで、次回は“得意”の中4日で第5戦に先発する可能性が出てきた。
「悔いの残る球もあったし、反省して、次は今日以上の投球をしないといけない」と成瀬。日本シリーズ独特の雰囲気も経験し、次回は本来の投球が見られるはずだ。
ロッテ・大松尚逸外野手(28)が30日、日本シリーズ第1戦(ナゴヤドーム)の2回に先制の右越え適時二塁打を放ったが、走塁中に右太もも裏を痛めてそのまま退いた。名古屋市内の病院で検査を受けたものの、結果はこの日のうちに判明しなかった。
第2戦以降について、西村監督は「明日(31日)になってみないと分からない」と話したが、先発出場は厳しそうだ。大松は「一塁を回った辺りで、右足にピリッときた。大事な試合でこうなってしまって悔しいし、チームに申し訳ない」とコメントした。
成瀬が降板した後は、自慢の救援陣が中日打線を沈黙させた。6回から薮田−内−伊藤−小林宏で無失点リレー。シリーズの流れを左右する先勝を引き寄せた。
「自分達の仕事をやれば、負けないですから」。2番から始まる6回を3人で抑え、森野と和田から三振を奪った薮田は胸を張った。
6〜8回は1人の走者も許さない盤石ぶり。これで救援陣は、CSから9試合で32回1/3を投げてわずか4失点(自責点2)。防御率は驚異の0.56だ。
7年目右腕の内は「緊張したけど、CSを経験したのが良かった」と成長を実感している。西村監督は「6回から4人がよくやってくれた」と最敬礼。リードすれば、鉄壁のリリーフ陣がいる。
2点リードの7回、井口が左中間席に1号ソロを放って試合を決めた。ダイエー時代の2003年には第6戦、第7戦で本塁打を放っており、自身は7年越しのシリーズ3戦連発。「会心の感触。自分のなかでは完璧に近い打撃ができたと思う」と自画自賛した。1回1死一塁の第1打席は遊ゴロ併殺打に倒れたが、その後は3安打と存在感をみせつけた。
2005年のシリーズMVP男・今江が、3回の決勝適時打を含む3打数3安打の大暴れ。4打数4安打だった05年と同様、今回も第1戦は打率10割スタートとなった。これで日本シリーズでの“猛打賞”は3度目となり、別当、弘田を抜く球団記録も達成。「すごく嬉しい。チームを勢いづけていきたい」と鼻息が荒かった。
第2戦のロッテ先発は、マーフィーが濃厚だ。ソフトバンクとのCSファイナルステージ(ヤフードーム)第3戦は5回途中を3安打1失点ながら、5四死球と制球に苦しみ負け投手になったが「ナゴヤドームはマウンドが固くて角度があるので、外国人投手向き」と井上ブルペンコーチ。左腕は「言われたところで力を出すだけ。頑張ります」と気合を入れた。
ロッテ・西村監督と親交のある京都・伏見工ラグビー部総監督、山口良治氏が観戦に訪れ、試合前に同監督らを激励した。日本シリーズ進出までの戦いぶりに「彼(西村監督)の熱意がすごく伝わった。感動した」と話した。「泣き虫先生」はキャンプ中にナインを前に講演を行い、シーズン中もメールなどで西村監督に助言を送っていたという。
日本シリーズ男の本領発揮だ。05年の阪神との日本シリーズでMVPを獲得した今江が3安打1打点。同点の3回1死一、二塁から吉見のスライダーを中前に運び、「こんな舞台に立てることはなかなかない。楽しもうとしたのがいい形になった。大事な試合で貢献できて嬉しい」と会心の笑みを浮かべた。
5年前の舞台では8打席連続安打のシリーズ記録を含む15打数10安打。当時の自分と比較して「全然違う。05年は無我夢中でやっていた。そこから苦しんで野球をやった。苦しんだ時に勉強したことを出そうと思っている」と分析していた。
ロッテ・里崎が短期決戦仕様のリードで成瀬を救った。5回1死一塁で打席は藤井。里崎は1ストライクから3球連続で直球を要求して、見逃し三振を奪った。藤井のバットは一度も動かなかった。成瀬の得意球、スライダーを捨てた。その勇気が国際大会を数多く経験している里崎の強みだ。
