日本ハムの斎藤は直球主体の投球で1回無失点。四球、二塁打で1死二、三塁と走者を背負ったが、後続を断った。打線で2番に入った金子誠が1犠打に2安打4打点と機能。ロッテは清田が2ランを放ち、順調な調整をうかがわせた。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | |
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千葉ロッテ | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 1 | 4 | 8 |
北海道日本ハム | 0 | 2 | 0 | 2 | 1 | 1 | 0 | 3 | x | 9 |
昨季日本一に輝いたロッテが、日本ハムのドラフト1位斎藤佑樹投手(22=早大)の放つオーラに翻弄された。ルーキーながら日本シリーズで優秀選手賞を獲得するなど、大舞台に強いはずの清田育宏外野手(25)は外角の直球に力んで一邪飛。細谷、金沢らの若手打撃陣も、斎藤の緻密なコントロールの前にもてあそばれた。竹原が意地の右翼線二塁打を放ったが、得点を奪えず、この日は引き立て役に回ってしまった。
史上最大の下克上を成し遂げた強力打線が空回りした。先頭打者として対戦した清田は、2球目の外への直球を完全にとらえ損ねた。力ない打球で一邪飛に倒れ「いい気分で打席に入れたのに、力んでしまった。軽く振ったら打てていた」と反省した。前の打席で会心の本塁打を放っていただけに、余計に悔しかった。
昨季の日本シリーズで、新人では長嶋茂雄氏以来となる初戦での本塁打を放った。シリーズ通算では新人最多タイ6打点を記録。優秀選手賞も受賞した。大斎藤フィーバーに沸く鎌ケ谷出身。気負いがあったかは本人のみが知るところだが、大舞台に強いはずの男が平常心を保てなかった。試合後は照れくさそうに「緊張しました」と頭をかいた。
1死二、三塁の絶好機で打席に立った細谷は「最悪でしたね」と天を仰いだ。初球のカーブに手を出し、中途半端なスイングで三塁ゴロに倒れた。斎藤が全球直球勝負を公言する新聞記事を見た。直球を待っていたが、高めに浮いた変化球に思わず手が出た。「タイミングは外れていたけど、芯でとらえていた。あのまま振っていれば違っていたかも…。新聞を信じていたのに…」とぼやいたが、後の祭りだった。続く金沢も「ミスショットではなく、力んでしまった」と外角の直球を打ち上げた。
攻略のお手本を見せた中堅勢も、斎藤のポテンシャルを評価した。最多の9球を投げさせ、ファウルで粘って四球を選んだ大松は「アウトコースのラインを外していない。普通は内に入ってきたりするのだけど、間違いがない」と安定した制球力に感心。斎藤から対外試合初安打(右翼線二塁打)を放った竹原は「打ったらテレビに映ると思った」とおどけながらも、「真っ直ぐでも色々と動く。カット気味で沈む球もある」と指摘した。
対戦した5人が一様に指摘したのは低めに集まる制球力。強力打線を育てた金森打撃コーチも、早大の後輩の快投に「ああやって低めに投げてこられると、こちらも困る」と頭の痛そうな様子だった。
日本ハム・ダルビッシュ有投手(24)が佑ちゃんチェックを見送り、自らの調整に専念した。26日はウエートトレーニングにランニングと、コンディション調整のメニューに終始。斎藤佑樹投手(22)が登板する前には宿舎へと引き揚げ、静養などに努めた。完全復活の兆しのロッテ荻野、ドラフト1位の伊志嶺を軽く視察しただけで、観戦を切り上げた。荻野には注目しており「目立たないですけれど、打撃もいい」と要警戒。西武中村ら、対戦前から周囲の評価がうなぎ上りである自身の状態については「持ち上げすぎでしょ」と流していた。
ロッテ編成担当が26日、阪神のオープン戦開幕となったオリックス戦を視察した。松本編成統括、佐藤編成調査、諸積編成担当の3人が三塁スタンド上から試合終了までをじっくりと観察。小林宏のFA補償について松本編成統括は「3人がそろったのは初めてなので、みんなの意見を照らし合わせてみました。もう1試合、27日(のオリックス戦)もしっかり見て、その後に現場と話し合います。その時点で金銭補償か人的補償かを決めることになると思います」と話した。
佑ちゃんに負けじと、ロッテのルーキー達も躍動した。先発のドラフト3位・小林=七十七銀行=が3回2失点で踏ん張ると、「9番・右翼」でスタメン出場した斎藤の外れ1位・伊志嶺=東海大=が“プロ初安打”。大学日本代表でバッテリーを組んだ4位・小池=青学大=も途中出場し、9回に中前2点適時打を放ちアピールした。
小林は2回に4連打を浴びて2点を失ったが、最後の3イニング目は3者凡退に抑えた。「3回は修正して、変化球も腕を振って投げました」。課題も見つかったが、同時に収穫も手にした。
5回に左前安打を放った伊志嶺は「打ったのは真っ直ぐ。うまく回れました」と笑顔。守備から入った小池は「1本出てよかった。守備の方が緊張しました」と充実感をにじませた。佑ちゃんの“同期生”として、負けずに開幕1軍を目指していく。