中日打線は右打者を7人並べた。成瀬とコンビを組む際は、スライダーを右打者の外角ボールゾーンからストライクに入れる「バックドア」と呼ばれる球種を多投させる。この試合の第1球も荒木に対し、バックドアを要求した。だが2回、谷繁にその球を左翼席へ運ばれた。
「スライダーがあんまり良くなかったので多投するのはやめようと思った」。配球を3回から一変した。「ミスが許されない試合。どんな形でも勝たないといけないので」。調子が悪い球にはこだわらない。短期決戦の鉄則だがリードは極端だった。2回まで10球あったスライダーは3回以降わずか2球。直球とチェンジアップだけで組み立てた。4回は3番からの中軸を3者凡退。勝負球は全てチェンジアップでこの回はスライダーを1球も要求しなかった。
普段から首を振ることが少ないコンビ。意図は左腕にも伝わっていた。「あのまま投げていたらスライダーも使っていたと思いますよ」と里崎。初戦をものにした裏には、女房役のしたたかさが詰まっていた。
里崎は3回無死一塁で、荒木のバント小飛球にタイミング良く飛び出してダイビングキャッチ。飛び出した一塁走者も刺して大きなピンチを脱した。味方が逆転した直後。「流れがどっちに行くか分からなかったので良かった」と胸を張ったが「バントをさせるつもりだった」という配球で直球を要求。守備への意識ができていたことが好ダッシュにつながった。6回にはバントを決めて追加点を演出。8回は左前打でチャンスメークと大舞台に強いところを見せつけた。
ロッテ・井口が7回に左中越えソロを放った。03年のダイエー時代から数えて日本シリーズ3戦連発となるダメ押し弾に「会心の感触。自分の中での完璧に近い打撃ができたと思う。試合の流れを考えると、とてもいい追加点」と自画自賛した。
3回の第2打席では遊撃内野安打、5回の第3打席では右前打も放っており、初戦からいきなりの猛打賞。宮崎でのシリーズ合宿では、予定していた実戦が3試合連続雨天中止。野手陣の実戦感覚が懸念されたが、そんな不安を一掃する活躍ぶりに「温泉に入ってリラックスしたのがよかったのかな。あすもこの勢いで戦いたい」と試合後も冗舌だった。
ロッテ・大松尚逸外野手(28)が中日との日本シリーズ第1戦(ナゴヤドーム)の2回、走塁中に右太腿裏を痛めて交代した。2回2死二塁、先制の右越え二塁打を放った際に「一塁を回った辺りで、右足にピリッとした感覚があった」という。
今春キャンプでは左太腿裏を肉離れ、過去にも右太腿裏に張りを訴えた時期はあったがケガには強いタイプだった。「大事な試合の序盤でこんなことになって悔しい。チームに申し訳ない気持ちでいっぱい」とコメント。名古屋市内の病院で検査を受けたが、診断は即日出なかった。
ロッテ・西岡が6回の4打席目で今シリーズ初安打となる貴重な適時打を放った。2死三塁から平井の低めのフォークに体勢を崩されながらもバットを残して中前に運んだ。
CSでは打率.194と低調だったが、復調の兆しを見せる一打に「どんな形でもいいからバットに当てて走者を還そうと思っていた」と渾身のガッツポーズ。8連敗中だったナゴヤドームでの連敗も止めたが「負けてたイメージはない。まだ1勝。この1勝に満足せずにやっていきたい」と気を引き締めていた。
勝利投手になっても、ロッテ・成瀬は満足していない。それどころか「今日は申し訳ありません」とざんげした。それでもリードは守り、シリーズ開幕投手の役割は果たした。
「初回から全力投球を心掛けた結果、何とか抑えることができた。5回はバテました。でも後ろの人たちが頼もしいので安心して任せられました」。5回を2失点。88球が精一杯だった。
ソフトバンクとのCSファイナルSでは連続中4日で2戦完投勝利。しかし、その代償は大きかった。日本シリーズまでの10日間は実戦どころか、登板2日前までブルペンにも入らなかった。「CSでは気が張っていたので気にならなかったけど、終わったら思った以上に疲れがきた」。上半身の張りを少しでも和らげるためマッサージなどで疲労回復に努めた。
しかしブランクが響いて投球フォームに若干の狂いが生じた。体が早く開き、球が高めに浮いてしまう。精密機械のような制球力は影を潜め、2回には失投で2被弾。シーズンで29本塁打を浴びた一発病が出た。それでも「直球に関してはCSよりも良かった」と4回には今季最速タイの144キロを計測。エースは持てる力を出し切った。
絶対的なエースをどこで代えるか。西村監督の決断は速く、1点リードの6回から継投策に出た。「成瀬はいつもの状態ではない。5回でいっぱいいっぱい。あそこでモタモタしていたら駄目」。ソフトバンクとのCSファイナルS第5戦でも先発の大嶺を2回で交代させる素早い継投策で勝利を収めた。監督就任1年目でも、短期決戦の戦い方を熟知していた。
「次に投げる時は今日以上に長いイニングを投げて中継ぎの人を休ませたい」。成瀬はそう誓った。初戦に勝ったことで、次回登板は中6日で第6戦が有力。エースらしく完投で勝ってみせる。
日本シリーズ初登板の成瀬(ロ)が5回2失点で勝利投手となった。中日戦は06、07年の交流戦で各1試合に先発登板しともに勝利。これで通算3試合で3勝0敗、防御率2.41と中日キラーぶりは健在だ。CSを含む今ポストシーズンは4試合で3勝0敗、防御率1.50。エースにふさわしい働きを見せている。
この日が2試合目の登板。前回は06年の交流戦(6月7日)で、先発で7回105球を投げて5安打1失点。2−1の勝利に貢献した。シーズン2勝目(1敗)だった 勝利投手になっても、成瀬は満足していない。それどころか「今日は申し訳ありません」と懺悔した。それでもリードは守り、シリーズ開幕投手の役割は果たした。
エースが早々と降板しても盤石だった。成瀬の後をロッテの4投手が見事な無失点リレー。先陣を切ったのは薮田だ。6回を3者凡退。3番・森野をフォークで、4番・和田は直球で空振り三振だ。
「いつでもいける準備はしていた。0に抑えることを任されている」。頼もしいセリフ。05年シリーズでは藤田、小林雅とで「YFK」と呼ばれる“勝利の方程式”を担った。藤田と小林雅は今年巨人に在籍。前日に戦力外通告を受けたが、37歳の薮田はいまだ健在ぶりをアピールした。7回も内が、8回も伊藤が3人で片づけて小林宏にバトンタッチ。守護神は2安打を浴びるも無失点に切り抜け「調子は悪すぎたけど、大事なところで低めにいった。チームが勝って良かった」。中日に全く見劣りしない強力な投手陣。指揮官も「選手を信用してますから」と誇らしげだった。
ロッテは5年ぶり日本一に向け、ビールかけの準備も着々と進めている。ナゴヤドームで優勝が決まった場合は、名古屋市内の選手宿舎の駐車場、千葉マリンの場合は千葉市内のホテル屋上を予定。CSファイナルS突破の際にはビール3000本を用意しており、球団関係者は「CSより少なくなることはない。今回も同数になると思います」と説明した。
第2戦先発が予想されるロッテ・マーフィーはキャッチボール、ショートダッシュなどで調整に汗を流した。中日戦は5月19日の対戦(千葉マリン)で7回途中1失点で勝利投手。それ以来2度目の対決に「自分が投げるときは、いけるところまで長い回を投げたい。千葉マリンも最高だけど、ナゴヤドームもいい球場」。敵地では打席に立つケースが出ることにも「メジャーでも何度も打席に立っていた」と問題なしを強調した。
11月4日の第5戦(千葉マリン)での先発が予想されるロッテ・唐川が、準備万端を強調した。ナゴヤドームでランニングなどをこなした右腕は「明日先発です」と冗談交じりに切り出し、シーズン終盤に痛めた右ひじの状態については「全然大丈夫です。(張りは)いつも通りです」と話した。シリーズ初登板となるが、平常心で大舞台のマウンドに上がる。
日本一を懸けた中日とロッテによる36年ぶりの頂上決戦。日本シリーズ第1戦は30日、ロッテが5−2で逆転勝ちで先勝した。3回にルーキー清田育宏外野手(24)がシリーズ第1号となる同点弾。新人が日本シリーズ第1戦で本塁打を放つのは58年の巨人・長嶋茂雄以来52年ぶり。ポストシーズンの新人3本塁打は長嶋、原、仁志(いずれも巨人)の2本を抜いて史上初の快挙となった。投げては先発の成瀬善久投手(25)から継投で逃げ切った。