ロッテ・清田の気合は空回りした。6回から登板した黄金ルーキー・斎藤と先頭打者として対戦したが、2球目の直球を打ち上げて一邪飛に倒れると「落ち着いて制球が丁寧な印象。2球目を打ってあまり球を見られなかった。打ったのはきれいな回転の球だったけど、緊張して力んでしまった」と悔しがった。
昨季ポストシーズンで大活躍した清田は、日本ハムの2軍本拠地の千葉・鎌ケ谷出身。斎藤のフィーバーぶりに「鎌ケ谷と言えば僕」と対抗心をむき出しにしたこともあった。4回にはチーム対外試合初本塁打となる左越え2ラン。内角直球を完璧に捉える一撃で「本塁打がいい感覚で打てたので、あの(斎藤の)打席もいい感じで入れたのに。軽く振れば打てたと思うけど」と歯ぎしりした。西村監督は「野手の方はほとんどの選手が結果を出している」とサバイバルを強調。外野の定位置奪取へアピールは続く。
ロッテ先発のドラフト3位・小林(七十七銀行)が3回4安打2失点。2回にスライダーの制球に苦しんで、4連打で2点を失った。それでも、3回は中軸を3者凡退で意地を見せた。「変化球が甘く入って連打されたけど、腕を振って低めに集める意識で修正できた」と手応えを口にした。
ロッテドラフト1位の伊志嶺(東海大)が9番・右翼で先発出場。地元沖縄出身のルーキーは、5回の第2打席で高めの直球を叩いて左前打を放ち大歓声を浴びた。注目の斎藤とのドラ1対決は実現しなかったが「ベンチで見ていて、低めに制球していてそんなに甘い球はなかったと思う。課題を持って、色々試しながらやっている気がした」と分析していた。
ダルビッシュが右膝手術から復活した荻野貴に警戒を強めた。エースは斎藤の登板前に宿舎へと引き揚げたが、西岡(ツインズ)が抜けたロッテ打線について「そんなに変わらない。僕は(西岡より)荻野さんの方が嫌。足があるし、あまり目立っていないけど打撃もいい」。西武・中村ら他球団の主力が、自身に対して早くも白旗発言をしていることには「持ち上げてくれているだけじゃないですか?」とした。
ロッテ竹原直隆外野手(30)が6回、日本ハム斎藤から初安打となる右翼への二塁打を奪った。3ボール1ストライクからの5球目。外角の直球をうまく流し打ち、しぶとく右翼線に落とした。「スライダー気味の外の真っ直ぐ。打席に入るのを楽しみにしていた」。記憶に残る1本に満足そうな表情だった。
ロッテのドラフト3位小林敦投手(25=七十七銀行)が先発し、3回を投げて2失点を喫した。2回、順調に2死を奪ったが、その後に4連打を浴びた。「変化球が甘く入ってしまった」。その教訓から、3回は配球パターンを修正。直球中心に切り替え三者凡退に抑え「意識して直球中心でいった。3回はよかったです」と収穫を口にした。
2年連続日本一を狙うロッテのオープン戦初得点は、清田のバットからだった。0−2の4回無死一塁で左翼へ特大の一発を放ち「シーズンでもないような、いい当たりだった」と自画自賛した。
自信を持ってプロ2年目に臨んでいる。キャンプの振り込みは自他共に認めるほど多く、最終クールは体中が張っていた。打席でのテーマは力みをなくすこと。この日の2ランは浮いた直球を打ち損じなくとらえ「チェンジアップを頭に入れながら、真っ直ぐを打てたことが良かった」と自信を深めていた。
日本ハムの斎藤と対戦したロッテの打者からは、制球のよさを評価する声が多かった。計4度のファウルなどで粘り、四球を選んだ大松は「外角の縦のラインを外さなかった。中に入ってくる球がなかった」と話した。
テークバックの小さな投球フォームに、大松は「自分が思っているよりも差し込まれる」。手元で微妙に動く球もあったという。初球を見逃し、2球目で一邪飛に打ち取られた清田は「初球は低めで動いている感じがあった。打った球はきれいな直球だった」と振り返った。
ロッテ清田育宏外野手(25)が“今季1号”を放った。4回の第2打席、石井の内角高めの直球をどんぴしゃりで振り抜くと、打った瞬間にそれを分かる当たり。打球は逆風を突いて左翼席に飛び込む1発に「自然とバットが出た。練習でもなかなか出来ないスイング」と笑った。
石垣島での24日間にわたる春季キャンプが終わった。キャンプでは、ひざの状態を上げていくことと、中堅手から遊撃手へのコンバートに伴い守備を課題に練習してきた。
紅白戦では昨年5月以来、9ヶ月ぶりに盗塁を決めた。日頃のスライディング練習で感触が良かったので不安なく思い切ってスタートを切れた。ちょっと安心した。やっとここまできたな。ケガをしたのは盗塁の際だった。今、スライディングは手前から、下から入るようにしている。ひざに負担が少なくなるようクッションを付けている。
紅白戦では、中前へ抜けそうな打球に飛びつき捕球することもできた。体が自然と動くようになってきた。守備では今までにない動きを取り入れ、レベルを少しずつ上げていこうと考えた。ケガをした右足で踏ん張る動きも意識してやった。だけど守備はまだまだやな。ひざをかばって多少の歯がゆさを持ちながら過ごしてきたキャンプ。心がけたのは、焦らない、徐々にしか良くならないということだった。
キャンプは、自分のことで精一杯だった。収穫は一通りみんなと一緒に練習できたこと。26日からオープン戦。実戦間隔が空いているから、オープン戦で感覚を取り戻したい。(まとめ・荻野公一)