傾きかけた流れを引き戻したのはルーキーの一振りだった。1点を追う3回1死。清田が1ボールからの2球目をバックスクリーンに叩き込んだ。大松が負傷交代し、逆転を許した直後に飛び出した同点ソロ。重苦しいムードを吹き飛ばし、逆転勝利を呼び込んだ。
「少し(バットの)先の方に当たったけど、伸びてくれました。入ってくれて良かったです」。はにかんだお立ち台での受け答えこそ初々しかったが、ファーストストライクをフルスイングできる積極性はルーキーらしからぬ堂々としたものだ。シリーズ初戦の新人本塁打は58年の長嶋茂雄(巨人)以来52年ぶり。同じ千葉県出身の伝説の男と並んだが、レギュラーシーズン2本塁打の清田は「長嶋さんは凄い方なので。僕のはまぐれです」と恐縮しきりだ。ソフトバンクとのCSファイナルS(ヤフードーム)でも2本塁打。新人では史上初となるポストシーズン3本塁打で球史に名を刻んだ。
1年前のドラフト。1位候補と騒がれたがフタを開ければ4位指名だった。一時は入団に難色を示したが、勝負は入団後と気持ちを切り替えた。今春キャンプは1軍スタートも左脇腹肉離れでリタイアして開幕は2軍。同学年のドラフト1位、荻野貴は華々しいデビューを飾り、開幕ダッシュに貢献する大活躍で注目を集めた。
それでも5月下旬に荻野貴が負傷離脱すると入れ替わるように1軍へ昇格。後半戦に入ると中堅の定位置をつかんだ。同じ俊足で外野手の荻野貴に絶対に負けないのがパンチ力だ。シリーズ初打席の初回、右前にチーム初安打を放った勢いのままの一発。持ち味を存分に発揮して大舞台でスポットライトを浴びた。
シリーズ直前合宿を行った宮崎から名古屋入りした28日に散髪。「散髪効果かな。切って良かった」。明るいキャラでムードメーカー的な存在。西村監督も「清田の一発でチームが盛り上がった」と目を細めた。
シリーズの流れを変えたかもしれない一撃。清田は「シリーズ男にはなれないです」と照れたが、その存在感はすでにチームになくてはならないほど大きい。
3回に同点ソロを放ち、勝利の立役者となったロッテのルーキーの清田。日本シリーズの新人本塁打は、96年仁志(巨人)以来13人目(16本目)。ロッテでは50年荒巻(当時毎日)以来60年ぶりとなった。また、第1戦で打ったのは、58年長嶋(巨人)に次ぎ2人目だ。清田はCSでも2本塁打を放っており、ポストシーズンで合計3本塁打。新人では、長嶋、仁志と81年原(巨人)の各2本(いずれもシリーズで記録)を抜く最多記録になった。
清田はロッテのガム「Fit'S」のCMに出演中のタレント佐々木希のファン。「トリプルスリーができたら共演したい。僕も踊っていいですか?」と豪快に笑った。
ロッテが中日に先勝。これでロッテは74年中日とのシリーズ第4戦から8連勝。88、90、91年西武、00、02年巨人のシリーズ最多連勝記録に並んだ。また新人監督のシリーズ初戦勝利は50年湯浅(毎日)、98年権藤(横浜)、02年原(巨人)、04年伊東(西武)、08年渡辺(西武)に次ぎ6人目。過去5人は全てシリーズを制しているが西村監督はどうか。
試合前、ロッテに「スクール☆ウォーズ魂」が注入された。今春石垣島キャンプでも講演した「泣き虫先生」こと伏見工ラグビー部・山口良治総監督がグラウンドで親交の深い西村監督、今江らを直接激励した。97年春にダイエー(現ソフトバンク)、02年春に阪神で講演し、ダイエーは翌々年、阪神は翌年に優勝。ロッテはその年に日本シリーズに進出し「(西村監督を)電話やメールで励ましてきた。熱意が伝わってきたし、いい表情で戦い抜いてくれた」と笑顔で話した。
第1戦で同点弾を放ち、勝利に貢献したロッテのルーキー・清田。自宅でテレビ観戦した恩師で東洋大の高橋昭雄監督(62)がヒーローの秘話を明かした。
史上初となるリーグ3位からの日本一を目指すロッテが先勝した。3回に新人・清田のソロで追いつき、05年のシリーズMVP・今江の勝ち越し打で逆転。6回に西岡の適時打、7回に井口のソロで加点した。就任1年目の西村監督は先発の成瀬を5回2失点で代え、短期決戦に対応した継投で逃げ切り。ロッテ・中日の36年ぶり2度目の顔合わせは「和」が「俺」を制し、05年以来4度目(前身の毎日含む)の優勝へ一歩前進した。
バットに魂を込めた。今江の打球は瞬く間にセンターに抜けた。「こういう大舞台に立てることはなかなかない。楽しもうと思った」。5年たっても“シリーズ男”の勝負強さは健在だった。
3回だ。清田の本塁打で追いつき、なお1死、一、二塁。吉見の甘いカットボールを呼び込み、鋭い腰の回転ではじき返した。練習を重ねた打法で決勝適時打。「大事な試合で貢献できた。自分もチームも乗っていける」と胸を張った。
阪神を破って日本一になった05年。1、2戦連続で4安打するなど、4試合決着の日本シリーズでは新記録となる10安打、打率6割6分7厘を残し、MVPを獲得した。「あの頃はガムシャラにやってた」と緊張のあまり、試合翌日には足が張るほどだったが、今は「(精神的にも)成長した」。3打数3安打に犠打、四球で勝利に貢献。日本シリーズ通算3度目の猛打賞で、別当薫と弘田澄男を抜いて球団最多となった。
昨秋キャンプからPL学園の先輩、金森打撃兼野手チーフコーチが就任。「金森さんは右の好打者を育てるのがうまい人なんで、今までの理論を全部捨てて、一からやってみよう」と決意。「わきを締め、ボールを手元まで引きつけて打つ」という“金森打法”に挑戦した。キャンプから体にゴムを巻き付けてわきが開かないようにするなど、試行錯誤を繰り返したが、結果が出ない。開幕後、打率は一時2割6分台まで低迷した。
交流戦の直前に、打つポイントを「ほんの少し」前に戻した。「人間は全員が全く同じ動きするわけじゃない。それぞれ違うので、自分はこうなんだな、ってそのとき分かった」。以後、ヒットが止まらなくなった。今季はキャリアハイの3割3分1厘をマークした。
好調をCS、日本シリーズに持ち込んだ。「自己新記録狙い?まずはチームの勝利に貢献することです」。5年前の自分を超え、頂点を目指して打ちまくる。
こみ上げるものは、胸の中にしまい込んだ。就任1年目で日本シリーズ初勝利を挙げた西村監督は「敵地で初戦を勝てたことは大きい。でも、まだ1つ勝っただけ」と表情を引き締めた。
勝負師はCS最終Sで2完投した成瀬を5回2失点でスパっと代えた。「2回から球が浮き出した。あそこがいっぱいいっぱい。勇気がいる決断?モタモタしてたらいけないですから」。1点差、88球でエースを降ろすのに、ためらいはなかった。指揮官の決断に、薮田ら4人のリリーフが無失点リレーで応えた。
打線も指揮官の期待通りに働いた。先発をチェンと予想し、打撃練習では左投手を相手にした。現役時代、ロッテで先輩だった落合監督にさっそくだまされたが、勢いで動揺を消した。「右がこようが、左がこようがうちの打線は変わらない」。ふたを開けてみれば、DHがなくベンチスタートとなった左の福浦、右の今岡を使わず、12球団屈指の中日投手陣から13安打、5点を奪った。
ロッテは74年の第4戦から、05年の4連勝をはさんで日本シリーズ8連勝とし、西武と巨人のシリーズ記録に並んだ。「気を引き締めて、明日も戦います」。嬉しい先手を取っても、西村監督に緩みはなかった。
思い切りの良さが打球に乗り移った。逆転された直後の3回1死。清田はカウント0―1から吉見の甘く入ったフォークを強振した。白球は中堅バックスクリーンで弾んだ。同点の1号ソロだ。「ちょっとバットの先でしたけど、よく伸びてくれました。チームの勝利に貢献できて嬉しいです」。成し遂げた仕事の大きさに、お立ち台で声が震えた。
燃える男だ。新人の日本シリーズ初戦でのアーチは1958年の巨人・長嶋茂雄以来、52年ぶり2人目の快挙だ。「まぐれです。長嶋さん以来?そういう記録は知らなかったけど、すごく光栄です」。同郷・千葉の英雄に肩を並べ、恐縮した。
好球必打が実を結んだ。第1打席はカウント2―2から内角シュートを右前に運んだ。「コントロールがいいし、追い込まれるとキツいのが1打席目で分かった」。史上12人目となる新人のシリーズ初打席安打で気楽になったこともあり、2打席目は2球目をたたいた。新人の初打席からの2打席連続安打は1950年の毎日・片岡博国以来、60年ぶり2人目だ。
勝負強さは新人離れしている。CS最終Sでの2本塁打と合わせ、新人のポストシーズン3発は史上初。「シリーズ男?僕はなりません。今江さんです」と決勝打を含む3打数3安打の2学年先輩を立てたが、シリーズ男は何人いても構わない。「明日もこうやっていけたらいいですね」。怖いもの知らずの強心臓ルーキーが、ミラクルロッテの快進撃を象徴した。
歓声がどよめきに変わった。大松は右太もも裏を痛そうに手で押さえながら、二塁ベースにたどりついた。日本シリーズ自身初の適時打を放った直後、両腕でバツを作ってアクシデントが起きたことをベンチに知らせた。そのまま途中交代し、試合中に名古屋市内の病院へ向かった。
「大事な試合の序盤でこんなことになってしまい、悔しいし、チームに申し訳ない気持ちでいっぱいです」。広報を通じて無念の思いをにじませた。
0−0の2回2死二塁。「チャンスがきたので、この流れを絶対に生かしたいと思っていた」。吉見の高めに浮いたフォークをたたき、右翼フェンス直撃の適時二塁打を放った。日本シリーズ初出場の初打席で流れを呼び込む一打でチームに貢献したが、思わぬ落とし穴が待っていた。
「一塁を回ったあたりで、右足にピリッとした感覚を感じた」と右太もも裏を負傷。西村監督は「明日にならないと分からない」と不安げな表情。青山外野守備兼総合ベンチコーチも「31日以降の出場?ちょっと厳しいかな。肉離れかもしれないし、心配」と同じく顔を曇らせた。7番を打つ和製大砲が勝利の輪の中にいなかったことは、チームに少しだけ暗い影を落とした。
重圧のかかるマウンドでロッテ先発の成瀬は5回2失点で勝利への道筋をつけ「初回から飛ばした。5回はばてたが、最低限の仕事はできた」と充実感に浸った。
今季は交流戦でも登板機会がなかったナゴヤドーム。「年1回しか投げないマウンドなので不安があった」と話すもCS3試合で2勝の左腕に勢いがあった。
2回こそ和田、谷繁に一発を浴びて逆転を許したものの、そこから踏ん張った。6回以降を救援陣に任せたことを反省点に挙げた。「次に投げる時は今日以上にイニングを投げたいし、1人で投げ抜きたい気持ちはある」日本一に向かってフル回転宣言した。
ロッテは逆転を許した直後の3回、清田のソロで追い付いた。1打席目の安打で緊張がほぐれたルーキーは「2打席目から余裕が出た」と甘く入った吉見の変化球をバットの先でとらえ、中越えへ運んだ。8月に放ったプロ初本塁打の記念のボールは、飾ることなく部屋のどこかに転がっているという。「元々本塁打を打つ打者じゃない」と話す24歳に、大事な試合で一発が飛び出した。
5回2失点のエースを88球で代えた。ロッテの西村監督は3−2の6回、1死二塁で成瀬に代打を送った。「(代える)勇気がいるというか、もたもたしていたらいけない」。攻めの采配が、勢いを加速させた。
2死後に西岡が中前適時打を放った。4点目をもたらした主将は「次の1点は貴重な1点。どんな形でもバットに当てようと思った」。7回には、自身7年ぶりの日本シリーズとなった井口が左中間席へソロ本塁打。「甘い球をどんどん振っていこうと思った。1点ずつでも積み重ねていきたかった」と笑顔だった。
救援陣の状態の良さが、西村監督に思い切った決断をさせた。1回無失点の薮田は「シーズン中は(救援陣で)試合を落としていた。クライマックスシリーズ(CS)に入ってから、みんな自分の投球ができている」。6回から4投手で無失点リレー。救援陣はCSから、32回1/3で4失点と中日のお株を奪う安定感だ。「選手を信じている。完璧だった」と指揮官の信頼は増す一方だ。
打線も13安打を放ち、活発なまま。CSの勢いそのままに先勝し、日本シリーズでの連勝は8に伸びた。ただ、西村監督の締めはいつも通りに「まだ1つ。喜んではいられない」。厳しい表情は崩れなかった。
ロッテの大松は2回に先制二塁打を放ったが、走塁中に右太もも裏を痛めた。そのまま退き、試合中に名古屋市内の病院へ向かった。第2戦以降について、西村監督は「明日になってみないと分からない」と話したが、先発出場は厳しそうだ。大松は「流れを生かしたいと思っていた。一塁を回ったところでピリッとした感覚を感じた。序盤でこうなってしまって悔しいし、チームに申し訳ない」とコメントした。
ロッテのシリーズ男が本領を発揮した。2005年、阪神との日本シリーズで最高殊勲選手に輝いた今江が勝ち越し打を含む3安打1打点。今年も初戦で、チームを勢いに乗せた。
逆転された直後の3回は清田のソロで同点とし、なお1死一、二塁。「こんな舞台に立てることはなかなかない。楽しもうとしたのがいい形になった」。自然体で放った打球は中前へ。二塁から井口をかえした。背番号8は「試合の流れ、シリーズの流れを考えても大きい。いい場面でヒットが出たことは、気持ち的にも大きい」と喜んだ。
5年前の大舞台では1、2戦にいずれも4安打。8打席連続安打のシリーズ記録をマークした。4試合で15打数10安打と大暴れし、4連勝でロッテを31年ぶりの日本一に導く原動力となった。
当時の自分と比較して「全然違う。05年は無我夢中でやっていた。そこから苦しんで野球をやった。苦しんだ時に勉強したことを出そうと思ってやっている」と分析する。当時は若いロッテの象徴だった今江。27歳になり、成長の跡を見せた。
ロッテの大松が2回、先制の適時二塁打を放った。ただ、走塁中に右太もも裏を痛め、そのまま退いた。2死二塁で浮いた変化球をとらえ、右越えへ運んだ。大松は「流れを生かしたいと思っていた。一塁を回ったところでピリッとした感覚を感じた。序盤でこうなってしまって悔しいし、チームに申し訳ない」とコメント。病院には行かず、アイシングを行った。
セ・リーグ覇者の中日と、パ・リーグ3位からはい上がったロッテが激突する日本シリーズ第1戦は、ロッテが5−2で勝利した。
いい意味でも悪い意味で、今季のロッテ・成瀬を象徴する投球だった。初舞台の日本シリーズで序盤に2被弾。今季リーグワーストの29被弾を浴びた一発病を出しながらも、崩れることなく、5回2失点と最低限の役割は果たした。悪い面が出たのは、1点を先制してもらった2回だ。先頭の和田に140キロ直球を右翼席に弾き返された。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第1戦以来、15イニングぶりの失点を喫すると、2死から谷繁にもスライダーを左翼席へ運ばれた。コース、高さともに甘く入ったところをベテラン2人に仕留められた。
CSファイナルステージでは、ソフトバンクの重量打線に対し、細心の注意を払った。徹底して低めに集め、一発だけは避ける投球が第1戦の完投、第6戦の完封につながったが、この日はその徹底を欠いた。CSで中4日が2度続いたこともあり、宮崎の直前合宿では実戦登板なし。「コンディションは大丈夫」と話していたが、中10日のぶっつけ登板が、立ち上がりの微妙な制球に影響した。シーズン中は一発から崩れるケースが多かったが、CSで自信を深めたいまの成瀬は違う。3回に味方が逆転すると、きっちり修正。4回は、森野、和田、ブランコの主軸を3人でピシャリ。5回2死一、二塁のピンチも荒木を三振に仕留め、主導権を渡さなかった。
「チームのために頑張ります」。大舞台での経験が、成瀬をいっそうたくましくしている。
ロッテの西村監督と親交のある京都・伏見工ラグビー部総監督、山口良治氏が観戦に訪れた。試合前には西村監督らを激励した。日本シリーズ進出までの戦いぶりに「彼(西村監督)の熱意がすごく伝わった。感動した」と話した。「泣き虫先生」はキャンプ中にナインを前に講演を行い、シーズン中もメールなどで西村監督に助言を送っていたという。「いい表情で戦い抜いてくれた」と笑顔だった。
ロッテ成瀬善久投手(25)が、ポストシーズン3連勝を飾った。「セ・リーグの試合なので、いつ代打で変わるか分からないから、初回から全力で飛ばした」という言葉通りの力投。2回には和田に逆球を右翼席に放り込まれ、谷繁には有利なカウントからフルカウントにして本塁打を浴びたが、5回まで2失点で切り抜けた。8個の三振を奪う快投に「今日はストレートに関しては100点満点。楽しく投げられた」と、日本シリーズ初めてのマウンドを振り返った。
ロッテ里崎智也捕手(34)が好守で流れを引き寄せた。逆転した直後の3回無死一塁、荒木のバントは本塁前の小フライとなったが、これをダイビングキャッチ。ひざをついたまま一塁へ転送し、併殺を完成させた。「流れがどっちにいくか分からなかったので大きかったと思う」という言葉通り、シーソーゲームを脱出するきっかけとなった。
ロッテ西岡剛内野手(26)が6回、リードを2点に広げる貴重な中前適時打を放った。カウント2−2と追い込まれていたが、外角のフォークに食らいついた。中盤で欲しかった1点をもぎとり、「どんな形でもいいからバットに当てて走者を返そうと思っていた。シリーズ初ヒットがいい場面で出てくれて本当に嬉しいですね」と素直に喜んだ。
ロッテが小刻みに得点を重ね、敵地で中日を破った。西村徳文監督(50)は「2回に逆転された直後の清田の本塁打、今江の勝ち越し打が大きかったですね」と、すぐさま再逆転を決めた打線を褒めちぎった。投手陣の継投もズバリとはまり、先発成瀬は5回で交代しながら、6回以降は4人をつぎ込み無失点。同監督は「1人1回と思ってました。信じてました。今日は完璧でしたね」と満足そうだった。
ロッテが5年ぶり日本一に向けて先勝した。セ・パ両リーグのクライマックスシリーズ(CS)を制した中日、ロッテの第1戦。36年ぶりの対決に中日吉見、ロッテ成瀬の両エースが先発した。2回に大松の二塁打で先制したロッテは、その裏にソロ2本で逆転されたが、3回にルーキー清田の同点ソロ、今江の中前打で再逆転した。6、7回に加点し、5投手の継投で5−2と逃げ切った。史上初のリーグ3位からの日本一へ、ロッテがCSから4連勝と波に乗っている。
ロッテ今江敏晃内野手(27)が3回、勝ち越しの中前適時打を放った。清田のソロで同点とし、1死一、二塁から吉見のカットボールを中前にクリーンヒット。「逆転された直後の回のチャンス。とにかく思いっきりよく打つ事だけを心がけていた。チームにとって逆転された直後の逆転。試合の流れ、シリーズの流れを考えても大きいと思う。自分にとっても1試合、しかもいい場面でヒットが出たことは気持ち的に大きい。嬉しい1本です」と喜んだ。
ロッテのルーキー清田育宏外野手(24)が3回に日本シリーズ1号本塁打を放った。2回に2本のソロアーチを浴びて1−2と逆転を許した直後、同点に追い付く価値あるアーチになった。1死走者なし、カウント0−1から高めに浮いた吉見の変化球をジャストミート。センターバックスクリーン前のラバーに飛び込んだ。「打ったのはフォークだと思います。高めに入った甘めの球をうまくはじき返すことが出来ました。チームが日本一になるため、勝つために自分の出来る仕事をしたいと思っているだけです。散髪?宮崎から名古屋に移動した一昨日行きました。だいぶ伸びていましたからね。気合とかそういうのではないですが、ちょっとした気分転換にはなっているかな」とコメントした。
ロッテ大松尚逸外野手(28)が2回、2死二塁から右翼フェンス直撃の先制適時二塁打を放った。だが、走塁の際に右足太もも裏を痛め途中交代。「幸運な形でチャンスができたので、この流れを絶対に生かしたいと思っていた。一塁を回ったあたりでピリッときてしまいました。チームに申し訳ない気持ちでいっぱいです」と、悔しさをにじませた。